訪問看護では、「在宅でどのような生活を送りたいか」という想いに寄り添い、利用者さんのニーズに合わせた療養支援を行っていきます。
利用者さんのニーズとは、解決したいと感じている困り事になります。
しかし、困り事の多くは、利用者さん自身の弱みとも考えられるため、どんなに信頼している訪問看護師であっても、腹の内を見せることに抵抗感を持っている利用者さんがいると考えられます。
そのため、ニーズについては、利用者さんから話してくれる時を待つことも大事ですが、訪問看護師が積極的に気づくことができれば、今まで以上に良好な人間関係を築くことができると考えます。
今回は、訪問看護におけるコミュニケーション術として、利用者さんのニーズを聞き出すポイントについて紹介していきます。
利用者さんのニーズが曖昧で、具体的な看護計画を作れないと感じている看護師さんは、是非参考にしてみてください。
目次
利用者さんのニーズを聞き出す5つのポイント
利用者さんのニーズの聞き出すポイントは、5つあります。
- 看護師の感情や思考の自己開示
- 看護に関する質問があった時は掘り下げる
- 具体的な質問をする
- 利用者さんの過去を知る
- ケアが終わった後に会話する
それぞれについて、以下で具体的に解説していきます。
利用者さんのニーズを聞きだすポイント①
ポイントの1つ目は、「看護師の感情や思考の自己開示」になります。
感情や思考の自己開示とは、訪問した際の利用者さんの表情や声のトーンから、看護師がどう感じたか、どう考えたかについて、言語化して利用者さんに伝えることになります。
例えば、挨拶をした時に声のトーンに元気のなさを感じた場合、「今日は、声にいつもの元気さが少なく感じましたが、何かありましたか?」になります。
ニーズを話すことに抵抗のある利用者さんは、そもそも自分自身の感情や思考を表現することが少ない傾向があります。
つまり、感情や思考について他者に言わないことが普通になっていると考えられます。
感情や思考を感じ取ろうとしてくれる看護師に対して、利用者さんは好感を持ち、つい気を許してしまうと家族にも言っていなかった困り事=ニーズを話してくれるかもしれません。
利用者さんのニーズを聞きだすポイント②
ポイントの2つ目は、「看護に関する質問があった時は掘り下げる」になります。
そもそも困り事=ニーズが他者には言いにくいことだった場合、ストレートに相談できないことが考えられます。
みなさんは、利用者さんと雑談をしている時に、「看護師さんは、〇〇ってできるのですか?」、「看護師さんは、〇〇ってやったりするんですか?」のように看護に関する質問を受けたことはありませんか?
人間は、本心に近いことを話す際に回りくどい言い回しになったり、疑問形になりやすいと言われています。
そのため、利用者さんから看護に関する質問を受けた場合には、具体的な回答をするだけでなく、利用者さん自身の話として掘り下げていくことで、困っていること=ニーズを聞き出せる可能性があります。
利用者さんのニーズを聞きだすポイント③
ポイントの3つ目は、「具体的な質問をする」になります。
ニーズの聞き方の一つとして、「自宅の生活で、何か困っていることはありますか?」のような質問があります。
この質問に対して答えられない利用者さんが一定数いると思います。
それの理由は、抽象的な質問になっているためです。
抽象的な質問では、とっさに答えが浮かばずに「特にありません。」という返答が多くなる傾向があります。
そこで、「食事の量はどうですか?」、「お通じは毎日ありますか?」のように、体調や生活状況に関する具体的な質問をすることで、困り事=ニーズに気付きやすくなると考えます。
利用者さんのニーズを聞きだすポイント④
ポイントの4つ目は、「利用者さんの過去を知る」になります。
初めに立案した看護目標が達成されてくると、さらに利用者さんらしい生活を送る上で必要なケアはないかと考え、改めてニーズを聴取する時があります。
そんな時は、「やってみたいこと、もしくはやってほしいことはありせんか?」のような質問を利用者さんに投げかけると思います。
この質問に対して答えられない利用者さんが一定数いると思います。
その理由は、未来に対する質問になっているためです。
人間は、過去>現在>未来の順に語りやすいと言われています。
そこで、利用者さんのニーズを改めて聞く際には、現在と過去の生活スタイルの違いを聴取することで、利用者さんも忘れかけていた潜在的な困り事=ニーズに気付けるかもしれません。
利用者さんのニーズを聞きだすポイント⑤
ポイントの5つ目は、「ケアが終わった後に会話する」になります。
困り事=ニーズが利用者さん自身の弱みである場合、口に出しにくい話となります。
口に出しにくい話は、看護師に相談したい大切な話であっても後回してしまう傾向があります。
例えば、定期受診の時、主治医に聞きたいことがあったが聞くのを忘れてしまい、診察室を出た後に思い出してしまうようなものです。
言い出せなかった話を後で思い出すことを、心理学では「ドアノブ効果」と呼びます。
利用者さんのニーズを聞きだすタイミング、利用者さん自身が話しやすいタイミングは、ケアが終わった後かもしれません。
ケアが終わった後は、時々会話をすると良いと考えます。
まとめ
今回は、訪問看護におけるコミュニケーション術として、利用者さんのニーズを聞き出す5つのポイントについて紹介しました。
- 看護師の感情や思考の自己開示
- 看護に関する質問があった時は掘り下げる
- 具体的な質問をする
- 利用者さんの過去を知る
- ケアが終わった後に会話する
上記のポイントを念頭に置き、利用者さんとコミュニケーションを図ることで困り事=ニーズに気付きやすくなると思います。
是非、試してみてください!