訪問看護師が脳血管疾患の利用者さんに関わる理由を紹介

訪問看護で関わる疾患で一番多いのは脳血管疾患で18%とされています。

そこでこちらの記事では、訪問看護師が脳血管疾患の利用者さんに関わる理由を紹介します。

 

脳血管疾患とは

脳血管疾患とは、脳動脈に異常が起きることが原因で起こる病気の総称です。

脳血管疾患にはいろいろな種類がありますが、最も良く知られているのが脳卒中です。

脳卒中は、脳の血管が狭窄・閉塞することにより生じる脳梗塞などの虚血性脳卒中と、脳の血管が破れて生じる脳(内)出血やくも膜下出血などの出血性脳卒中に分けられます。

脳卒中は症状の激しい時期に適切に治療することで、治療後の日常生活に大きな改善を図ることができます。

しかし、発症をきっかけに要介護状態となることが最も多く、また再発率も高い疾患です。

そのため、 脳血管疾患の利用者さんの多くが訪問看護を利用されています。

 

訪問看護師が脳血管疾患の利用者さんに関わる理由

 

訪問看護師が脳血管疾患の利用者さんに関わる理由は、以下の5つが挙げられます。

 

  1. 後遺症に対する医療的ケア・介護を要する
  2. 血圧や全身状態の管理が必要
  3. 生活習慣の改善
  4. 服薬管理
  5. リハビリテーション

 

脳血管疾患は種類が多く、症状も様々です。

ほとんど後遺症が残らない方から重度の後遺症が残る方まで多岐にわたります。

要介護状態となった利用者さんの在宅療養を支援することと並行し、再発を予防してくためにも訪問看護師の専門的な関わりが必要となります。

脳血管疾患の利用者さんの在宅療養を支援するために、対話の中で、ADLやIADLについて評価し、可能な限りその人らしい生活を送れるように、以下の7つのポイントからの支援が必要です。

 

  1. 残存機能の維持・向上
  2. 摂食嚥下・栄養管理
  3. 再発予防と対応
  4. 慢性期合併症の予防と対応
  5. 事故防止
  6. 介護者への配慮
  7. 生活目標

 

これら7つの視点から、訪問看護師が果たしていく役割についてまとめました。

 

残存機能の維持・向上

 

脳血管疾患で在宅療養している方は、退院直後に在宅療養に移行してきたケース、長年ご家族での介護を続けてきたケースなどがあります。

慢性期に移行すると残存機能はほぼ固定されていますが、在院日数が短縮されている現在の医療体制の中では、在宅でのリハビリテーションがとても大きな意味を持ちます。

リハビリテーションは、利用者さん本人の意欲やご家族との関係性、ケアマネジャーをはじめとする多職種間の関わり方で大きく左右されます。

脳血管疾患の利用者さんやご家族は、家庭や社会での役割がないと考えていることも少なくなく、生活を楽しむ余裕がないことも多くみられます。

訪問看護師には、個人的な意識や環境因子が活動や社会参加を妨げている部分を見極め、改善につながる専門的な介入を求められています。

また、リハビリに対しての努力を褒めることはもちろんですが、興味や関心が機能訓練ばかりに集中しないような関わりも重要です。

生活を楽しむための趣味やお孫さんのお話など、利用者さんの物語や考えに敬意を払って傾聴しましょう。

残存機能について、現在の機能はどのくらいなのか、リハビリではどのようなことをやっていて、目標は何かを多職種で情報共有しておくことも必要です。

特に「できていたことができなくなった」という情報は重要です。

 

摂食嚥下・栄養管理

 

嚥下障害は脳卒中急性期には50%以上に認められる症状です。

在宅療養期では嚥下障害がある程度回復していることも多いですが、再発や全身状態の悪化に伴い、嚥下障害が再び起こる可能性もあります。

訪問看護師は常に十分な食事が摂れなくなる危険性を抱えていることを意識し、定期的に体重測定を行い、低栄養や嚥下障害が疑われるときには適切に対応する必要があります。

在宅療養期でも嚥下リハビリで嚥下機能が改善することもありますので、適切にアセスメントし専門的な介入をすすめていくことが大切です。

誤嚥を恐れ安全を優先するあまり、利用者さんの食べる喜びを奪ってしまうことには気をつけなければなりません。

口から飲み込むことができない状態になると、胃瘻などを使って栄養を摂る必要があったり、吸引が必要となることがあります。

そのような方には、訪問看護師が吸引や胃瘻の管理方法をご家族に指導します。

 

再発予防と対応

 

脳血管疾患は再発するリスクが高いとされています。

脳卒中の累積再発率は、初回発作後1年で約12%、5年で35%と報告が出ています。

脳卒中の約70%を占める脳梗塞では、抗血小板薬を内服している場合、1年再発率は約4%ですが、脳梗塞患者さんの抗血小板薬服薬継続率は、1年後で約50%程度です。

厚生労働省「第2回脳卒中に係るワーキンググループ議事録」(2017/02/03)

高血圧、糖尿病、心房細動、喫煙、多量飲酒の危険因子に対しては生活習慣の改善や薬物治療により再発率を抑えることができます。

そのため服薬管理はとても重要です。

また、普段から血圧や全身状態を管理して、必要に応じ主治医に状態報告を行ってくれる訪問看護師の関わりが重要となります。

高齢者においては、血圧も血糖値も厳格に下げすぎると予後を悪くすることもありますので、日常の観察時には注意が必要です。

血圧は140/90mmHgを目標にして、抗血栓・抗凝固薬使用中や脳出血の既往の場合にはやや低めにするとよいとされていますので、主治医の指示に沿って観察していきましょう。

 

慢性期合併症の予防と対応

 

脳血管疾患の慢性期にみられる合併症は以下の通りです。

嚥下機能低下による合併症 呼吸器感染・脱水・低栄養
神経因性膀胱による合併症 排尿障害・尿路感染
その他の合併症 排便障害、褥瘡、認知機能低下

以上の合併症は脳血管疾患の10~25%にみられますが、脳血管疾患に特徴的な合併症は、痙攣と中枢性疼痛、痛みを伴う痙縮・拘縮です。

 

痙攣発作

 

痙攣発作は劇的で意識消失や神経症状を伴うため、利用者さんや介護者であるご家族は強い恐怖心を覚え、激しく動揺します。

発作が起きた場合は、ご家族に共感しながらも慌てることなく冷静に対処するよう指導しましょう。

可能ならば側臥位にして誤嚥を防ぎ、利用者さんの周囲から危険物を遠ざけること、口にものを挟む、指を入れるなど絶対にしないよう説明しましょう。

通常は数分で止まることが多いですが、以下の場合には救急搬送が必要ですので、判断の基準にしましょう。

  • 初回発作である(何が起こっているかわからない)
  • 痙攣が5分以上続いている(自然消失する可能性が低い)
  • 意識が回復しないうちに、再び痙攣発作が起きる(痙攣重積)
  • 新たな神経症状や増悪がみられる(再発の可能性あり)
  • 転倒し、激しく頭部などをぶつけた(外傷性頭蓋内出血の可能性あり)

 

中枢性疼痛

 

中枢性疼痛は感覚脱失や感覚低下があるにもかかわらず、灼熱感やジンジン、ヒリヒリなどと表現される自発痛で、触刺激で疼痛が誘発されることもあります。

うつや不安などの精神反響と呼ばれる情動反応を示すことが特徴です。

ADLにも影響を及ぼしますが、現状では満足のいく治療はありません。

非ステロイド性抗炎症薬は無効のことが多く、トリプタノール、ラミクタール、ガバペンが第一選択薬となります。

リボトリール、テグレトール、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、リリカが効果を示すこともあります。

 

痛みを伴う痙縮・拘縮

 

拘縮は介護の支障にもなるため、適切な関節可動域(ROM)訓練を行うことが大切です。

痙縮や拘縮にはリオレサール、ダントリウム、テルネリンなどの処方が試みられることが多いです。

ボトックス(A型ボツリヌス毒素製剤)も、関節可動域の増加と介護量軽減が期待できます。

 

事故防止

 

脳血管疾患の利用者さんには、転倒・誤嚥・窒息などの危険性が常にあることを意識し、予防していくことが大切です。

特に転倒は25%にみられ、ドアの段差、絨毯の溝、電気コードなど日常生活での動線で躓きやすいところを普段からチェックしましょう。

 

介護者への配慮

 

脳血管疾患の利用者さんのケアを考える上で介護者への説明と配慮は不可欠です。

介護者は、利用者さんと同様に4つのステップを経て障害を容認できるようになります。

 

4つのステップ

  1. ショック・混乱期
  2. 回復への過度の期待と不安期
  3. 絶望、抑うつ期
  4. 障害受容期

 

介護者はストレスに起因する疾患にかかりやすく、介護継続のためには介護者の健康管理と介護者自身のための時間を確保できる体制を整えることが大切です。

そして普段から、無理をせず、できることだけで十分であることを説明しましょう。

慢性期では介護者が孤独感や社会からの隔絶感を覚える時期でもあります。

積極的に介護者の不安や問題点を聴取し、レスパイトできる環境整備や、社会参加を促す関わりを持ちましょう。

 

生活目標

 

脳血管疾患の利用者さんとの関わりの中では、意欲と残存機能を維持向上させることを常に念頭に置く必要があります。

「料理を作る」「孫に会いに行く」など具体的な目標を設定し、訪問・通所リハビリテーションをうまく利用するよう支援しましょう。

たとえ実用的な歩行まで到達できないとしても、歩行訓練を行うことが利用者さんやご家族の意欲や満足度が大きく変わることもあります。

 

まとめ

 

今回は、訪問看護師が脳血管疾患の利用者さんに関わる理由について解説しました。

「脳血管疾患になってしまったけど、自宅で生活したい」という利用者さんが、可能な限りその人らしい生活を送るためには、訪問看護師の関わりが重要であることが理解できたと思います。

脳卒中は日本の厚生労働省の統計では脳血管疾患として分類されています。

以前は日本の国民病といわれるほど多いものでしたが、食生活の変化や、高血圧の治療が行き届くようになったために重症例は減りました。

最近では悪性新生物(癌)、心疾患に続き、我が国の死因の第3位を占めていましたが、死亡者数は徐々に減ってきていて、2012年から肺炎の次の4位になっています。

脳血管疾患の死亡数は減ってきましたが、超高齢社会になり、総患者数はますます増加し、高齢者の認知症や寝たきりや要介護状態になる最も多い原因疾患です。

そのため、脳血管疾患を患い要介護状態となった利用者さんにとって、訪問看護師の支援は必要不可欠なものとなっています。

「可能な限り在宅」で、訪問看護師として専門性を活かし、利用者さんを支援していきましょう。

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ABOUT US
甲谷 多恵子看護師/ライター
看護師/急性期の総合病院で血液内科、レジデントの研修(内科混合)病棟等の病棟・外来勤務を経験。総合病院で15年間勤務後、訪問看護ステーションに転職。新規立ち上げからの管理者経験あり/デンマーク研修機会に恵まれたことを機に、訪問看護の可能性を再確認、多職種連携の中で専門性を発揮できるよう何事も勉強の毎日/北海道在住