年末や年度末は節目の時期でもあり「訪問看護を退職したいと考えている」という看護師さんもいるのではないでしょうか。
また、職員から退職を切り出された訪問看護の管理者の方もいるかもしれません。
看護師の中でも少数である訪問看護師には、できる限り離職せずに長く働いてもらいたいですよね。
訪問看護師の退職理由に多くあるポイントを事前に押さえておくことで、退職をする前に改善できることもあります。
今回は、訪問看護の退職理由についてまとめてみました。
退職を検討している訪問看護師の方や、訪問看護師の退職を予防したいという管理者の方に知っていただきたい内容です。
- 訪問看護でよくある退職理由
- 退職を考える前に試してほしい対策
- 退職を踏み留まるべき退職理由
目次
看護師の退職理由は何が多い?
看護職員就業状況等実態調査結果によると、看護師の退職理由は以下のような順位になっています。
2位 結婚のため
3位 他施設への興味
4位 人間関係が良くない
5位 超過勤務が多い
訪問看護ステーションに限っての調査ではありませんが、訪問看護でも聞く退職理由ではあります。
しかし、この他にも訪問看護ならではと言える退職理由もあります。
訪問看護でよく見られる退職理由① 自分の知識、技術に自信がない
退職を考えているという新人訪問看護師に理由を伺うと、「自信を無くしてしまった。」と答える方が多くいます。
入職当初は先輩看護師に同行訪問をしていても、一定期間が経過すると独り立ちを目指します。
訪問看護は、基本的に利用者さんの居宅に看護師一人で訪問します。
独り立ち後の訪問でトラブルや緊急事態があると、対応に慣れず自分自身の知識や技術のなさを実感して自信を無くしてしまうことがあります。
訪問看護の管理者や先輩看護師は、新人訪問看護師が病院や施設で看護師として働いてきた経験が長いほど「1人でも大丈夫」と思いがちです。
しかし、実際の訪問看護の現場では療養環境や利用者さん本人の個別性が高く、新人訪問看護師は病院や施設での看護と異なるように感じてしまう方も少なくありません。
そのため、今まで培った経験を活かす前に自信をなくしてしまい、「自分には訪問看護の仕事は向いていなかった」と感じ退職に繋がってしまうことがあります。
退職を考える前に試してほしい対策
管理者や先輩看護師は、看護師経験が長い方も、新卒から年数を重ねていない方も、同じように新人訪問看護師であることを前提にサポートをする必要があります。
こんなときには、管理者は新人訪問看護師の独り立ちを急がず、一人一人に合った研修期間を設けることが重要です。
また、同行した先輩看護師は、新人訪問看護師がどのようにアセスメントをしているか、訪問後に考えの過程を確認することも有効です。
一つ一つの疑問や不安をその都度解決しておくことで、次回の対応時に選択肢の一つとして持っておくことができ新人訪問看護師も安心して仕事に臨めます。
対応の結果が利用者さんにとって適切でなかった場合にも否定するのではなく、「どうしてそうなったのか」を振り返り思考の整理を行うことが大切です。
また、参考書やマニュアルなどステーション内での一定の基準を持っておくことも事業所のできることと言えます。
すると、独り立ちした後も「わからなくなったらここを確認する」という道順を知っているため落ち着いて行動することができ、また一つずつわからなかったことを解決することで自信にもつながります。
知識、技術の不足を感じる場合には、積極的に内部または外部研修に参加することもお勧めです。
現在は全国でオンライン研修が行われており気軽に参加できるため、新人訪問看護師の方は参加を検討してみてください。
訪問看護によく見られる退職理由② 訪問看護特有のリスク、緊張感による精神的負担
精神的な負担も、退職理由としてはよく聞かれる内容です。
訪問看護では、自宅で医療処置を行いますが、すぐに主治医をベッドサイドに呼んで状態を診てもらうということができません。
一人で訪問し、見落としなく観察し、間違えなく処置を実施し、満足度高くケアを行います。
これだけでもかなり緊張感があるのでないでしょうか。
根拠のある看護技術を提供することは、病院や施設でも同じです。
訪問看護に転職し、場所を自宅に変えただけで、同じことをするだけです。
それでもやはり、利用者さんやご家族に見られている感覚や一人一人異なる環境への配慮が含まれることで不安や緊張感は生じます。
これが訪問看護特有の緊張感であり、精神的な負担を感じるところであると言えます。
数年間訪問看護で現場に立ち続けているわたしも、同じように緊張します。
退職を考える前に試してほしい対策
このような精神的な負担を解消するには、いつでも現場から相談を受けられるサポート体制と、息抜きができるメリハリが重要です。
社用携帯やスマホを支給している事業所も多く、訪問先からでも管理者や先輩看護師に相談できる機器は揃っています。
機器を揃えるだけでなく、相談しやすい環境づくりも重要です。
訪問看護では繁忙期になるとどのスタッフも忙しそうに訪問に出ていくことが多いと思います。
そのため、新人訪問看護師は先輩看護師に声をかけにくいと感じてしまうことがあります。
しかし、実際は「困った時や迷った時には相談してほしい」と管理者や先輩看護師は考えています。
「これでいいのかな」と不安を抱えたまま看護を提供することは、新人訪問看護師だけでなく利用者さんへの不安にもつながります。
ぜひ利用者さんの安全を守るためにも、遠慮せずに周囲に確認するようにしましょう。
また、休日は仕事を持ち帰らず、リフレッシュできるよう連絡も最低限に留めておきましょう。
休日に仕事を持ち帰らなければならない量の仕事を抱えているのであれば、業務調整が必要です。
訪問看護は、日々在宅療養をする利用者さんや休日のオンコールを担う仲間を思うとなかなかオン・オフを切り替えるのが難しい職種ではあります。
しかし、自身が健康でなければ利用者さんへ良いサービスを届けることも難しくなってしまいます。
休みはしっかりと休みに専念することが、自身の健康だけでなく結果的に利用者さんの療養生活を支えることにもつながります。
訪問看護によく見られる退職理由③ 管理者や職員などの人間関係
直接的には言葉にしないこともありますが、人間関係が退職の原因になっていることも少なくありません。
訪問看護事業所は病院や施設と比較して、少ない人数で運営していることが多いです。
直接的に自身が攻撃の対象になっていなくても、少ない人数の中で派閥や揉め事が頻発していると居心地はよくありません。
訪問看護はさまざまな経験を経て入職する看護師が数多くいます。
そのため、考え方が異なることもよくあることです。
どうしても考え方や看護の方針が合わず、やむを得ず退職を選択することもあります。
退職を考える前に試してほしい対策
訪問看護では、ステーションを出発してしまえば一人での行動も多いです。
ステーションで共に過ごす時間は案外短いです。
そのため、その短い時間でのコミュニケーションや態度により相手に与える印象が強く残ります。
管理者や先輩看護師は、短い時間でも真剣に相手の話を聞くことや、相手を気遣うことが働きやすい職場を作ります。
忙しいと相手への気遣いができず、わたしも一緒に働く周囲の方に嫌な思いをさせてしまったこともあります。
うまくいかなかったときには、自分を振り返り素直に謝ることも必要ですね。
新人訪問看護師としては、職場の険悪な雰囲気の中で窮屈な思いをしている方もいるかもしれません。
「自分が世話ばかりかけてしまっているから、嫌われてしまったのではないか」と心配する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、管理者や先輩看護師が難しい顔をしているのは、他の利用者さんへの対応や看護の展開に悩んでいるのかもしれません。
遠慮せず普段通りコミュニケーションを図ってみてください。
事業所の雰囲気をスタッフ全員で作れるよう、お互いに声を掛け合ってみてくださいね。
踏み留まるべき退職理由とは?
退職が頭によぎると、退職以外の解決方法が内容に考えてしまうのは仕方がないことと思います。
しかし、訪問看護の退職理由の中には踏み留まるべき場合も存在します。
訪問看護での退職理由で踏みとどまった方が良い例は以下のものが挙げられます。
- 訪問看護での業務に知識や技術が不足していると感じているが勤務期間が短い場合
- 緊張感や不安が拭えず心身の負担が大きい場合
- おおむねの人間関係が良いと感じる職場である場合
このような場合には、前項でお伝えした改善策が有効な場合が多いです。
まずは管理者や先輩看護師に相談し、フォロー体制の見直しや業務の調整をしてもらいましょう。
訪問看護では、入職して1ヶ月から3ヶ月程度経過すると、いろいろな不安や心配が襲ってくる方が多くいます。
わたし自身も、訪問看護の仕事を始めた当時は「自分は訪問看護に向いていないのではないか」と不安に思ったことを思い出します。
しかし、その不安な時期を着実に乗り越えていくと、その先には目標を達成できた喜びや利用者さんだけでなくケアマネジャーや医療機関からの厚い信頼も得られます。
訪問看護でしか得られない楽しみややりがいを感じることができると思います。
ぜひ管理者や先輩看護師の力も存分に借りて、訪問看護師の道を進んでいってくだされば幸いです。
まとめ
今回は、訪問看護師の退職理由についてまとめてみました。
退職を検討するときには、とてもエネルギーが要ります。
管理者の方は、多忙な業務に追われて実は悩んでいる職員に気付けずにいることもあると思います。
そんなときには、退職理由を元に職員の方が困っていることがないか声をかけてみてください。
また、退職しようと思っている訪問看護師の方は、どのようなことが自分にとって困難なことなのか、それは先輩看護師や管理者へ相談して改善することができないのか、今一度考えてみてください。
短い時間でも、手を止めて真剣に話を聞いてくれる先輩や管理者がいるならば、退職を踏みとどまることも選択肢に入れてみてもいいかもしれませんね。