訪問看護のオンコール手当の相場|実態調査から解説

「訪問看護のオンコール手当って、1回でいくらもらえるの?」「今の待機料金は全国的に見て高いのか安いのか」——訪問看護ステーションと病院の大きな違いの一つがオンコール(電話待機)体制です。手当の金額設定は事業所によってかなり差があり、比較のしようがないと感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、業界団体や日本看護協会の実態調査データをもとに、オンコール手当の相場・1人体制と2人体制の違い・緊急訪問時の扱い・病院夜勤との違いを整理して解説します。転職・就職先を選ぶ際の比較材料としても、経営者として手当額を検討する際の参考としても活用してください。

この記事でわかること
  • 訪問看護のオンコール(待機)手当の相場と、金額に差が生まれる背景
  • 1人体制と2人以上体制での手当の違い
  • オンコール対応の実際の頻度(1か月の担当回数・緊急訪問回数の目安)
  • 緊急訪問時の追加手当・代休の扱いと、病院の夜勤手当との違い

訪問看護のオンコール手当の相場はどのくらい?

一般社団法人全国訪問看護事業協会が実施した「訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業」(平成27年度)の追加調査では、平日(17時〜翌9時)の待機手当について、第1担当者(メインでオンコールを担当する看護職員)の金額分布が次のように示されています。

1回あたりの待機手当回答事業所の割合
1,000円未満6.6%
1,000〜2,000円未満34.2%
2,000〜3,000円未満31.0%
3,000〜4,000円未満10.1%
4,000〜5,000円未満3.8%
5,000円以上4.1%

最も多いのは「1,000〜2,000円未満」(34.2%)と「2,000〜3,000円未満」(31.0%)で、この2つの区分を合わせると全体の3分の2近くを占めます。おおむね1,000円〜3,000円の範囲に収まる事業所が多いというのが実態です。

注意

この調査は全国訪問看護事業協会の会員事業所全体を対象としたものではなく、総利用者数130人以上かつ緊急時訪問看護加算等を算定している大規模な事業所316か所を対象とした追加調査です。中小規模の事業所では、この分布と異なる傾向になる可能性があります。あくまで一つの目安として参考にしてください。

また、この待機手当はあくまで「電話がつながる状態で待機していること」に対する対価であり、待機中に緊急訪問が必要になった場合には、別途「緊急訪問手当」や実働分の時給が支給される事業所がほとんどです。同調査でも、緊急訪問した場合の報酬について「あり」と回答した事業所は96.2%に達しています。

看護師 上妻
看護師 上妻

待機料金だけを見て「安い」と感じても、緊急訪問時の手当や代休の扱いまで含めて比較しないと、実際の負担と対価が見合っているかは判断できません。面接や条件確認の際は、待機料金だけでなく緊急訪問1回あたりの手当額もセットで確認するのがおすすめです。

オンコール対応は1人体制と2人以上体制のどちらが多い?

公益社団法人日本看護協会が2022年に実施した「訪問看護実態調査」(全国の訪問看護事業所6,000か所を対象に層化無作為抽出、有効回答1,879件)によると、夜間の勤務体制は「オンコール」が90.6%と大多数を占めています。そのうち、オンコールのみで対応している事業所における一晩あたりの対応体制は次のとおりです。

  • 1人の看護職員が対応:75.3%
  • 2人以上の看護職員が対応:23.4%

1人体制が7割以上を占めており、2人以上で待機する事業所は少数派であることがわかります。2人体制をとっている事業所での第2担当者(サブ)の待機手当は、全国訪問看護事業協会の前述調査によると「1,000円未満」が25.0%、「1,000〜2,000円未満」が12.9%と、メイン担当者より低く設定されるか、手当自体が設定されていないケースも多く見られます(未回答が48.6%を占め、手当なしのケースが相当数含まれると推測されます)。

利用者数が多い事業所ほど緊急対応の頻度も増える一方、それに比例してスタッフの人数も多くなるため、1人あたりのオンコール当番の回数自体は少なく設定されている場合もあります。事業所の規模や体制によって、負担と手当のバランスは大きく変わってくるといえるでしょう。

1か月のオンコール対応・緊急訪問はどのくらいの頻度?

同じ日本看護協会の調査(2022年8月の1か月間の実績)では、オンコールのみで対応している事業所における実際の対応頻度も明らかになっています。

項目平均最も多い回答
1か月間でオンコールを担当した看護職員数4.0人4人以下(63.7%)
1か月間のオンコール対応延べ回数19.6回5〜9回(17.9%)
1か月間の緊急訪問延べ回数10.0回4回以下(32.8%)

オンコール対応の延べ回数(電話を受けた回数)に比べて、実際に緊急訪問に出動する回数はおおむね半分程度にとどまっています。電話での相談・助言のみで解決するケースも多く、必ずしも「オンコール当番=毎回訪問」というわけではないことが読み取れます。ただし、事業所の看護職員数が少ないほど1人あたりの負担は大きくなる傾向があり、看護職員5人未満の事業所では緊急訪問の延べ回数が20人以上の事業所より少ない一方、当番の巡ってくる頻度自体は高くなりやすい点には注意が必要です。

POINT

同調査では、夜間・休日対応の課題として「看護職員の精神的・身体的負担が大きい」(83.5%)、「対応できる看護職員が限られ負担が偏る」(69.6%)が上位に挙げられています。オンコール体制は手当の金額だけでなく、当番の頻度や負担の分散状況もあわせて確認することが大切です。

1か月のオンコール手当はどの程度になる?

実際に1か月でどの程度の手当になるのか、モデルケースで考えてみましょう。仮に平日の待機手当を2,000円、休日を4,000円と設定している事業所で、1人あたり平日6回・休日2回の計8回のオンコール待機を担当した場合、待機手当だけで「2,000円×6回+4,000円×2回=20,000円」となります。これに、緊急訪問が発生した分の追加手当が加算されます。

先述のとおり1か月の緊急訪問延べ回数は平均10.0回ですが、これは事業所全体の回数であり、担当者1人あたりの回数は当番の割り振り方によって変わります。緊急訪問1回あたりの手当は、時給制で1時間あたり2,000〜5,000円程度に設定している事業所が多いとされていますが、金額は事業所ごとの規定によるため、就職・転職の際は必ず個別に確認しましょう。

緊急時訪問看護加算とオンコール手当の関係

訪問看護ステーションが24時間対応体制を整えることは、介護保険・医療保険の加算にも直結しています。令和6年度介護報酬改定では、緊急時訪問看護加算(介護保険)に新たな区分が設けられました。

区分訪問看護ステーションの場合要件のポイント
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)(新設)600単位/月常時対応できる体制に加え、緊急時訪問における看護業務の負担軽減に資する業務管理等の体制整備
緊急時訪問看護加算(Ⅱ)574単位/月利用者・家族等から常時対応できる体制(従来の要件)

この見直しは、夜間対応する看護職員の勤務環境に配慮した体制を評価するという考え方で新設されたものです。事業所がオンコール手当を含めた待機体制にどれだけ投資できるかは、こうした加算による収益とも関係しています。手当の水準を検討する立場の方は、加算の算定状況もあわせて確認するとよいでしょう。

病院での夜勤手当との違いは?

訪問看護のオンコール手当と、病院での夜勤手当を比較してみましょう。二交代制の夜勤手当は、施設や地域によって差があるものの、1回あたり1万円前後に設定されている病院が多いとされています。

一方、訪問看護のオンコールでは、利用者さんの状態にもよりますが、緊急訪問が発生しない夜のほうが多いのが実情です。多くの事業所がオンコール当番を自宅待機としているため、待機時間の大部分を普段どおり自宅で過ごせるという特徴があります。

看護師 上妻
看護師 上妻

金額だけを見ると病院の夜勤手当のほうが高く見えるかもしれませんが、病院の夜勤は実働が前提であるのに対し、オンコールは「待機」が基本で、実際に動くのは一部の夜だけです。ライフワークバランスを重視する働き方を考えるなら、単純な金額比較ではなく働き方全体で判断するのがおすすめです。

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オンコール手当は訪問看護師の収入を考える上での一要素です。給料全体の仕組みもあわせて確認しておきましょう。

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よくある質問

訪問看護のオンコール手当は全国一律ですか?

全国一律ではなく、事業所ごとに個別に設定されています。業界団体の調査では1,000〜3,000円の範囲に収まる事業所が多い一方、規模や運営方針によって4,000円以上に設定している事業所もあり、幅があります。

オンコール待機中に何もなければ手当はもらえますか?

はい。待機手当は「電話に対応できる状態で待機していること」自体への対価であるため、実際に緊急訪問が発生しなくても支給されるのが基本です。緊急訪問が発生した場合は、別途手当が追加で支給される事業所がほとんどです。

オンコール対応で緊急訪問した場合、代休はもらえますか?

事業所によって対応が分かれます。業界団体の調査では、夜間・休日の緊急訪問後の代休保障が「あり」の事業所が31.3%、「なし」が57.0%という結果が出ており、代休保障がない事業所のほうが多いのが実情です。転職・就職の際は事前に確認しておくとよいでしょう。

1人でオンコール待機するのが不安な場合、2人体制の事業所を選ぶべきですか?

2人以上で待機する事業所は全体の2割程度と少数派ですが、利用者数が多く緊急対応の頻度が高い事業所では、負担分散のために2人体制を取っているところもあります。不安がある場合は、面接時にオンコールの実際の頻度や、困った際の相談・支援体制(管理者への相談ルート等)が整っているかを確認するとよいでしょう。

オンコールの負担が大きいと感じたらどうすればよいですか?

業界の実態調査でも、夜間・休日対応の負担の大きさは訪問看護全体の課題として挙げられています。当番の頻度や手当の見直しを事業所に相談する、複数担当制のある事業所への転職を検討するなど、負担と対価のバランスを見直す選択肢があります。

まとめ|オンコール手当は金額だけでなく体制全体で比較しよう

訪問看護のオンコール手当は、業界団体の調査では1,000〜3,000円の範囲に収まる事業所が多いというのが実態です。ただし、この金額は待機に対する対価であり、緊急訪問時の追加手当や代休の扱いは事業所ごとに差があります。

この記事のまとめ
  • オンコール手当の相場は1,000〜3,000円程度が中心(大規模事業所を対象とした調査データ)
  • オンコール対応は1人体制が7割以上、2人以上体制は2割程度
  • 緊急訪問の延べ回数はオンコール対応回数の半分程度で、電話対応のみで済むケースも多い
  • 代休保障の有無は事業所差が大きく、病院の夜勤手当とは性質が異なる

手当の金額だけでなく、当番の頻度や緊急訪問時の対価、代休の扱いまで含めて比較することが、自分に合った働き方を見つける近道です。

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ABOUT US
上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。