認知症に対する訪問看護の事例を4つ紹介します

 

新人訪問看護師

認知症の方への訪問看護って具体的にどんな関わりをするのでしょうか。

事例を教えて下さい!

 

訪問看護の利用者さんの中には、認知症をもつ方も多くいます。

認知症の看護について悩まれている訪問看護師の方も多いのではないでしょうか。

今回は事例を通して、認知症に対する訪問看護を解説します

事例は以下の4つです。

 

・継続した体調観察が疾患の発見に繋がった事例

・現在の能力を生かした内服薬管理を行った事例

・精神面の支援により自分らしい生活を続けられた事例

・家族支援により認知症介護を前向きに継続出来ている事例

 

具体的な内容を見ていきましょう。

 

 

認知症訪問看護の具体的な事例

継続した体調観察が疾患の発見に繋がった事例

 

訪問時に体調の確認をすることは、訪問看護の基本です。

認知症の利用者さんは、自信の体調の変化に気が付きにくい、または気が付いても周囲に表出できないことがあります。

継続した体調観察が、病気の発見に繋がった事例を紹介します。

 

事例①

 

80歳代・女性・要介護1・1人暮らし

糖尿病の既往があり、血糖降下剤を食後に内服していた。

1人では食事をあまり食べないため、訪問看護介入時に、昼食摂取を促し昼食後の内服を確認していた。

介入当初は食欲が旺盛で、近所に住む家族が準備している食事をほぼ全量摂取していたが、徐々に食事量摂取量が減少していった。

活気も低下していたが利用者さんは体調変化の自覚はなく、「なんとなく食べたくない。」との発言を繰り返していた。

訪問看護師は家族と情報を共有し、受診時に主治医に相談するようにアドバイスを行った。

家族が主治医に相談し、内視鏡検査を行ったところ、上部消化管に巨大な潰瘍を認めた。

検査治療のため入院となった。

 

定期的な訪問を継続することで、小さな生活や体調の変化にも気が付くことができます。

気づきをアセスメントし、家族や利用者さんを支える他職種に伝えることで、その先の支援に繋げることができます。

 

現在の能力を生かした内服薬管理を行った事例

認知機能の低下に伴い、今まで出来ていたことが困難になる場合もあります。

訪問看護では、内服薬管理や清潔ケアの支援などを行うことが多いです。

以下は内服薬管理についての事例です。

 

事例②

 

90歳代・男性・要支援2・1人暮らし

軽度の認知機能低はあるが、ADLは自立しており、近所に住む家族の支援を受け1人暮らしを継続していた。

内服薬はクリニックからもらったシートの薬を、利用者さんが1日分に切り分けジップロック入れ、内服カレンダーにセットして管理をしていた。

家族が、内服薬の残量が合わなくなっていることに気が付き、内服薬を分ける際に間違っていることが多くあることが分かった。

主治医に相談したところ、主治医より訪問看護師に管理を依頼するように指示があった。

看護師から、内服薬の量が多いため一緒に薬のセットをさせて欲しいと依頼するも、利用者さんは自分のことは自分で出来ているから大丈夫と拒否されることが続いた。

そこで、内服薬の錠数が多いため、分かりやすくなるように一包化で処方してもらうことを提案し、理解が得られた。

一包化薬をカレンダーにセットするようになり、利用者さんからは「分かりやすくなった、セットが大変だったから簡単になって良かった。」との発言が聞かれた。

その後も利用者さん自身が内服薬の管理を継続し、飲み忘れなく服薬することが出来ていた。

 

日常生活の支援を行う際は、訪問看護師が全てを行うのではなく、利用者さんが出来ていることは継続してもらいます。

在宅での生活を継続するためにも、今ある能力を維持できるような関わりが必要です。

 

 

精神面の支援により自分らしい生活を続けられた事例

 

認知症の方の中には、記憶力が低下していることや今まで出来ていたことが出来なくなることに、ショックを受け精神的に落ち込む方もいます。

精神面への関わりが、1人暮らしの継続に繋がった事例を紹介します。

 

事例③

 

80歳代・女性・要支援2・1人暮らし

物忘れ症状はあるが、ADLは自立していた。

盲腸がんに対し入院手術を行い、手術後の創傷ケアのため、退院時から訪問看護が介入となった。

利用者さん自身は普段の生活に心配は感じていなかったが、遠方に住む家族が1人での生活を心配し、訪問看護開始と同時に訪問介護の利用や配達弁当の利用も開始となった。

利用者さんは、たくさんの支援者が自宅に入ることに抵抗を示し、「1人では何も出来ないと思われているよう。」「何でも忘れてしまうから、ダメだと家族に思われているみたい。」と繰り返し話し、落ち込む様子があった。

そこで訪問時には、利用者さんが生活の中で出来ていることを伝え、支持する関わりを心がけた。

「1週間トラブルなく生活することができている。」「看護師の訪問を覚えていてくれた。」など、些細なことでも利用者さんに日々できていることを伝えた。

そのような関わりを続けることで、看護師に笑顔を見せることが多くなった。

また、家族は利用者さんを心配する気持ちからサービス利用を望んでいることなど、家族の意向を伝え、利用者さんと家族の関係調整ができるように関わった。

現在も、サービス介入の回数などについて不満を話すこともあるが、体調面・生活面でもトラブルなく1人暮らしを継続することができている。

 

利用者さんのために支援を計画しても、理解が得られなければ自尊心を傷つけ逆効果になってしまうこともあります。

安心して生活を継続するためには、精神面が安定することを目標に、ケアを提供することも大切だと学んだ事例でした。

 

家族支援により認知症介護を前向きに継続出来ている事例

 

高齢者夫婦のみで生活し、高齢の配偶者が認知症を持つ利用者さんの主介護者となっていることも多くあります。

認知症をもつ利用者さんの家族は、身体的・精神的負担を抱えていることもあるため、家族の支援も欠かせません。

利用者さんの療養と家族支援を兼ねて、サービス調整を行った事例を紹介します。

 

事例④

 

80歳代・男性・要介護2・妻と2人暮らし

認知症の急激な悪化により、易怒的になり興奮時の自傷行動が出現していた。

時には、自傷行動を制止しようとする妻が怪我をしそうになることもあった。

高齢夫婦のみで生活をしているため、生活状況の把握・体調確認のために訪問看護が依頼となった。

介入当初は、看護師に対して拒否を示していたが、訪問を継続するうちに看護師に慣れ、調子のよい時には一緒に散歩に出ることが可能になった。

しかし、易怒性は変わらず内服薬の調整などを行ったが、あまり効果は見られなかった。

妻の身体的・精神的な負担も大きくなっていたため、利用者さんの内服調整と家族のレスパイトのための入院を提案した。

主治医の病院では空床がなく入院することが困難だったため、訪問看護師が受け入れ可能な病院を探し、主治医との交渉の結果入院が決定した。

入院中に内服薬を調整し、夜間はまとまった時間睡眠を取ることが出来るようになり、日中の興奮も軽減したため退院となった。

利用者さんの入院中に、妻、ケアマネージャーと相談しデイサービスの利用を追加し、退院と同時に新たなサービス体制で生活を開始することができている。

 

訪問看護において、ご家族は利用者さんを支えるチームの一員であると同時に、看護の対象になります。

利用者さんが安全に自宅での生活を継続するためには、ご家族の体調と精神面が安定していることが大切です。

サービス提案の際には、家族支援の視点からも考えるようにしています。

 

まとめ

認知症に対する訪問看護の事例を4つ紹介しました。

同じ認知症の方であっても、症状や、生活環境、家族関係などはその人によって異なります。

抱えている問題もそれぞれ異なるため、認知症の方にはこの看護をすることが正解という答えはありません。

まずは、利用者さんの性格や生活環境、家族関係や今までの生活歴などを理解し、その上で、認知症の症状で困っていることをどのようにサポート出来るかを考えることが大切だと思います。

ビジケアの記事では、多くの訪問看護師の体験を通して、様々な事例を学ぶことも出来ます。

認知症があっても安心して暮らすことができる社会のために、訪問看護師ができることをこれからも一緒に考えていきましょう。

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ABOUT US
清水 千夏ライター
東京都在住/看護師・保健師/ 卒業後大学病院9年勤務 その後、派遣看護師としてクリニックやデイサービス、訪問入浴などを経験。 現在は訪問看護ステーションの立ち上げメンバーとして奮闘中です。