- 訪問看護でよく行う医療処置
- 医療処置が必要な利用者さんに関わる訪問看護師の役割
- 慣れない医療処置に不安があるときにどうするか
近年、自宅で医療処置を行いながら生活をする人が増えています。
年齢の幅は広く、乳幼児から高齢の方まで様々な年齢の方がいます。
背景には、生まれたときから医療を必要とする医療的ケア児の増加や、社会の高齢化が挙げられます。
また、入院期間の短縮や病床削減の流れから、医療処置を継続したまま退院する方も増えています。
このように、自宅で医療処置を継続するために訪問看護を利用する方も多くいます。
この記事では、訪問看護でよく行う医療処置について詳しく解説します。
- 訪問看護師として働いてみたい方
- 訪問看護師として働き始めた方
- 医療処置の経験が少ない、ブランクがあるなど医療処置に不安がある方
病院ではなく、自宅で医療処置を行う訪問看護ならではの特徴があります。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
訪問看護でよく行う医療処置
訪問看護でよく行う医療処置として、以下の8つを解説します。
- 浣腸・摘便
- 創傷・褥瘡の処置
- 服薬管理
- 経管栄養・胃ろう管理
- 医療機器の管理
- 吸引
- 点滴・注射
- ストマ管理
順番に解説していきます。
浣腸・摘便
排便処置は訪問看護でよく行う医療処置の1つです。
市販の浣腸を利用者さん自身が使用している場合もありますが、自分で行うことが難しい場合や、より安全に計画的に排便をするために訪問看護師が行うことがあります。
自力での排便が難しい場合は、浣腸と同時に摘便を行うこともあります。
排泄後は、陰部の洗浄や皮膚状態の観察、オムツの交換を行います。
便秘の予防のためだけでなく、利用者さんや家族の排泄に関するケアの負担を減らすことも、訪問看護師が排便処置を行う目的の1つです。
また、なるべく楽に排便ができるように、食事や水分摂取の状況なども情報収集してアドバイスをすることもあります。
創傷・褥瘡の処置
転倒などをきっかけに傷ができたり、活動量が少なく長時間同じ姿勢で過ごすことで、褥瘡が発生することがあります。
環境整備や除圧、ポジショニングなどで創傷・褥瘡形成の予防に努めます。
それでも、傷や褥瘡ができた場合には、創傷処置を行います。
適宜医師に状況を報告し、創の状況に合った処置を行うことで早期治癒を目指します。
医療機関によっては皮膚・排泄ケア認定看護師が在籍していることもあり、連携をしてケア方法のアドバイスなどをもらう場合もあります。
服薬管理
処方されている薬を正確に内服・使用できるように服薬管理を行います。
利用者さんの状態や生活状況をアセスメントし、それぞれに合った管理方法で実施します。
服薬カレンダーや服薬ケースを使用したり、薬袋に日付を書くなど内容は様々です。
看護師が良いと思った方法を一方的に行うのではなく、利用者さんや家族と相談しお互いが納得した方法で行うことが大切です。
人によっては、自分で行っていた薬の管理を訪問看護師に依頼することに、抵抗を感じる方もいます。
利用者さんの意思を尊重しながら、訪問看護師が服薬管理を行う必要性やメリットを理解してもらえるように関わりましょう。
終末期など状態によっては、麻薬を使用する場合もあります。
内服による体調の変化をアセスメントし医師と連携することも服薬管理として大切です。
経管栄養・胃ろう管理
経口で十分に栄養摂取ができず、経管栄養で栄養管理を行っている方がいます。
在宅で経管栄養を行っている方の多くは、胃ろうを造設しています。
胃ろう挿入部位の皮膚の観察や処置、経管栄養の実施だけでなく、経管栄養の実施による体調や排泄状況の観察をします。
また、利用者さんの生活に合った経管栄養の管理ができるように、具体的な提案やご家族への指導を行います。
季節や環境、体調により必要な水分量は変化するため、医師と連携して水分量や栄養剤の量や形態の調整を行うこともあります。
医療機器の管理
医療機器とは、膀胱留置カテーテルなどのカテーテルや在宅酸素、人工呼吸器などを指します。
それぞれの医療機器が適切に動作しているか、安全に使用することができているかを観察します。
また、医療機器の使用に伴い必要なケアを行います。
人工呼吸器など生命維持に直結する医療機器を扱っている場合は、医療機器メーカーや地域の保健師など、多職種と連携し災害時など緊急時に備えます。
吸引
呼吸器疾患で自己排痰が困難な場合や、人工呼吸器を使用している場合は、吸引を行い痰の除去をする必要があります。
訪問時に吸引を行うだけでなく、利用者さんやご家族が、吸引を安全に行うことができるように指導をします。
また、吸引ができる資格を持つ介護士への吸引指導も、訪問看護師の大切な役割です。
点滴・注射
終末期、脱水による体調悪化など補液が必要な場合に、医師の指示で点滴を実施することがあります。
点滴の方法は、CVポートや末梢静脈点滴、皮下点滴など様々です。
また、インスリンなどの注射を行っている方もいます。
正しく注射が実施できるように、方法の指導や見守りを行います。
注射針や血液が付着したものなど扱いに注意が必要な廃棄物の管理も指導します。
ストマ管理
人工肛門・人工膀胱を造設した場合、定期的なパウチ交換が必要です。
訪問時は、パウチ交換だけでなく、排泄状況やパウチ貼付部位の皮膚トラブルがないかも観察します。
人工肛門・人工膀胱を造設してからの期間や、パウチ交換をどのように誰が行うかなどによって訪問看護師が行うケアの内容も異なります。
排泄に関するトラブルは日常生活に大きな影響を与えます。
人工肛門や人工膀胱があることで、生活が制限されないように考えることも、医療処置を行う訪問看護師の役割の1つです。
利用者さんに合った医療処置の継続を支援しよう
訪問看護でよく行う医療処置を8つ紹介しました。
- 浣腸・摘便
- 創傷・褥瘡の処置
- 服薬管理
- 経管栄養・胃ろう管理
- 医療機器の管理
- 吸引
- 点滴・注射
- ストマ管理
利用者さんのお宅に訪問して、安全に医療処置を行うことは訪問看護の大切な役割です。
また、利用者さんやご家族が、安全に医療処置を継続できるようにそれぞれに合った方法を考え、指導することも訪問看護師の役割です。
利用者さんごとに生活環境や、支援体制は異なります。
そのため、病院で使用する物品を使って同じ方法で自宅で継続することや、教科書通りの方法で行うことが難しい場合もあります。
利用者さんやご家族の状況、使用している他のサービスの状況や経済面など様々な観点からアセスメントし、医療処置を負担なく継続することができるように支援することが求められます。
これは、訪問看護だからこそ経験できることです。
慣れない医療処置に不安を感じたら
訪問看護の対象は年齢・疾患ともに幅広いため、医療処置の内容によっては今まで経験したことのないことや初めて見る医療機器もあります。
経験が少ないことに不安を感じるのは当然のことです。
そのような時は、自分で勉強する以外にも、主治医や外来看護師に質問をしたり、訪問看護ステーションのスタッフ同士で、知識を共有し学びながら看護を実践していきます。
医療機器メーカーさんに機器説明や勉強会の開催を依頼しても良いでしょう。
また、医療処置を長く続けている利用者さんの場合、その方ならではの方法を確立して実践している方もいます。
利用者さんにも教えてもらいながら、その中で訪問看護が支援できることを見つけることも訪問看護の楽しさです。
この記事を通して、訪問看護で行う医療処置のイメージがついたでしょうか。
経験がない、少ないから訪問看護はできないと思っている方がいたら、少しでも不安を減らすことができたでしょうか。
これから訪問看護に挑戦する方の参考になったら嬉しいです。