要支援の方への訪問看護の提供内容を紹介します!

 

利用者さんの介護度は様々だけど、要支援の利用者さんにはどんな関わりができるのかな?

 

要支援の利用者さんへの訪問看護

 

訪問看護といえば、在宅で医療機器を使用しながら生活を送る方や自宅で最期を過ごしたいと希望される方に看護を提供するイメージでしょうか。

もちろんそのような看護を必要とする、介護度が高い利用者さんもいらっしゃいます。

ですが、生活はほぼ自立していて介護度が要支援の方の中にも、訪問看護を利用している方はいます。

要支援の利用者さんと要介護の利用者さんでは、訪問看護の内容に違いはあるのでしょうか。

この記事では、要支援の方への訪問看護の提供内容を説明します。

 

介護予防訪問看護とは?

介護度が要支援1、要支援2の利用者さんへの訪問看護は、介護予防訪問看護といいます。

介護予防訪問看護は、要支援1・2の認定を受けた方に対する介護予防サービスの中のひとつとして位置づけられています。

介護予防サービスは、利用者さんが要介護状態になることを防ぎ、できるだけ自宅で自立した生活を送ることができるように、心身機能や生活機能の維持向上を目的に提供されるサービスです。

そのため、介護予防訪問看護も、その目的に沿った看護を提供する必要があります。

具体的には、以下のようなサービスを提供します。

 

  • 血圧、脈拍、体温などの測定、病状のチェックなど
  • 排泄、入浴の介助、清拭、洗髪など
  • 内服管理
  • 在宅酸素、カテーテルやドレーンチューブの管理、褥瘡の処理などの医療処置
  • リハビリテーション
  • ご家族からの相談対応や、日常生活・介護方法に関するアドバイス

参考:厚生労働省 介護サービス情報公開システム

 

具体的な介護予防訪問看護の事例を紹介していきます。

 

内服薬管理

 

事例①

要支援1、1人暮らしの90歳代男性

心疾患を患っており、食事や内服薬の管理が行えず、数カ月おきに入退院を繰り返していた。

体調管理と内服の状況の把握のために、訪問看護が導入となった。

 

介入当初、利用者さんは「薬は飲んでる。自分のことは自分で出来ているから大丈夫。」と看護師の介入を嫌がる様子がありました。

そのため、訪問看護開始当初は、口頭で内服確認のみを実施していました。

その他、食事や生活の状況を伺い、利用者さんが普段買い物に行く場所で、購入できる総菜や食事の内容を提案しました。

訪問を継続していく中で、「内服薬の種類が多く管理が大変だ。」と利用者さんから発言があったので、1週間分の内服ケースを使用し、看護師訪問時に一緒に1週間分の薬を配薬をすることが習慣となりました。

内服時は、空になった内服薬の袋を捨てずにおいて置くことを約束し、本人・看護師ともに内服したかどうかを確認することが出来るようになりました。

訪問看護開始と同時に、訪問診療の介入も始まったため、医療者同士の連携を行い、内服薬の調整などもスムーズに行うことができました。

その結果、訪問看護介入後は入院することなく自宅での生活を継続することが出来ました。

 

家族の相談・日常生活上のアドバイス

事例②

要支援2、80歳代の男性。

妻と2人暮らし。

ADLはほぼ自立しているが軽度認知症がある。

妻が食事や内服管理など身の回りの支援を全て行っている。

外出を好まず、自宅で過ごす時間が長いため、ADL維持のためのリハビリテーションと、妻の介護相談のために、訪問看護導入となった。

 

訪問時は、Youtubeなどを使用しながら座って安全にできる運動を行い、自宅でもリハビリが行えるようにリハビリ方法を図示した用紙を掲示しました。

利用者さんの体調確認とともに、妻から生活状況を聴取し、日常生活のアドバイスを行いました。

妻の負担軽減のためにも、デイサービスなどのサービス利用を提案したり、介護に関する相談にものっています。

 

リハビリテーション

事例③

要支援2、90歳代の女性。

散歩中に転倒したことをきっかけに、自宅に引きこもりがちになっていた。

同居している家族より、ADL維持のために、外出を促しリハビリをすすめて欲しいと依頼があり、訪問看護導入となった。

 

訪問開始当初は、室内でできる体操を行っていましたが、会話の中で、「草木の手入れが好きだった」との発言がありました。

そこで、看護師と一緒に外の花を見に行くことを提案し、訪問時に自宅周囲の散歩が出来るようになりました。

訪問日以外も、家族と一緒に近所のスーパーに歩いて買い物に行くことを勧め、家族の協力もあり、外出の機会を増やすことが出来ました。

その後は、デイサービスの利用が開始となったため、訪問看護の利用は終了となりました。

 

要支援の利用者さんの訪問看護にかかる費用

 

訪問看護のサービス提供者によって料金が異なる

訪問看護は、訪問看護ステーションからサービスを提供する場合と、病院または診療所から出向く場合があり、どちらからサービス提供を受けるかで利用料金が異なります。

介護度が要支援であれば、要支援1・要支援2ともに料金は変わりません。

 

〈訪問看護ステーションからサービス提供する場合〉

サービス費用の設定 利用者負担(1回につき)
20分未満 302単位
30分未満 450単位
30分以上1時間未満 792単位
1時間以上、1時間30分未満 1,087単位
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問の場合(20分以上) 283単位

<病院または診療所からサービスを提供する場合〉

サービス費用の設定 利用者負担(1回につき)
20分未満 255単位
30分未満 381単位
30分以上1時間未満 552単位
1時間以上、1時間30分未満 812単位

1単位=約10~11円、1単位の単価は地域区分により異なる。

 

介護保険では介護度別に利用限度額が決められている

介護保険では、介護度によって利用できる限度額が決められています。

要支援1・2の利用限度額は以下の通りです。

 

要介護度 1か月あたりの支給限度額
要支援1 5,003単位(50,030円~55,000円程度
要支援2 10,473単位(104,730円~115,000円程度)

 

ケアマネージャーが、限度額内で利用するサービスの調整します。

訪問看護の他にも訪問介護や福祉用具などを利用されている場合、単位の調整のために訪問看護の利用は週1回30分未満など、短時間になる場合もあります。

まとめ

要支援の利用者さんへの訪問看護の内容や事例をご紹介しました。

利用者さんが要介護状態になることを防ぎ、できるだけ自立した生活を支援するためには、利用者さんの身体機能や生活上の問題点を改善することが必要です。

そして、今できていることを継続することができる、今ある能力を保つことも重要です。

利用者さんの生活の中で、訪問看護が関わる時間はほんの短い時間です。

訪問中の支援だけではなく、日頃から自立をした生活を保つための取り組みができるような提案をすることを心がけましょう。

それでも、病状や時間の経過とともに利用者さんの状態は変化していきます。

その時には、介護度の見直しやサービスの変更などをすることも、生活を支える訪問看護師の役割の1つです。

この記事が、要支援の利用者さんへ目的に合った訪問看護を提供できているか、改めて考えてみるきっかけになったら嬉しいです。

 

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ABOUT US
清水 千夏ライター
東京都在住/看護師・保健師/ 卒業後大学病院9年勤務 その後、派遣看護師としてクリニックやデイサービス、訪問入浴などを経験。 現在は訪問看護ステーションの立ち上げメンバーとして奮闘中です。