理学療法士が教える!訪問看護師が知って得するリハビリのコツ〜筋トレ編〜

訪問看護の現場ではリハビリ職だけでなく看護師も体操などのリハビリ(運動療法)を行うことも少なくないと思います。

そこで今回は訪問看護師さんが知って得するようなリハビリのコツをご紹介します!

リハビリにも負荷をかけて行う筋力トレーニングやストレッチなどの柔軟体操、お散歩など運動の種類はたくさんあります。

その中でも今回は高齢者向け筋力トレーニングのコツについてお伝えさせていただきます。

 

訪問看護で行うリハビリ

 

訪問看護で行うリハビリは病院で行うリハビリと大きく違う点があります。

それはリハビリを行う環境です。

病院であればリハビリ室があり、そこに平行棒やリハビリ用の大きなベッド、重錘バンドやボールなどのリハビリで使える器具などリハビリに特化した環境が整っている場合が多いです。

しかし、訪問看護で行うリハビリは利用者さんのご自宅や施設の場合が多く、リハビリを行うにも環境を調整したり、器具を持参したり工夫が必要です。

そこで今回は利用者さんの自宅でも工夫次第で効果がでるリハビリのコツをお伝えします!

と言いたいところですがその前に!

 

知っておいてほしいこと

 

リハビリ内容をお伝えする前に知っておいてほしいことがあります。

それは高齢者の特徴についてです。

高齢者の特徴を知っておいてもらえたほうが、どういうリハビリをすればいいのかどんなことに注意する必要があるのかを理解したうえで利用者さんにリハビリを指導していただけます。

もう知ってるよ!という方も復習のつもりでお付き合いください。

 

加齢と運動機能の変化

 

加齢による運動機能の低下は要介護や転倒のリスクと関連し、生活機能にさまざまな影響を及ぼします。

運動機能は加齢に伴い低下していきます。65歳以上の高齢期になっても進行し続け、個人差も加齢に伴って拡大していきます。

 

加齢によって低下する運動機能

・握力

・膝伸展筋力

・バランス能力

・持久力

・反応時間

・歩行能力

 

これらの運動機能が低下することにより転倒の発生、それにより生活機能の低下につながり、要介護状態になったり在宅生活が難しくなってきます。そうなってしまうと施設入所せざるを得ない状態へと波及していってしまいます。

 

在宅高齢者に対するリハビリの捉え方

 

在宅で高齢者に対して行うリハビリは病院などで行われるリハビリとは目的が違います。

病院で行われるリハビリは短い期間(退院まで長くても6ヶ月程度)で右肩上がりに機能改善していくイメージです。

それに対して、訪問看護など在宅で行うリハビリは右肩上がりではなくむしろ右肩下がり、機能改善ではなく機能低下をいかに食い止め、下り坂をいかに緩やかに下ってもらえるかというイメージです。

ネガティブな捉え方かもしれませんが、在宅では長い期間(長いと訪問◯年目と年単位の場合もあります)関わることが多いため、そのことを考えると「機能改善」よりも「機能低下をいかに遅らせられるか」が重要になってきます。

 

訪問現場でできるリハビリ(筋力トレーニング)

 

 

今回は転倒予防や歩行をはじめとする移動能力に必要な「下肢の筋力トレーニング」をご紹介させていただきます。

と言いたいところですが!

今回は筋力トレーニングの種目とは別にお伝えしたいことがあります。

筋力トレーニングを行う上で目的に合ったトレーニング種目を選択することは大切です。

ただ、どのトレーニング種目がいいというのは利用者さんの状態によって異なります。

なので「このトレーニングをしてください」と言い切ることは難しいです。

それ以上にこれから説明することを取り入れてもらうことでトレーニングの効果に大きな差が生まれます!

それは「運動強度」「運動頻度・期間」です。

みなさんは利用者さんと運動を行うときに「◯◯運動を10回やりましょう」と利用者さんに声かけしていませんか?

その「10回する」ことに根拠があればいいのですが、ただやみくもに10回するだけではせっかく運動を行なっているのに効果がでにくいんです。

適切な「運動強度」と「運動頻度・期間」を設定することでより効果的に運動を行うことができます!

 

筋力をつけるために必要な「運動強度」と「運動頻度・期間」

 

高齢者に対する運動の効果についてはこれまでにたくさんの研究がされていて、その効果は実証されています。

高齢者に対する運動効果
90歳代の超高齢者を対象とした研究においても8週間の筋力トレーニングの結果、大腿四頭筋の筋力が約2倍に増加したことが確認されています。

加齢に伴い筋力は低下してしまいますが、適切な「運動強度」と「運動頻度・期間」を設定し運動を実施してあげれば筋力低下を予防していくことが可能です。

 

運動強度

 

在宅で筋力トレーニングを行う場合、足首に装着する重錘バンドがあると安全・簡単に利用者さんに合わせて負荷量を調節できるのでおすすめです!

重錘バンドがない場合でも大丈夫です!自重だけでも運動スピードや運動回数を調節することで負荷量を調節すことができます!

いわゆるスロートレーニングです。

スロートレーニングとは
軽めの負荷で運動スピードはきわめてゆっくり行うトレーニングのこと。

このスロートレーニングでも運動負荷が重いトレーニングと同程度の効果が得られるという研究結果がでています。

具体的なスロートレーニングの方法
重り(動かす身体の部分)をそれぞれ4〜6秒かけて持ち上げて下ろす。

ポイントは運動をきわめてゆっくり行うことです。

運動を早く行なってしまうと効果が下がってしまうので注意してください。

それと運動強度を設定するのにBorg主観的運動強度スケールを参考にするとわかりやすいです。

 

 

おすすめ運動強度

Borg主観運動強度スケールで「13(ややきつい)」

 

運動中や運動後に利用者さんに疲労度を聞き取りして「ややきつい」と感じる回数やお重りを調節しながら運動を実施してあげてください。

 

運動頻度・期間

 

次に「運動頻度・期間」について説明します。

 

おすすめ運動頻度・期間

週2〜3回の頻度が効果的です

週1回でも筋力維持は期待できます。

転倒予防・骨量増加を期待するなら6ヶ月以上の継続が必要。

 

先ほども説明しましたが、訪問看護など在宅では利用者さんと関わる期間は長い場合が多いため、リハビリの目的としては機能改善」よりも「機能低下をいかに遅らせられるか」が重要になります。

そのためには利用者さんに継続して運動を行なってもらう必要があります。

自主的にトレーニングを行なってくれる利用者さんならいいですが、それが難しい場合は訪問したときになにかひとつでもトレーニングを行なってもらうだけでもいいと思います。

トレーニングは利用者さんからすると疲れるしやりたくないと感じておられる方が少なくありません。

でも運動をやらなくなってしまうと機能低下を助長してしまいます。

だからやらないよりは全然いいです。

継続してもらうためにはハードルをできるだけ低くする。軽めの運動でもいいのでまずは「運動する」という習慣を少しずつでも利用者さんに意識付けてもらうようにしましょう。

 

運動を実施する上での注意点

 

最後に利用者さんに安全に運動を行なってもらうための注意点をいくつかお伝えします。

 

注意点

・運動が不慣れな方は運動強度を低く設定する。

・空腹時や食後すぐの運動は避ける

・疲労や痛みの症状があるときは無理はしない。運動後2〜3日は状態に注意する。

 

最低限このポイントには注意して利用者さんにトレーニングを指導してあげてください。

 

まとめ

 

最後に今回お伝えしたポイントをまとめます。

 

まとめ

・加齢に伴い運動機能は低下していく

・「運動強度」と「運動頻度・期間」を設定することで運動効果が上がる

・「運動強度」の調整には重錘バンド・スロートレーニングがおすすめ

・「運動頻度・期間」は低負荷の運動でも習慣化し継続することが大切

 

訪問現場で看護師さんがリハビリをしてくれることはリハビリ職員からすると本当に心強くありがたいことです。

少しでも今回の内容がリハビリをしてくれている看護師さんのお役に立てると幸いです。

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ABOUT US
松村 佑貴理学療法士/ライター
理学療法士/総合病院で4年間勤務後、訪問看護ステーションに転職し現在勤務4年目/2年間エリアリーダーとして活動後、現在は仕事と育児の両立のため常勤スタッフとして勤務。/趣味は読書。Instagramで読んだ本の紹介してます!