「早くお迎えが来てほしい」
「私がいると家族が迷惑する」
「1人では何もできない」
訪問看護の利用者さんの多くは、病気による体調不良、加齢や障害により日常生活に支援が必要になり、上記のようなネガティブな発言をされることが多いと思います。
訪問看護の利用者さんからネガティブな発言をされると、どんな風に話を聞けばいいのか、なんて声かけすればいいのかなど対応に困ってしまった経験はありませんか?
今回は、訪問看護におけるネガティブな利用者さんへの対応ポイントを紹介します。
目次
ネガティブな利用者さんの特徴
ネガティブな利用者さんの特徴は、以下の5つが挙げられます。
- 責任感が強く、頑張り過ぎてしまう
- 他人から褒められても素直に喜べない
- ネガティブな出来事の原因ばかり考えてしまう
- 他人に迷惑をかけたくないから、1人で悩んでしまう
- 完璧主義
訪問看護の利用者さんは、病気や障害による体調不安定、生活困難のような抵抗も回避も難しいストレスに長期間晒され、不快な状況から逃れようとする行動をとらなくなりやすいと思います。
つまり、ネガティブな利用者さんは、他人に頼ることを止め、病気や生活困難に対して抵抗することも止め、現状維持でただもがいていると解釈できます。
そんなネガティブな利用者さんの対応のポイントについて、以下で詳しく紹介します!
ネガティブな利用者さんの対応のポイント
ネガティブな利用者さんは、嫌なことや気がかりなことが思い浮かぶと悩み続けてしまう=反芻思考になっている方がほとんどです。
このような反芻思考では、悪いことだけの一部分だけ思い出してしまい、課題が曖昧になるだけでなく、思考停止してしまうため、ただただつらくなります。
そのため、ネガティブな利用者さんの対応では、「ネガティブな出来事とその問題点に対して、利用者さん自身が向き合えるように会話すること」がポイントになります。
会話を行う際のポイントは、以下の3つになります。
- 近い過去の出来事から質問する
- ネガティブな出来事を詳細に語ってもらう
- 問題点の解釈を拡げる
上記のポイントについて詳しく解説します。
近い過去の出来事から質問する
ネガティブな利用者さんと会話を始める時には、「体調はどうですか?」、「生活で困ったことはありますか?」のように抽象的な質問はおススメできません。
会話を始める時には、「メモリーバイアス」に配慮した質問がおススメです!
「メモリーバイアス」とは、過去の記憶を思い出そうとすると最高だった出来事、もしくは最悪だった出来事のように両極端な記憶を思い出してしまう傾向になります。
ネガティブな利用者さんの場合は、抽象的な質問に対して最悪だった出来事ばかりが思い浮かびやすくなると思います。
例えば、ネガティブな利用者さんに「体調はどうですか?」と質問した場合。
利用者さんの頭には「朝起きると、頭が痛い日があったし、、、」「1日中ベッドに寝ていた日があったし、、、」「夜、なかなか眠れない日があったし、、、」のような最悪だった日のエピソードが思い出され、「体調は毎日悪いです。」と返答する可能性が高くなります。
抽象的な質問から会話を始めてしまうと、会話を掘り下げていくことが難しく、看護師からポジティブな声掛けをするチャンスが少なくなってしまいます。
そこで、会話の始まりは、「近い過去の出来事から質問していくこと」をおススメします。
例えば、ネガティブな利用者さんに体調について聴取したい時には、以下のような質問から会話を始めます。
上記のような近い過去の出来事を質問から徐々に抽象的な質問へ変化させていくことで、ネガティブな出来事とポジティブな出来事の両方へ目を向けやすくなるだけでなく、記憶の詳細を思い出すウォーミングアップにもなります。
ネガティブな出来事を詳細に語ってもらう
ネガティブな利用者さんとの会話のキャッチボールができるようになってきたら、次に「ネガティブな出来事を詳細に語ってもらうこと」を行います。
ネガティブな利用者さんは、嫌なことや気がかりなことが思い浮かんだ時に自分自身では詳細を思い出せない、つまり、断片的にしか考えない傾向があります。
悩みを他人に相談しようと語っているうちに悩みが勝手に分析されて、自分で答えを見つけてしまった経験はありませんか?
悩みを語っているうちに、何だか気分がスッキリしてしまい悩むことを止めてしまった経験はありませんか?
ネガティブな出来事を思い出して他人に語ることはつらいことではなく、問題点の抽出や視野の拡大だけでなく、心の浄化作用もあります。
利用者さんからネガティブな発言が聞かれた時には、頻度や経過時間、ネガティブな出来事に対する感情などについて細かく質問し、詳細に語ってもらいましょう!
問題点の解釈を拡げる
ネガティブな利用者さんの多くは、ネガティブな出来事=問題点が明らかになると、原因分析にばかり時間をかけてしまい、解決策を考える時間が少ない傾向にあります。
そのため、ネガティブな出来事を詳しく語ってもらった後には、利用者さんの感情や思考に寄り添って共感することも大事ですが、利用者さんが挑戦しやすい解決策が見つけることも大事になります。
挑戦しやすい解決策を見つけるためには、利用者さんの問題点とは違う視点で問題点を解釈することがおススメです。
例えば、歩行が遅くなり、尿意を感じてからトイレに行くまでに時間がかかってしまうため、尿失禁するようになってしまった利用者さんがいたとします。
利用者さんは、トイレに行けなくなったら家族に迷惑をかけているとネガティブになっています。
この問題点について「歩行が遅いために尿失禁」と捉えてしまうと、歩行が安定しない限り尿失禁をしてしまうというネガティブな考えになってしまいます。
「尿失禁」の解釈を拡げると以下のようになります。
- ベッドからの起き上がりが遅くなっており、トイレに行くまでの時間がかかるようになったため、尿失禁をする。
➡この場合は、日中は離床することやベッドサイドに手すりを設置する場などの環境調整により、問題解決できるかもしれません。 - 日中の水分量が少なく、食事の時にしか水分を取っていないことで、食直後で体の動きが鈍くなっている時にトイレに行くと尿失禁する。
➡この場合は、食前に1度、トイレに行くことで問題解決できるかもしれません。
ネガティブな利用者さんが語る問題点の解釈では、最も解決が難しい原因に注目していることが多いため、看護師から別の視点で問題を捉えて最も手をつけやすい解決策を提案することで利用者さんの考え方の視野も広がり、ネガティブ思考から脱却しやすくなると思います。
まとめ
今回は、訪問看護におけるネガティブな利用者さんの対応のポイントについて紹介しました。
ネガティブな利用者さんは、他人に頼ることを止め、病気や生活困難に対して抵抗することも止め、現状維持でもがいていると解釈できます。
そこで、ネガティブな利用者さんの対応では、利用者さんとの会話を通して一緒にネガティブな出来事に向き合うこと、手のつけやすい解決策を見つけることが大事になると思います。
会話を行う時のポイントは以下の3つになります。
- 近い過去の出来事から質問する
- ネガティブな出来事を詳細に語ってもらう
- 問題点の解釈を拡げる
訪問看護の利用者さんの多くは、病気による体調不良、加齢や障害により日常生活に支援が必要になり、ネガティブになっていることが多いです。
利用者さんからネガティブな発言をされた時には、今回紹介したポイントを参考に会話を進め、利用者さんと一緒に解決策を考えていくことができればと思います。
また、ビジケアでは全国の訪問看護師と繋がり、悩みの共有と問題解決をするためのチャットを行っています。
困った時には、是非相談くださいね!