このような疑問をもたれたことはないでしょうか?
病院では、酸素吸入はベッドの頭もとに配管があるので酸素機器を取り付けるだけだったり、移動は酸素ボンベを持って移動していたけど、在宅での酸素吸入はどのように行われているのでしょうか?
私も初めは、家で酸素吸入をするって四六時中酸素ボンベを持ち歩いているのかな?ボンベを頻回に交換するの大変じゃない?などといった疑問を抱いていました。
私と同じような疑問をもたれている看護師さんに、「訪問看護で出会う在宅酸素」について訪問看護のポイントも交えながら解説していきたいと思います!
現在COVID-19(コロナウイルス)が流行し、入院できない患者さんも出てきており、ご自宅で在宅酸素を利用することもありますので、是非在宅酸素についての知識を身につけておきましょう。
これから訪問看護師に挑戦しようと思っている方や、現在訪問看護師で働いている看護師さんも、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです!
目次
訪問看護で出会う在宅酸素とは?
訪問看護では、在宅酸素を利用されている利用者さんに介入することも多いと思います。
在宅酸素療法は1985年に医療保険適応となったことにより、病状は安定していて酸素吸入の必要性のためだけに入院していた患者さんが、ご自宅で酸素吸入しながら生活ができるようになりました。
現在約17万人が在宅酸素療法を実施しており、そのうちの約70%が呼吸器疾患の患者さんです。
ご自宅で酸素吸入を実施する治療法のことを、在宅酸素療法(HOT)といいます。
HOTとは、「Home Oxygen therapy」の頭文字をとった通称名です。
在宅酸素療法(HOT)には、酸素装置が必須となります。
在宅酸素の装置
在宅酸素療法(HOT)機器には以下の装置があります。装置は医療機関からのレンタルとなります。
在宅酸素の装置について説明していきます。
酸素濃縮器は、空気の大部分を占める窒素を取り除いて、酸素濃度90%以上の高い濃度の酸素を作り出します。
電源があればどこでも使うことができ、操作も簡単で酸素ボンベのように交換の必要もありません。
デメリットとして、電気代がかかります。電源を必要としますので、停電時は使用できません。装置の持ち運びはできませんので、外出時には別に酸素ボンベが必要です。
現在、在宅酸素療法を実施されている療養者の約90%が酸素濃縮装置を使用しています。
酸素ボンベは、酸素濃縮器を使用する療養者の携帯用として使用しますので、外出時や停電時に使用します。外出時は専用のキャリーカートやリュックやショルダーバッグがあります。
デメリットとしては、定期的な酸素ボンベの交換が必要となります。
液体酸素装置は、液体酸素供給装置に―183℃以下に冷やされた液体酸素が入っており、少しずつ気化することで限りなく100%に近い濃度の酸素を作り出します。
電気を必要としませんので、停電時も安定して酸素を供給できます。
デメリットとしては、外出時は携帯用の子容器に酸素を詰め替えますが、この詰め替え作業が少し煩わしく感じます。
在宅酸素の効果
在宅酸素療法(HOT)の効果は、次のようになります。
- 入院回数を減らすことができる
- 息切れを改善できる
- 心臓の負担を軽減できる
- 記憶力や注意力の改善につながる
- 体力低下を改善できる
- 活動的に生活を送ることができる
- 長生きできる
在宅酸素の適応
在宅酸素の適応は次のようになります。
①高度の慢性呼吸不全患者
・動脈血酸素分圧(PaO2)が55mmHg以下の者
・PaO2が60mmHg以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素をきたす者で、医師が在宅酸素療法を必要であると認めた者
②肺高血圧症患者
③慢性心不全患者
・医師の判断でNYHAⅢ度以上で、睡眠時のチェーンストークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI)が20以上であることが睡眠ポリグラフ上で確認されている患者
④チアノーゼ型先天性心疾患
・ファロー四徴症、大血管転位症、三尖弁閉鎖症、総動脈幹症、単心室症などのチアノーゼ型先天性心疾患患者のうち、発作的に低酸素または無酸素状態になる患者について、発作時に在宅で行われる救命的な酸素吸入療法をいう
⑤群発頭痛と診断されている患者のうち、群発期間中の患者であって、1日平均1回以上の頭痛発作を認める者
在宅酸素導入の流れ
①在宅酸素療法(HOT)の適応かの検査・問診
動脈血酸素分圧(PaO2)や酸素飽和度(SpO2)の測定、自覚症状などにより、医師が診察・評価し、在宅酸素療法(HOT)の適応か判断します。
②在宅酸素療法(HOT)の処方決定
在宅酸素療法(HOT)の必要性や効果等について療養者とご家族へ説明し、同意を得ます。
同意を得たうえで、使用する酸素装置や酸素流量、吸入時間など医師より処方されます。
③在宅酸素療法(HOT)の教育
ご自宅での酸素療法にむけて、在宅酸素の必要性や装置の操作方法・注意点などの教育を医療機関のスタッフより受けます。
④在宅酸素療法(HOT)を開始
ご自宅に酸素装置のメーカーから酸素機器の設置がされ、操作方法、注意点、お手入れ方法、緊急連絡先などの説明を受け、在宅酸素療法(HOT)が開始となります。
⑤訪問診療または外来受診
健康保険適応となるため、毎月1回は必ず受診する必要があります。
在宅酸素の利用者さんは介護保険?医療保険?
訪問看護で入る場合は、要介護認定を受けている利用者さんは介護保険優先となります。
ただし、介護保険に適応しない場合や厚生労働大臣が定める疾病(別表7)や医師の特別指示にあたる場合は医療保険になります。
在宅酸素を利用するような呼吸器疾患により日常生活や社会生活を長期にわたり制限されると、呼吸器機能障害として身体障害者手帳が交付される場合があります。
呼吸器機能障害は1級、3級、4級がありますが、在宅酸素を使用している方が全員交付されるわけではありません。身体障害者手帳を申請する場合、呼吸機能障害という項目に該当している状態かどうかを見るようになります。
在宅酸素の加算は?
在宅酸素療法(HOT)の利用者さんの場合、厚生労働大臣が定める状態(別表8)の「在宅酸素療法指導管理」にあたるため、介護保険でも医療保険でも特別管理加算が算定できます。
介護保険の場合では、特別管理加算Ⅱ(1回250単位/月)算定をできます。
医療保険の場合では、特別管理加算Ⅱ(1回2,500単位/月)を算定できます。
在宅酸素使用時の訪問看護ケアポイント
利用者さんが在宅酸素療法(HOT)導入時から訪問看護を利用して、在宅酸素療法(HOT)の必要性を十分理解し、治療を受けられるようにすることが重要です。
酸素濃縮器を設置する上では以下のような点に注意し、利用者さんとご家族の生活を支援していきましょう。
- 火気2m以内に近づけないようにする
- 20~50m延長できるチューブを用い、トイレや洗面所や浴室などの生活がスムーズに行える工夫をする
- 酸素ボンベの残量の確認を利用者さん・ご家族へ指導する
- 緊急時の連絡方法や連絡先、対応方法を確認・指導する
酸素は医師からの処方となりますので薬と同じです。
利用者さんは自己判断で酸素の流量を調節してはいけないことになっていますので、訪問看護師は利用者さんが処方流量を守って吸入できているか、外出時や睡眠時の呼吸状態も利用者さんや家族から聴取し、この時の酸素流量はどうするのかをあらかじめ担当医師に確認しておくといいと思います。
在宅酸素療法(HOT)を安全に使用しながら呼吸を楽にできる動作を利用者さんやご家族と話し合い、QOLの向上や維持について一緒に考えましょう。
急性増悪は利用者さんにとって大きな負担となるため、訪問看護師は早期発見や対応が必要となります。
訪問時に普段の様子や変わった様子がないかフィジカルアセスメントを行い、急性増悪の兆候がないか観察をしましょう。
参考までに、介護保険の要介護認定においてHOT療養者の多くは要支援または要介護1と認定されることが多いようです。
在宅酸素療法(HOT)の利用者さんが退院直後から訪問看護や介護サービスを利用でき、在宅生活を安心・安全に送れるように在宅療養開始前から介護保険の申請をし、退院調整してもらえるように医療機関への働きかけも重要だと思います。
まとめ
今回は、「訪問看護で出会う在宅酸素」について、在宅酸素療法(HOT)のことも含めて解説をしました。
在宅酸素を利用する利用者さんの中で、在宅酸素の目的を理解でき適切に実施できている人もいれば、そうでない人もおられます。
在宅酸素のコンプライアンスが低い場合は、在宅で実際適切に実施できていない場合も多くみられますので、利用者さんが在宅酸素を取り入れた生活を円滑におくれるように、訪問看護師はまず指導する立場として在宅酸素療法(HOT)について理解を深めておきましょう!