「在宅酸素の利用者さんを担当することになったけれど、機器の種類や適応の基準がよくわからない」「訪問時に何を観察すればいいのか自信が持てない」——訪問看護の現場では、在宅酸素療法(HOT)の利用者さんに関わる機会が少なくありません。
HOTは呼吸器疾患を中心に幅広い利用者さんが対象となる在宅医療のひとつです。仕組みと観察ポイントを正しく理解しておくことが、安全な在宅療養を支える第一歩になります。この記事では、在宅酸素療法の基礎知識から、訪問看護での具体的なケアポイント、算定できる加算まで整理して解説します。
- 在宅酸素療法(HOT)の仕組みと機器の種類
- HOTの適応となる疾患・状態
- 訪問看護での具体的な観察・指導ポイント
- 特別管理加算など算定に関わる基本的な考え方
目次
在宅酸素療法(HOT)とは
在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)とは、自宅で酸素吸入を行いながら生活する治療法です。1985年に医療保険の適応となり、それまで酸素吸入のためだけに入院を続けていた患者さんが、自宅で治療を継続できるようになりました。現在、在宅酸素療法を利用している方の多くは慢性閉塞性肺疾患(COPD)をはじめとする呼吸器疾患を抱えています。
在宅酸素の機器の種類
在宅酸素療法で使用する機器は、医療機関からのレンタルです。主に次の3種類があります。
| 機器 | 特徴 | デメリット |
|---|---|---|
| 酸素濃縮装置 | 空気中の窒素を除去し高濃度酸素を作る。操作が簡単でボンベ交換不要 | 電源が必要(停電時は使用不可)、持ち運び不可 |
| 酸素ボンベ | 酸素濃縮器利用者の外出時・停電時の携帯用 | 定期的な交換が必要 |
| 液化酸素装置 | 液体酸素が気化する仕組み。電気不要で停電時も安定供給 | 外出時の子容器への詰め替えがやや煩雑 |

在宅酸素療法の適応
在宅酸素療法の主な適応は次のとおりです。
- 高度の慢性呼吸不全患者(動脈血酸素分圧55mmHg以下、または60mmHg以下で睡眠時・運動負荷時に著しい低酸素をきたす場合等)
- 肺高血圧症患者
- 慢性心不全患者(NYHA Ⅲ度以上で睡眠時のチェーンストークス呼吸がみられる等の要件)
- チアノーゼ型先天性心疾患患者(発作時の救命的な酸素吸入療法)
- 群発頭痛と診断され、群発期間中に頭痛発作を繰り返す患者

在宅酸素の適応は医師が個別に判断するものです。訪問看護師としては「なぜこの流量・時間で処方されているのか」を理解したうえで関わることが、利用者さんへの説明や急変時の対応につながりますね。適応の基準を丸暗記するというより、利用者さんの病状の背景として把握しておく、という感覚で十分だと思います。
在宅酸素療法の効果
在宅酸素療法には、次のような効果が期待できるとされています。
- 入院回数の減少
- 息切れの改善
- 心臓への負担の軽減
- 体力低下の改善、活動的な生活の維持
在宅酸素導入までの流れ
- ①適応の検査・問診動脈血酸素分圧(PaO2)や酸素飽和度(SpO2)の測定、自覚症状等をもとに医師が適応を判断します。
- ②処方の決定必要性・効果について利用者さん・ご家族に説明し同意を得たうえで、使用機器・酸素流量・吸入時間が処方されます。
- ③導入前の教育医療機関のスタッフから、装置の操作方法・注意点等について説明を受けます。
- ④在宅酸素療法の開始機器メーカーによる設置後、操作方法・お手入れ方法・緊急連絡先等の説明を受けて開始となります。
- ⑤定期受診医療保険適応の継続のため、原則として毎月1回の受診が必要です。
在宅酸素療法により呼吸器機能障害として身体障害者手帳(1級・3級・4級)が交付される場合がありますが、在宅酸素を利用している方全員が対象になるわけではなく、呼吸機能障害の該当状況により判断されます。
在宅酸素の利用者さんは介護保険?医療保険?
訪問看護で在宅酸素の利用者さんに関わる場合、要介護認定を受けている方は原則として介護保険が優先されます。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七)に該当する場合や、医師の特別指示がある場合は医療保険での訪問看護となります。介護保険と医療保険のどちらで訪問看護を提供するかによって、算定できる加算の種類や単価も変わってくるため、利用者さんの疾患・状態を正確に把握しておくことが実務上も重要になります。
在宅酸素と特別管理加算
在宅酸素療法指導管理を受けている状態は、厚生労働大臣が定める状態(別表第八)に含まれており、特別管理加算の対象となります。医療保険の訪問看護では、特別な管理を必要とする利用者に対して計画的な管理を行った場合、月1回に限り2,500円を加算できます(重症度等の高い状態に該当する場合は5,000円)。在宅酸素療法指導管理は、このうち2,500円の区分に該当します。
介護保険の訪問看護における特別管理加算の単位数については、今回の調査範囲では一次情報での確定確認ができませんでした。介護保険側の具体的な単位数は、最新の告示・通知やご利用の保険者・国保連合会の案内でご確認ください。
在宅酸素使用時の訪問看護ケアポイント
在宅酸素療法(HOT)導入時から訪問看護が関わることで、利用者さんが治療の必要性を理解し、安全に継続できるよう支援することが重要です。
- 酸素濃縮器は火気から2m以上離す
- 20〜50mの延長チューブでトイレ・洗面所・浴室への移動を支援する
- 酸素ボンベの残量確認を利用者さん・ご家族へ指導する
- 緊急時の連絡方法・連絡先・対応方法を確認・指導する
- 処方された流量を守れているか、自己判断で調整していないかを確認する

酸素は医師からの処方であり、薬と同じ扱いです。利用者さんが自己判断で流量を変更することのないよう、外出時・睡眠時の呼吸状態も含めて聴取し、状況に応じた流量をあらかじめ担当医師に確認しておくとよいでしょう。急性増悪は利用者さんにとって大きな負担となるため、訪問時のフィジカルアセスメントを通じて早期発見に努めることも大切です。
訪問時には、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)の測定に加え、呼吸数・呼吸様式・チアノーゼの有無・浮腫の有無なども合わせて観察します。特に労作時の息切れの程度は、日常生活動作(ADL)の維持に直結するため、安静時だけでなく歩行時・入浴時などの負荷がかかる場面での状態も確認しておくと、医師への情報提供や生活指導に役立ちます。
酸素濃縮器を使用しているご家庭では、喫煙や仏壇のろうそく・線香など火気の取り扱いについても、利用者さん本人だけでなくご家族・訪問者を含めた家庭全体での理解が欠かせません。訪問のたびに設置環境を確認する習慣をつけましょう。

在宅酸素を続けられている方の中には、指導どおりに実施できている方もいれば、そうでない方もいます。生活の中でどこに負担を感じているかを丁寧に聞き取りながら、無理なく続けられる方法を一緒に考える姿勢が大切ですね。
在宅酸素療法指導管理は「厚生労働大臣が定める状態(別表第八)」に該当します。医療保険・介護保険の区分の考え方もあわせて確認しておきましょう。
別表7・別表8の解説記事を読むよくある質問
在宅酸素の利用者さんは介護保険と医療保険のどちらになりますか?
要介護認定を受けている方は原則として介護保険が優先されます。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七)に該当する場合や、医師の特別指示がある場合は医療保険での訪問看護となります。
在宅酸素療法指導管理は特別管理加算の対象になりますか?
対象になります。在宅酸素療法指導管理を受けている状態は、厚生労働大臣が定める状態(別表第八)に含まれており、医療保険の訪問看護では月1回2,500円の特別管理加算を算定できます。介護保険側の単位数は、最新の告示・通知でご確認ください。
酸素濃縮器と液化酸素装置はどう使い分けますか?
酸素濃縮器は電源があれば使え操作も簡単なため広く使われていますが、停電時や外出時には別途酸素ボンベが必要です。液化酸素装置は電気を必要とせず停電時も安定して供給できる一方、外出時の詰め替え作業がやや煩雑という特徴があります。利用者さんの生活スタイルや停電時のリスクを踏まえて選択されます。
訪問看護師は酸素の流量を調整してよいですか?
酸素は医師からの処方であり、薬と同様に扱われます。利用者さんが自己判断で流量を変更することがないよう指導し、外出時や睡眠時の状態に応じた流量については、あらかじめ担当医師に確認しておくことが望ましいとされています。
在宅酸素療法を利用していると身体障害者手帳が交付されますか?
在宅酸素を利用している方全員が交付対象になるわけではありません。呼吸器機能障害として身体障害者手帳(1級・3級・4級)が交付される場合がありますが、実際に交付されるかどうかは呼吸機能障害の該当状況によって判断されます。
- 厚生労働省 法令等データベース「特掲診療料の施設基準等」別表第八(在宅酸素療法指導管理を含む厚生労働大臣が定める状態等)
- 厚生労働省 法令等データベース「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(特別管理加算の額を規定)
告示・単価は改定により変更される可能性があります。実際の算定にあたっては、最新の告示・通知をご確認ください。
在宅酸素の利用者さんと介護保険サービスの利用
在宅酸素療法を利用している方は、要支援や要介護1と認定されるケースが比較的多いとされています。退院直後から訪問看護や介護サービスをスムーズに利用できるよう、在宅療養の開始前から介護保険の申請を進め、退院調整の段階で医療機関と連携しておくことが望ましいといえます。訪問看護師としても、利用者さんの在宅生活が安心・安全なものになるよう、医療機関側への働きかけを意識しておきたいポイントです。
まとめ|在宅酸素療法の仕組みを理解し、安全な在宅療養を支えよう
在宅酸素療法は、機器の特徴や適応疾患を理解したうえで関わることで、利用者さんの安全な在宅生活を支える力になります。制度面・医学面の両方から在宅酸素療法を捉えられるようになると、利用者さんやご家族への説明にも自信が持てるようになるはずです。
- 在宅酸素療法(HOT)には酸素濃縮装置・酸素ボンベ・液化酸素装置の3種類の機器がある
- 適応は慢性呼吸不全・肺高血圧症・慢性心不全等、厚生労働省が定める要件に基づく
- 在宅酸素療法指導管理は特別管理加算(医療保険では月2,500円)の対象
- 火気管理・流量の遵守・急性増悪の早期発見が訪問看護の重要な観察ポイント
利用者さんが在宅酸素を取り入れた生活を無理なく続けられるよう、訪問看護師として理解を深めておきましょう。
























