「利用者さんの求めで夜間に緊急訪問したのに、加算を算定できるのか分からない」「深夜訪問看護加算と夜間・早朝訪問看護加算、どちらを算定すればいいのか迷う」——医療保険の訪問看護に携わっていると、こうした場面に必ず出会います。
特に令和8年度の診療報酬改定では、同一建物居住者の人数や月の算定日数に応じた料金区分が新たに設けられ、以前より算定ルールが複雑になりました。この記事では、医療保険における夜間・早朝訪問看護加算と深夜訪問看護加算について、料金体系・算定要件・算定できないケースまで整理して解説します。
- 夜間・早朝訪問看護加算、深夜訪問看護加算の対象時間帯と料金体系
- 令和8年度改定で変わった、同一建物居住者数・算定日数に応じた新しい単価
- 加算を算定するための要件と、算定できないケース
- 現場で判断に迷いやすい実務上の注意点
目次
夜間・早朝加算、深夜加算とは?【医療保険】
夜間・早朝訪問看護加算と深夜訪問看護加算は、利用者又はその家族等の求めに応じて、通常の訪問時間帯以外に訪問看護を行った場合に算定できる加算です。対象となる時間帯は、厚生労働省告示で次のように定義されています。
| 区分 | 時間帯 |
|---|---|
| 夜間 | 午後6時〜午後10時 |
| 早朝 | 午前6時〜午前8時 |
| 深夜 | 午後10時〜午前6時 |
夜間と早朝はまとめて「夜間・早朝訪問看護加算」として同じ単価が適用され、深夜は別に「深夜訪問看護加算」として、より高い単価が設定されています。

「夜間・早朝」と「深夜」は時間帯で自動的に区分が決まります。訪問した時刻がどちらに当たるかを、訪問看護記録にしっかり残しておくことが算定の基本ですね。
夜間・早朝加算、深夜加算の料金【令和8年度改定対応】
令和8年度診療報酬改定により、同一建物居住者の人数や、月あたりの算定日数に応じて単価が細分化されました。同一建物内で当該加算(または包括型訪問看護療養費)を算定する利用者の合計人数によって、次のように単価が変わります。

夜間・早朝訪問看護加算の単価
| 同一建物内の合計人数 | 算定日数 | 単価 |
|---|---|---|
| 1人または2人 | ― | 2,100円 |
| 3人以上9人以下 | 月15日目まで | 2,100円 |
| 3人以上9人以下 | 月16日目以降 | 1,900円 |
| 10人以上19人以下 | 月15日目まで | 1,800円 |
| 10人以上19人以下 | 月16日目以降 | 1,300円 |
| 20人以上49人以下 | 月15日目まで | 1,200円 |
| 20人以上49人以下 | 月16日目以降 | 950円 |
| 50人以上 | 月15日目まで | 1,000円 |
| 50人以上 | 月16日目以降 | 800円 |
深夜訪問看護加算の単価
| 同一建物内の合計人数 | 算定日数 | 単価 |
|---|---|---|
| 1人または2人 | ― | 4,200円 |
| 3人以上9人以下 | 月15日目まで | 4,200円 |
| 3人以上9人以下 | 月16日目以降 | 4,000円 |
| 10人以上19人以下 | 月15日目まで | 3,900円 |
| 10人以上19人以下 | 月16日目以降 | 2,300円 |
| 20人以上49人以下 | 月15日目まで | 2,100円 |
| 20人以上49人以下 | 月16日目以降 | 1,500円 |
| 50人以上 | 月15日目まで | 1,800円 |
| 50人以上 | 月16日目以降 | 1,300円 |
この「同一建物内◯人」という区分は、当該加算または包括型訪問看護療養費を同一日に算定する利用者(同一建物居住者に限る)の合計人数を指します。1件1件の訪問先の建物構造だけでなく、同じ建物に住む他の利用者への算定状況も影響するため、事務担当者との連携が欠かせません。
夜間・早朝加算、深夜加算の算定要件
これらの加算を算定するための基本要件は、次のとおりです。
- 利用者又はその家族等からの求めに応じて訪問すること(事業所側の都合による訪問は対象外)
- 訪問看護基本療養費を算定できる訪問であること(基本療養費を算定できない訪問では加算のみの算定はできない)
- 実際に訪問した時刻が、夜間・早朝または深夜の時間帯に該当すること
なお、緊急時訪問看護加算(24時間対応体制加算に基づく緊急訪問)とは名称が似ていますが別の加算であり、夜間・早朝加算・深夜加算と緊急時訪問看護加算は併用して算定することが可能です。両者を混同しないよう注意しましょう。

夜間・早朝加算、深夜加算が算定できないケース
次のいずれかに該当する場合は、原則として所定額(夜間・早朝加算・深夜加算を含む)を算定できません。
- 病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院等、医師または看護師・准看護師が配置されている施設に現に入院・入所している場合
- 特定施設入居者生活介護または認知症対応型共同生活介護の提供を受けている場合
- 他の訪問看護ステーションから現に指定訪問看護を受けている場合(厚生労働大臣が定める疾病等の利用者への例外規定等を除く)
- 包括型訪問看護療養費を算定すると届け出た建物に居住している場合(当該ステーションから訪問看護を受けている場合等を除く)
令和8年度改定では、頻回の訪問看護を必要とする利用者に対し、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが24時間体制で対応する場合に算定する「包括型訪問看護療養費」が新設されました。この包括型療養費を算定する建物に居住している利用者は、夜間・早朝加算・深夜加算を別途算定できない点に注意が必要です。
実務でよくある判断に迷うケース
現場では、次のようなケースで算定の可否に迷うことが多くあります。
- 看護職員の病欠でシフトを変更した場合予定していた訪問時間を、看護職員の病欠等の事業所都合で早朝や夜間に変更した場合は、利用者・家族の求めによる訪問ではないため算定できません。
- 営業時間内が満員で営業時間外に訪問する場合事業所の受け入れ枠が埋まっているために営業時間外の早朝に訪問するケースも、事業所都合による訪問とみなされ、算定できません。
- 営業日以外の費用と加算の関係夜間・早朝加算・深夜加算と、事業所が独自に定める「営業日以外の利用料」は、性質が異なるため双方を別立てで請求できる場合があります。それぞれの根拠・上限を確認し、利用者への説明・同意を徹底しましょう。
- 1日に複数回訪問した場合夜間・早朝加算と深夜加算は、それぞれ1日1回ずつ、合計2回まで算定可能です。同一日に3回訪問しても、加算として算定できるのは夜間・早朝加算1回と深夜加算1回の合計までとなります。

「事業所都合か、利用者・家族の求めによるものか」という一点が、算定可否を分ける一番のポイントです。訪問看護記録には、誰からの依頼で、何時に訪問したのかを必ず具体的に書き残しておきましょう。
利用者の費用負担と、事業所での説明のポイント
夜間・早朝加算・深夜加算は医療保険の訪問看護療養費に含まれる加算であるため、利用者の費用負担も、通常の訪問看護と同様に医療保険の負担割合(原則1〜3割、後期高齢者や公費負担医療制度の対象者はそれぞれの負担割合)に応じたものとなります。加算額そのものを利用者が全額自己負担するわけではありませんが、保険給付の対象となる分の負担は生じるため、事前の説明が欠かせません。
特に、深夜訪問看護加算は夜間・早朝加算よりも単価が高く設定されているため、緊急対応が重なりやすい利用者・家族には「深夜の訪問は費用負担も大きくなる場合がある」ことを、契約時や重要事項説明の際にあらかじめ伝えておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。あわせて、事業所が独自に設定している営業日以外の利用料等がある場合は、保険適用となる加算部分と、保険外の自費部分を明確に分けて説明することが求められます。
同一建物内の利用者数によって単価が変動する仕組み上、同じ建物に住む利用者同士でも、算定タイミングによって単価が異なることがあります。利用者・家族から金額について問い合わせを受けた際に説明できるよう、請求根拠を事業所内で共有しておくことが望ましいです。
事業所として整えておきたい体制
夜間・早朝・深夜の訪問看護を安全かつ適正に提供するには、加算の算定要件を理解するだけでなく、事業所側の体制づくりも重要です。
- オンコール対応者が、利用者・家族からの求めであることを電話記録に明確に残す運用にする
- 訪問看護記録に訪問時刻・依頼者・依頼内容を具体的に記載し、算定根拠を残す
- 同一建物居住者への訪問がある場合、当日の算定人数を事務担当者と共有し、単価区分の取り違えを防ぐ
- 緊急時訪問看護加算・24時間対応体制加算との算定関係を、スタッフ間で定期的に確認する機会を設ける
特に人員体制が限られる小規模なステーションでは、オンコール当番者が算定要件を正確に理解していないと、算定漏れや誤請求につながりやすくなります。夜間・早朝加算・深夜加算は算定頻度が読みにくい加算であるだけに、記録の残し方をあらかじめ標準化しておくことが、適正な請求と労務管理の両面で役立ちます。
よくある質問
夜間・早朝加算と深夜加算は同じ日に両方算定できますか?
時間帯が異なる訪問をそれぞれ行った場合は、同一日に夜間・早朝加算1回、深夜加算1回の合計2回まで算定できます。ただし、それぞれ訪問看護基本療養費を算定できる訪問であることが前提です。
緊急時訪問看護加算と夜間・早朝加算は併用できますか?
名称は似ていますが別の加算であり、要件を満たせば併用して算定することが可能です。24時間対応体制加算に基づく緊急訪問の場合の加算と、時間帯に基づく夜間・早朝加算・深夜加算は、それぞれ独立して判断します。
事業所都合で訪問時間を早朝に変更した場合、加算は算定できますか?
算定できません。夜間・早朝加算・深夜加算は「利用者又はその家族等の求めに応じて」訪問した場合に限られるため、看護職員の病欠等による事業所都合のシフト変更では対象になりません。
同一建物内の人数によって単価が変わるのはなぜですか?
令和8年度診療報酬改定により、同一建物に居住する利用者のうち、同一日に当該加算または包括型訪問看護療養費を算定する利用者の合計人数に応じて、単価が細分化される仕組みが導入されたためです。人数が多いほど、また月内の算定日数が多いほど、1回あたりの単価は低くなる区分が設けられています。
入院中の利用者にも夜間・早朝加算・深夜加算は算定できますか?
病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院等、医師または看護師・准看護師が配置されている施設に現に入院・入所している場合は、原則として所定額を算定できません。
記事中の単価・算定要件は上記告示に基づくものです。改定内容は今後も見直される可能性があるため、実際の請求にあたっては必ず最新の告示・通知をご確認ください。
まとめ|時間帯と算定要件を正しく理解して請求しよう
夜間・早朝訪問看護加算・深夜訪問看護加算は、時間帯の定義自体はシンプルですが、令和8年度改定で同一建物居住者数・算定日数に応じた単価区分が加わり、事務的な確認事項が増えました。「利用者・家族の求めによる訪問か」という算定の大原則を押さえたうえで、料金体系の変更点も正しく理解しておきましょう。
- 夜間・早朝(午後6時〜10時/午前6時〜8時)と深夜(午後10時〜午前6時)で加算が区分される
- 令和8年度改定で、同一建物居住者数・月の算定日数に応じた単価区分が導入された
- 算定できるのは利用者・家族の求めによる訪問のみで、事業所都合の訪問は対象外
- 入院・入所中や他ステーションから訪問看護を受けている場合など、算定できないケースもある
算定ルールの正確な理解は、適正な請求と利用者さんへの説明責任の両方につながります。
























