訪問看護で特別管理加算の要件を確認していると、「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」という言葉が出てきます。名前は聞いたことがあっても、誰が算定するものなのか、訪問看護とどうつながるのかまで説明できる方は意外と少ないかもしれません。
在宅患者訪問点滴注射管理指導料は、点滴注射を指示する医療機関(主治医)側が算定する診療報酬です。一方で、その算定状況は訪問看護ステーションの特別管理加算にも関わります。この記事では、令和8年度診療報酬改定後の告示・通知をもとに、点数と算定要件、算定できないケース、指示書のポイント、訪問看護ステーション側で押さえておきたい実務を整理します。
- 在宅患者訪問点滴注射管理指導料の点数と、誰が算定するのか
- 「週3日以上」「指示日から7日間」「3日目に算定」など算定要件のポイント
- 令和8年度改定後の通知で整理された、算定できないケース
- 在宅患者訪問点滴注射指示書の様式と有効期間
- 訪問看護ステーションの特別管理加算(医療保険・介護保険)との関係
目次
在宅患者訪問点滴注射管理指導料とは?点数と算定する人
在宅患者訪問点滴注射管理指導料は、医科診療報酬点数表の「C005-2」に位置づけられている在宅医療の点数です。通院が難しい在宅療養中の患者について、主治医が週3日以上の点滴注射が必要と判断し、訪問する看護師または准看護師に指示を出して必要な管理指導を行った場合に、医療機関が算定します。
| 項目 | 内容(令和8年度診療報酬改定後) |
|---|---|
| 区分番号 | C005-2(医科点数表 第2章第2部 在宅医療) |
| 点数 | 100点(1週につき) |
| 算定する人 | 点滴注射を指示した保険医療機関(訪問看護ステーションではない) |
| 対象患者 | 在宅で療養している通院困難な患者で、主治医が週3日以上の点滴注射を行う必要を認めたもの |
| 点滴を行う人 | 同じ医療機関の看護師等、または指定訪問看護事業者(訪問看護ステーション等)の看護師等 |
| 算定回数 | 患者1人につき週1回に限る |
ポイントは、点数を算定するのが点滴を実施する訪問看護ステーションではなく、指示を出す医療機関だという点です。訪問看護ステーションは、この指導料そのものを請求することはありません。ただし、後述するように特別管理加算の対象かどうかを判断するうえで、医療機関側でこの指導料が算定されているかが関係してきます。

ステーション側で「点滴の加算」と呼んでいるものは、実際には特別管理加算のことが多いです。医療機関の指導料と、ステーションの加算は別物として整理しておくと、主治医や事務の方とも話がかみ合いやすくなりますよ。
在宅患者訪問点滴注射管理指導料の算定要件
算定要件の詳細は、厚生労働省の留意事項通知(医科点数表に関する事項)に示されています。主なポイントを整理すると次のとおりです。
- 週3日以上の点滴注射が必要と、在宅療養を担う保険医が診療に基づいて判断していること
- 自院の看護師等に指示する場合は、その内容を診療録に記載すること。訪問看護ステーション等に指示する場合は、在宅患者訪問点滴注射指示書に有効期間(7日以内)と指示内容を記載して指示すること
- 使用する薬剤、回路等、必要十分な保険医療材料・衛生材料を医療機関が供与すること
- 1週間(指示を行った日から7日間)のうち3日以上、看護師等が患家を訪問して点滴注射を実施した場合に、3日目に算定すること
- 算定要件となる点滴注射は看護師等が実施したものに限られ、医師が行った点滴注射は含まれないこと
あわせて、医師は点滴の必要性や注意点を看護師等に十分説明すること、看護師等は病状の把握に努め、点滴の終了日や必要を認めた場合に主治医へ速やかに連絡すること(電話等でも可)、主治医は容態の変化について連絡を受けたら速やかに対応すること、と定められています。
費用の扱い
| 費用 | 扱い |
|---|---|
| 回路等の費用 | 指導料に含まれており、別に算定できない |
| 薬剤料 | 別に算定できる |
| 週3日以上実施できなかった場合 | 指導料は算定できないが、使用した分の薬剤料は算定できる |
薬剤や材料の渡し方は医療機関によって運用が異なります。点滴が始まる前に「何を・誰が・いつ届けるか」を医療機関と確認しておくと、当日に材料が足りないといったトラブルを防げます。

在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定できないケース
次のような場合は、在宅患者訪問点滴注射管理指導料は算定できません。特に指導管理料との重複は、令和8年度改定後の通知で対象が整理されているため、旧来の資料で覚えている方は確認しておきましょう。
| ケース | 理由・ポイント |
|---|---|
| 点滴注射の指示が週2日以下 | 「週3日以上の点滴注射を行う必要」が要件のため対象外 |
| 指示日から7日間で実施が3日未満 | 入院などで結果的に3日に届かなかった場合も指導料は算定不可(使用分の薬剤料は算定可) |
| 医師が自ら点滴を実施した日 | 算定要件のカウントは看護師等が実施した点滴のみ |
| C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料を算定 | 同指導管理料を算定した場合は算定できない |
| C108 在宅麻薬等注射指導管理料を算定 | 同上 |
| C108-2 在宅腫瘍化学療法注射指導管理料を算定 | 同上 |
| C108-3 在宅強心剤持続投与指導管理料を算定 | 同上 |
| 看護師等遠隔診療注射実施料を算定 | 第2章第6部「通則10」に規定する実施料を算定した場合は算定できない |
旧来の解説では、重複不可の対象を「在宅中心静脈栄養法指導管理料」と「在宅悪性腫瘍等患者指導管理料」の2つとして紹介しているものがあります。令和8年度改定後の留意事項通知では、上の表のとおり在宅麻薬等注射・在宅腫瘍化学療法注射・在宅強心剤持続投与の各指導管理料と、看護師等遠隔診療注射実施料が列挙されています。最新の通知で確認してください。
在宅中心静脈栄養(TPN)の利用者は、在宅中心静脈栄養法指導管理料の対象として管理されるため、この指導料の対象にはなりません。訪問看護で輸液の管理を行う場合は、通常の訪問看護指示書に輸液の内容や管理方法を具体的に記載してもらう形で運用されるのが一般的です。
在宅患者訪問点滴注射指示書のポイント
医療機関が訪問看護ステーション等に点滴を指示する場合は、在宅患者訪問点滴注射指示書を交付します。留意事項通知では、次の別紙様式を参考に作成するとされています。
| 様式 | 名称 | 主な使い分け |
|---|---|---|
| 別紙様式16 | 訪問看護指示書・在宅患者訪問点滴注射指示書 | 通常の訪問看護と合わせて点滴を指示する場合 |
| 別紙様式17の2 | 精神科特別訪問看護指示書・在宅患者訪問点滴注射指示書 | 精神科訪問看護の特別指示と合わせる場合 |
| 別紙様式18 | 特別訪問看護指示書・在宅患者訪問点滴注射指示書 | 急性増悪時などの特別訪問看護指示と合わせる場合 |
いずれも訪問看護指示書と点滴注射指示書が1枚にまとまった様式で、点滴注射指示書部分の有効期間は7日以内です。点滴を継続する場合は、週ごとに指示を受け直す必要があります。指示書を受け取ったら、ステーション側では次の点を確認しておきましょう。
- 有効期間(開始日・終了日)が記載され、7日以内になっているか
- 薬剤名・投与量・投与方法・投与時間などの指示内容が具体的か
- 週何日・どの曜日に実施するのかがわかるか
- 緊急時の連絡先と、中止・変更の判断基準が共有されているか
- 薬剤・回路・衛生材料を誰がいつ届けるかが決まっているか
なお、点滴注射が週3日未満の場合は在宅患者訪問点滴注射管理指導料の対象になりませんが、主治医の指示のもとで訪問看護として点滴を行うこと自体ができなくなるわけではありません。その場合は通常の訪問看護指示書に点滴の内容を明確に記載してもらい、実施内容を記録に残すことが大切です。

点滴指示は「7日で切れる」ことを忘れがちです。継続予定の利用者は、切れる日をカレンダーで管理して、事前に主治医へ次の指示書をお願いしておくと、空白の日を作らずに済みます。

訪問看護ステーションとの関係|特別管理加算の対象になる
訪問看護ステーションにとって、在宅患者訪問点滴注射管理指導料が重要になるのは、特別管理加算の対象かどうかに直結するからです。ただし、医療保険と介護保険で書きぶりが異なるため注意が必要です。
| 保険 | 特別管理加算の対象となる状態 | 根拠 |
|---|---|---|
| 医療保険(訪問看護管理療養費の特別管理加算) | 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者 | 特掲診療料の施設基準等 別表第八(訪問看護療養費の留意事項通知で引用) |
| 介護保険(訪問看護費の特別管理加算) | 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態(特別管理加算(Ⅱ)の区分) | 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第六号ホ |
医療保険では「医療機関が指導料を算定していること」が前提の書き方になっています。そのため、医療機関側で指導料の要件を満たしているか(週3日以上の指示か、指示書の有効期間は適切か)を、ステーションとしても確認しておくことが大切です。
医療保険で特別管理加算を算定するときの留意点
訪問看護療養費の留意事項通知(令和8年3月5日 保発0305第19号)では、「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している利用者」に対して特別管理加算を算定する場合について、次の対応を求めています。
- 点滴終了日などに主治医へ連絡する指示書による点滴注射が終了した日、その他必要が認められる場合には、主治医へ速やかに連絡します。
- 訪問看護記録書に指示書を添付する在宅患者訪問点滴注射指示書を訪問看護記録書に添付します。
- 点滴注射の実施内容を記録する実施日時、薬剤、投与量、刺入部の状態、利用者の反応などを記録します。
特別管理加算の金額や他の対象状態、届出の要件は、特別管理加算とは?【医療保険】対象者・料金・要件を解説と特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)とは?【介護保険】で詳しく解説しています。
実務で迷いやすい3つのポイント
1. 「3日目に算定」はどの日を数えるのか
通知では「1週間(指示を行った日から7日間)のうち3日以上」看護師等が点滴を実施した場合に「3日目に算定する」とされています。数え始めは指示を行った日で、その7日間のうち、看護師等が点滴を実施した3日目が算定日です。また、告示では「患者1人につき週1回に限り算定する」とされています。曜日の区切りと指示期間の区切りがずれる場合の扱いに迷うときは、医療機関の請求担当者や審査支払機関に確認しておくと確実です。
2. 入院などで3日に届かなかったとき
週3日以上の指示を出していても、入院や状態の変化で結果的に3日実施できなかった場合、指導料は算定できません。ただし使用した分の薬剤料は算定できます。ステーション側では、中止になった理由と最終実施日を記録し、主治医へ速やかに連絡しておきましょう。医療保険の特別管理加算は「指導料を算定している者」が対象のため、算定の可否は医療機関側の状況とあわせて確認が必要です。
3. 指示書の「切れ目」と再交付
点滴注射指示書の有効期間は7日以内のため、点滴が長期化する利用者では、毎週のように指示書の交付が必要になります。主治医・医療機関の事務担当者と、誰がいつ次の指示書を依頼するかをあらかじめ決めておくと、指示の切れ目を防げます。

点滴が始まる利用者さんは、状態が不安定なことも多いです。「終了日に主治医へ連絡」はルールであると同時に、医師と状態を共有する大事なタイミング。電話で済ませる場合も、連絡した日時と内容は必ず記録に残しましょう。
訪問看護ステーションの確認チェックリスト
点滴の指示を受けたときに、ステーションとして確認しておきたい項目をまとめました。新しく点滴が始まる利用者のカンファレンスや、事務担当者との共有に使ってください。
- 点滴注射の指示は週3日以上か(週2日以下なら指導料・特別管理加算の対象外)
- 在宅患者訪問点滴注射指示書(別紙様式16・17の2・18)を受け取ったか
- 指示書の有効期間は7日以内で、開始日・終了日が明記されているか
- 薬剤・回路・衛生材料の供与方法が決まっているか
- 利用者が在宅中心静脈栄養法などの指導管理料の対象になっていないか
- 訪問看護記録書に指示書を添付し、実施内容を記録しているか
- 点滴終了日・中止時に主治医へ連絡し、その記録を残しているか
- 医療保険・介護保険のどちらの給付かを確認し、特別管理加算の要件を満たしているか
在宅患者訪問点滴注射管理指導料のよくある質問
在宅患者訪問点滴注射管理指導料は誰が算定しますか?
点滴注射を指示した保険医療機関が算定します。訪問看護ステーションはこの指導料を請求しませんが、医療保険の特別管理加算では「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」が対象状態の一つになっているため、算定状況の確認が必要です。
在宅患者訪問点滴注射管理指導料の点数はいくらですか?
令和8年度診療報酬改定後の医科点数表では、1週につき100点です。患者1人につき週1回に限り算定します。回路等の費用は含まれていますが、薬剤料は別に算定できます。
点滴が週2日の場合でも算定できますか?
算定できません。主治医が週3日以上の点滴注射を行う必要を認め、指示を行った日から7日間のうち3日以上、看護師等が点滴を実施した場合に3日目に算定する仕組みです。
入院などで点滴が3日に届かなかった場合はどうなりますか?
在宅患者訪問点滴注射管理指導料は算定できませんが、使用した分の薬剤料は算定できます。訪問看護ステーションは中止の理由と最終実施日を記録し、主治医へ速やかに連絡しましょう。
在宅患者訪問点滴注射指示書の有効期間は何日ですか?
7日以内です。別紙様式16、17の2、18(訪問看護指示書・特別訪問看護指示書等と一体の様式)を参考に作成され、有効期間と指示内容を記載して交付されます。点滴を継続する場合は改めて指示を受ける必要があります。

まとめ|在宅患者訪問点滴注射管理指導料は医療機関の点数、訪問看護は特別管理加算で関わる
在宅患者訪問点滴注射管理指導料は、週3日以上の点滴注射を指示した医療機関が算定する点数です。訪問看護ステーションは指導料そのものは請求しませんが、医療保険の特別管理加算の対象かどうかに直結するため、指示内容や有効期間、算定状況を医療機関と共有しておくことが欠かせません。
- 在宅患者訪問点滴注射管理指導料は医科点数表C005-2、1週につき100点で、算定するのは指示を出す医療機関
- 週3日以上の点滴が必要と主治医が判断し、指示日から7日間で看護師等が3日以上実施した場合に3日目に算定
- 回路等の費用は指導料に含まれ、薬剤料は別に算定。3日に届かなくても使用分の薬剤料は算定できる
- 在宅中心静脈栄養法・在宅麻薬等注射・在宅腫瘍化学療法注射・在宅強心剤持続投与の各指導管理料などとは重複不可
- 点滴注射指示書は別紙様式16・17の2・18を参考に作成し、有効期間は7日以内
- 訪問看護では特別管理加算の対象となり、医療保険では終了日の主治医連絡と記録書への指示書添付が求められる
点滴の指示を受けたら、指示内容・有効期間・材料の供与方法・終了時の連絡ルールを最初に確認しておくことで、算定ミスと現場の混乱を防げます。
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」医科点数表(告示)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」医科点数表(診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保発0305第19号)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94号)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
実際の算定・届出にあたっては、最新の告示・通知や管轄の地方厚生(支)局の案内をご確認ください。























