「新規利用者を受け入れたのに初回加算が算定できていなかった」「退院当日の訪問なのに単位数を間違えていた」——訪問看護の初回加算は、算定件数が多いぶん、区分や起算日の数え方を誤りやすい加算です。
この記事では、令和6年度介護報酬改定で再編された初回加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数・算定要件を、よくある誤算定のパターンとあわせて整理します。運営指導でも重点的に確認される項目のため、事業所内の書類管理の見直しにも役立ててください。
- 初回加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数と区分の違い
- 算定要件(過去2暦月の非利用・計画書の新規作成)の正確な考え方
- 医療保険⇔介護保険の切替時や区分変更時の算定可否
- 運営指導で指摘されやすいポイントと必要書類
目次
初回加算とは?
初回加算は、介護保険の訪問看護において、新規利用者を受け入れた際に発生する業務(利用者の状態把握、主治医・ケアマネジャーとの連携、サービス担当者会議への参加、訪問看護計画書の作成・説明・同意取得等)を評価する加算です。介護保険の訪問看護費にのみ設けられている加算であり、医療保険の訪問看護には同名の加算はありません。
新規利用者の受け入れ時は、通常の訪問看護に比べて確認すべき情報量が多く、業務負担も大きくなります。利用者の生活歴・既往歴・現在の療養状況の把握、主治医からの訪問看護指示書の受領、ケアマネジャーとの情報共有、サービス担当者会議への出席、訪問看護計画書の作成と利用者・家族への説明・同意取得など、初回訪問に至るまでに複数のステップを踏む必要があります。初回加算は、こうした受け入れ初期の業務量を適切に評価する趣旨で設けられている加算です。
初回加算の単位数と区分(令和6年度改定)
令和6年度介護報酬改定(令和6年6月1日施行)により、初回加算は2つの区分に再編されました。
| 区分 | 単位数 | 該当ケース |
|---|---|---|
| 初回加算(Ⅰ) | 350単位/月 | 病院・診療所・介護保険施設から退院・退所した日に、看護師が初回訪問を行った場合 |
| 初回加算(Ⅱ) | 300単位/月 | (Ⅰ)に該当しない場合(退院・退所日の翌日以降の初回訪問、退院・退所を伴わない新規利用者等) |
厚生労働省の解釈通知(老企第36号の一部改正、令和6年3月15日付)では、初回加算の取扱いについて次のように明記されています。
「本加算は、利用者が過去2月間(暦月)において、当該訪問看護事業所から訪問看護(医療保険の訪問看護を含む。)の提供を受けていない場合であって新たに訪問看護計画書を作成した場合に算定する」「病院、診療所又は介護保険施設から退院又は退所した日に看護師が訪問する場合に初回加算(Ⅰ)を算定する」「初回加算(Ⅰ)を算定する場合は、初回加算(Ⅱ)は算定しない」
改定前の初回加算(300単位/月・区分なし)は、改定後の初回加算(Ⅱ)に相当する内容です。退院・退所当日の看護師による訪問という、在宅移行支援の観点から特に評価すべき場面を新たに(Ⅰ)として切り出した形になります。両区分は同一月内での併算定はできません。

区分を分ける基準は「退院・退所当日かどうか」だけではなく「看護師が訪問したかどうか」も条件になっている点に注意してください。理学療法士等が退院当日に初回訪問した場合は、(Ⅰ)ではなく(Ⅱ)の対象になります。
初回加算の算定要件
初回加算(Ⅰ)(Ⅱ)に共通する基本要件は次の3点です。
- 過去2暦月において、当該訪問看護事業所から訪問看護(医療保険による訪問看護を含む)の提供を受けていないこと
- 新規に訪問看護計画書を作成し、利用者またはその家族に説明し同意を得ていること
- 実際に訪問看護を提供したこと
初回訪問を担当する職種の取扱い
初回加算(Ⅰ)は、退院・退所当日に看護師が初回訪問を行った場合に限られます。初回加算(Ⅱ)は原則として看護職員(保健師・看護師・准看護師)が初回訪問を行いますが、看護職員(准看護師を除く)と理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が連携して訪問看護計画書を作成している場合には、准看護師やこれらのリハビリ専門職が初回訪問を行っても算定可能とされています。
「過去2月」の暦月の数え方
算定要件にある「過去2月」は、60日間ではなく暦月(月の初日から末日まで)の2か月を指します。この数え方を誤ると返戻の対象になり得るため、必ず暦月でカウントしてください。
| 初回訪問の月 | 「過去2暦月」に該当する月 |
|---|---|
| 7月中に初回訪問 | 5月1日〜6月30日 |
| 11月中に初回訪問 | 9月1日〜10月31日 |
例えば「8月3日に訪問→9月は利用なし→10月30日に訪問」というケースでは、10月の初回加算は算定不可です(過去2暦月=8月・9月のうち、8月に利用実績があるため)。一方「8月3日に訪問→9月・10月は利用なし→11月2日に訪問」であれば、11月の初回加算は算定可能です。

退院当日の訪問看護と初回加算(Ⅰ)の関係
初回加算(Ⅰ)を算定するには、そもそも介護保険の訪問看護費として「退院・退所当日の訪問」自体が算定できる状態になっている必要があります。介護保険の訪問看護では、退院・退所当日の訪問看護費は、原則として特別な事情がある場合に限り算定が認められる取扱いとされています。

「退院日に訪問した」という事実だけでなく、そもそもその日の訪問看護費自体が算定できる状態にあるかどうかを、まず確認する癖をつけておくと安心ですよ。個別の該当要件は制度改正で見直されることがあるので、迷ったら保険者や国保連に確認するのが確実です。
この前提条件を満たしたうえで、退院・退所当日に看護師が初回訪問を行った場合に、初めて初回加算(Ⅰ)350単位/月の算定対象となります。前提条件を満たさないまま「退院当日だから(Ⅰ)」と判断してしまうと、算定誤りにつながる可能性があるため注意しましょう。
よくある誤算定のパターン
退院時共同指導加算との同月併算定は不可
退院時共同指導加算と初回加算は、同月内での併算定ができません。退院時共同指導加算は退院月またはその翌月の初回訪問月に算定するため、退院月に初回訪問を行った場合は、退院時共同指導加算を算定するか初回加算を算定するかのいずれかを選ぶ形になります。
「医療保険→介護保険切替で算定不可」は正確ではない
「医療保険から介護保険に切り替わった場合は初回加算が算定できない」という理解は、正確ではありません。判定の軸は保険種別の切替そのものではなく、「同一の訪問看護事業所が、過去2暦月以内に当該利用者へ訪問看護(医療保険分を含む)を提供しているかどうか」です。
| ケース | 算定可否 |
|---|---|
| 介護保険で訪問看護→特別訪問看護指示書で医療保険に切替→介護保険に復帰(同一事業所) | 算定不可(直前まで同一事業所が提供) |
| A事業所で医療保険訪問看護→終了後3か月空く→B事業所で介護保険訪問看護を開始 | 算定可(A事業所での実績はB事業所の判定に影響しない) |
要介護⇔要支援の区分変更は算定可、要介護内の変更は算定不可
要支援から要介護へ、または要介護から要支援への区分変更があった場合は、新たに訪問看護計画書を作成すれば、2暦月以内に同一事業所での利用があっても初回加算を算定できます。一方、要介護1から要介護3への変更など、要介護内での区分変更(2区分以上の変更)の場合は算定できません。
複数のステーション利用時はそれぞれ算定可
1人の利用者が複数の訪問看護ステーションを同時に利用する場合、特別管理加算等とは異なり、それぞれのステーションが算定要件を満たせば、各ステーションで初回加算を算定できます。

運営指導でチェックされる書類
初回加算は算定件数が多いため、運営指導でも重点的に確認される項目です。次の書類を整備しておきましょう。
- サービス提供票(実績):初回加算が正しく算定されているか
- 訪問看護記録書:初回訪問の前2暦月に同事業所からの提供がないことを追える記録
- 訪問看護計画書:初回訪問日以前に新規作成され、利用者または家族の同意(署名・押印等)が取得されている
- 訪問看護指示書:主治医による発行日と内容、特別指示の有無
- 退院時の連携記録:退院前カンファレンスの記録、医療機関との連絡記録(退院時共同指導加算との関係整理に必要)
運営指導で特に指摘されやすいのは「同意取得の証跡」と「過去2暦月の起算」の2点です。書類をセットで残し、いつでも根拠を示せる状態にしておくことが重要です。
よくある質問
一つの訪問看護事業所の利用者が、別の訪問看護事業所の利用を新たに開始した場合、その別事業所で初回加算を算定できますか?
算定可能です。ただし、その事業所でも新たに訪問看護計画書を作成し、利用者の同意を得る必要があります。
同一月に2か所の訪問看護事業所を新たに利用する場合、それぞれで初回加算を算定できますか?
特別管理加算などとは異なり、それぞれの事業所で算定要件を満たしていれば、両方の事業所で算定することができます。
介護予防訪問看護を利用していた方が、要介護認定の更新等で同じ事業所から訪問看護を受ける場合、過去2月以内に利用実績があっても初回加算は算定できますか?
要支援から要介護への区分変更(またはその逆)があった場合は、2月以内に利用実績があっても算定できます。ただし、その際は必ず訪問看護計画書を新たに作成し、利用者の同意を得る必要があります。
初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)を同じ月に両方算定できますか?
できません。初回加算(Ⅰ)を算定する場合は初回加算(Ⅱ)は算定せず、いずれか一方のみの算定となります。
単位数・算定要件は介護報酬改定のたびに見直されます。実際の算定にあたっては、最新の告示・通知をご確認ください。
まとめ|初回加算は区分と起算日の正確な理解がカギ
初回加算は算定件数が多いだけに、区分の誤り・起算日の数え間違いが起こりやすい加算です。正しい理解と書類管理を徹底することが、適正な算定と運営指導対策の両方につながります。
- 令和6年度改定で初回加算(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位の2区分に再編
- 「過去2暦月の非利用」「計画書の新規作成・同意」「実際の提供」が共通要件
- 「過去2月」は暦月でカウントし、60日間との混同に注意
- 医療保険⇔介護保険の切替や区分変更時は、判定軸を正しく理解する
運営指導で指摘されやすい加算だからこそ、根拠書類を整えて誤算定を防ぎましょう。
























