複数の訪問看護ステーションが関わる場合の指示書の注意点

病状が重く訪問頻度が多い利用者や、リハビリ専門職の在籍状況によっては、1人の利用者に対して2か所以上の訪問看護ステーションが関わることがあります。このとき「訪問看護指示書は1通あればいいのか」「指示料はどちらが算定するのか」といった疑問が出てきます。

この記事では、複数の訪問看護ステーションが関わる場合の指示書の扱い方を、指示料の算定制限・医師の一貫性・算定できる条件、そして具体的にどのようなケースで複数ステーションが関わりやすいのかに分けて解説します。

この記事でわかること
  • 複数のステーションが関わる場合、指示書はそれぞれに必要なこと
  • 訪問看護指示料が月1回しか算定できない制限と、その対応方法
  • 指示書を交付する医師は原則同一でなければならないこと
  • 複数のステーションで訪問できる条件(対象者・訪問頻度)
  • 同一日に複数のステーションが訪問する場合の算定ルール

2か所以上のステーションが関わる場合、指示書はそれぞれに必要

複数の訪問看護ステーションが同じ利用者に関わる場合、それぞれの訪問看護ステーションに対して、個別に訪問看護指示書が交付される必要があります。1か所のステーションに交付された指示書のコピーを、もう一方のステーションで使い回すことはできません。指示書はステーションごとに、原本として個別に受け取る必要があります。これは、各ステーションが訪問看護計画・報告書を作成する法的根拠として、それぞれ独立した指示書を保有している必要があるためです。

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訪問看護指示料は1人1月1回しか算定できない

訪問看護指示料(300点)は、利用者1人につき月1回しか算定できません。そのため、2か所のステーションがそれぞれ毎月指示書を受け取ろうとすると、片方の医療機関でしか指示料を算定できないという不都合が生じます。

この対応策として、指示期間を2か月に設定し、2か所のステーションへ交互に毎月指示書を交付するという運用が実務では行われています。こうすることで、双方の医療機関が交互に指示料を算定でき、かつ各ステーションは常に有効な指示書を保持できます。

看護師 上妻
看護師 上妻

指示期間をずらして交互に交付してもらう運用は、医療機関側の理解と協力が前提になります。複数ステーションが関わることが決まった時点で、早めに医療機関へ相談しておくとスムーズですよ。

指示書を交付する医師は原則同一でなければならない

訪問看護指示書は、原則として同一の医師から交付される必要があります。複数のステーションが関わる場合でも、それぞれのステーションに交付される指示書の交付医師は同一人物であるのが原則です。

ただし例外として、同一の保険医療機関の同一診療科に所属する複数の医師のいずれかが交付した指示書であれば、これに基づいて訪問看護を提供することが可能とされています。医師の異動や当番制の診療体制がある医療機関では、この例外規定を確認しておくとよいでしょう。指示書を受け取った際は、記載されている交付医師名と診療科を必ず確認する習慣をつけておくことをおすすめします。

注意

2か所のステーションが、それぞれ全く別の医療機関から指示書を受け取っている状態は、原則に反する可能性があります。主治医が誰であるかを明確にし、複数の指示書がある場合は交付元医師の整合性を必ず確認しましょう。

複数のステーションで訪問できる条件

そもそも複数のステーションが同時に訪問看護を提供できるのは、無条件ではありません。別表第7・別表第8の対象者、または特別訪問看護指示書の交付を受けて週4日以上の訪問が計画されている場合に、複数ステーションでの対応が可能とされています。

訪問頻度対応可能なステーション数の目安
週4日以上の訪問2か所まで
毎日の訪問3か所まで

特別訪問看護指示書と複数ステーションの関係

前述のとおり、複数のステーションでの対応が認められる条件の一つに「特別訪問看護指示書の交付を受けて週4日以上の訪問が計画されている場合」があります。特別訪問看護指示書は、病状の急性増悪時などに医療保険での集中的な訪問看護を可能にする仕組みですが、これも通常の訪問看護指示書と同様に、関わる各ステーションへ個別に交付してもらう必要があります。

特別訪問看護指示書は原則14日以内という短い有効期間で運用されるため、複数のステーションが関わる状況では、通常の指示書以上にスケジュール管理がシビアになります。交付日・有効期間の終了日を各ステーションで共有し、更新のタイミングを揃えておくことが望まれます。

看護師 上妻
看護師 上妻

特別訪問看護指示書が絡む場面は、病状が不安定で急を要することが多いです。複数ステーション間の連絡が後手に回らないよう、あらかじめ緊急連絡網を決めておくと安心ですね。

同一日に複数のステーションが訪問する場合の算定ルール

同一日に複数のステーションが訪問すること自体は認められていますが、同一日に訪問看護療養費(訪問看護基本療養費等)を算定できるのは原則1か所のみです。2か所目のステーションは、緊急訪問看護加算など限られた加算のみ算定可能というルールになっています。どのステーションがその日の基本療養費を算定するかは、事業所間で事前に取り決めておく必要があります。

POINT

算定ルールを誤ると、返戻や過誤請求につながります。複数ステーションが関わるケースでは、月間の訪問スケジュールと算定区分を事業所間で共有する仕組み(訪問予定表の共有等)を作っておくと安全です。

複数のステーションが関わりやすい具体的なケース

実務上、複数のステーションが同時に関わる代表的なケースには次のようなものがあります。

  • 看取り期など病状が重く、毎日複数回の訪問が必要なケース
  • リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士等)が在籍するステーションと、看護中心のステーションを併用するケース
  • 人工呼吸器管理や気管切開等、高度な医療的ケアに対応できる専門性の高いステーションと、日常的な看護を行うステーションを組み合わせるケース
  • 24時間対応(オンコール体制)のあるステーションと、日中対応中心のステーションを組み合わせるケース

こうしたケースでは、指示書の管理だけでなく、日々の看護記録や病状の変化をどちらのステーションも把握できる体制づくりが特に重要になります。担当ケアマネジャーを中心に、双方のステーションの連絡先・担当者を明確にしておくことも忘れないようにしましょう。

ケアマネジャー・事業所間の情報共有

複数のステーションが関わる場合、それぞれの看護記録・報告内容がケアマネジャーを介して統合される形になります。訪問看護計画・報告書の内容にズレが生じないよう、サービス担当者会議などの場でステーション同士が直接情報交換する機会を持つことが望まれます。

また、加算の中には1か所でしか算定できないもの、複数事業所でそれぞれ算定できるものがあり、事前の整理が必要です。訪問リハビリなど他サービスとの併用が絡む場合の注意点は、以下の記事もあわせてご確認ください。

よくある質問

2か所の訪問看護ステーションが関わる場合、指示書は1通で足りますか?

いいえ。それぞれのステーションに対して、個別の訪問看護指示書が必要です。1通をコピーして使い回すことはできません。

2か所のステーションに指示書を出してもらうと、指示料は2回算定できますか?

いいえ。訪問看護指示料は利用者1人につき月1回しか算定できません。指示期間を2か月とし、2か所へ交互に毎月交付する運用で対応するのが一般的です。

複数のステーションの指示書は、別々の医師から交付してもらってもよいですか?

原則として、同一の医師から交付される必要があります。ただし同一の保険医療機関の同一診療科に所属する複数の医師であれば、いずれかが交付した指示書に基づく訪問看護は可能とされています。

同一日に2か所のステーションが訪問した場合、どちらも訪問看護療養費を算定できますか?

いいえ。同一日に訪問看護療養費を算定できるのは原則1か所のみです。2か所目のステーションは、緊急訪問看護加算など限られた加算のみ算定可能というルールになっています。

出典・参考

※最新かつ正確な取り扱いは、所轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

次に読むべき関連記事

特別訪問看護指示書の交付要件を詳しく知りたい方はこちら。

特別訪問看護指示書の交付要件|月2回の条件と記載方法を読む

まとめ|複数ステーションが関わる場合は指示書・算定ルールの整理が不可欠

2か所以上の訪問看護ステーションが関わる場合、指示書はそれぞれに個別交付が必要で、指示料は月1回まで、交付医師は原則同一という3つの基本ルールを押さえておくことが重要です。これらのルールを正しく理解しないまま運用すると、指示書の不備や誤った加算算定によって返戻・過誤請求につながるリスクがあるため、事業所間・ケアマネジャーとの連携体制をあらかじめ整えておきましょう。

この記事のまとめ
  • 指示書はステーションごとに個別交付が必要(コピー不可)
  • 訪問看護指示料は月1回のみ。指示期間2か月・交互交付で対応する運用もある
  • 指示書の交付医師は原則同一。例外は同一医療機関・同一診療科の複数医師
  • 複数ステーションでの対応は、対象者や訪問頻度の条件を満たす場合に限られる
  • 同一日の算定は原則1か所のみ。事業所間でスケジュールを共有する
  • 看取り期や高度医療的ケアなど、複数ステーションが関わりやすいケースを把握しておく

特別訪問看護指示書や訪問リハビリとの併用時の注意点、訪問看護指示書そのものの基本ルールについては、関連記事もあわせてご確認ください。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。