「訪問看護」と「ヘルパー」って、どちらも利用者さんのご自宅に伺ってサービスを提供するっていうのはなんとなく想像はできますよね。
では、「訪問看護」と「ヘルパー」ではどのような違いがあるのでしょうか?
このふたつには明確な違いがありますので、「訪問看護」「ヘルパー」の違いについてポイントを解説していきたいと思います!
目次
訪問看護とヘルパーの違いとは?
利用時間の違い
「訪問看護」と「ヘルパー」は、利用時間が似ていますが、細かくみるとそれぞれ利用時間が違います。
最初に、訪問看護の利用時間についてみていきましょう。
介護保険の場合
1回の利用時間は、
①20分未満
②30分未満
③30分以上60分未満
④1時間以上1時間30分未満
となっています。利用回数に制限はありません。
医療保険の場合
1回の利用時間は、
30~90分未満
となっています。利用回数は1週間に3回が限度です。
特例があり、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)や特別管理加算(別表第8)の対象の利用者さんや急性増悪などによる特別指示期間については、
利用回数が1週間に4回以上、1日2回または3回、1週間に1回に限り1回90分を超える長時間の訪問看護(難病等複数回訪問看護)が可能になります。
つぎに、ヘルパーの利用時間についてみていきましょう。
ヘルパーの利用時間は介護保険で定められており、以下のように「身体介護」と「生活援助」の2つで細かく分かれています。
身体介護(食事、入浴、排せつなど身体に触れて行う支援)
・20分未満
・20分以上30分未満
・30分以上1時間未満
・1時間以上1時間30分未満
・1時間30分以上2時間未満
生活援助(掃除、調理、買い物などの家事支援)
・20分以上45分未満
・45分以上
訪問看護では、医療保険と介護保険で利用時間が違います。
ヘルパーの利用時間は、身体介護と生活援助で利用できる時間が違います。
訪問看護の場合、だいたい30分~60分未満の利用時間が多く、ヘルパーの利用時間は基本30分未満が多いようです。
ヘルパーの入浴介助の場合は、1時間未満の利用となることが多いですが、利用時間が1時間以上になる場合は、入浴介助と食事介助がかさなった時など、複数の身体介護が必要な時に1時間以上かかることもあるようですね。
スタッフの資格の違い
「訪問看護」と「ヘルパー」の違いには、スタッフの資格の違いがありますので、解説していきます。
訪問看護を行うのは、医療従事者です。
次にあげる資格を持っているスタッフが、利用者さんのご自宅や施設に訪問し、状態観察や医療的なケアを行います。
・看護師
・准看護師
・保健師
・助産師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
訪問看護は、医師が発行する指示書が必要になります。
ヘルパーとは、日常生活に支障のある高齢者や障害者のご自宅に訪問し、家事サービスや身体の介護を提供する人のことを言います。
「ヘルパー」「ホームヘルパー」という呼び方は通称であり、正式には「訪問介護員」と言います。
ヘルパーでは、次にあげる資格を持っているものが従事しています。
・介護福祉士
・実務者研修終了者
・初任者研修修了者
・旧ホームヘルパー1級課程修了者
・旧ホームヘルパー2級課程修了者
・旧介護職員基礎研修課程修了者
サービス内容の違い
「訪問看護」と「ヘルパー」ではサービス内容が大きく違います。
つぎに、それぞれのサービス内容についてご紹介します。
・医師の指示による医療処置(点滴、インスリン注射、カテーテルや胃瘻の管理など)
・自宅や施設での療養上のお世話(身体の清拭、入浴介助、食事介助、排泄介助など)
・病状の観察(血圧、脈拍、体温などのバイタル測定、全身状態の観察など)
・医療機器の管理(在宅酸素や人工呼吸器など)
・床ずれ予防処置
・認知症・精神疾患のケア
・ターミナルケア(がん末期や終末期に対する支援)
・薬の相談・指導
・自宅や施設でのリハビリテーション
・介護予防(健康管理や運動機能低下などを予防するための指導、助言)
・ご家族や介護者への介護支援、相談・指導
・身体介護(食事、入浴、排泄など利用者さんの身体に触れて行う介助)
・生活援助(掃除、洗濯、調理、買い物など家事の支援)
訪問看護では家事サービスはしていません。ヘルパーは医療従事者ではありませんので、医療行為はできないことになっています。
このように、「訪問看護」と「ヘルパー」では、サービス内容に大きな違いがあることがわかります。
保険の違い
「訪問看護」と「ヘルパー」では、適用する保険が違います。
訪問看護に適用する保険は、介護保険と医療保険です。
【介護保険の対象者】
65歳以上(第1号被保険者):要支援・要介護と認定された方
40歳以上65歳未満(第2号被保険者):16特定疾病の対象者、要支援、要介護と認定された方
【医療保険の対象者】
40歳未満
40歳以上65歳未満:16特定疾病の対象者でない方
40歳以上65歳未満:介護保険第2号被保険者でない方
65歳以上:要支援、要介護に該当しない方、介護保険が適用しない方
全年齢:厚生労働大臣が定める疾病等、精神科訪問看護が必要な方、病状の悪化等により特別訪問看護指示期間にある方
ヘルパーに適用する保険は、介護保険のみです。
【介護保険の対象者】
要支援1~2、要介護1~5の方
訪問看護の利用は、乳幼児から高齢者まで幅広く利用できます。
一方、ヘルパーの利用は、介護保険のみの適応であり対象者も限定されます。
訪問看護とヘルパーを同時利用できるのか?
「訪問看護」と「ヘルパー」は、同じ日や同じ時間に利用できるのでしょうか?
結論、「訪問看護」と「ヘルパー」は、基本的に同じ日の同じ時間帯に利用することができません。
利用者さんは、同一時間帯にひとつの訪問サービスを利用することを原則としています。
例外的に、同一時間帯に利用することが認められるのは、利用者さんの心身の状態や介護状態で必要な場合のみ認められています。
「平成12年3月1日老企36号」より引用
例えば、家庭の浴槽で全身入浴の介助をする場合に、適切なアセスメント(利用者について、その有する能力、すでに提供を受けている指定居宅サービス等のその置かれている環境等の評価を通じて利用者が現に抱える問題を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援するうえで解決すべき課題を把握することをいう。以下同じ)を通じて、利用者の心身の状況や介護の内容から同一時間帯に訪問看護を利用することが必要であると判断され、30分以上1時間未満の訪問介護(身体中心の場合)と訪問看護(指定訪問看護ステーションの場合)を同一時間帯に利用した場合についてはそれぞれの所定単位数が算定されることとなる。
訪問介護と訪問看護、又は、訪問介護と訪問リハビリテーションを利用者さんが同一時間帯に利用する場合は、利用者さんの心身の状況や介護の内容に応じて、同一時間帯に利用することが介護のために必要があると判断される場合に限り、同時の利用ができます。
訪問看護とヘルパーの連携
療養生活を支援する中核をなすものとして、「訪問看護」と「ヘルパー」は期待されています。
「訪問看護」と「ヘルパー」の業務は隣り合わせになっており、効果的かつ効率的な在宅ケアを利用者さんに提供するために、「訪問看護」と「ヘルパー」の連携は不可欠と考えられます。
現場での連携方法としては、おもに連絡ノートと電話を用いる場合が多いですが、会議や同行訪問も連携にはとても有効であるようです。
訪問看護とヘルパーの連携では、痰の吸引業務について「看護・介護連携強化加算」というものがあります。
「看護・介護連携強化加算」とは、訪問介護事業所と連携した利用者さん係る計画作成の支援等について評価する加算として、平成24年度の介護報酬改定で創設された加算です。
「看護介護職員連携強化加算」を算定するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・喀痰吸引等の業務が円滑に行われるように、喀痰吸引等に係る計画書と報告書を作成し、緊急時の対応について助言を行うこと
・訪問看護事業所の看護職員が、訪問介護事業所の訪問介護員に同行し、利用者の居宅において業務の実施状況について確認すること。または、利用者に対する安全なサービス提供体制整備・連携体制確保のための会議に出席すること。
・同行訪問した場合や会議に出席した場合は、その内容を訪問看護記録書に記録すること。
・緊急時訪問看護加算の届出をしていること。
「看護介護職員連携強化加算」の単位数は、
【介護保険】
看護・介護職員連携強化加算 250単位/月
【医療保険】
看護・介護職員連携強化加算 2500円/月
※対象者:喀痰吸引等が必要な利用者さん
まとめ
今回は、「訪問看護とヘルパーの違い」や「訪問看護とヘルパーの同時利用」、「訪問看護とヘルパーの連携」についてご紹介しました。
少子高齢化が進む現在、住み慣れた地域で自分らしく人生の最期まで過ごすことができるように、地域包括ケアシステムの構築が進められています。
医療機関、介護サービス事業所、福祉サービス事業所などが連携し、それぞれの役割を円滑におこなっていく必要があります。訪問看護では、とくに医療と介護をつなぐ役割が求められていると思いますので、その大切な役割を担っていけるようにしていきましょう!
ビジケアでは、全国の訪問看護ステーションの管理者、経営者、従業者が集い、日々悩みの共有や解決策の提案を行っています。
訪問看護の仕事に悩んだり、つまづいた時にはぜひ、ビジケアにご相談ください。きっとあなたの道しるべになってくれるはずです!
「訪問看護」と「ヘルパー」ってどういう違いがあるのか分かりますか?