「特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いがあいまいで、どちらで算定すればいいか毎回迷う」「対象者の範囲が広くて、自ステーションの利用者さんが該当するか判断しきれない」——訪問看護の現場では、こうした声を本当によく耳にします。
そこでこの記事では、介護保険における特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数・対象者・算定要件・実務上の注意点を、令和6年度介護報酬改定の最新情報をふまえて整理します。請求漏れと過誤請求の両方を防ぐ視点で、現場で今日から使える形にまとめました。
- 特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数と「区分支給限度基準額の外枠」というポイント
- (Ⅰ)と(Ⅱ)それぞれの対象者の違いと、迷ったときの判断軸
- 令和6年度介護報酬改定で追加された対象者と、専門管理加算との関係
- 算定要件と必要な記録・体制、よくある誤算定パターン
- 留置カテーテル・褥瘡・点滴注射など現場で頻出する論点のFAQ
目次
特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)とは?介護保険における位置づけ
特別管理加算とは、医療的な特別な管理を必要とする利用者さんに対して、訪問看護ステーションが計画的な管理を行った場合に算定できる加算です。介護保険・医療保険のいずれにも同名の加算がありますが、対象者の定義や算定方法は若干異なります。本記事では介護保険(訪問看護費)の特別管理加算を取り上げます。
厚生労働省の介護給付費分科会の資料でも示されているとおり、特別管理加算は訪問看護ステーションの過半数が算定している主要加算のひとつです。医療ニーズの高い在宅療養者を支える訪問看護の機能を、報酬面から評価する目的があります。

「医療処置がある=とれる」ではなく、該当する状態にある利用者さんに、計画的な管理を行ったときに算定できる加算です。指示書・計画書・記録のセットが揃ってはじめて算定できる、と覚えておきましょう。
介護保険と医療保険の特別管理加算の違い
介護保険版と医療保険版は、名称こそ同じですが報酬構造と対象者の整理が違います。混同するとレセプト返戻の原因になるので、まず全体像を押さえておきましょう。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 区分 | 特別管理加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 特別管理加算 |
| 単位・点数 | (Ⅰ)500単位/月 (Ⅱ)250単位/月 | (重症度の高い管理)月5,000円 (その他の管理)月2,500円 |
| 算定頻度 | 原則 月1回 | 原則 月1回 |
| 区分支給限度基準額 | 含まれない(外枠で算定) | — |
| 主な対象 | 医療的処置・状態が継続している利用者 | 介護保険とほぼ同様だが整理の仕方が異なる |
特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数と算定の基本ルール
令和6年度介護報酬改定では、特別管理加算の単位数そのものは据え置かれました。一方で(Ⅰ)の対象者には新たな指導管理が追加されています(詳細は後述)。まずは単位数と基本ルールから整理します。
・特別管理加算(Ⅰ):500単位/月
・特別管理加算(Ⅱ):250単位/月
※(Ⅰ)と(Ⅱ)を同月に重ねて算定することはできません。両方の状態に該当する場合は(Ⅰ)を優先して算定します。
区分支給限度基準額には含まれない
特別管理加算は区分支給限度基準額の枠外で算定する加算です。区分支給限度基準額をすでに使い切っている利用者さんでも、要件を満たせば加算分を上乗せして算定できます。ケアマネジャーへの説明時にも押さえておきたい論点です。
算定タイミングは原則「月1回」
特別管理加算は、対象状態が月内に1日でもあれば月1回算定するのが原則です。ただし「週3日以上の点滴注射」を要件とするケースは、医師の指示期間(7日間)ごとに1回という別ルールが適用されます。月をまたいで実施した場合も、要件を満たす3日目が属する月で算定する取り扱いです。
1人の利用者につき算定できる訪問看護事業所は1か所のみです。複数の訪問看護ステーションが入っている場合は、主たる事業所が算定し、他事業所は重複して算定できません。
特別管理加算(Ⅰ)の対象者|重症度の高い状態
特別管理加算(Ⅰ)は、特に重症度の高い医療的管理が必要な利用者さんが対象です。どれか1つでも該当すれば(Ⅰ)を算定します。
- 在宅悪性腫瘍患者指導管理を受けている状態
- 在宅麻薬等注射指導管理を受けている状態(令和6年度改定で追加)
- 在宅腫瘍化学療法注射指導管理を受けている状態(令和6年度改定で追加)
- 在宅強心剤持続投与指導管理を受けている状態(令和6年度改定で追加)
- 気管カニューレを使用している状態
- 留置カテーテル(胃ろう・腎ろう・膀胱留置カテーテル等)を使用している状態

令和6年度改定で「在宅麻薬等注射」「在宅腫瘍化学療法注射」「在宅強心剤持続投与」の3つが追加されたのは大きなトピックです。終末期がんの方の在宅移行が進む中、現場で取り逃しがちな加算なのでチェックを徹底しましょう。
「留置カテーテル」と「ドレーンチューブ」の扱い
留置カテーテルは、胃ろう・腎ろう・膀胱留置カテーテルのように継続的にカテーテルを留置している状態を指します。経皮経肝胆管ドレナージチューブのように継続的に留置されているドレーンチューブも、留置カテーテルに含めて特別管理加算(Ⅰ)の対象となります。
一方、嘔気時の減圧目的で短時間・一時的に挿入したドレーンチューブは対象外です。点滴ラインの一時的な留置も同様で、「単にカテーテルが入っているだけ」では算定できません。排液の性状・量の観察、薬剤注入、水分バランスの計測など、計画的な管理を実施し記録していることが前提となります。
「在宅悪性腫瘍患者指導管理」の範囲
在宅悪性腫瘍患者指導管理は、末期がん等の患者さんで注射による鎮痛療法または化学療法が必要な状態を指します。座薬や貼付剤での疼痛コントロールのみのケースは含まれません。注射の指示があるか、医師の指導管理料の算定状況とあわせて確認しましょう。
特別管理加算(Ⅱ)の対象者|継続的な医療管理が必要な状態
特別管理加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)に該当しないものの、継続的な医療管理が必要な利用者さんが対象です。以下のいずれかに該当する場合に算定できます。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理を受けている状態
- 在宅血液透析指導管理を受けている状態
- 在宅酸素療法指導管理を受けている状態
- 在宅中心静脈栄養法指導管理を受けている状態(※カテーテル留置中は(Ⅰ))
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理を受けている状態(※カテーテル留置中は(Ⅰ))
- 在宅自己導尿指導管理を受けている状態
- 在宅人工呼吸指導管理を受けている状態
- 在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP等)指導管理を受けている状態
- 在宅自己疼痛管理指導管理を受けている状態
- 在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態
- 人工肛門または人工膀胱を設置している状態
- 真皮を越える褥瘡の状態(DESIGN-RでステージⅢ以上に相当)
- 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態
- 在宅妊娠糖尿病患者指導管理を受けている状態
経管栄養や中心静脈栄養はカテーテル留置を伴うため「留置カテーテル使用」に該当し、特別管理加算(Ⅰ)を算定します。流動食を経鼻的に注入している場合も、経鼻カテーテルが留置されていれば(Ⅰ)の対象です。
両方の状態がある場合は(Ⅰ)を優先します。
特別管理加算の算定要件と必要な記録・体制
特別管理加算は単に対象状態に該当するだけでは算定できません。「計画的な管理」と「重篤時の連携体制」を整え、記録に残しておく必要があります。
算定の3つの要件
- 対象者に該当することの確認訪問看護指示書・主治医からの情報・指導管理料の算定状況などから、(Ⅰ)または(Ⅱ)の対象状態であることを確認します。利用開始時・状態変化時はもちろん、月初の判定時にも改めてチェックしましょう。
- 計画的な管理の実施と記録訪問看護計画書に医療的管理の目標と具体的な看護内容を明記し、訪問看護記録書Ⅱで実施内容・観察結果・利用者状態を記録します。褥瘡であればDESIGN-Rでの評価、留置カテーテルなら排液性状の記録など、状態に応じた評価項目を含めます。
- 重篤時の連携体制の整備症状が重篤化した際に速やかに医師の診療を受けられる支援体制(緊急時の連絡ルート・主治医との情報共有方法)を整備し、利用者・家族に説明しておきます。重要事項説明書や運営規程への明記がポイントです。
必要な書類とよくある記載漏れ
| 書類 | 記載しておきたい内容(例) |
|---|---|
| 訪問看護指示書 | 主たる傷病名/使用機器・カテーテル種別/指導管理名/在宅医療管理に関する指示の有無 |
| 訪問看護計画書 | 医療的管理の目標(例:留置カテーテルの感染兆候の早期発見)/頻度/観察項目/緊急時対応 |
| 訪問看護記録書Ⅱ | 実施した管理内容・観察値・利用者反応/DESIGN-R等の評価結果/家族指導内容 |
| 訪問看護報告書 | 月間の管理経過・状態変化・主治医への情報提供内容 |
対象状態の根拠(指示書の記載・カテーテル種類)が記録から確認できない/褥瘡のDESIGN-R評価が継続的に記録されていない/緊急時連絡体制が利用者・家族に説明された証跡がない、などはよくある指摘事項です。算定する月だけ慌てて整えるのではなく、日々の記録に組み込みましょう。
令和6年度改定での変更点と「専門管理加算」との関係
令和6年度介護報酬改定では、特別管理加算の単位数・基本要件に変更はないものの、対象者の整理と関連加算で押さえておくべきポイントがあります。
特別管理加算(Ⅰ)の対象に3つの指導管理が追加
「在宅麻薬等注射指導管理」「在宅腫瘍化学療法注射指導管理」「在宅強心剤持続投与指導管理」を受けている状態が(Ⅰ)の対象に追加されました。在宅がんターミナルケアや心不全在宅療養の患者さんで取り逃しがちな改定なので、訪問看護指示書・主治医の指導管理料の算定状況とつき合わせて確認しましょう。
「専門管理加算」(250単位/月)が新設
令和6年度改定では、特別管理加算とは別に専門管理加算(250単位/月)が新設されました。緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア・人工膀胱ケアに関する専門研修を修了した看護師等が計画的な管理を行った場合に算定できる加算です。特別管理加算と専門管理加算は併算定可能で、専門看護師・認定看護師等を活用する事業所では収益面にも大きく影響します。
特別管理加算でよくある「請求漏れ」と「過誤請求」
請求漏れと過誤請求は、それぞれ事業所の収益と信頼を直接損ねます。実地指導や運営指導でも頻出のテーマなので、自ステーションで定期的に棚卸ししましょう。
請求漏れが起きやすいケース
- がん終末期に注射での疼痛管理に切り替わった月の取りこぼし
- 褥瘡が真皮を越える深さに進行したのに、評価記録が間に合わず未算定
- 新規利用開始月で、初回訪問時に対象状態の確認が漏れた
- 令和6年度改定で追加された3つの指導管理(在宅麻薬等注射など)に未対応
過誤請求につながりやすいケース
- 留置カテーテルの「計画的な管理」の実施記録がない
- 輸液ポートが挿入されているが、ポートを用いた薬剤注入を実施していない
- 嘔気時の一時的なドレーンチューブで(Ⅰ)を算定してしまう
- 同月に複数の訪問看護事業所が重複して算定する

「とりあえず加算をつけよう」ではなく、計画書と記録で説明できる加算だけをとるのが鉄則です。月初に対象者一覧を棚卸しする運用を作っておくと、請求漏れも過誤請求も大きく減らせます。
特別管理加算と他サービス・他加算との関係
定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスとの関係
訪問看護を利用中の方が、同時に定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用することは原則できません。そのため、訪問看護事業所と定期巡回事業所が同月に重ねて特別管理加算を算定することはありません。月の途中で訪問看護から定期巡回・看多機へ切り替わるケースでは、それぞれ別の月内期間で算定可能です。
緊急時訪問看護加算・特別地域訪問看護加算との関係
特別管理加算は、緊急時訪問看護加算や特別地域訪問看護加算など他の加算と併算定が可能です。算定要件はそれぞれ独立しているため、利用者状態・体制要件・記録の3点でそれぞれ漏れがないかを確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
留置カテーテルが入っていれば、必ず特別管理加算(Ⅰ)が算定できますか?
いいえ。単にカテーテルが挿入されているだけでは算定できません。排液性状・量の観察、薬剤注入、水分バランスの計測など、計画的な管理を行い、訪問看護計画書・記録書に残していることが必要です。輸液ポートが挿入されていても、ポートを用いた薬剤注入を一度も行っていない月は計画的な管理に該当せず算定できません。
真皮を越える褥瘡の評価記録に決まった様式はありますか?
厚生労働省が定める統一様式はありません。褥瘡計画書の立案と、看護記録書Ⅱでの継続的な評価が必要です。多くの事業所では日本褥瘡学会のDESIGN-R(2020年改訂版)を採用しており、治癒経過の比較がしやすく実地指導での説明にも有用です。
経管栄養や中心静脈栄養は(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらで算定しますか?
経管栄養や中心静脈栄養はカテーテル留置を伴うため、留置カテーテル使用に該当し、特別管理加算(Ⅰ)を算定します。経鼻的に流動食を注入している場合も、経鼻カテーテルが留置されているため(Ⅰ)の対象です。
週3日以上の点滴注射が月をまたいだ場合はどう算定しますか?
医師の指示期間(7日間)内に点滴注射を3日以上実施していれば算定可能です。要件を満たす3日目の点滴を実施した月に算定します。月をまたいで指示期間が続いた場合、両方の月で算定することはできず、3日目が属する月のみでの算定になります。同月内に新たな指示期間が始まり、再度3日以上の点滴を実施した場合は、その月でも再算定が可能です。
1人の利用者に複数の訪問看護事業所が入っている場合は?
同一利用者について、特別管理加算を算定できるのは1か所の訪問看護事業所のみです。複数事業所が関わる場合は、主治医・関係事業所間で「どの事業所が計画的な管理を担うか」を整理し、その事業所のみが算定します。
特別管理加算と専門管理加算は同じ月に算定できますか?
はい、両加算は併算定可能です。専門管理加算は緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門/膀胱ケアに関する専門研修を修了した看護師等が計画的な管理を行った場合に250単位/月で算定でき、特別管理加算とは別枠で評価されます。要件と記録を満たしている場合は両方を算定しましょう。
専門管理加算は特別管理加算と併算定が可能で、認定看護師・専門看護師がいる事業所では収益と質の両面で大きな武器になります。要件と運用のポイントをこちらでまとめています。
専門管理加算の記事を読むまとめ|特別管理加算は「計画的な管理」と「記録」がセット
特別管理加算は単位数こそ大きく変わっていませんが、令和6年度改定で(Ⅰ)の対象が広がり、新設された専門管理加算との組み合わせも含めて活用余地が広がっています。請求漏れの取りこぼしを防ぐと同時に、計画的な管理と記録で「説明できる加算」にすることがポイントです。
- 特別管理加算は(Ⅰ)500単位/月、(Ⅱ)250単位/月。区分支給限度基準額には含まれない。
- (Ⅰ)は重症度の高い管理(在宅悪性腫瘍・気管カニューレ・留置カテーテル等)、(Ⅱ)は継続的な医療管理(在宅酸素・人工肛門・真皮を越える褥瘡・週3日以上の点滴注射等)が対象。両方該当時は(Ⅰ)を優先。
- 令和6年度改定で(Ⅰ)に在宅麻薬等注射・在宅腫瘍化学療法注射・在宅強心剤持続投与の3つの指導管理が追加された。
- 算定には「対象状態の確認」「計画的な管理と記録」「重篤時の連携体制」の3つが必須。
- 新設された専門管理加算(250単位/月)と併算定が可能。専門看護師・認定看護師の活用余地が広がった。
毎月の請求前に対象者一覧を棚卸しし、記録の網羅性を確認する運用を整えることで、収益と運営の安定の両立につながります。
(Ⅱ)とは?【介護保険】.png)






















