
今回は「スピリチュアルペイン」についてお話ししていきます。
まず最初に、私が心を揺さぶられたある患者さんの言葉をご紹介します。
「先生や看護師さんは体だけ病室の中に入ってきて、心はドアの外にいますよ」
この言葉は、まさにその通りだと痛感させられました。
忙しくて心に余裕がない時、気持ちが完全に患者さんの心と向き合っていないことがあるなと。
皆さんも、このような経験があるのではないでしょうか。
目次
患者さんの言葉にどう向き合うか?
患者様の言葉で、
- 「生きている価値がない」
- 「人に迷惑をかけているんじゃないか」
- 「死にたくない、でも早くお迎えが来ないかな」
- 「何もできなくなって、自分が自分じゃないみたいだ」
- 「1人でいても、誰かがいてくれても、とにかく寂しい」
このような患者さんの言葉を聞いた時、どう返したらいいのか分からず、困ってしまった経験はありませんか?
関わるのが難しく、苦手意識を持ってしまったり、次にお話しする時にどう対応したらいいのかと、憂鬱になってしまうこともあるかもしれません。
ある患者さんは、「もう死にたい」と訴えた時、看護師さんたちが反応に困ってすぐに病室を出て行ってしまい、それからなかなか会いに来てくれなくなった、という経験をされました。
「だから、どんなに自分が辛くても、自分の本音は言わずに看護師さんと向き合うことにした」と。
スピリチュアルペインとは?
そもそもスピリチュアルペインとは「死が差し迫った時や死を意識する時に生じる、スピリチュアリティに関わる苦悩のこと」です。
自分の存在が揺らいだ時に生じる苦しみ、と言われています。
スピリチュアルペインを考える上で分かりやすいのが、「村田理論」です。
今回は、この村田理論についてお話しします。
村田理論を解説
村田先生は、スピリチュアルペインを「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」と定義しています。
そして、人間の存在には
- 「時間存在」
- 「関係存在」
- 「自律存在」
という3つの柱があると言われています。
私たち人間の存在は、この3つの柱に支えられている、という考え方です。
時間存在
過去に様々な経験をした出来事を通して、将来への希望や目標に向けて今を生きている存在です。
『過去と未来があるからこそ、今の自分が存在している』という考え方です。
しかし、癌などの大きな病気を患い、将来を喪失してしまった時、今まで信じて疑わなかった未来が揺らぎ、将来の可能性が開けなくなり、現在の意味が不成立になってしまいます。
未来に支えられて今があるはずなのに、未来がないから現在の自分の存在価値がない、と考えてしまう。
この辛さを「時間存在のスピリチュアルペイン」と言います。
関係存在
『人の存在は他者から与えられる』という考え方です。
生の存在と意味の成立には、他者との関係が必要である、と言われています。
家族、ペット、上司や同僚、趣味の仲間など、様々な人たちと関わる中で、自分という存在に価値が生まれます。
しかし、病気になり、死が近づくと、他者との関係が失われてしまうことがあります。
他者を喪失することによって、自分の存在の意味がなくなってしまったり、虚しさや寂しさを感じてしまう。これが「関係存在のスピリチュアルペイン」です。
自律存在
『自律=生産的で自立している』という考え方です。
人間は、自己決定ができる自由が与えられている存在だと考えます。
自分で決めたり、選択したり、やりたいことができたり、若さや体力があり、自分の思うように動ける。 しかし、自立と生産性を失うことによって、自由に選択できなくなったり、自分自身の衰えを感じてしまったり、思うように動けなくなる。
できていたことが、どんどんできなくなっていき、自己決定ができないという辛さが生じることがあります。
無価値、無意味、依存、負担といった感情を伴う、「自律存在のスピリチュアルペイン」です。
まとめ
村田理論では、自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛をスピリチュアルペインと定義していました。
人間は、「時間存在」「関係存在」「自律存在」という3つの側面を持っていて、その中のどれか1つでも揺らいでしまった場合に、自分自身の存在が揺らいでしまう。
だからこそ、スピリチュアルペインが生じるのだ、と言われています。
今回は、スピリチュアルペインとは何か、そして村田理論における3つの柱についてお話ししました。
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