「緊急時訪問看護加算」「緊急訪問看護加算」「24時間対応体制加算」――名前がよく似ているこの3つの加算、正確に区別して説明できるでしょうか。管理者やこれから開業を考えている方の中には、「介護保険と医療保険でどちらがどちらか分からなくなる」「令和6年度の改定で単位数が変わったと聞いたが、自分の事業所はどの区分に当てはまるのか不安」という声も少なくありません。
この記事では、介護保険における緊急時訪問看護加算について、単位数・算定要件・留意点を、令和6年度介護報酬改定で新設された区分まで含めて整理します。運営指導で指摘されやすいポイントや、現場でよくある疑問もあわせて解説しますので、算定漏れ・算定誤りを防ぐための実務資料としてお役立てください。
- 緊急時訪問看護加算(介護保険)の基本的な仕組みと、似た名称の加算との違い
- 令和6年度介護報酬改定で新設されたⅠ・Ⅱ区分の単位数と要件の違い
- 算定要件・留意点・月の途中で体制が変わった場合の扱い
- 運営指導で確認される書類と、現場でよくあるQ&A
目次
緊急時訪問看護加算とは?介護保険における位置づけ
緊急時訪問看護加算とは、利用者又は家族から電話等により看護に関する意見を求められた場合に、常時(24時間)対応できる体制が整っている事業所が、月に1回算定できる加算です。介護保険の訪問看護(訪問看護ステーション・みなし指定の病院又は診療所)で算定します。
ポイントは、実際に緊急訪問を行ったかどうかではなく、24時間の連絡・相談体制が整っているかどうかで算定する加算だという点です。緊急時の訪問をしなくても、計画的な訪問看護を提供していれば加算を算定できます。

「緊急時訪問看護加算」は体制そのものへの評価、実際に緊急訪問した分の評価は別の加算(医療保険なら緊急訪問看護加算)で算定します。ここを混同すると算定誤りにつながりやすいので、まずこの違いを押さえておきましょう。
緊急訪問看護加算・24時間対応体制加算との違いを整理
名称が似ている3つの加算は、保険の種類も評価している内容も異なります。混同を防ぐために、まず全体像を整理しておきましょう。
| 加算名 | 保険種別 | 評価する内容 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| 緊急時訪問看護加算 | 介護保険 | 24時間の電話相談体制を整備していること(訪問の有無は問わない) | 月1回 |
| 緊急訪問看護加算 | 医療保険 | 計画外の緊急訪問を実際に行ったこと | 訪問1回ごと |
| 24時間対応体制加算 | 医療保険 | 24時間の電話相談体制を整備していること(介護保険の緊急時訪問看護加算に相当) | 月1回 |
「体制を評価する加算」と「実際の緊急訪問を評価する加算」は別物です。介護保険の緊急時訪問看護加算は前者にあたり、医療保険の24時間対応体制加算と考え方が対応しています。医療保険側の詳細は「24時間対応体制加算とは?【医療保険】」、実際の緊急訪問の評価については「緊急訪問看護加算とは?【医療保険】」で詳しく解説しています。

緊急時訪問看護加算の単位数【令和6年度介護報酬改定】
令和6年度介護報酬改定(令和6年6月1日施行)において、緊急時訪問看護加算は夜間対応する看護師等の勤務環境への配慮を目的に、新たにⅠ・Ⅱの2区分に再編されました。改定前は1区分のみでしたが、改定後は業務管理体制の整備状況に応じて単位数が分かれています。
| 区分 | 訪問看護ステーション | 病院又は診療所 |
|---|---|---|
| 緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | 600単位/月 | 325単位/月 |
| 緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | 574単位/月 | 315単位/月 |
Ⅱの単位数(574単位・315単位)は、改定前の緊急時訪問看護加算と同じ水準です。Ⅰは、Ⅱの要件に加えて緊急時訪問における看護業務の負担軽減に資する体制整備を行った事業所向けの、上乗せ区分と捉えるとわかりやすいでしょう。
単位数は介護報酬改定のたびに見直される可能性があります。算定前には必ず、厚生労働省や国民健康保険団体連合会など一次情報の最新の告示・通知で単位数をご確認ください。
緊急時訪問看護加算の算定要件
Ⅰ・Ⅱそれぞれの算定要件は、次の通りです。
| 区分 | 算定要件 |
|---|---|
| 緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | ①利用者又はその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること ②緊急時訪問における看護業務の負担軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていること の両方に該当すること |
| 緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | ①のみに該当すること |
また、区分にかかわらず、次の事項は必須です。
- 都道府県知事に届け出ていること
- 利用者に十分な説明を行った上で、利用者が緊急時の訪問看護を希望し、加算について同意していること

都道府県知事へ提出する届出様式は、令和6年度改定にあわせて変更されている自治体もあります。新たな届出が必要になるケースもあるので、必ず事業所所在地の自治体ホームページで最新の様式を確認してくださいね。
また、同意を得たことを証明するために、同意書を作成し記録に残しておくことをおすすめします。
令和6年度改定で追加された「看護師以外の職員」対応の要件
令和6年度介護報酬改定により、24時間対応体制の確保にあたって看護師以外の職員も、利用者又は家族等からの電話連絡を受けられるようになりました。これを行う場合は、以下のすべてに該当する必要があります。
- マニュアルの整備看護師等以外の職員が電話等による連絡・相談に対応する際のマニュアルが整備されていること。
- 緊急性の判断体制緊急の訪問看護の必要性の判断を、保健師又は看護師が速やかに行える連絡体制及び緊急訪問が可能な体制が整備されていること。
- 勤務体制の明確化事業所の管理者が、連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制・勤務状況を明らかにしていること。
- 保健師・看護師への報告看護師等以外の職員が電話連絡を受けた際は保健師又は看護師へ報告し、報告を受けた保健師又は看護師が報告内容を訪問看護記録書に記載すること。
- 利用者・家族への説明と同意上記①〜④について、利用者及び家族等に説明し、同意を得ること。
この体制を取る場合、指定訪問看護事業者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員についても届け出る必要があります。
緊急時訪問看護加算の留意点
算定時に間違えやすい留意点を整理します。
- 利用者1人につき、1か所の事業所のみが算定可能です。他の事業所の緊急時訪問看護加算、同月の定期巡回・随時対応サービスや看護小規模多機能型居宅介護における緊急時訪問看護加算、同月の医療保険における24時間対応体制加算は、いずれも同時に算定できません
- 利用者に十分な説明を行った上で、利用者が緊急時の訪問看護を希望し、加算について同意した場合に算定が可能です
- 月の途中で届出が受理された場合、利用者が同意を得た日以降の加算として当該月に算定可能です
- 月の途中で緊急時の体制が取れなくなった場合には、その月は算定できません
- 定期的な訪問看護がない場合、緊急時訪問看護加算のみの算定はできません。最低でも月に1回、Ⅰ-2以上の定期訪問が必要です
- 緊急時訪問看護加算は、当該月の第1回目の介護保険の給付対象となる訪問看護を行った日に加算します
- 病院又は診療所の場合に限り、医師が対応してもよいとされています

緊急時訪問看護加算の運営指導対策
運営指導では、体制の実態と記録が一致しているかどうかが重点的に確認されます。次の書類を整えておきましょう。
- 緊急連絡先を案内する書面・対応マニュアル等
- 緊急連絡を受ける職員や訪問看護師の体制・勤務状況がわかるもの
- 利用者の同意書
- サービス提供票
- 他の事業所で当該加算の算定がないことの確認記録
- 医療保険における24時間連絡体制加算・24時間対応体制加算の算定がないことの確認記録
- 電話連絡を受けた際の記録
「体制はあるが記録がない」状態が、運営指導でもっとも指摘されやすいパターンです。電話連絡を受けた記録は、看護師以外の職員が対応した場合も含めて、都度残す運用を徹底しましょう。
現場で注意したい運用のポイント

訪問看護を行う医療機関(みなし指定の病院・診療所)では、連絡相談を担当するのは原則として保健師・看護師ですが、病院又は診療所の場合に限り、当該医療機関の管理者である医師が緊急時に対応してもよいとされています。
もう一つ、現場で判断に迷いやすいのが「その月に一度も計画的な訪問をしないまま緊急訪問を行い、その直後に入院となった場合」の扱いです。
厚生労働省「介護保険最新情報vol.151 介護報酬に係るQ&A」によると、緊急時訪問看護加算はその月の第1回目の介護保険給付対象の訪問看護を行った日に加算されるため、その1回目が計画に位置付けられていない緊急時訪問であっても加算は算定できます(その月に介護保険の給付対象となる訪問看護を行っていない場合は、加算のみの算定はできません)。ただし、この場合の訪問は当該月の1回目の訪問となるため、夜間・早朝・深夜加算は算定できません。夜間・早朝・深夜加算は、介護保険の緊急訪問の場合、2回目以降の訪問から算定できる扱いになっています。
緊急時訪問看護加算のQ&A
24時間対応体制さえ整えていれば、緊急時訪問看護加算は算定できますか?
体制を整えているだけでは算定できません。体制を整備したうえで、利用者に緊急時訪問看護加算について十分に説明し、利用者が緊急時の訪問看護を希望して加算に同意した場合に、はじめて算定できます。また、都道府県知事への届出も必要です。
「24時間連絡体制」とは具体的にどのような体制を指しますか?
利用者やその家族から電話等で看護に関する相談を受けた際に、常時対応できる体制のことです。当該訪問看護ステーション以外の施設・従事者を経由する連絡体制や、ステーション以外の者が所有する電話を連絡先とすることは認められません。
月の途中で届出が受理された場合、その月から加算は算定できますか?
届出が受理され、利用者から同意を得た日以降であれば、その月の加算として算定できます。ただし、同意を得る前の期間分は算定できません。
月の途中で緊急時対応の体制が維持できなくなり、届出を取り下げた場合はどうなりますか?
体制が月の途中から月末まで整わない状態になるため、その月は緊急時訪問看護加算を算定できません。すでに緊急時訪問を1回行っていた場合でも同様です。
利用者が緊急時対応だけを希望した場合、緊急時訪問看護加算のみを算定できますか?
できません。緊急時訪問看護加算は、計画的な定期訪問看護を行っていることが前提の加算です。少なくとも月1回以上、区分Ⅰ-2以上の定期訪問を行う必要があります。
その月に一度も計画的な訪問をしないまま緊急訪問を行い、その後入院となった場合はどうなりますか?
厚生労働省「介護保険最新情報vol.151 介護報酬に係るQ&A」によると、緊急時訪問看護加算はその月の第1回目の介護保険給付対象の訪問看護を行った日に加算されるため、その1回目が計画外の緊急時訪問であっても加算は算定できます。ただし、この場合の訪問は1回目の訪問となるため、夜間・早朝・深夜加算は算定できません(2回目以降の緊急訪問から算定可能)。
※ 単位数(600単位/574単位/325単位/315単位等)は、複数の専門メディアの解説記事でも一致が確認できていますが、本記事作成時点で厚生労働省の告示原文そのものへの直接照合までは行えていません。算定にあたっては、必ず最新の告示・通知でご確認ください。

まとめ|緊急時訪問看護加算は「体制・同意・定期訪問」が三本柱
介護保険の緊急時訪問看護加算は、実際の緊急訪問の有無ではなく、24時間の連絡・相談体制を評価する加算です。令和6年度介護報酬改定でⅠ・Ⅱの2区分に分かれ、業務管理体制の整備状況によって単位数が変わる点を押さえておきましょう。
- 緊急時訪問看護加算は「体制」を評価する加算。医療保険の緊急訪問看護加算(実際の緊急訪問を評価)や24時間対応体制加算(体制を評価)と混同しないよう注意する
- 令和6年度改定でⅠ(600単位/325単位)・Ⅱ(574単位/315単位)に再編。単位数は今後の改定で変わりうるため、算定前に最新の告示を確認する
- 都道府県への届出、利用者への説明・同意、月1回以上・Ⅰ-2以上の定期訪問が算定の前提条件
- 運営指導では「体制はあるが記録がない」状態が指摘されやすいため、電話連絡記録・同意書・体制がわかる書類を整備しておく
加算のルールを正しく理解し、算定漏れ・算定誤りのないステーション運営を目指しましょう。



















