病院や診療所が提供する「みなし指定の訪問看護」は、利用者さんのニーズに応じた高度な医療ケアを提供することができます。
一方で、指定訪問看護ステーションより報酬が少ないなど運営面ではデメリットもあります。
「みなし指定の訪問看護」の価値を高めるためには、メリットを最大限に活かしながら、デメリットをどのように克服するかが鍵となります。
この記事では、みなし指定の訪問看護のメリットとデメリットを詳しく解説します。
目次
みなし指定の訪問看護
訪問看護には、「訪問看護ステーション」と「みなし指定の訪問看護」の2つがあります。
みなし指定の訪問看護は、病院や診療所から提供される訪問看護です。
病院や診療所が訪問看護部門を設ける、外来部門が兼任するなどして介護保険・医療保険で訪問看護を実施します。
みなし指定の訪問看護に関しては下記の記事で詳しく解説をしています。
訪問看護の需要は年々高まっていて、訪問看護ステーションの事業所数は増加している一方で、みなし指定の訪問看護は年々減少傾向です。
みなし指定の訪問看護のメリット
みなし指定の訪問看護のメリットは以下の3つです。
- 医師との連携がスムーズ
- 継続支援が可能
- 事業開始が容易
1つずつ説明していきます。
医師との連携がスムーズ
みなし指定の訪問看護は医療機関に所属し、医療機関を受診する患者さんにのみ訪問看護を提供することができます。
そのため、医師と訪問をする看護師が同じ医療機関に在籍しているため、医療者間の報告や指示確認をスムーズに行うことができます。
訪問看護ステーションの場合、様々な医療機関の医師から訪問看護指示書をもらいます。
医療機関によって、連絡手段や報告の方法は異なります。
また、大学病院などの大きな病院では、直接医師に報告をする、指示を確認することが難しい場合もあります。
主治医と利用者さんのお宅に訪問する看護師の距離が近いことは、スムーズな連携につながる大きなメリットです。
継続支援が可能
みなし指定の訪問看護は医療機関に所属するため、利用者さんが入院をして訪問看護が中止になっても、継続的な支援をすることが可能です。
入退院時の情報共有もスムーズに行うことができます。
訪問看護ステーションの場合は、利用者さんが退院して訪問看護が再開するまで直接利用者さんと関わることはできません。
入退院をしても、継続支援を行うことができるのは、みなし指定の訪問看護のメリットです。
事業開始が容易
みなし指定の訪問看護は既存の診療所や病院内でサービスを提供します。
そのため訪問看護業務のための設備準備が少なく、初期費用を抑えて開始することができます。
一方で訪問看護ステーションの場合、立ち上げ資金は約700~1000万円必要と言われています。
また、人員基準も定められているため、看護師の人数が揃わなければ訪問看護ステーションを開設することはできません。
事業開始までには一定のお金と時間がかかります。
みなし指定の訪問看護のデメリット
みなし指定の訪問看護のデメリットは以下の3つです。
- 利益が少ない
- 対象者が限定される
- リハビリテーションを実施できない
1つずつ解説します。
利益が少ない
みなし指定の訪問看護と訪問看護ステーションでは、保険請求単位が異なります。
みなし指定の訪問看護は、訪問看護ステーションより保険請求の単位が少ないため、事業としての利益が低くなります。
- みなし指定訪問看護と訪問看護の報酬(介護保険)(令和6年6月以降)
- みなし指定訪問看護と訪問看護の報酬(医療保険)
24時間の訪問看護の提供など、手厚い訪問看護の提供体制を有する医療機関を評価するため、2020年度診療報酬改定で訪問看護・指導体制充実加算(150点、月1回)が新設されました。
訪問看護ステーションによる訪問看護では、訪問看護基本療養費に加え、訪問看護管理療養費が設定されています。
一方、医療機関による訪問看護には訪問看護管理療養費に相当する報酬がありません。
そこで、24時間対応体制や重症度の高い患者の受け入れなどの実績を有する医療機関への評価として設定された加算が、訪問看護・指導体制充実加算です。
しかし、訪問看護・指導体制充実加算の算定は月1回150点と限られています。
みなし指定の訪問看護と訪問看護ステーションの報酬の差は大きいと言えます。
対象者が限定される
みなし指定の訪問看護は医療機関に所属し、当該医療機関を受診する患者さんにのみ訪問看護を提供することができます。
そのため、地域で訪問看護を必要としているすべての人が対象となる訪問看護ステーションと比較すると、みなし指定の訪問看護は、サービス対象者の絶対数が少なくなります。
保険請求の費用が安いため利益が少ないというだけでなく、サービス対象者の数が少ないという点でも利益につながりにくいです。
また、病院や診療所等、医療機関の併設された訪問看護システムなので、地域において訪問看護ステーションほど独立した存在にはなりにくいという特徴もあります。
リハビリテーションを実施できない
みなし指定の訪問看護では、理学療法士等の単独訪問によるリハビリテーション実施・報酬の請求ができません。
リハビリテーションを実施するために、理学療法士等が看護師に同行してリハビリテーションを実施することはできますが、診療報酬は訪問看護費のみの請求となります。
そのため診療報酬取得のためには、訪問リハビリテーションの施設基準を取得して「訪問リハビリテーション」を開設することが必要になります。
訪問看護ステーションのみが、リハビリテーションを訪問看護事業の一部として行うことができます。
メリットを生かして地域医療に貢献する
みなし指定訪問看護ステーションのメリットとデメリットを解説しました。
- 主治医との連携がスムーズ
- 継続支援が可能
- 事業開始が容易
- 利益が少ない
- 対象者が限定される
- リハビリテーションを実施できない
みなし指定訪問看護ステーションの数は年々減少していますが、みなし指定訪問看護ステーションならではのメリットを最大限に活かし、地域医療の一部を担う役割を果たすこともできます。
また、いずれ指定訪問看護ステーションに移行することを目標に、訪問看護業務を開始してみるという医療機関にとっては、みなし指定の訪問看護は有効な選択肢になります。
メリットを生かし、デメリットを最小限にしながら利用者さんにとっても、医療者にとってもより良い訪問ができるように取り組んでいきましょう。