喀痰吸引等を実施する介護サービス事業所等と連携するために必要な要件は、訪問看護ステーションや訪問看護師ともにありません。
緊急時訪問加算・24時間対応体制加算の届け出をしている事業所であれば、実施計画の作成支援等を行う場合、看護・介護職員連携強化加算を算定できます。
今回は、実地研修修了証が交付され、実際に介護サービス事業所等とどのような連携が必要なのかを解説します。
喀痰吸引等の基準や適切な体制での喀痰吸引等の実施ができるようにして加算を算定しましょう。
目次
喀痰吸引等の業務を行う事業者の責務(登録基準)について
(社会福祉士及び介護福祉士法施行規則)社会福祉士及び介護福祉士法施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省第126号)では、喀痰吸引等の業務を行う事業者の登録要件として以下のことが書かれています。
- 介護福祉士等が喀痰吸引等を実施するにあたり、医師の文書による指示をうけること
- 医師・看護職員が喀痰吸引等を必要とする方の状況を定期的に確認し、介護福祉士等と情報共有を図ることにより、医師・看護職員との連携を確保するとともに、適切な役割分担を図ること
- 喀痰吸引等を必要とする方の個々の状況を踏まえ、医師・看護職員との連携の下に喀痰吸引等の実施内容等を記載した計画書を作成すること
- 喀痰吸引等の実施状況に関する報告書を作成し、医師に提出すること
- 喀痰吸引等を必要とする方の状態の急変に備え、緊急時の医師・看護職員への連絡方法をあらかじめ定めておくこと
- 喀痰吸引等の業務の手順等を記載した書類(業務方法書)作成すること
- 喀痰吸引等は、実地研修を修了した介護福祉士等に行わせること
- 安全確保のための体制を整備すること(安全委員会の設置、研修体制の整備等)
- 必要な備品を備えるとともに、衛生的な管理に努めること
- 上記1.③の計画書の内容を喀痰吸引を必要とする方又はその家族に説明し、同意を得ること
- 業務に関して知り得た情報を適切に管理すること
引用:(社会福祉士及び介護福祉士法施行規則)社会福祉士及び介護福祉士法施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省第126号)
介護サービス事業所には看護職員が配置されていないため、地域の訪問看護ステーション等との連携が必要になります。
連携に関する加算について
喀痰吸引等を実施する介護サービス事業所と連携し、実施計画の作成支援等を行う場合、訪問看護ステーションは、加算を算定できます。
介護保険の場合
「看護・介護職員連携強化加算」 250単位/月
介護職員による喀痰吸引等の特定行為業務は、医師の指示のもとに、看護師等の医療関係者との連携を保ちながら行う必要があるため、訪問看護事業所と連携し、特定行為業務が必要な利用者に係る計画の作成や訪問介護職員等に対する助言等の支援を行った場合に算定。
訪問看護事業所は24時間体制を取り、緊急時訪問看護加算の届出をしていることが必要。
医療保険の場合
「看護・介護職員連携強化加算」 2500円/月1回に限り
訪問看護ステーションの看護師または准看護師が登録喀痰吸引等事業者または登録特定行為事業者と連携し、喀痰吸引等の医師の指示の下に行われる行為が円滑に行われるよう、喀痰吸引等に関してこれらの事業所の介護職員に対して必要な支援を行った場合に算定。
訪問看護事業所は、24時間対応体制加算の届出を行っていることが必要。
- 訪問看護を実施している月のみ算定できる
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が同行訪問や会議に出席した場合は算定できない
- 利用者の居宅を訪問し、介護職員の喀痰吸引等の実施状況を確認した場合、当該時間に応じた訪問看護費・訪問看護基本療養費を算定することができる
→ただし、介護職員等の手技の指導が必要な場合に、指導目的のみで同行訪問を行った場合は、訪問看護費等は算定できない - 24時間対応できる体制の届け出を行うことを加算算定要件としているが、緊急時訪問看護加算、24時間対応体制加算を算定している必要はない。
- 2か所の訪問看護ステーションが訪問している場合は、介護保険の場合はそれぞれ算定できますが、医療保険では算定できません。どちらが算定するかは合議で決めておく。
- 介護保険の利用者が特別指示書を発行された場合、どちらか一方の保険で算定する。
喀痰吸引等の連携前に決めておくこと
関係の構築と覚書締結
介護サービス事業所等とどのように連携するかを話し合い、そこで決めた事項を覚書などの形で取り交わします。
- 従事者から看護師への日常的な連絡・相談・報告体制
- 看護師と医師の連絡体制、従事者と医師の連絡体制
- 医師または看護師による定期的な状態確認の方法
- 緊急時の対応
- 書類の作成の協力
- 安全対策委員会等への参加
- 感染予防対策への協力
- 研修への協力
喀痰吸引等の連携後について
喀痰吸引等の連携後は、以下のようなことが必要です。
- 緊急時の連絡方法・対応体制について
- 安全対策委員会等への参加協力について
- 安全確保・事故予防への対応
- 書類の作成への協力・参加について
- 介護職員等の手技等の確認について
- 感染予防対策への協力
順番に解説します。
緊急時の連絡方法・対応体制について
万が一の事故に備え、緊急時に介護サービス事業者等、主治医と連絡が取れるような連絡網を関係者間で共有しましょう。
特に事故発生時の具体的な連絡方法については、連絡の手順を明確にすることが必要です。
安全対策委員会等への参加協力について
介護職員等による喀痰吸引等を実施する際には連携先の介護サービス事業所等において安全対策委員会が設置され、開催されていることが必要となります。
安全対策委員会が設置されているか確認し、訪問看護ステーションも積極的に参加します。
参加した場合、「看護・介護職員連携指導加算」算定できますが、理学療法士等が出席した場合は算定できません。
安全確保・事故予防への対応
事故を予防するためには、訪問看護ステーションからは、喀痰吸引等の際に生じることが予測される事項を予め提供し介護サービス事業所等と予防策を話し合っておくことが重要です。
書類の作成への協力・参加について
マニュアル・手順書の整備について
喀痰吸引等に関する手順や緊急連絡等に関するマニュアルは、介護サービス事業所等が作成し、訪問看護ステーション、主治医等の間で共有します。
介護サービス事業所等が作成した案について、看護の立場から重要な事項を追記するなど、両者で協力して改訂していけるように協力します。
利用者の個別の計画の作成
喀痰吸引等を実施する利用者の個別計画について、介護サービス事業所等と共有しましょう。
可能であれば、個別計画書作成段階からアドバイスを行い、不備があれば修正をします。
介護保険利用者の場合、ケアマネジャーと利用者の個別計画書を共有し、必要に応じてケアプランへの反映を依頼するなど情報を共有していきます。
指示書・実施記録の作成や保管について
介護サービス事業所等は、医師の指示を踏まえた喀痰吸引等の実施内容を記載した「個別計画書」を作成し、喀痰吸引等の実施状況を記載した報告書を一定程度の頻度で医師に提出します。
主治医からの介護職員等喀痰吸引等指示書の内容を介護サービス事業所等と一緒に確認し、安全に実施できるように支援します。
主治医と介護サービス事業所等が良好な関係を築くために作成する書類の作成・調整支援を行い、可能であれば内容を確認し、アドバイスをします。
- 対象者ごとに文書による指示(指示書)を作成
- 指示書料は3ヶ月に1回算定
- 医師の指示書の有効期限は6ヶ月
介護職員等の手技等の確認について
当該介護職員等が実施する手技について、安全面で問題がないかどうかを確認し、適切な助言をします。
可能であれば、月に1回程度、介護職員等に同行訪問して技術確認を行います。
※これらの介護職員等への技術確認については、介護サービス事業者等と委託契約を締結し、訪問看護ステーションの収益事業としておこなうことも可能
感染予防対策への協力
喀痰吸引や経管栄養にかかわる、呼吸器系や消化器系の感染症について連携先の介護サービス事業所等に情報提供するとともに、必要に応じて感染予防対策の立案等に助言します。
在宅の場合、感染予防の方法は利用者宅の状況によって異なることから、それぞれの利用者宅にあった方法ができるように指導します。
また、必要に応じて安全対策委員会などで話し合いや研修会を行います。
必要な書類や書式については在宅における喀痰吸引等連携ガイドはこちら
まとめ
- 喀痰吸引等を実施する介護サービス事業所等と連携するための訪問看護ステーションや訪問看護師ともにとくに要件はない
- 看護・介護職員連携強化加算を算定する場合、訪問看護ステーションは緊急時訪問加算・24時間対応体制加算の届け出が必要も利用者が算定していなくてもよい
- 2か所の訪問看護ステーションを利用している場合、介護保険はそれぞれ算定できるが、医療保険は算定できないので合議の上決める
- 安全対策委員会などの参加協力の場合、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が参加した場合は算定できない
- 介護サービス事業所等と覚書などを取り交わし、それぞれの役割・実施内容を具体的に取り決める必要がある
- 連携には、実地研修の連携とはちがうということを理解しておく
訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。
この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。
喀痰吸引等を実施する介護サービス事業所と連携するために、訪問看護ステーションや訪問看護師は何か要件を満たさなければなりませんか?