退院時共同指導加算の算定要件と点数【医療保険】

訪問看護ステーションが退院前から患者の在宅療養に関わることは、安全でスムーズな在宅移行を実現するうえで欠かせません。退院前カンファレンスへの参加や共同指導を評価する制度が「退院時共同指導加算」ですが、「誰が算定できるのか」「特別管理指導加算とは何が違うのか」「ICTを使った場合はどうなるか」など、現場では疑問の声を聞くことも多い加算です。

この記事では、医療保険における退院時共同指導加算・特別管理指導加算の点数・算定要件・留意点について、令和8年度(2026年度)診療報酬改定の変更点も踏まえてわかりやすく解説します。算定漏れを防ぎ、退院支援の質を高めるために、ぜひ最後まで読んでください。

この記事でわかること
  • 退院時共同指導加算の定義・点数(8,000円)・算定要件
  • 特別管理指導加算(2,000円)の対象者と令和8年度改定による変更点
  • 月2回算定できる別表第7・別表第8の利用者とは何か
  • ICT(テレビ電話等)を使って算定できる2つの条件
  • 退院支援指導加算との違いと併算定のポイント

退院時共同指導加算とは?訪問看護における役割と意義

退院時共同指導加算とは、主治医の所属する保険医療機関に入院中、または介護老人保健施設・介護医療院に入所中で、退院・退所後に指定訪問看護を受けようとする利用者またはその家族等に対し、訪問看護ステーションの看護師等と入院(入所)施設の職員が退院後の在宅療養について共同で指導を行い、その内容を文書で提供した場合に算定できる加算です(医療保険)。

訪問看護管理療養費の加算として算定され、退院後の初回訪問看護実施日に請求します。なお、医療保険の退院時共同指導加算とは別に、介護保険にも同名の加算(600単位/回)が存在しますが、本記事では医療保険の加算について解説します。

退院前から訪問看護師が関与することで、退院直後のトラブル防止や利用者・家族の安心感向上につながります。また、病院の退院支援ナースや医療ソーシャルワーカーとの顔の見える関係づくりが進み、新規利用者紹介の受け入れ体制強化という経営上のメリットも生まれます。退院時共同指導加算は単なる報酬ではなく、在宅移行の「質」を担保する仕組みととらえることが大切です。

看護師 上妻
看護師 上妻

退院前カンファレンスに参加するだけでなく、指導内容を文書で利用者または家族に提供することが算定の前提になっています。記録の整備と文書提供を忘れずに行いましょう。

訪問看護師と病院スタッフが退院前カンファレンスで打ち合わせをしている様子

退院時共同指導加算の点数・算定要件【令和8年度診療報酬改定対応】

点数

加算名点数(医療保険)
退院時共同指導加算8,000円(1回につき)
特別管理指導加算(退院時共同指導加算に上乗せ)2,000円(1回につき)

算定対象者

以下の施設に入院・入所中で、退院・退所後に指定訪問看護を受けようとする利用者またはその家族等が対象です。

  • 保険医療機関(病院・診療所)に入院中の利用者
  • 介護老人保健施設に入所中の利用者
  • 介護医療院に入所中の利用者

算定要件

以下の要件をすべて満たす必要があります。

POINT|算定要件(必須確認事項)
  • 訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)が実施すること
  • 入院(入所)施設の職員(医師、看護師、または医師・看護師の指示を受けた准看護師)と共同で退院後の在宅療養について指導を行うこと
  • 指導を入院(入所)施設において行うこと(一定の条件を満たせばICTでの参加も可)
  • 指導内容を文書で利用者または家族等に提供すること
  • 指導内容を訪問看護記録書(退院前共同指導書)に記録すること
注意|准看護師の取り扱い

退院時共同指導加算・特別管理指導加算は、准看護師が実施者となる場合は算定できません。共同指導への同席・参加は可能ですが、加算の算定要件を満たすためには看護師等(准看護師を除く)が実施する必要があります。

算定タイミングと算定月の考え方

退院時共同指導加算は、退院後の初回訪問看護実施日に訪問看護管理療養費の加算として算定します。退院前にカンファレンスを行い、その後退院・初回訪問看護の実施というフローになります。

POINT|算定月の前月実施でも算定可

初回訪問看護実施月の前月に退院時共同指導を行った場合も算定できます。たとえば5月に退院前カンファレンスを行い、6月に退院・初回訪問看護を実施した場合、6月のレセプトで退院時共同指導加算を算定することが可能です。

看護師 上妻
看護師 上妻

レセプト請求時のポイントとして、退院前共同指導の実施日・参加者・指導内容と、初回訪問看護実施日の記録を丁寧に残しておくことが大切です。運営指導でも確認されやすい項目ですよ。

特別管理指導加算とは?別表第8の対象者と令和8年度改定の変更点

特別管理指導加算とは、退院時共同指導加算を算定する利用者のうち、特別管理加算が算定できる状態(別表第8)に該当する利用者に対し、さらに上乗せして算定できる加算です(医療保険)。

点数は2,000円で、退院時共同指導加算(8,000円)と合わせると合計10,000円の算定が可能です。退院前から特別な管理が必要な利用者への関与を評価した加算であり、医療依存度の高い利用者を受け入れる訪問看護ステーションにとって重要な収益源となります。

別表第8の対象となる状態一覧

区分対象となる状態
在宅悪性腫瘍等患者指導管理・在宅気管切開患者指導管理を受けている者、または気管カニューレ・留置カテーテルを使用している者
以下のいずれかを受けている者:在宅自己腹膜灌流指導管理/在宅血液透析指導管理/在宅酸素療法指導管理/在宅中心静脈栄養法指導管理/在宅成分栄養経管栄養法指導管理/在宅自己導尿指導管理/在宅人工呼吸指導管理/在宅持続陽圧呼吸療法指導管理/在宅自己疼痛管理指導管理/在宅肺高血圧症患者指導管理/在宅難治性皮膚疾患処置指導管理
人工肛門または人工膀胱を設置している者
真皮を超える褥瘡の状態にある者
在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
令和8年度(2026年度)診療報酬改定のポイント

令和8年度診療報酬改定により、別表第8に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者」が新たに追加されました。難治性皮膚疾患を持つ利用者への手厚いケアの充実を図る観点からの改定で、この追加により特別管理指導加算・特別管理加算の算定対象が広がっています。新規受け入れ時に必ず確認しましょう。

理学療法士等のリハビリ職種でも算定できる?

はい、算定できます。退院時共同指導加算を算定する利用者が別表第8の対象状態であれば、理学療法士等のリハビリ職種が退院時共同指導を実施した場合でも特別管理指導加算を算定できます。担当者が看護師以外であっても、利用者の状態が別表第8に該当していれば問題ありません。

訪問看護師が患者宅で医療機器の使用方法を確認している様子

月2回算定できるケース|別表第7・別表第8の利用者

退院時共同指導加算は1人の利用者につき原則1回の算定ですが、別表第7または別表第8に該当する利用者については、複数日に退院時共同指導を実施した場合に限り、月2回まで算定することが可能です。

別表第7(厚生労働大臣が定める疾病等)

以下の疾病等を持つ利用者が別表第7の対象です。これらの利用者は、医療保険で週4日以上の訪問看護が認められる対象者でもあります。

  • 末期の悪性腫瘍 / 多発性硬化症 / 重症筋無力症
  • スモン / 筋萎縮性側索硬化症(ALS)/ 脊髄小脳変性症
  • ハンチントン病 / 進行性筋ジストロフィー症
  • パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病含む)
  • 多系統萎縮症 / プリオン病 / 亜急性硬化性全脳炎
  • ライソゾーム病 / 副腎白質ジストロフィー
  • 脊髄性筋萎縮症 / 球脊髄性筋萎縮症
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 / 後天性免疫不全症候群
  • 頸髄損傷 / 人工呼吸器を使用している状態

月2回算定時のポイント

POINT|月2回算定・複数ステーションへの対応

月2回算定できる利用者に対して複数の訪問看護ステーションが訪問看護を行う場合、それぞれが1回ずつ算定することも可能です。ただし同日の算定はできず、それぞれのステーションが別の日に退院時共同指導を実施することが必要です。

注意

月2回算定できるのは「複数の異なる日に実施した場合のみ」です。同じ日に複数回実施しても月2回にはなりません。

ICTを活用した退院時共同指導加算の算定

訪問看護師が入院施設に直接赴くことが難しい場合でも、一定の条件のもとでテレビ電話等のICTを活用した退院時共同指導が認められています(平成30年度診療報酬改定より)。ICTを活用できるのは以下の2つのケースです。

  1. 医療を行っている医療資源の少ない地域の場合 利用者が入院中の保険医療機関または訪問看護ステーションのいずれかが、医療資源の少ない地域に属している場合(ただし特定機能病院・許可病床400床以上の病院・DPC対象病院・急性期一般入院料1のみを届け出ている病院は除く)で、やむを得ない事情により訪問看護ステーションの看護師等(准看護師除く)が入院施設に赴くことができないとき、リアルタイムのビデオ通話を使って参加した場合でも算定可能。
  2. 3者以上が共同で指導を行う場合 医師・看護職員・歯科医師・歯科衛生士・薬剤師・訪問看護師・ケアマネジャー・相談支援専門員のうち3者以上が共同で指導を行う場合において、やむを得ない事情により訪問看護ステーションの看護師等(准看護師除く)が入院施設に赴くことができないとき、ビデオ通話での参加でも算定可能。ただし、この場合でも2者以上は利用者が入院している施設に赴いて共同指導していることが必要。
ICT活用時の注意事項
  • 利用者の個人情報をビデオ通話の画面上で共有する際は、利用者の同意を得ることが必要
  • 保険医療機関の電子カルテ等を含む医療情報システムと共通のネットワーク上の端末を使用する場合は、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への対応が求められる
看護師 上妻
看護師 上妻

ICT活用はあくまでも「やむを得ない事情がある場合」が前提です。原則は入院施設での対面共同指導ですので、まず現地参加を検討し、困難な場合のみICTを活用するという流れで整理しましょう。

退院時共同指導加算の主な留意点まとめ

算定漏れや返戻を防ぐため、以下の留意点を確認しておきましょう。

項目内容
算定回数原則月1回(別表第7または別表第8の利用者は月2回可)
算定タイミング退院後の初回訪問看護実施日(前月実施分も算定可)
実施者看護師等(准看護師を除く)
必要書類指導内容を文書で利用者等に提供、訪問看護記録書への記録
特別の関係特別の関係にある保険医療機関等でも算定可(平成30年度改定以降)
複数ステーション月2回算定可能な利用者の場合、複数STが1回ずつ算定も可
「特別の関係」でも算定可(平成30年度改定以降)

平成30年度改定により、特別の関係にある保険医療機関等(同一法人が運営する病院と訪問看護ステーションなど)でも退院時共同指導加算が算定できるようになりました。以前は算定できなかったため、自法人グループ内での連携がある場合は算定漏れがないか改めて確認しましょう。

退院支援指導加算との違い|比較表で整理しよう

退院時共同指導加算と混同されやすいものに「退院支援指導加算」があります。両者は算定タイミングと実施場所が大きく異なり、要件を満たせば両方を併算定することも可能です。両加算を組み合わせて算定することで、退院支援にかかる報酬を最大化できます。

項目退院時共同指導加算退院支援指導加算
実施タイミング退院前(入院中)退院日当日
実施場所入院(入所)施設内(またはICT参加)利用者の居宅(自宅)
主な目的在宅療養計画の共有・指導退院直後の環境整備・指導
点数8,000円/回
(特別管理指導加算 +2,000円)
通常6,000円/回
(90分超の長時間:8,400円/回)
算定回数原則1回(特例2回)退院日に1回のみ
併算定退院支援指導加算と併算定可退院時共同指導加算と併算定可
看護師 上妻
看護師 上妻

退院時共同指導加算は「退院前の病院でのカンファ」、退院支援指導加算は「退院当日の自宅での指導」とイメージするとわかりやすいですね。両加算と特別管理指導加算を組み合わせると、最大で20,400円の算定(8,000円+2,000円+8,400円)も可能になります。算定要件を丁寧に確認しましょう。

よくある質問(FAQ)

退院時共同指導加算はいつ算定(請求)するのですか?

退院後の初回訪問看護実施日に、訪問看護管理療養費の加算として算定(請求)します。退院時共同指導自体は退院前に行いますが、レセプト請求は初回訪問看護を実施した月に行います。退院時共同指導を実施した月の前月が初回訪問看護月となる場合も算定できます。

准看護師が退院時共同指導を実施した場合、加算は算定できますか?

算定できません。退院時共同指導加算・特別管理指導加算ともに、看護師等(准看護師を除く)が実施した場合のみ算定対象となります。ただし、准看護師が共同指導に同席・参加すること自体は認められています。

特別管理指導加算は理学療法士等のリハビリ職種でも算定できますか?

はい、算定できます。退院時共同指導加算の算定が前提となりますが、理学療法士等のリハビリ職種が退院時共同指導を行った場合でも、利用者が別表第8に該当する状態であれば特別管理指導加算を算定できます

退院日当日に退院時共同指導を実施した場合も算定できますか?

退院当日に実施した場合でも、退院前に共同指導を行ったと認められる場合は算定可能です。ただし、入院施設において実施したことが記録から確認できることが必要です。なお、退院日当日の訪問看護基本療養費・訪問看護管理療養費は算定できませんのでご注意ください。

月2回算定できる利用者はどのような方ですか?

別表第7(末期の悪性腫瘍やALS等の厚生労働大臣が定める疾病等)または別表第8(特別管理加算の対象となる状態)に該当する利用者について、複数日に退院時共同指導を実施した場合に限り月2回の算定が可能です。同じ日の複数回実施では月2回にはなりません。

退院時共同指導加算に届出は必要ですか?

届出は不要です。退院時共同指導加算・特別管理指導加算ともに、施設基準の届出は必要とされていません。算定要件を満たせばその都度算定できます。

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まとめ|退院時共同指導加算を確実に算定・活用するために

退院時共同指導加算・特別管理指導加算は、入院中から訪問看護が関与することで利用者の安全な在宅移行を支えながら、ステーションの収益にも直結する重要な加算です。令和8年度改定では別表第8に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が追加されるなど、対象となる利用者の幅も広がっています。退院前から積極的に病院連携を進め、算定漏れのない体制を整えることが経営安定につながります。

この記事のまとめ
  • 退院時共同指導加算は8,000円/回。看護師等(准看護師除く)が入院施設の職員と共同指導し、内容を文書提供した場合に算定。算定は初回訪問看護実施日
  • 特別管理指導加算は2,000円/回(上乗せ)。別表第8に該当する状態の利用者が対象。令和8年度改定で「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が対象に追加された
  • 別表第7・別表第8対象者は月2回算定可能(複数日実施の場合のみ)。複数の訪問看護ステーションが1回ずつ算定することも可能
  • ICTでの実施は「医療資源の少ない地域」または「3者以上の共同指導」の場合に認められる。利用者の同意が必要
  • 退院支援指導加算(退院当日・自宅での指導)との併算定が可能。組み合わせると最大20,400円の算定も実現できる
  • 届出不要。算定要件を満たした都度算定可。記録の整備と文書提供が算定の要件

退院前からの丁寧な関わりが利用者・家族の安心につながります。記録管理と病院連携体制をしっかり整え、算定漏れのない運営を目指しましょう。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。