医師の訪問看護師への態度により訪問看護師の自尊心が低くなったり、医師へ積極的に報告しにくい、連絡しにくい、相談をしにくいという悩みはどこのステーションもあるといわれています。
これはなぜかというと、看護教育は医師が看護師を教育するという体制が築かれてきた歴史があり、これが今の看護師と医師の関係性にも影響があるようなのです。
在宅療養支援診療所は、年々増加傾向にあります。今後は訪問診療医との連携も、より増えてくると思います。
スムーズに訪問診療医と連携をとれるコツがあるとすれば、知りたいと思いませんか?
私は、在宅専門クリニックで働いていた経験があり、実際に訪問診療医に同行していた経験があります。現在は訪問看護師ですので、訪問看護の立場で「訪問診療医との連携4つのコツ」をお伝えしていこうと思います。
訪問看護に携わるみなさんが、訪問診療医とスムーズに連携をとれるようお役に立てれば幸いです!
目次
訪問診療医の1日のスケジュール
訪問診療医は、だいたい午前に5~8件、午後も5~8件の患者さんに訪問診療をおこないます。
在宅に訪問に行くのか、施設に訪問に行くのかで、訪問件数には差があります。
在宅であれば訪問看護と同じように移動時間がかかりますので、訪問件数は少数となります。施設の場合は、同じ施設内で回れるため移動時間はかかりませんので、在宅だけの訪問よりも数多く訪問できます。
私が働いていた在宅クリニックでは、毎日在宅訪問と施設訪問をミックスさせて訪問診療をしていました。
クリニックによると思いますが、訪問患者担当数は医師ひとりにつき60~80人程度の患者さんを担当していると思います。私が働いていた在宅クリニックでは医師ひとりにつき100~150人の患者さんを担当されていました。これはかなり多いほうだと思います。
では、訪問診療医はどのようなタイムスケジュールで動いているのでしょうか?
以下に、訪問診療医の1日のスケジュールをご紹介します。
1日のスケジュールを見てもらったらわかるように、訪問診療医はハードスケジュールです。
訪問診療中も、その日に訪問する患者さん以外で急な病状の変化などがあれば、まず電話で対応し、必要であれば当日の訪問診療の合間をぬって往診もしています。
訪問診療:医学的管理のもと定期的に自宅に伺い、定期的かつ計画的に健康管理を行うことです。
往診:計画的な訪問でなく、急な病状の変化があったときに自宅に訪問し診療することです。
このスケジュールを見ると、なかなか連絡が取れない理由もわかりますね。
訪問診療医との連携~4つのコツ~
訪問看護師が訪問診療医と連携をとらなければならない場合というのは、退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取りだと思います。
こんなハードスケジュールの訪問診療医とスムーズに連携をとる4つのコツについて、紹介していきます。
コツ①:訪問診療医と連絡がつく時間帯を知る
訪問看護をおこなうにあたり、訪問診療医と連携を取ることは必須です。
訪問診療医の連絡取りやすい時間帯を知っておくと、利用者さんにもご迷惑をおかけすることなく、医師も看護側もお互いに業務がまわりやすいですよね。
多忙な訪問診療医とスムーズに連絡が取れる時間帯は、
① 朝のミーティングの後 ②昼の休憩時間 ③訪問診療から戻ってくる17時以降
だいたいこの3つの時間帯になると思います。
朝のミーティングの後は、訪問診療に出発する前に少し時間があります。この時間帯は、同行する看護師や職員もまだクリニックに滞在しており、連絡すると比較的医師につないでもらいやすい時間帯になりますね。
クリニックにもよると思いますが、訪問診療医は午前の診療が終わると一旦クリニックに戻ってきますので、この時間帯も比較的、連絡はとりやすいと思います。
ただ、医師のお昼休憩時間にもなりますので考慮も必要です。
午後の訪問診療が終わると、訪問診療医がクリニックに戻ってくる時間はだいたい17時以降になります。
17時以降は書類作成や電子カルテ入力などの事務処理や多職種に連絡している時間帯になりますので、この時間帯が一番連絡がつきやすいかと思います。
連絡しやすい時間帯はありますが、利用者さんに急を要する場合は、訪問診療中であっても遠慮なく連絡してかまいません。
訪問診療中の緊急時の連絡は、同行している看護師や職員に連絡がいくようになっており、訪問診療後すぐに医師に伝えています。
医師は報告内容を聞いて、訪問診察したほうがよいと判断した場合は、予定の訪問診療が終わった後に往診という形で訪問しに行き、診察します。
コツ②:情報共有するツールをうまく活用する
スムーズに利用者さんの情報を訪問診療医と共有するためには、訪問看護師は的確なフィジカルアセスメントをおこない、看護師の判断を医師に伝えることが重要です。
情報共有するツールとしては以下の方法があります。
・利用者さん宅のノート、連絡帳
・電話(電話連絡する時間帯は上に書いた記事を参照してください。)
・メール(メールは時間帯を気にしませんが、メールをチェックしているのかは確認が必要です。)
・FAX(FAXする前に、送信することをひとこと伝えておくと見てくれる確率が上がります。)
・訪問(直接クリニックに訪問し、医師と面談し情報共有をします。)
・クラウド型電子カルテ(最近はICTの利用が多くなってきました。)
情報共有するには、訪問診療医それぞれに合うツールを見極め、スムーズに連携をとれるように適切なツール選択をしていくことが大切ですね。
つぎに、訪問診療医と情報共有するためのポイントをお伝えします。
・伝えたいことは状況を細かく文字にし、まとめておく。
・利用者さんに今後起こりうる症状を予測し、事前指示や包括的指示をもらっておく。(例えば、発熱時の指示や疼痛時の指示、看取りの対応指示など)
・利用者さんやご家族の希望や意向を代弁し、看護師からみた視点もいれ伝える。
・看取りに適した医師を確保し、調整しておく。(夜間も対応が早く、適切に対応してくれるなど)
・勉強会やカンファレンスをおこなう。(有意義な情報共有となる)
コツ③:信頼関係を築く
訪問看護師と訪問診療医はなかなか顔を合わせることがありませんので、関係性もやや希薄になりがちです。
まずはお互いを知ってもらうためにも、顔を合わせることが信頼関係を築くための第一歩です。
医師の訪問診療時に、訪問看護師は利用者さんのところへ一緒に同行したり、一緒に受診したりする機会をもつようにすると訪問診療医との関係も縮まるのではないでしょうか。
また、訪問診療医の訪問診療日前日や2、3日前くらいに、利用者さんの情報を訪問看護側から伝えておくという方法もよいかと思います。訪問診療医も診療前に患者さんの状態を把握でき、診療当日は診察しやすくなります。
訪問診療医に進言する際の伝え方の工夫への配慮も必要です。医師も人間ですので、言い方ひとつでコミュニケーションが困難になったり、スムーズになることがあります。
訪問診療医に訪問看護師のできることを伝えて、アピールすることもよいと思います。訪問看護ができる範囲を理解していない訪問診療医も多いので、訪問看護師のできることをアピールしておき、知ってもらうことは信頼関係を築く上で大事です。
コツ④:ケアの方向性を決める
利用者さんの訪問看護が開始となれば、訪問診療医の考えや治療方針を聞き、ケアの方向性を決めておくとよいと思います。
利用者さんやご家族の希望や意向をふまえ、医師の考えや方針を聞き出しましょう。聞き出した際は記録に残し、みんなで共有することも忘れずにおこないましょう。
医師の考えや方針がわかれば、それに対して必要であれば利用者さんから事前指示書をもらっておくとよいかと思います。
事前指示は、具体的な医療行為を決めることです。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)といわれるものですが、例えば、利用者さん自身が意思疎通が取れなくなった場合に、人工呼吸をするのか胃ろうをいれるのかなどの事前の確認と、万が一なにかあったら誰に聞くのかという代理人の指名があります。どのような医療やケアを受けたいか、受けたくないかなど記載した書面を作成しておくというものです。
訪問診療医と、利用者さんの事前指示書に沿ったケアの方向性を決め、利用者さん主体の訪問看護をおこなえることが理想ですね。
まとめ
今回は、「訪問診療医との連携のコツ」についてお伝えしました。
訪問診療医と訪問看護師との連携体制については、まだまだ課題が多くあると思います。
しかし、在宅医療はあくまで主役は利用者さん、患者さんです。このことを忘れず、私たち訪問看護師は、利用者さんや家族の意向を十分にふまえた上で医師との連携の要となり、支援することを大切にしていきたいですね!
ビジケアでは、訪問看護に関する多種多様な情報を発信しています。訪問看護を学びたい方は、ぜひビジケアで一緒に知見を広げていきましょう!