「訪問看護と訪問介護、同じ時間に来てもらうことはできますか?」——入浴介助など、1人で対応するのが難しい場面で、利用者やご家族からこう相談されることがあります。原則は同一時間帯にひとつの訪問サービスを利用することですが、例外的に併用が認められるケースもあります。
この記事では、訪問看護と訪問介護の同一時間帯併用について、厚生労働省のQ&Aをもとに、認められる条件と具体的な事例、判断に迷ったときの相談先まで整理して解説します。
- 訪問系サービスの利用に関する原則
- 同一時間帯の併用が例外的に認められる条件
- 併用が想定される具体的な場面(入浴介助など)
- 判断に迷ったときの確認・相談の進め方
目次
訪問系サービスは同一時間帯にひとつが原則
介護保険の訪問系サービス(訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーションなど)は、利用者が同一時間帯にひとつの訪問サービスを利用することを原則としています。これは、複数の訪問系サービスが同時に提供されることで、給付管理や役割分担が不明確になることを防ぐための考え方です。
そのため、通常はケアプラン上、訪問介護と訪問看護が同じ時間帯に重ならないよう、時間をずらして計画されます。

原則を知らないままケアプランを見ると「なぜ時間を分けているのだろう」と疑問に思うかもしれませんが、これは制度上の基本ルールなんです。まずはこの原則をおさえておきましょう。

例外的に併用が認められる条件
厚生労働省への照会(介護保険最新情報でのQ&A)によると、利用者の心身の状況や介護の内容に応じて、同一時間帯に利用することが介護のために必要であると認められる場合に限り、それぞれの所定単位数を算定できるとされています。
ここで示されている「入浴介助」はあくまで一例であり、この文言以外にも、利用者の状態から同一時間帯の利用が必要と判断できる場合はあり得るとされています。つまり、条件は限定列挙ではなく、個別の状況判断に委ねられているのが実情です。
「併用が認められるかどうか」は、サービスの組み合わせそのものではなく、「その利用者にとって同一時間帯の対応が本当に必要かどうか」という個別事情によって判断されます。
併用が想定される具体的な場面
実際に同一時間帯の併用が検討される代表的な場面には、次のようなものがあります。
| 場面 | 併用が検討される理由 |
|---|---|
| 浴槽での全身入浴介助 | 体重が重い利用者や、医療的な観察が必要な利用者の入浴で、看護職員と介護職員が同時に対応することで安全性が高まる |
| リフトを使用した移乗介護 | 医療機器を装着している利用者の移乗で、複数名での対応が必要と判断される場合がある |
| 医療処置と並行した身体介護 | 点滴や酸素療法など医療的管理をしながら、同時に身体介護(体位変換等)が必要な場合 |
これらはあくまで一般的に想定される例であり、実際に併用が認められるかどうかは、利用者ごとの心身の状況や、ケアプラン上の位置づけによって個別に判断されます。
食事介護や、リフトを使用した移乗介護のように、併用の必要性が明確でないケースもあります。判断に迷う場合は、自己判断で進めず、ケアマネジャーに相談したうえで自治体(保険者)に確認することが推奨されています。

判断に迷ったときの相談・確認の進め方
同一時間帯の併用を検討する場合、次のステップで進めると判断のプロセスが明確になります。
- 必要性を具体的に整理する「なぜ同時対応が必要なのか」を、利用者の身体状況・リスクの観点から具体的に言語化する。
- ケアマネジャーに相談する訪問介護・訪問看護それぞれの事業所から、必要性の根拠をケアマネジャーに伝え、ケアプランへの位置づけを検討してもらう。
- 保険者(自治体)に確認する判断が難しいケースについては、ケアマネジャーを通じて市区町村の介護保険担当窓口に確認する。
- 記録に残す併用が必要と判断した理由、確認した内容を記録に残し、実地指導等の際に説明できるようにしておく。

「入浴介助だから大丈夫」と決めつけず、その利用者さんにとって本当に同時対応が必要な理由を説明できるようにしておくことが、後々のトラブル防止につながります。
他の訪問系サービスとの組み合わせについて
今回取り上げた訪問介護と訪問看護の併用と同様の考え方は、訪問介護と訪問リハビリテーションの組み合わせにも当てはまります。いずれの組み合わせでも、「同一時間帯の利用が介護のために必要と認められるか」という判断基準は共通しています。
また、区分が異なるサービス同士(例:訪問看護と訪問入浴介護)の組み合わせについては、それぞれのサービスの目的が重複しないよう、個別の取り扱いを保険者に確認することが望ましいとされています。
医療保険の訪問看護を利用している場合は、そもそも介護保険の限度額管理の対象外となるため、この記事で扱った「同一時間帯の併用」の考え方が直接あてはまらないケースもあります。利用者がどちらの保険で訪問看護を受けているかによって、確認すべきポイントが変わってくる点にも注意しておきましょう。
なぜ「同一時間帯にひとつ」が原則とされているのか
この原則の背景には、介護保険サービスの給付管理の考え方があります。訪問系サービスは、要介護度ごとに設定された区分支給限度基準額の範囲内で組み合わせて利用する仕組みになっており、ケアマネジャーはこの限度額の中で、利用者に必要なサービスを過不足なく配分します。
もし同一時間帯に複数の訪問系サービスを自由に組み合わせられるとすると、限られた時間の中でサービスが重複し、限度額を圧迫しやすくなるほか、「その時間帯に本当は何が行われていたのか」という記録・管理も複雑になります。こうした理由から、まずは時間を分けて利用することが基本とされ、必要性が明確な場合に限って例外的な併用が認められる、という制度設計になっています。
「同一時間帯の併用=特別な許可が必要な例外」という位置づけを理解しておくと、なぜケアマネジャーや保険者への確認が重視されるのかが腑に落ちやすくなります。
ケアプランへの記載・記録のポイント
同一時間帯の併用が認められた場合、ケアプランや訪問看護記録にどのように残しておくべきかも実務上重要なポイントです。
- ケアプランの「サービス内容」欄に、併用が必要な理由(例:入浴介助における安全確保のため)を具体的に記載する
- 訪問看護記録・訪問介護記録の双方に、同時間帯に対応した旨と、それぞれが担った役割(看護職員は医療的観察、介護職員は身体介護など)を記載する
- サービス担当者会議の記録に、併用の必要性について多職種で確認した経緯を残す
これらの記録を整えておくことで、実地指導の際にも、同一時間帯の併用が制度の趣旨に沿った適正なものであることを説明しやすくなります。

記録は「あとで振り返って説明できるかどうか」を意識してつけるようにしています。併用の理由がその場では明らかでも、数か月後に見返すと分からなくなってしまうこともあるので、具体的に書き残すことが大切です。
よくある質問
入浴介助以外でも同一時間帯の併用は認められますか?
厚生労働省のQ&Aで示されている入浴介助はあくまで一例であり、それ以外にも利用者の心身の状況や介護の内容に応じて同一時間帯の利用が必要と認められる場合はあり得るとされています。個別の状況に応じてケアマネジャー・保険者に確認することが必要です。
併用を希望する場合、誰に相談すればいいですか?
まずはケアマネジャーに相談するのが基本です。判断が難しい場合は、ケアマネジャーを通じて市区町村の介護保険担当窓口(保険者)に確認する流れが一般的です。
併用が認められた場合、それぞれの単位数はどうなりますか?
同一時間帯の利用が介護のために必要と認められた場合は、訪問介護・訪問看護それぞれの所定単位数を算定できるとされています。単位数が減額されるといった特別な調整があるわけではありません。
自己判断で併用してしまった場合、どうなりますか?
必要性の根拠が明確でないまま併用した場合、実地指導等で説明を求められ、算定の妥当性が問われる可能性があります。事前にケアマネジャー・保険者へ確認し、判断の根拠を記録に残しておくことをおすすめします。
医療保険の訪問看護でも同じルールが適用されますか?
この記事で扱った同一時間帯の併用の考え方は、主に介護保険の限度額管理の文脈で整理されているものです。医療保険の訪問看護を利用している場合は、区分支給限度基準額の対象外となるため、別の観点から確認が必要になります。訪問看護指示書の内容や、他サービスとの兼ね合いについては、あらためて保険者・ケアマネジャーに確認することをおすすめします。

まとめ|原則は時間を分ける、必要性があれば例外的に併用可能
訪問看護と訪問介護は、原則として同一時間帯にひとつのサービスを利用する仕組みですが、利用者の心身の状況や介護の内容から同一時間帯の対応が必要と認められる場合は、例外的に併用が可能です。
- 訪問系サービスは同一時間帯にひとつの利用が原則
- 介護のために同一時間帯の対応が必要と認められる場合は例外的に併用できる
- 入浴介助は一例であり、他の場面でも個別の状況次第で併用が認められることがある
- 判断に迷ったらケアマネジャー・保険者に確認し、根拠を記録に残す
利用者の安全と適正なサービス利用を両立させるためにも、併用を検討する際は多職種で丁寧に確認し合いましょう。制度の趣旨を理解したうえで判断すれば、必要な場面で自信を持って併用を提案できるようになります。
この取り扱いは厚生労働省への照会結果を踏まえた自治体通知に基づくものです。個別のケースでの適用可否は、必ず所轄の保険者にご確認ください。












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