医療保険で訪問看護を利用する場合、その料金は「基本療養費」「管理療養費」「各種加算」の組み合わせで決まります。仕組みを正しく理解していないと、請求時の計算ミスや利用者への説明不足につながりかねません。特に改定のタイミングでは金額や区分が変わるため、最新情報のキャッチアップが欠かせません。
この記事では、訪問看護基本療養費・管理療養費の仕組みと料金を、令和8年度改定のポイント、具体例を交えてわかりやすく解説します。
- 医療保険の訪問看護料金の全体構造
- 訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の違いと料金
- 訪問看護管理療養費(機能強化型別)の料金
- 令和8年度改定のポイント
- 具体例で見る1回あたりの料金計算
目次
医療保険の訪問看護料金の全体構造
医療保険で訪問看護を利用する場合の料金は、「訪問看護基本療養費」+「訪問看護管理療養費」+各種加算の合計で決まります。基本療養費は訪問1回あたりの基本料金、管理療養費はステーションの体制を評価する月額の費用という位置づけです。この2つに加えて、緊急時対応や24時間対応体制などの各種加算が上乗せされる形で、最終的な請求額が確定します。
訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の違い
訪問看護基本療養費には3つの区分があります。
| 区分 | 対象 |
|---|---|
| 基本療養費(Ⅰ) | 同一建物居住者以外の利用者への訪問(もっとも一般的なケース) |
| 基本療養費(Ⅱ) | 同一建物に複数の利用者が居住している場合の訪問 |
| 基本療養費(Ⅲ) | 入院中の外泊時に、在宅療養に向けて訪問看護を行う場合 |
実務上は、ほとんどのケースで基本療養費(Ⅰ)を算定することになり、多くのステーションで日常的に扱う区分です。看護師等が訪問する場合、週の訪問回数によって単価が変わり、週3日目までは5,550円、週4日目以降は6,550円が目安です。准看護師等が訪問する場合は、これより低い単価(週3日目まで5,050円、週4日目以降6,050円程度)となります。訪問した職種によって単価が変わるため、レセプト作成時には誰が訪問したかを正確に反映させる必要があります。

基本療養費(Ⅱ)は同一建物の人数によって単価が細かく分かれています。サービス付き高齢者向け住宅など、集合住宅への訪問が多いステーションは特に注意して確認しておきたいポイントですね。

訪問看護管理療養費の料金(機能強化型別)
訪問看護管理療養費は、月の初日と2日目以降で単価が分かれ、さらに機能強化型の区分によって金額が変わります。令和8年度改定後の目安は次のとおりです。
| 区分 | 月の初日 |
|---|---|
| 機能強化型1 | 13,760円 |
| 機能強化型2 | 10,460円 |
| 機能強化型3 | 9,030円 |
| 機能強化型4(令和8年度改定で新設) | 9,030円 |
| その他(機能強化型でない場合) | 7,710円 |
月の2日目以降は、単一建物居住者の人数や訪問日数に応じてさらに細分化された単価(おおむね2,000円台〜3,000円程度)が設定されています。
機能強化型4は精神科訪問看護において支援ニーズの高い利用者を受け入れ、24時間対応や地域の関係機関との連携体制が整備されているステーションを評価する新しい区分です。精神科訪問看護に力を入れているステーションは、この区分の要件を満たせるかを確認する価値があります。

令和8年度改定のポイント
令和8年度の診療報酬改定では、訪問看護基本療養費(Ⅱ)に関して「適切な時間の指定訪問看護」の定義が明確化されました。具体的には、30分以上を標準とし、20分を下回らないことが求められています。
また、同一建物の範囲について、同一敷地内の建物も同一建物とみなす規定に見直されました。これにより、同一敷地内に複数の建物がある集合住宅等への訪問についても、基本療養費(Ⅱ)の対象として扱われる可能性が高まっています。
同一敷地内の複数建物を1つの「同一建物」として扱う見直しは、これまで基本療養費(Ⅰ)として算定していたケースが、改定後は基本療養費(Ⅱ)の対象になる可能性があることを意味します。特にサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなど、複数棟で構成される施設への訪問が多いステーションは影響を受けやすい点に注意しましょう。該当しそうな利用者がいる場合は、算定区分を見直しておきましょう。
具体例で見る1回あたりの料金
実際にどのように計算されるのか、機能強化型2のステーションを例に見てみましょう。
| 訪問日 | 計算例 | 合計 |
|---|---|---|
| 月初の訪問(例:4月3日) | 管理療養費10,460円+基本療養費(Ⅰ)5,550円 | 16,010円 |
| 2日目以降の訪問(例:4月10日) | 管理療養費(2日目以降の単価)+基本療養費(Ⅰ)5,550円 | 基本療養費と合わせて8,000円台の目安 |
この例のとおり、月初の訪問は管理療養費が満額で算定される一方、2日目以降は単価が下がるため、月の中でも訪問日によって合計額が変わります。この仕組みを理解していないと、月ごとの請求額のばらつきを利用者に説明する際に困ることもあります。実際の請求では、このほかに緊急訪問看護加算や24時間対応体制加算などの各種加算が加わることもあり、月ごとの合計額はケースバイケースで変動します。
機能強化型の区分とは何か
機能強化型訪問看護管理療養費は、単に訪問看護を提供するだけでなく、重症度の高い利用者の受け入れ実績、24時間対応体制、地域の医療機関・他のステーションとの連携実績など、体制の充実度に応じて評価される仕組みです。機能強化型1が最も要件が厳しく評価も高い一方、その他(機能強化型に該当しない)ステーションとの間には料金差が生じます。届出の維持には、実績報告や体制の継続的な整備が求められます。
令和8年度改定で新設された機能強化型4は、精神科訪問看護における支援ニーズの高い利用者の受け入れと、地域の関係機関との連携体制を評価する区分です。精神科訪問看護に力を入れているステーションにとっては、新たな選択肢となります。

機能強化型の届出は、単価が上がる分、満たすべき要件も相応に増えます。自事業所の実態と照らし合わせて、無理なく維持できる区分を選ぶことが大切ですね。
請求実務で確認しておきたいチェックポイント
訪問看護の料金計算・請求を行う際は、次の点を確認しておくと計算ミスを防ぎやすくなります。
- 利用者の居住形態(同一建物居住者かどうか)を正しく把握しているか
- 訪問した看護師等の職種(看護師・准看護師・理学療法士等)に応じた単価を適用しているか
- 自ステーションの機能強化型の届出区分と、月初・2日目以降の単価を正しく反映しているか
- 緊急訪問看護加算・24時間対応体制加算等、該当する加算を漏れなく算定しているか
- 同一敷地内の建物の扱いなど、直近の改定内容が請求システムに反映されているか
診療報酬改定はおおむね2年ごとに行われ、金額や算定要件が見直されます。請求ソフトのアップデート状況や、最新の告示内容を定期的に確認する体制を整えておきましょう。事務担当者と管理者の間で、改定情報の共有ルールを決めておくと安心です。
よくある質問
訪問看護基本療養費と管理療養費の違いは何ですか?
基本療養費は訪問1回あたりの基本料金、管理療養費はステーションの体制を評価する月額の費用です。実際の請求は、この2つに各種加算を加えた合計額になります。
ほとんどのケースで算定するのはどの基本療養費ですか?
同一建物居住者以外の利用者への訪問である基本療養費(Ⅰ)がもっとも一般的です。同一建物に複数の利用者がいる場合は基本療養費(Ⅱ)、入院中の外泊時は基本療養費(Ⅲ)が対象になります。
令和8年度改定で何が変わりましたか?
「適切な時間の指定訪問看護」の定義明確化(30分以上を標準とし20分を下回らない)、同一敷地内の建物も同一建物とみなす規定への見直し、機能強化型訪問看護管理療養費4の新設などが行われました。
機能強化型4はどのようなステーションが対象ですか?
精神科訪問看護において支援ニーズの高い利用者を受け入れ、24時間対応体制や地域の関係機関との連携体制が整備されているステーションが対象です。令和8年度改定で新設された区分です。
訪問看護管理療養費は毎月固定額ですか?
いいえ。月の初日は満額が算定されますが、2日目以降は単一建物居住者の人数や訪問日数に応じて単価が下がる仕組みになっています。訪問日によって合計額が変動する点に注意が必要です。

まとめ|3つの要素の組み合わせで料金が決まる仕組みを理解しよう
医療保険の訪問看護料金は、基本療養費・管理療養費・各種加算の3つの要素が組み合わさって決まります。それぞれの区分・単価を正確に把握し、改定のたびに最新情報へアップデートしておくことが、正しい請求と経営の安定につながります。
- 料金は「基本療養費+管理療養費+各種加算」で構成される
- 基本療養費は3区分(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)、多くは(Ⅰ)を算定する(准看護師は単価が異なる)
- 管理療養費は機能強化型の区分・月初か2日目以降かで金額が大きく変わる
- 令和8年度改定で時間の定義明確化・同一建物範囲の見直し・機能強化型4新設が行われた
- 実際の請求額は月の中でも訪問日・利用者の居住形態によって変動する
機能強化型4の詳細な要件、24時間対応体制加算・緊急訪問看護加算の算定要件については、関連記事もあわせてご確認ください。























