1986年、精神科訪問看護が診療報酬の対象となり、現在では精神科訪問看護を実施する訪問看護事業所が増えてきました。
精神科訪問看護のイメージは、どのようなものですか?
精神科訪問看護は「大変、きつい!」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は精神科訪問看護を行う筆者が「精神科訪問看護はきつい」と感じたポイントを解説します。
精神科訪問看護にチャレンジしたいと考えている看護師さんや、精神科訪問看護で行き詰まっている看護師さんは、ぜひ参考にしてください!
目次
精神科訪問看護とは?
精神科訪問看護とは、精神科医から交付される精神科訪問看護指示書により行われる精神疾患を有する利用者さんへの訪問看護をいいます。
令和元年7月の厚生労働省の資料によると、精神科訪問看護を利用する利用者さんの半数以上は統合失調症であることがわかります。
また、気分障害(うつ病)を抱える利用者さんも多くいらっしゃいます。
実際のケア内容は、以下のような内容です。
精神科訪問看護はきつい?
精神疾患は身体的な疾患と異なり、目に見えて改善していると評価することが難しい領域です。
一進一退の日々が長く続くこともあったり、時には一切コミュニケーションが図れなかったり、家にあげていただけないということもあります。
しかし、利用者さんとの信頼関係を築くことができたと感じる時や、症状が徐々に落ち着き自立への支援ができた時には大きな喜びや達成感を感じることができます。
このように、精神科訪問看護は「きつい」と感じることもある簡単ではない仕事です。
では、精神科訪問看護ではどのような場面を「きつい」と感じるのでしょうか。
精神科訪問看護が「きつい」と感じるポイントを、次の項目で解説します。
精神科訪問看護をきついと感じたポイント
利用者さんとの会話が続かない
利用者さんとのコミュニケーションを図る際に、短い返答だったり返答がなかったりすることがあります。
利用者さんの中には精神症状や服薬による影響で円滑な会話が困難な方がいます。
無言の時間が続くと、自分のコミュニケーション能力が低いからだと落ち込んでしまう看護師さんがいます。
会話が続かず利用者さんとの関係性が築くことができていないと感じ、とても焦ってしまうこともあります。
訪問のたびに同様のことが続くと、「精神科の訪問看護には向いていないのかな。」と辛くなってしまいます。
利用者さん主体のペースになりがち
精神疾患を抱える利用者さんの中には、考えがうまくまとまらず質問した内容と異なる方向に話が逸れてしまうことがあります。
限られた訪問時間の中で、利用者さんの話を傾聴しつつ話題の方向性をリードする技術は、とても重要です。
軌道修正しながら情報収集することに不慣れな場合、利用者さん主体のペースになりがちです。
結果的に必要な情報収集やアセスメントが不足し、看護師自身の力を発揮できず「私にはできない。精神科の利用者さんは苦手だ!」と、やりがいを見出せなくなってしまうことがあります。
時には暴力的な時がある
精神症状の悪化により、易怒的な利用者さんの対応をすることがあります。
利用者さんの体調によっては自己抑制が効きにくく、感情的になってしまうこともあるのが精神疾患の特徴と言えます。
さらに悪化した場合には、自傷他害のリスクを伴う場合もあります。
普段安定している利用者さんでも、日常生活の中で精神的な波が訪れることはあり得ます。
訪問時に暴力的な側面を目の当たりにしてしまうと、ショックを受ける看護師さんも少なくありません。
日頃から病状を理解するとともに、暴力やハラスメントに対する対応について事業所内で共有しておく必要があります。
看護師の言動は注目される
これは精神科訪問看護以外の利用者さんにも共通して言えることですが、看護師の言動は利用者さんやご家族から大変注目されています。
精神疾患を抱える利用者さんの場合、病状によっては看護師の何気ない言動を被害的に捉えクレームにつながることもあります。
病状によるものと理解していても、「そんなつもりじゃなかったのに…。」と落ち込んでしまう看護師さんもいらっしゃいます。
精神科訪問看護がきついと感じたら
先輩看護師の関わりから学ぶ
上記でもあったように、精神科訪問看護をきついと感じる時は、利用者さんとのコミュニケーションや病状に関連することが多くあります。
コミュニケーション技術の向上を図るためには、事業所の先輩看護師の関わり方を自身と比較してみることをお勧めします。
利用者さんが穏やかに話す時の先輩看護師の距離感や間の取り方、声のトーンや問診の仕方を観察してみましょう。
利用者さんと成功体験を共有する
利用者さんの1ヶ月から3ヶ月程度の期間で、精神症状の波を観察することも重要です。
可能であれば利用者さんとともに精神症状についてモニタリングし、どのようなパターンで症状の悪化が見られるのか客観的に評価してみましょう。
利用者さんも「精神症状を悪化せずに穏やかに過ごしたい。」と考えている方が多いと思います。
利用者さんとともに精神症状の悪化がなくうまく行った日、うまくいかなかった日をモニタリングし、うまく行った日はどんな日だったのかと振り返りを行うことで互いに成功体験を共有し信頼関係を築くことができます。
疲れた時にはリフレッシュを
精神科訪問看護はやりがいもある反面、利用者さんとの関わりや一進一退の看護の中で精神的に疲弊を感じることもあります。
利用者さんだけでなく、看護師さんも気分転換やリフレッシュを意識的に行っていく必要があります。
まとめ
今回は、精神科訪問看護はきつい、というテーマで解説しました。
精神科訪問看護は年々需要が高まり、多くの事業所で受け入れることが増えてきました。
精神科での勤務経験がなくても、精神科訪問看護算定研修を受ければ精神科訪問看護を行うことができます。
しかし、数日の研修のみでは経験不足により悩む看護師さんも多くいらっしゃると思います。
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