訪問看護(リハビリ)での転倒予防について指導方法を紹介します!

みなさんは、高齢者の転倒がどのような頻度で、どのようなことが原因で発生しているがご存知でしょうか。

高齢化が進んでいる社会で、転倒は重要な課題となっています。

訪問看護の利用者さんでも、高齢者が多い為に転倒はめずらしくありません。

そこで今回、転倒の原因や訪問看護(リハビリ)でよくある転倒予防の指導方法をご紹介したいと思います。

 

転倒事故の発生状況や原因は何?

転倒事故の発生状況とは?

引用)厚生労働省 国民基礎調査 平成28年 p45 第15表より

地域高齢者の転倒発生率は1年間に 20%前後が転倒を経験するとされています。

高齢者の転倒は非常に多く、国民生活基礎調査によると要介護原因の第4位になっています。

 

また、消費者庁が厚生労働省の「人口動態調査」を基に高齢者の事故の状況を分析したところ、高齢者の「転倒・転落・墜落」による死亡者数は「交通事故」の約4倍となっています。

 

引用)消費者公表資料 令和3年より

 

転倒事故の原因とは?

皆どういう原因で転んでいるの?

 

転倒する原因は大きく分けて以下のように大別されています。

 

転倒の危険因子
  1. 身体的要因を主とする内的要因
  2. 生活環境要因を主とする外的要因

 

上記①の内的要因はバランス障害、筋力低下、視力障害などで、さらに薬剤も含まれます。

②の外的要因は不適切な靴、滑りやすい床、暗いまたは明るすぎる照明などの転倒しやすい環境、荷物を持っている、焦った状況など転倒の発生しやすい状況となっています。

そして、転倒の発生場所は消費者庁の調べによると半数近くの方が住宅で転倒しています。

 

 

引用)消費者庁公表資料 令和3年より

 

訪問看護(リハビリ)転倒予防の指導のポイント

訪問看護(リハビリ)での転倒予防指導方法を順に説明していきます。

 

バランスの問題はあるか?

転倒要因としてバランス能力の低下があります。

まずはバランス能力低下による問題がないか、確認しましょう。

バランス面の評価は色々ありますが、自宅でもできるいくつかのバランス評価を参考までに載せておきます。

 

  • 片脚立位
    • timed up & go test(TUG)
  • 閉眼立位
    • Berg Balance Scale(BBS)

 

  • TUGは、立ち上がりや歩行・方向転換を含めた一連の移動能力を評価するテストであり、椅座位を開始肢位として、そこから立ち上がって3m歩いた後でターンして戻り、再び座るまでの所要時間を測定する。
  • BBSは、座位・立位の姿勢保持、立ち上がり動作など日常生活動作と関連のある14項目の検査から構成されるバランステストである。14項目それぞれ安全性や遂行時間などから0~4点で評価し、 最大で56点となり、45点以下はバランス障害とされる。

引用)地域理学療法ガイドライン 重要用語 より

 

転びやすい方向やどっち方向へのステップが出しずらいかなど本人のバランスを崩しやすい状態を把握することが必要になります。

BBSは少し項目が多く少し時間がかかりますが、複合的に見れるために原因把握として分かりやすいです。

バランス面の低下が分かれば、今度は日常的に行われる動作の中で苦手な動作があれば危険がないように指導していきます。

もし、方向転換が苦手であれば素早く振り向かない、方向転換時ステップ数を多くするなど動作方法を伝えます

また、扉の開閉時など後ろに下がる動きが苦手な方に、後ろに下がらない位置から開けるような指導もできます。

開き戸を正面にして左側に扉が開く場合、右側に立つようにしてもらいます。

そうすれば、自分が後ろに下がる必要がなくなり、転倒の危険が減りますね。

こういった具体的な方法を指導することにバランス面の評価は有効と思われます。

もちろん、すぐに直せない方や動作が獲得できない方も多いと思います。

しかし、動作練習をしたり、本人に伝えることで少しでも気づいてもらうことも大切だと思います。

 

つま先がしっかりと上がっているか?

つま先がしっかり上がらないことなどでつまづいて転倒する方もいますね。

平坦なところでの歩行であれば、踵から着くようなイメージで歩くように指導します。

歩行時に太ももを高く上げて歩こうとする方も時々いますが、兵隊さんのような感じにも見えるので自然に踵から着くようなイメージで歩くほうが自然かと思います。

ただ、高く太ももを上げる動作は体操としては有効かもしれませんね。

またスリッパなど履き物も注意する一つです。

履物によっては、つま先が上がりにくくなることや滑りやすくなることもあるので履いて歩いてところを確認しましょう!

 

自宅環境で転びやすいものはないか?

部屋の中のカーペットやコード類も注意ですね。

特に冬場になるとヒーターやこたつ、電気カーペットなど夏場よりコード類が多くなります。

コード類などはコンセントの位置を確認するなどし、なるべく本人の動線にないようにしましょう

もちろん、コード類以外にも動線上はなるべく物を置かないようにするほうがいいでしょう。

また、玄関マットなど物によって滑りやすくなる注意の一つです。

あとは寒い時期に使うこたつ布団も要注意です。

引っ掛かって転ぶ人やふわふわした素材もあるのでしっかり立てない方もいます。

 

普段よく使うものを手の届かないところに置いてないか?

高い所に使う物が置いてある方いませんか?

踏み台や椅子に乗れば届くから問題ないと本人は思っているのでは。

昔からやっているから大丈夫と思っているようですが、昔の身体の感覚よりやはり低下している方が多いですよね。

ちょっと油断やその日の疲労などで転倒し、大変なことになることもあります。

なるべく、よく使う物は台に乗らずに届くところに置くようにすることも転倒リスクを減らす一つです。

ただ、自宅環境を変えることは本人の普段生活していた環境を変えることなので無理に変えることはないようにしましょう。

こちら側がいいと思っていても、利用者さんにとっては思い出深いことや都合が悪いこともあります。

本人や家族とよく話しながら、少しずつでも変えていけるように提案していきます。

 

まとめ

今回は、転倒の原因や訪問看護(リハビリ)でよくある転倒予防の指導方法について詳しく解説しました。

訪問看護(リハビリ)での転倒予防の指導方法は、以下のポイントを押さえて行うことで利用者さんにとって有効です。

転倒予防の指導方法のポイント
  • バランス能力を評価する
  • つま先の上がり方を確認する
  • 療養環境に転倒につながるものがないか確認する
  • 普段よく使うものの配置を評価する

 

今回紹介したこと以外にも下記のように指導することは色々あります。

 

  • 車いすのブレーキをかけているか
  • 杖先ゴムがすり減っていないか
  • 普段履いている靴底はすり減っていないか
  • 体調面
  • 服薬状況

 

その方によって自宅環境も違えば、身体機能も違ってきます。

転倒の原因は様々で、色んなものがあると思います。

一人一人の状況を考え、利用者さんに合わせた転倒予防を指導していくようにしましょう。

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ABOUT US
稲葉 長彦理学療法士
石川県在住/PT/介護士として8年経験し、PTを目指し夜間学校に通い資格取得。千葉県の総合病院病棟で2年、診療所にて7年(整形外科外来)を経験。現在は訪問看護ステーションに勤務し、田舎での地域医療に貢献出来るよう 訪問でのリハビリを勉強中。