訪問看護リハビリで多い整形疾患と関わり方4つ紹介します

変形性膝関節症や肩関節周囲炎、腰痛症など多くの方が整形疾患にかかり、日常生活に支障が出てしまいます。

医療職であれば、ほとんどの方がこれらの整形疾患を抱える患者さんに関わることがあるのではないでしょうか?

厚生労働省の統計によると、介護が必要となった原因は以下のように示されています。

 

  • 要支援者:第1位関節疾患、第3位骨折・転倒
  • 要介護者:第3位骨折・転倒

参照)厚生労働省 国民生活基礎調査 2019年より

 

このように、 要介護度別にみた介護が必要となった主な原因は、整形疾患と深く関りがあることが分かります。

訪問看護の利用者さんも、要介護の状態の方が多くいます。

そこで今回は、訪問看護でのリハビリで多い整形疾患についてお伝えしていきたいと思います。

 

訪問看護で整形疾患の利用者さんはどのぐらいいる?

引用)公益財団法人日本訪問看護財団 訪問看護の現状とこれから2022年版 Ⅰー06.より

 

訪問看護ステーションの利用者傷病別内訳は脳血管疾患が12.9%と一番多く、整形疾患に多い筋骨格系は8.4%と4番目となっており、訪問看護でも整形疾患を抱える利用者さんが多いことが分かります。

 

訪問看護でのリハビリに多い整形疾患と関わり方のポイント

今回、訪問看護に多い4つの整形疾患と、そのリハビリについてのポイントを紹介したいと思います。

 

①変形性膝関節症

変形性膝関節症は膝を動かすと痛みが伴いますが、主に荷重時に痛みが起こるのが特徴です。

痛みによって歩行や階段、床に座る動作などの日常生活が制限されてしまいます。

膝関節の間が狭くなり、軟骨がすり減り、関節の負担がかかり痛みが伴うという説明をよく聞いたことがありませんか?

ただ、リハビリをすると関節の間以外に痛みを伴っている方も多くいます。

筋などの軟部組織であれば、リハビリで十分に効果があると思います。

どこが痛むかを捉え、日常生活で痛みを軽減させるような方法の練習や工夫が有効です。

例えば、有効な動作方法や工夫として以下に示します。

 

  • 立つときに、腰椎伸展させ重心を前方に運ぶよう股関節を屈曲し、膝の負担を減らす
  • 低い椅子やベッドではなく、足が着く程度でなるべく高く設定すること
  • 上がり框の段差が高ければ踏み台を使用するなどの環境設定

 

このような工夫をすることで動作がスムーズにできる方もいます。

どうやって膝の負担を減らせるかがポイントですね

 

②股関節術後

大腿骨頚部骨折後の人工骨頭置換術や末期股関節症の方などに多い人工関節全置換術(THA)は病院には多くおられますね。

理学療法士であれば、必ずといっていいほど、担当した方も多いのではないでしょうか。

生活上で注意すべきは皆さんご存じの通り、脱臼です。

特に術直後は筋など組織がまだ回復していないため、股関節が安定しておらず、動かす方向によって脱臼をしてしまいます。

手術のアプローチによって脱臼する方向も違うため、必ず術式アプローチや傷の部位など確認しておきましょう。

脱臼肢位はアプローチ方法によって以下の2つに分かれます。

 

  • 前方アプローチ:股関節伸展・内転・外旋
  • 後方アプローチ:股関節屈曲・内転・内旋、股関節深屈曲

 

脱臼肢位が違えば日常での動作方法の指導も変わってくるため、術式の情報はとても重要です。

ある程度期間が経過すれば、手術をした組織も回復し、筋力もついてくるため、ほとんど脱臼はしないと言われています。

ただ病院によって脱臼に注意する期間や考えも違うため、できるのであれば主治医のからの禁忌事項など確認しておきましょう。

利用者さんの中には脱臼を過剰に怖がって活動範囲が減ってしまうケースもあります。

せっかく動けるように手術をしたのに、動かなくなってしまっては意味がありませんよね。

脱臼しやすい方向をしっかり把握していればどういう動作が大丈夫ということが分かりますし、利用者さんの安心にもつながります。

利用者さんには安心して動けるように説明し、活動範囲を広げていけるようにしましょう!

 

③腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症は脊柱管が狭くなってしまい、神経組織を圧迫し臀部から下肢にかけてしびれや疼痛が伴います。

多くは腰を反る動作で症状が出てしまいます。

手術する方も多くいますが、保存でも運動療法にて軽快する方も多くいます。

日常でどういう動作で症状が伴うかなどしっかり確認しておきましょう。

例えば以下の2つは有名です。

 

  • 高いところに物を置かないようにすること
  • 片足を台に置いて対応する方法

 

どちらも過剰に腰が反らないようにするための方法です。

腰を反ることで症状が出てしまうため、腰椎が伸展しない対応が有効です。

当たり前なのですが、具体的にいうと以下のことで症状が楽になる方も多くいます。

 

  • 腰椎より上の胸椎をしっかり伸展方向への動きを作ること
  • 股関節の前側の組織をしっかり伸ばし、股関節伸展可動域を作ること

 

腰椎だけでなく、しっかりと周りの関節も確認しておきましょう。

 

④圧迫骨折と骨粗鬆症

主に尻もちなどの転倒や過度な円背姿勢が続き、椎骨に圧迫力が加わり発症してしまいます。

骨折部の椎骨が癒合していない時期は痛みが強く、体幹を動かす動作で痛みが強く生じます。

骨膜には神経があるために骨折部がずれることで痛みがでます。

そのため、寝返り動作など体の捻りが加わる動作では、骨折部がずれないように体幹と下肢を一本の丸太のようにしましょう。

そもそも、骨折は骨粗鬆症の方に多く発症します。

骨粗鬆症にならないよう予防に努めることも重要です。

薬物療法ももちろん有効ですが、自分で生活の中でできる予防として具体的に取り組みやすいものを以下に示します。

 

  1. 足踏みやつま先立ちからストンと床に踵をつけるその場でできる運動(1日50回)。
  2. カルシウム(乳製品、小魚、大豆など)、ビタミンD(魚類、キノコ類など))、ビタミンK(納豆、緑色野菜など)の栄養補給。
  3. 1日15分程度の日光浴

参照)①:日本骨粗鬆症学会 2011ガイドライン Ⅴ-C -bより

②、③:日本骨粗鬆症学会 2015ガイドライン Ⅴ-Ð -a,bより

 

運動療法はバランス運動や筋力強化も必要ですが、骨強度をあげることも必要となります。

骨強度をあげるには骨に刺激を入れることが必要になります。

脆弱化しないためには歩行はもちろんですが、上記の方法は簡単に取り組みやすく、高齢者の方や長く歩けない方にも行いやすい方法だと思います。

また、閉経後の女性はエストロゲン減少のため骨粗鬆症になりやすいですが、今回紹介した予防は閉経後からでも有効となります。

是非、皆さんも利用者さんにおすすめしてください。

 

まとめ

教科書で学んだものばかりでなく、聞いたことがない内容もあったのではないでしょうか?

整形疾患は疾患の病態も大事ではありますが、どういう風に動かすとどういうストレスが加わり、どこが痛むかということが大事になってきます。

それを把握することで、どういう動作が大丈夫ということも分かります。

運動だけでなく予防に努めることもセラピストとして重要になりますね。

今回の内容は看護師さんがきっと知らないことも多いと思うので、看護師さんも是非読んでもらえるとうれしいです。

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ABOUT US
稲葉 長彦理学療法士
石川県在住/PT/介護士として8年経験し、PTを目指し夜間学校に通い資格取得。千葉県の総合病院病棟で2年、診療所にて7年(整形外科外来)を経験。現在は訪問看護ステーションに勤務し、田舎での地域医療に貢献出来るよう 訪問でのリハビリを勉強中。