訪問介護ではなく訪問看護で入浴介助をすべき利用者さんの特徴を解説します

 

このような疑問を解決する記事です
  • 在宅療養されている方の入浴介助をする介護サービスはなに?
  • 訪問介護員(ホームヘルパー)?それとも訪問看護師?
  • どちらが行うべきか利用者さんの特徴があれば教えてほしい!

 

病気を抱えながらも在宅で生活されている方の中には、介護サービスによる入浴支援を必要とする方がいらっしゃいます。

ご自宅の浴室で入浴をする場合、その介助を行う介護サービスとしては「訪問看護」「訪問介護」があります。

しかし、訪問看護が介入して介助すべきか、訪問介護が介入して介助すべきか、どちらのサービスを使うか判断に迷うことが多々あるのではないでしょうか?

当記事では、訪問介護ではなく訪問看護で入浴介助をすべき利用者さんの特徴について解説します。

最後まで読めば、在宅での入浴介助の際に使うべき介護サービスの選択がしやすくなりますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

ではさっそく解説します。

 

訪問介護ではなく訪問看護で入浴介助した方が良い利用者さんの特徴5つ

 

訪問介護ではなく訪問看護で入浴介助をした方が良い利用者さんの主な特徴としては以下の5つがあげられます。

 

  • 医療機器を使用している
  • チューブ類やストーマがある
  • 心臓や呼吸器に関する病気がある
  • 骨折等で患部の安静が必要である
  • 入浴による急変が想定される

 

順番に解説します。

 

医療機器を使用している

医療機器を使用している利用者さんの入浴介助は訪問看護師が行います。

医療機器の管理や、全身状態の細やかな観察が必要であるためです。

在宅療養されている方の中には、人工呼吸器や輸液ポンプなどの医療機器を使用している方がいます。

難病や小児慢性特定疾病などを抱えている利用者さんは、在宅用の人工呼吸器を使用しているケースがあります。

また、癌の疼痛コントロールのためのPCAポンプや輸液ポンプを使用している利用者さんもいます。

医療機器を使用していても安全安楽に入浴ができるよう、訪問看護師がしっかりサポートします。

 

人工呼吸器使用中の利用者さんの場合

場合によっては入浴中に用手換気を行うことに加え、利用者さんの体のケアも同時に行うため、複数名での援助が必要になります。

状態が安定していれば、入浴に関わる洗髪・洗身などのケアは訪問介護員(ホームヘルパー)に行ってもらうこともできるので、サービス時間を調整し、訪問介護員と訪問看護師でケアをすることもあります。

 

輸液ポンプなどの機械を使用中の利用者さんの場合

ポンプは防水ではありませんので入浴時には必ず外します。

入浴のタイミングに合わせて留置針を交換することもあります。

がん性疼痛のある方に対しては、入浴前に予防的にレスキュードーズを使用することもあります。

利用者さんの状態に合わせ、医師の指示のもと、安全安楽に入浴ができるよう訪問看護師がケアを行います。

 

チューブ類やストーマがある

チューブ類が挿入されていたり、ストーマがある方の入浴介助も訪問看護師が行うことが多いです。

主なチューブ類やストーマには以下のようなものがあります。

 

  • 膀胱留置カテーテル
  • 経皮経肝胆管ドレナージチューブ(PTBD・PTCD)
  • 消化管ストーマ
  • 尿路ストーマ

 

膀胱留置カテーテル

そのままシャワー浴をすることができますが、採尿バッグが膀胱より高くならないように留意しながら介助します。

 

経皮経肝胆管ドレナージチューブ

チューブ挿入部の防水を行いシャワー浴をします。万が一濡れてしまった場合は刺入部の消毒が必要です。シャワー浴中は排液パックを挿入部より低い位置に保ちます

 

ストーマ

入浴のタイミングでパウチ交換を行うこともあるため、訪問看護師による介助になることが多いです。

 

心臓や呼吸器に関する病気がある

心臓や呼吸器に関する病気を抱える方の入浴も、訪問看護師による介助が安心です。

入浴によって血圧の変動や体調の変化を起こす可能性があるためです。

入浴やシャワー浴をすると、爽快感を得られる一方で、疲労感を感じる方も多いです。

健康な人でも浴槽から上がるときにフラッとした経験があるのではないかと思いますが、それだけ入浴をするということは循環器系に影響があります。

 

静水圧の影響

身体にお湯がかかったり、浴槽でお湯に浸かることで、身体に『静水圧』がかかります。静水圧は身体の内部にまでかかる圧力なので、心臓や肺に持病がある方は、この圧力によって心臓や肺の働きが加速されます。

静水圧の大きさは、水面からの深さに比例するので、水面下に沈んだ部分が多いほど、受ける静水圧が大きくなります。

これにより、心臓に持病がある方が肩までお湯に浸かると、静水圧が大きくなって体表面の静脈が圧迫され、心臓に戻る血液量が多くなり、拍出量も増加することになります。その結果、心臓に負担がかかることになります。

また、胸部に大きな静水圧がかかると横隔膜が押し上げられ、肺が圧迫されて容量が減ってしまいます。この容量の減少を補うために呼吸回数が増え、呼吸が苦しくなってしまいます。

 

このような利用者さんは、心臓の位置くらいまでお湯に浸かる半身浴を実施します。

医師から「半身浴で3分以内の入浴」等、具体的に指示がある場合もあるので、退院時カンファレンスや医師の指示を確認しておくことが大切です。

肺疾患の方は在宅酸素を使用していることもあります。

医師の指示のもと、看護師が酸素流量を調整した上で呼吸状態に留意しながら入浴することが必要です。

 

骨折等で患部の安静が必要である

骨折等で患部の安静が必要な場合も、訪問看護によるシャワー介助を行うことが望ましいです。

ギプス固定をしている場合は、その部位を防水してシャワー浴を行います。

大きめのビニール袋等で防水することが多いですが、以下のようなものを活用するのも一案です。

 

 

 

骨折部を三角巾やバンドで固定している場合は、シャワー浴時にはそれらをはずし、シャワー後に再度正しく固定し直す必要があります。

安全に実施するためにも訪問看護による介助が望ましいと言えます。

 

入浴による急変が想定される

入浴による急変が想定される場合も訪問看護での入浴介助が良いと言えます。

入浴自体が難しい状態にある方は部分浴や清拭などで保清を図りますが、強く入浴を希望されたときは、その希望を叶えるべく、工夫を凝らして入浴介助を行うことがあります。

この時には、身体的負担の軽減・動線・マンパワーについてあらかじめ話し合っておき、必要な福祉用具を検討し環境をしっかり整えておく必要があります。

職域を超えた連携を行います。

またがん末期の方は、倦怠感増強や発熱等、急に体調が変化することが多いため、その日の体調を見極めて調子のよい日に入浴することが多いです。

利用者さんの希望に沿いながら、訪問看護師が専門的に観察し援助することで、倦怠感の強いがん末期状態においても入浴による心地よさを感じていただくことができるでしょう。

 

利用者さんの状態に合わせて訪問介護・訪問看護どちらの入浴介助にすべきか判断していこう

 

ご自宅での入浴介助は訪問介護で行われることも多いですが、利用者さんの状態によっては訪問看護師が行うことが望ましい場合もあります。

慣れ親しんだご自宅での入浴は、爽快感を得られるだけでなく、ホッと心が安らいだり、何にも代え難い満足感を得られることもあります

入浴は循環動態への影響が大きいことに加え、浴室の環境や利用者さんご自身の状態によっては安全に入浴できないと判断し、他のサービスや方法を検討することもあります。

利用者さんが苦痛なく安全に快適に入浴できるよう、訪問看護師としての知識・技術を発揮していく必要があります。

ぜひ当記事で紹介したことを参考に、在宅でのより良い入浴支援を検討してみてくださいね。

 

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シュガー看護師/ライター
看護師|総合病院で9年勤務後訪問看護の道へ。訪問看護師歴は11年目。2児の母でもあり現在は訪問看護パート勤務で仕事も家庭も奮闘している。隙間時間を活用し訪問看護転職を応援する「ママさん訪問看護師のブログ」を運営中。最近ハマっている食べ物はそば。