目次
緊急時対応の総論
例えば、上記のような症状を訴えた利用者に会ったとき、どんなアプローチを行ったらいいでしょうか。
「いつもと違うな」という感覚をスルーしないことが大切です。
いつもと違う感覚をスルーしないために、『なぜその現象が起きて』、『なぜそうなるのか』、を考えることが大切です。
考える上で大事なのが、仮説検証です。
仮説検証とは、立てた仮説を立証していくことです。
例えば、胸痛のケースだと、心筋梗塞かもしれないと考えた場合、痛みの持続時間、ショックの症状、不整脈の有無、必要な検査・治療などを想起し、科学的に判断することが大切になります。
フィジカルアセスメントの原則
それでは、症状のある利用者に遭遇したとき、どう対応すれば良いでしょうか。
まずは、緊急度の評価をします。ショックの兆候や呼吸・心停止をしていなか確認します。
次に、問診をして、病気から考えられる症状を確認して原因臓器を認識します。
そうすることで、医師や救急隊、転送先の看護師に伝えることができるようになります。
鑑別診断の分類
救急外来で医師は、帰っても良いのか、入院対応が必要なのかを考え診断をしています。
その鑑別診断の考え方を知っておくと、問診の役に立つでしょう。
鑑別診断には、3つ種類があります。
- Critical(命に係わる):緊急性の判断、見逃してはいけない
- Common(よくある)
- Curable(治療できる)
病気を思い浮かべて、命に係るものか、様子観察をしていいものか知っておくといいでしょう。
ただし、看護師の目的は「診断」ではなく、状態を把握し看護につなげることです。
この目的を忘れないように学習していきましょう。
緊急時対応の問診
胸痛の訴えがあるとき、多くの方が心筋梗塞や狭心症などの心臓の疾患を思い浮かべると思います。
心疾患や循環器系の疾患で怖いのは、放っておいたら致死的な不整脈になったりショックになりやすいことです。
まず、やることはABCD評価で、緊急性を判断します。ショックや心停止、呼吸停止があればすぐに緊急コールを行いましょう。
今回の症例では、まだ様子がみれる状態と判断し、問診を行っていきます。
問診の7つの観点:OPQRST
上記の表の7つの観点で、問診を行っていきましょう。
特に発症様式が突然起こった場合は、その瞬間何か起こっている可能性があるので注意が必要です。
胸痛について
胸痛の場合は、見逃すと死に至るkiller chest painを見逃さないようにしましょう。
これを鑑別していくためには、心電図や胸部レントゲン、血液検査(心筋マーカー)、心エコー、胸部造影CTによる診断が必要になります。
たまに、重症の消化器疾患(胃潰瘍)の場合もあるので、そのことも想定しましょう。
killer chest painには5つの疾患があります。
- 急性冠症候群は心筋梗塞、狭心症のことです。特に心筋梗塞は重症です。
- 急性大動脈解離は、大動脈の中膜が剥がれ、破れた血管に血液が流れショック状態、臓器障害を起こします。乖離した場所により緊急性は変わってきます。
- 肺塞栓は、肺動脈に血栓が詰まり、急激に血の巡りが悪くなり、呼吸困難、胸痛を起します。
- 気胸は、縦隔の中にある血管が気胸によりひしゃげてしまい、心臓から戻ってくる血液が返ってこなくなることで、ショック状態に陥り、最終的に心停止になってしまいます。
- 食道破裂は、食道が破裂することで大量出血し、命に係わってきます。
いろんな臓器に言えることですが、重篤になるときは、そこの臓器がさける・つまる・やぶれる・ねじれる状態です。
胸痛では、さけるは大動脈解離、つまるは心筋梗塞、やぶれるは食道破裂、大動脈瘤破裂があたります。
まとめ
では、今回の講義のまとめです。
- 患者の急変に気が付くためには、「何か変」をスルーしない
- 仮説を立てて、検証していく
- 鑑別診断を意識しながら、アプローチしていく
- あくまで「診断」がゴールではなく、看護につなげる
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フィジカルアセスメントの症状について解説していきます。
よくある症状へのアプローチについて知ることで、緊急対応につなげることができるようにしましょう。