「精神科訪問看護で複数名訪問をした場合、どんな加算が使えるのか分からない」「令和8年度診療報酬改定で何がどう変わったのか整理できていない」——精神科訪問看護を提供するステーションの経営者・管理者から、複数名精神科訪問看護加算についてこうした声をよく聞きます。
この記事では、複数名精神科訪問看護加算(医療保険)の対象職種・算定要件・留意点を整理し、令和8年度診療報酬改定での変更点、混同されやすい「複数名訪問看護加算(一般)」との違いまで現役看護師の視点で解説します。
- 複数名精神科訪問看護加算とはどんな制度か・対象職種
- 令和8年度診療報酬改定での変更点
- 算定要件・留意点、精神科訪問看護指示書への記載事項
- 複数名訪問看護加算(一般)との違い
- 算定でつまずきやすい実務ポイント
目次
複数名精神科訪問看護加算とは?対象職種と算定の基本
複数名精神科訪問看護加算とは、同時に保健師または看護師と、他の保健師・看護師・准看護師・作業療法士・看護補助者・精神保健福祉士との同行による訪問看護を実施した場合(30分未満の場合を除く)に算定できる加算です。精神科訪問看護の対象患者に対し、暴力行為への対応や身体的な理由などから1人での訪問が難しい場面で、複数名での訪問を評価する仕組みとして設けられています。
算定にあたっては、最低1名は保健師または看護師である必要があります。単に2名の看護補助者や精神保健福祉士が同時に訪問しただけでは算定できず、必ず保健師または看護師が同行していることが前提です。

「複数名で訪問した=すぐに算定できる」ではありません。誰と誰が同行したか、その組み合わせによって算定できる加算の名称や区分が変わるので、レセプト作成時は組み合わせを必ず確認してくださいね。
令和8年度診療報酬改定での変更点
複数名精神科訪問看護加算は、令和8年度診療報酬改定で評価の仕組みが見直されました。
同一建物居住者の人数に応じた段階的な評価
改定前は主に「同一建物内1〜2人」「同一建物内3人以上」という大きな区分での評価でしたが、令和8年度診療報酬改定では同一建物居住者に同一日に当該加算を算定している人数、および1月当たりの算定日数に応じた、より段階的な評価に見直されました。同じ建物に住む利用者が多いほど、1人あたりの評価が細かく調整される仕組みです。
同一敷地内の建物も「同一建物」に
あわせて、同一敷地内にある別の建物も「同一建物」として扱うよう見直されました。これまで別棟として合算対象外だった利用者も、同一敷地内であれば同一建物居住者としてカウントされる点に注意が必要です。
複数名精神科訪問看護加算の改定後の具体的な点数(円単位の金額)は、参照した公開情報の範囲では確認できませんでした。正確な金額は、最新の診療報酬点数表または管轄の地方厚生(支)局で必ず確認してください。なお、通常(精神科以外)の複数名訪問看護加算では、同一建物内の人数区分がより細分化される形で改定されたことが複数の専門メディアで確認できます(後述)。

複数名精神科訪問看護加算の算定要件・留意点
算定にあたっての留意点は次のとおりです。
- 利用者または家族等の同意を得る必要がある
- 医師が複数名訪問の必要性を認め、精神科訪問看護指示書にその旨の記載がある場合に算定できる
- 単に2人が同時に指定訪問看護を行ったという事実のみでは算定できない
- 1人以上は保健師または看護師である必要がある
- 保健師または看護師と同行する看護補助者は、常時同行の必要はないが、利用者の居宅において両者が同時に滞在する一定の時間を確保する必要がある
複数名訪問が必要な理由と精神科訪問看護指示書への記載
令和2年度診療報酬改定より、精神科訪問看護指示書に「複数名訪問の必要性及びその理由」の記載が必須となっています。理由として想定されているのは、主に次の4パターンです。
- 暴力・迷惑・器物破損行為等が認められる場合利用者に暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる場合。
- 身体的理由により単独訪問が困難な場合利用者の身体的理由により、1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる場合。
- 利用者・家族双方への支援が必要な場合利用者本人とその家族それぞれに対する支援が必要な場合。
- その他(自由記載)上記に当てはまらない個別の事情がある場合。
複数名訪問の必要性・理由の記載漏れは、算定要件を満たさない典型的な原因です。指示書を受け取った時点で記載の有無を必ず確認し、記載がなければ主治医に確認・追記を依頼しましょう。

複数名訪問看護加算(一般)との違い
精神科訪問看護以外の訪問看護でも、複数名で訪問した場合に算定できる複数名訪問看護加算があります。名称が似ているため混同しやすいですが、対象職種や単価の設定が異なる別の加算です。
| 項目 | 複数名精神科訪問看護加算 | 複数名訪問看護加算(一般) |
|---|---|---|
| 対象患者 | 精神科訪問看護の対象患者 | 末期がん・神経難病・特別管理加算対象者等 |
| 対象職種 | 保健師・看護師・准看護師・作業療法士・看護補助者・精神保健福祉士の同行 | 看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)とその他職員(看護補助者等)の同行 |
| 指示書への記載 | 精神科訪問看護指示書に複数名訪問の必要性・理由の記載が必須 | 訪問看護指示書等での位置づけは制度上別の整理 |
| 令和8年度改定の傾向 | 同一建物居住者の算定人数・日数に応じた段階評価に見直し | 同様に人数区分がより細分化される方向で見直し(複数の専門メディアで確認) |
参考として、複数名訪問看護加算(一般・看護師等、准看護師を除く、週1日算定の場合)では、外部の専門メディアの解説において「同一建物内1〜2人:4,500円」「3〜9人:4,000円」に加え、令和8年度改定で「10〜19人」「20〜49人」「50人以上」の区分が新設されたと報じられています(確度中・一次情報での逐条照合は未実施)。複数名精神科訪問看護加算についても、人数に応じた段階的な評価という同じ方向性の見直しが行われていますが、具体的な金額はこの一般加算とは別に設定されているため、精神科版の正確な金額は別途、点数表または厚生局で確認してください。
複数名精神科訪問看護加算の算定でつまずきやすい実務ポイント
同一建物に住む複数の利用者に対して、異なる職種の組み合わせで訪問した場合、どの加算区分を算定するかで迷うケースがあります。例えば、同一建物に住むA・B・Cの3利用者に対して、Aは他の看護師との訪問、Bは他の看護師との訪問、Cは他の看護補助者との訪問(1日1回)を行った場合、A・Bは複数名訪問看護加算「看護師等」の同一建物内区分、Cは複数名訪問看護加算「看護補助者(二)」の区分でそれぞれ算定することになります。同行した職種の組み合わせごとに、算定する加算の名称・区分が変わる点を必ず確認しましょう。
よくある質問
複数名精神科訪問看護加算は誰が算定できますか?
保健師または看護師と、他の保健師・看護師・准看護師・作業療法士・看護補助者・精神保健福祉士が同時に同行して訪問看護を実施した場合に算定できます。ただし1人以上は必ず保健師または看護師である必要があります。
複数名精神科訪問看護加算は30分未満の訪問でも算定できますか?
算定できません。複数名精神科訪問看護加算は、訪問時間が30分未満の場合を除くとされています。
精神科訪問看護指示書に複数名訪問の理由が書かれていない場合はどうすればよいですか?
令和2年度改定より、精神科訪問看護指示書には「複数名訪問の必要性及びその理由」の記載が必要とされています。記載がない場合は算定要件を満たさない可能性があるため、主治医に確認し追記を依頼してください。
複数名精神科訪問看護加算と複数名訪問看護加算(一般)は同じ制度ですか?
異なる制度です。対象患者や対象職種の組み合わせ、単価の設定がそれぞれ別に定められているため、精神科訪問看護の利用者かどうかで算定する加算の名称・区分が変わります。
令和8年度診療報酬改定で何が変わりましたか?
同一建物居住者に同一日に当該加算を算定している人数、および1月当たりの算定日数に応じた、より段階的な評価に見直されました。また、同一敷地内の建物も同一建物として扱われるようになりました。

- 複数名訪問看護加算(一般)における人数区分の見直し内容は複数の専門メディアの解説記事で内容一致を確認していますが、複数名精神科訪問看護加算そのものの改定後の具体的な点数については、公的機関の一次情報での直接確認ができていません。正確な金額は最新の診療報酬点数表、または管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
まとめ|複数名精神科訪問看護加算は「指示書の記載」と「職種の組み合わせ」がカギ
複数名精神科訪問看護加算は、精神科訪問看護の利用者に対して保健師または看護師を含む複数名で訪問した場合に算定できる加算です。令和8年度診療報酬改定で、同一建物居住者の人数・算定日数に応じた段階的な評価へと見直され、同一敷地内の建物も同一建物として扱われるようになりました。算定にあたっては、精神科訪問看護指示書への複数名訪問の理由の記載と、同行する職種の組み合わせの確認が欠かせません。
- 複数名精神科訪問看護加算は保健師または看護師を含む複数名同行での訪問看護(30分以上)が対象
- 令和8年度改定で同一建物居住者の人数・算定日数に応じた段階評価に見直し
- 同一敷地内の建物も同一建物として合算されるようになった
- 精神科訪問看護指示書に複数名訪問の必要性・理由の記載が必須
- 複数名訪問看護加算(一般)とは対象患者・職種・単価が異なる別制度
複数名で訪問する機会が多いステーションほど、指示書の記載漏れと職種の組み合わせの2点を重点的にチェックする体制を整えておきましょう。



















