そのように考えたことのある訪問看護師の方は、少なからずいるのではないでしょうか。
もちろん私も、何度も「辞めたい」と思いましたし、辞めていく人も見てきました。
今回は、訪問看護を辞める本当の理由とその対策を詳しく解説していきます。
退職が続く訪問看護ステーションの管理者、経営者の方はぜひ参考にしてください。
また、退職を検討している訪問看護師の方は、記事での対策を事業所での議題に挙げてみることで働きやすい職場へと変わる可能性があります。
退職を申し出る前に一度読んでいただき、一緒に解決策が見出せたらと思います。
目次
訪問看護の離職率とは?
平成23年の厚生労働省の調査によると、病院の離職率12.6%に比べ、訪問看護業界の離職率は15.0%と高い結果が出ています。
訪問看護では、新卒看護師の採用を希望する事業所は多くありますが、実際に採用に至っている事業所は少数です。
つまり、転職や再就職での採用が多く、医療機関や介護保険施設などで看護師経験のある看護師がほとんどと言えます。
ある程度の経験を積み、自ら望んで訪問看護ステーションに就職したはずなのに、離職率がダントツに高いのは何故でしょう。
離職の背景には、どのような理由があるのでしょうか。
訪問看護を辞める理由1 体力的な問題
1人でのケアで身体的な負担が大きい
訪問看護は体力のいる仕事です。
何故なら、訪問看護は1人で現場に向かうことが基本であるからです。
年々重症度や医療依存度の高い方が在宅での療養をすることが増えたことにより、訪問看護を必要とする利用者さんは介護度の高い方が多くなった現状があります。
重症度の高い利用者さんに対し清潔ケアや医療的ケアを決められた時間内で行う必要があるため、訪問看護師の身体的な負担は増加しています。
このような現状の業務により、想像以上の疲れを生じることがあります。
こんなはずではなかった、と体力的な面で退職を希望される看護師が多くいます。
オンコール当番での夜間の訪問や休日出勤となることもある
訪問看護では24時間体制をとっている事業所がほとんどです。
オンコール当番を行う訪問看護師の人数が少ないほど、当番をする日数は多い傾向にあります。
また、訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業の結果によると緊急出動後の代休が保障されていない事業所が6割程度と多い状況です。
利用者さんの状態によっては毎日の訪問が必要となることや、祝日でも定期訪問が必要な利用者さんがいる場合には、休日出勤をしている訪問看護師も多い現状があります。
休日に出勤しても、平日を確実に休める事業所は少なく、事業所の勤務体制によっては身体的な疲弊は大きいと言えます。
事業所でできる対策
事業所としては、訪問スケジュールの調整を行うことがすぐに出来る対策です。
訪問件数の均一化だけでなく、利用者さんのケアの内容まで確認し、一定の看護師に業務負担が偏っていないかをスクリーニングしていきます。
ケアの多い利用者さんへの訪問が1人の看護師に偏ることがないよう利用者さんへのケアの重量を踏まえたスケジュール管理を行うことで、一定の看護師への負担を軽減し離職に至るような疲弊を予防することが重要です。
また、オンコールでの夜間緊急対応や定休日に出勤した場合には、必要に応じて当日または他の日に休息がとれるような仕組み作りをすることで身体面に無理のない働き方を考えます。
例えば、深夜の緊急対応後には半休が取れるよう訪問を調整する、翌日の訪問を調整して代休を取れるようにするなど臨機応変に対応します。
利用者さんへのサービス提供が滞りなく、かつ訪問する看護師が休息をとれるように工夫していく必要があります。
- ケア内容まで踏まえたスケジュール調整を行う
- 緊急対応や休日出勤をした際の代替えを検討する
訪問看護を辞める理由2 精神的な問題
他職種連携が複雑で精神的に疲弊する
訪問看護では、病院での業務と異なり他職種との連携を図り訪問看護サービスを提供する必要があります。
病院内では電子カルテでの情報共有が可能であったところが、訪問看護では自ら発信しなければ利用者さんを取り巻く関係者へ伝わりません。
訪問看護師が1人で利用者さんに訪問し、必要な情報収集をして外部への発信を行うという責任が伴います。
対応が難しい利用者さんや症状の重い利用者さん、困難事例が重なると、連絡調整業務や看護計画の練り直しなど抱える業務が増え、看護師自身も余裕がなくなってしまいます。
全て抜かりなくやらなくては、という思いから特に責任感が強い看護師は精神的な負担が大きいと言えます。
1人で判断することの精神的負担が大きい
訪問看護では1人で現場に立ち、必要な情報収集を行い適切な判断をします。
1回の訪問で必要な情報を見落とすと、利用者さんの急変につながる可能性もあります。
特に未経験で入職した訪問看護師の方が独り立ちする際は、より精神的な負担を感じてしまう傾向にあります。
また、多くの訪問看護ステーションでは24時間体制を導入しており、オンコールを当番制で行っているステーションがほとんどです。
事業所で契約している全ての利用者さんの緊急対応を行い、1人で判断するというのは、精神的にとても疲弊します。
こういった精神面の負荷により疲弊し、退職を選ぶ訪問看護師は少なくありません。
事業所でできる対策
精神的な負担を軽減するためには、サポート体制や教育体制の再検討が必要と言えます。
訪問看護では、訪問に行かなければ売り上げが発生しませんので、新人訪問看護師が同行訪問をしていても事業所としての売り上げがなく人件費の捻出ができません。
そのため事業所としては、新人訪問看護師にはなるべく早く独り立ちして訪問に行ってもらい、人件費を賄えるだけの売り上げを求めます。
しかし、独り立ちを早期にすることで新人訪問看護師の精神的負担が増え、退職を選択する結果につながってしまうことが多くあります。
独り立ちして訪問を行う場合、いつでも相談できる体制づくりが重要です。
可能であれば、管理者ともう1人プリセプターのように新人訪問看護師のサポートや相談役をする看護師がいると、精神的な負担軽減に繋がります。
また、そのサポート役の看護師をサポートする存在も必須です。
管理者は誰か1人に負担が偏らないよう、定期的に面談を行うなど職員の精神面にも配慮して業務調整を行いましょう。
- 独り立ち後のサポート体制を整える
- サポートに当たる人のサポートも必要
訪問看護を辞める理由3 職場の人間関係での問題
管理者や他の職員の考えに共感できない
訪問看護ステーションは、管理者は看護師であり、その管理者一個人の考え方が事業所の運営に大きく影響します。
事業所のカラーとして、管理者の看護や運営に対する考えは非常に重要です。
しかし、その管理者の考えや看護理念に共感できない場合や、掲げている理念と相反する行動をとる管理者や経営者の姿を目の当たりにすると「この管理者にはついていけない。」と退職の2文字が頭を過ります。
また、困った時に手を差し伸べてくれない、感情的な対応するなど管理者や他の職員との普段の関わりに辛い思いをしている看護師の方もいるかもしれません。
事業所でできる対策
管理者の考えや理念は、訪問看護の運営を行う際に主軸となるとても重要なものです。
看護師として利用者さんにとって有益でありたいと考えているのは、どの事業所の管理者も、そしてともに働く看護師にも共通していると思います。
管理者の考えに共感できず退職に至るケースでは、管理者がどのようにしてその考えに至ったのかというプロセスが看護師に伝わっていない可能性があります。
そして、その考えに対し看護師はどのように捉え、考えているのかを聴くことがなく、お互いの考えを共有するに至っていないことがあります。
訪問看護では、独り立ちして訪問に出るようになると、管理者や他の職員とゆっくりと話す時間や顔を合わせるタイミングが減ります。
そのため、端的で一方的なコミュニケーションになりがちです。
ぜひ大きなすれ違いが生じる前に、お互いの考えに至ったプロセスを共有し合う時間を設けてみてください。
- 管理者の思考のプロセスをオープンにしていく
- お互いの考えを共有する時間を意識的に設ける
まとめ
今回は、訪問看護を辞める理由について解説しました。
訪問看護の退職を切り出す際には、「こんなはずじゃなかった。」「思っていたのと違った。」と話される方がとても多いです。
私も訪問看護に未経験で入職しているので、正直にいうと「思っていたよりずっと大変」だと思いました。
入職前の訪問看護のイメージが、いかに甘えた考えだったのだろうと思い返します。
その反面、仕方ないとも思います。
訪問看護の具体的な業務内容や大変さを知る機会が少ないため、イメージができない現状があります。
ビジケアでは、訪問看護の経験者や現役訪問看護師がフレッシュな情報を発信しています。
ぜひリアルな訪問看護の実情を知り、今後も日々の業務にお役立てください!