「利用者の状態で90分を超える訪問を行ったが、この加算は算定できるのか」「対象者の条件や週の算定回数の上限がいまいち整理できていない」——医療保険の長時間訪問看護加算について、こうした疑問を持つ訪問看護ステーションの経営者・管理者は少なくありません。
この記事では、長時間訪問看護加算(医療保険)の対象者・料金・算定回数・留意点を整理し、特別訪問看護指示書や特別管理加算との関係、介護保険版との違いまで現役看護師の視点で解説します。
- 長時間訪問看護加算(医療保険)とはどんな加算か
- 対象となる「長時間の訪問を要する利用者」の条件
- 料金と週あたりの算定回数の上限
- 算定要件・留意点
- 介護保険の長時間訪問看護加算との違い
目次
長時間訪問看護加算とは?【医療保険】制度の概要
長時間訪問看護加算とは、1回の訪問看護が90分を超えた場合に、通常の訪問看護基本療養費に加えて算定できる加算です。厚生労働省告示では、5,200円を加算する旨、また算定できるのは週1日を限度とし、別に厚生労働大臣が定める者については週3日を限度とする旨が定められています(確度高・厚生労働省告示「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」で確認済み)。
対象となる「長時間の訪問を要する利用者」
告示上は「別に厚生労働大臣が定める長時間の訪問を要する者」とされ、具体的な対象者は別途の通知・基準に委ねられています。一般に紹介されている対象者は次のとおりです(確度中・複数の専門メディアで内容が一致するものの、告示本文への逐条照合までは行っていません)。
- 15歳未満の超重症児または準超重症児
- 特別管理加算の対象者
- 特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者
このうち、15歳未満の超重症児・準超重症児と15歳未満の特別管理加算対象者については、週3日を限度に算定できるとされています。それ以外の対象者は週1日が限度です。

「90分を超えたから自動的に算定できる」わけではありません。まず対象者の要件に当てはまっているかを確認するのが先決です。
90分を超える訪問が発生しやすい場面
現場で90分を超える訪問が発生しやすいのは、次のような場面です。
- 人工呼吸器管理や気管切開部のケアなど、処置そのものに時間を要する場合
- 複数箇所の褥瘡ケアや処置範囲が広い創傷ケアを行う場合
- 看取り期にあり、症状の観察や家族への説明・精神的支援に時間をかける場合
- 退院直後で、特別訪問看護指示書のもと集中的な観察・指導が必要な場合
いずれの場合も、「なぜその時間を要したか」を記録に残しておくことが、算定の妥当性を後から説明できるようにするうえで欠かせません。
長時間訪問看護加算の料金と算定回数
料金と算定回数の上限を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 5,200円(確度高・厚生労働省告示で確認済み) |
| 算定条件 | 1回の訪問が90分を超えた場合 |
| 算定回数(原則) | 週1日を限度 |
| 算定回数(例外) | 15歳未満の超重症児・準超重症児、15歳未満の特別管理加算対象者は週3日を限度 |
週3日の例外が適用されるのは15歳未満の対象者に限られます。同じ「超重症児・準超重症児」「特別管理加算対象者」であっても、15歳以上の場合は週1日が限度となる点に注意してください。

長時間訪問看護加算の算定要件・留意点
- 1回の訪問看護の実施時間が90分を超えていること
- 対象者要件(超重症児・準超重症児、特別管理加算対象者、特別訪問看護指示書対象者等)に該当していること
- 週の算定回数の上限(原則週1日、例外週3日)を超えていないこと
- 訪問看護記録書等に実施時間や訪問の必要性を明記していること
90分を超える訪問は、利用者にとっても看護師にとっても負担が大きくなりがちです。なぜ長時間の訪問が必要なのかを訪問看護計画書・記録に明確に残しておくことが、算定の適正性を示すうえでも重要です。
特別訪問看護指示書・特別管理加算との関係
長時間訪問看護加算の対象者要件には、特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者や、特別管理加算の対象者が含まれます。つまり、これらの加算・指示書の対象になっている利用者であれば、あわせて長時間訪問看護加算の対象者要件も満たしている可能性があるということです。逆に言えば、特別訪問看護指示書や特別管理加算の対象になっていない利用者の場合、90分を超える訪問を行っても長時間訪問看護加算の対象者要件そのものを満たさない可能性があるため、算定前に必ず対象者要件を個別に確認する必要があります。

介護保険の長時間訪問看護加算との違い
介護保険にも同名の長時間訪問看護加算がありますが、算定の考え方が異なります。医療保険版は「1回の訪問が90分を超えた場合」に一律の金額を加算する仕組みであるのに対し、介護保険版は複数の専門メディアの解説で「1時間以上1時間30分未満の訪問看護に引き続き、合計で1時間30分を超える訪問看護を行った場合」に、あらかじめケアプランに位置づけたうえで算定するものとして紹介されています(確度中・一次情報での逐条照合は未実施)。保険の種類によって算定の起点となる考え方が異なるため、利用者がどちらの保険を使っているかを踏まえた確認が欠かせません。
| 項目 | 医療保険(本記事) | 介護保険(参考) |
|---|---|---|
| 算定の起点 | 1回の訪問が90分を超えた場合 | 1時間以上1時間30分未満の訪問に引き続き、合計1時間30分を超えた場合 |
| 事前の位置づけ | 対象者要件に該当していれば都度算定可能 | あらかじめケアプランへの位置づけが前提(確度中) |
| 対象者の考え方 | 超重症児・準超重症児、特別管理加算対象者等 | 複雑な医療管理を要する要介護・要支援者(確度中) |
同じ利用者でも、その日に医療保険と介護保険のどちらの訪問看護を利用しているかによって、確認すべき算定要件がまったく異なります。両方のサービスを提供するステーションでは、日々の記録の中でどちらの保険が適用されているかを明確にしておくことが大切です。
算定でつまずきやすい実務ポイント
実務上つまずきやすいポイントを整理します。
- 対象者要件の確認を先に行う訪問時間が90分を超えるかどうかより先に、そもそも対象者要件を満たしているかを確認します。
- 15歳未満かどうかで週の上限が変わる点に注意同じ対象者類型でも年齢によって週1日限度か週3日限度かが変わるため、生年月日の確認を徹底します。
- 実施時間の記録を明確にする90分を超えたことが分かるよう、訪問開始・終了時刻を記録に残します。
- 臨時的な特例の取扱いを最新情報で確認する新型コロナウイルス感染症の流行下では長時間訪問看護加算に係る臨時的な取扱いが設けられていた時期がありましたが、5類移行(令和5年5月8日)以降は多くの臨時的取扱いが順次終了しています。現時点で臨時的な取扱いが適用されるかどうかは、最新の厚生労働省事務連絡で必ず確認してください。
よくある質問
長時間訪問看護加算は誰でも算定できますか?
算定できません。1回の訪問が90分を超えていることに加え、15歳未満の超重症児・準超重症児、特別管理加算の対象者、特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者など、対象者要件を満たしている必要があります。
長時間訪問看護加算は週に何回算定できますか?
原則として週1日が限度です。ただし、15歳未満の超重症児・準超重症児、および15歳未満の特別管理加算対象者については、週3日を限度に算定できます。
長時間訪問看護加算の料金はいくらですか?
厚生労働省告示上、5,200円を加算するとされています。
長時間訪問看護加算と介護保険の長時間訪問看護加算は同じ制度ですか?
名称は同じですが、算定の考え方が異なります。医療保険版は1回の訪問が90分を超えた場合に算定する仕組みであるのに対し、介護保険版はケアプランへの位置づけを前提に、合計時間が1時間30分を超える訪問看護を評価する仕組みとして整理されています。
新型コロナウイルス感染症に係る臨時的な長時間訪問看護加算の取扱いは今も有効ですか?
令和5年5月8日の5類移行以降、多くの臨時的取扱いは順次終了しています。現時点で有効かどうかは、最新の厚生労働省の事務連絡・通知で個別に確認する必要があります。
長時間訪問看護加算を算定する際、訪問看護記録にはどこまで書けばよいですか?
決まった様式はありませんが、訪問開始・終了時刻、90分を超えた理由(処置内容、看取り期の対応、家族への説明等)、対象者要件に該当する根拠を記録に残しておくと、後から算定の妥当性を説明しやすくなります。

まとめ|長時間訪問看護加算は「対象者要件」と「週の上限」の確認がカギ
長時間訪問看護加算(医療保険)は、1回の訪問が90分を超えた場合に5,200円を加算できる制度ですが、算定できるのは超重症児・準超重症児、特別管理加算対象者、特別訪問看護指示書対象者など、決められた対象者要件を満たす利用者に限られます。週の算定回数の上限も、15歳未満かどうかによって週1日か週3日かが変わるため、対象者要件と年齢の両方を確認したうえで算定することが大切です。
- 1回の訪問が90分を超えた場合に5,200円を加算(厚生労働省告示で確認済み)
- 対象者は超重症児・準超重症児、特別管理加算対象者、特別訪問看護指示書対象者等
- 算定回数は原則週1日、15歳未満の一部対象者のみ週3日が限度
- 特別訪問看護指示書・特別管理加算の対象者と重なる部分が多い
- 介護保険版とは算定の起点となる考え方が異なる別制度
90分を超える訪問が発生したときは、まず対象者要件と年齢、週の算定回数を確認する習慣をつけておきましょう。



















