公益財団法人日本訪問看護財団と一般社団法人全国訪問看護事業協会は、2026年7月13日付(日訪財発第30号・全訪看発第11号)で厚生労働省老健局長宛に「令和9年度介護報酬改定に関する要望書」を連名で提出しました(2026年7月21日公開)。「在宅療養支援体制の強化」「医療介護連携体制の強化」「中山間・人口減少地域での持続可能な提供体制の確立」の3本柱・9項目にわたる要望内容です。
先週お伝えした日本看護協会を含む3団体による処遇改善・報酬確保の要望書とは別の要望書です。混同しないよう、まずは今回の要望内容を整理してお伝えします。
- 誰が・いつ・どこに、どんな要望書を提出したか
- 3本柱・9項目の要望内容の全体像
- 特に実務への影響が大きそうな要望のポイント
- 先週報道の3団体要望書との違い
- 現時点で訪問看護ステーションが押さえておくべきこと
目次
何が決まったのか(ニュースの概要)
今回の要望書は、来年度に予定される令和9年度介護報酬改定に向けて、訪問看護の現場実態を踏まえた制度・報酬の見直しを求めるものです。あくまで「要望」の段階であり、内容がそのまま改定に反映されると決まったわけではない点に注意してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 文書名 | 令和9年度介護報酬改定に関する要望書 |
| 文書番号 | 日訪財発第30号・全訪看発第11号 |
| 提出日 | 令和8(2026)年7月13日 |
| 公開日 | 2026年7月21日(全国訪問看護事業協会サイト) |
| 提出先 | 厚生労働省老健局長 黒田秀郎氏 |
| 提出団体 | 公益財団法人日本訪問看護財団(理事長:田村やよひ氏) 一般社団法人全国訪問看護事業協会(会長:中島正治氏) |
| 要望の柱 | ①在宅療養支援体制の更なる強化 ②医療介護連携体制の強化 ③中山間・人口減少地域での持続可能な提供体制の確立 |

要望書には、2団体が実施した独自のアンケート調査データが数多く添付されています。単なる「お願い」ではなく、具体的な数字を根拠にした要望になっているのが特徴ですね。
内容の詳細|3本柱・9つの要望項目
要望書で示された9項目の要望を整理すると、次のとおりです。
| 要望 | 内容 |
|---|---|
| 1-① | 夜間・早朝加算及び深夜加算の要件見直し(緊急時訪問看護加算算定事業所が、月の初回の夜間帯等緊急訪問から加算を算定できるようにすることを要望) |
| 1-② | 特別な管理を要する状態にある利用者への看護の評価(令和8年度診療報酬改定で特掲診療料別表第8に追加された「表皮水疱症」「水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症」を、介護保険でも特別管理の対象状態に追加するよう要望) |
| 1-③ | 緊急時訪問看護加算及び退院時共同指導加算における医療保険・介護保険間の評価差異の解消 |
| 1-④ | 専門管理加算の対象者の拡大(認知症看護等の専門性の高い看護師の活動を評価対象に) |
| 2-① | 入院・入所時のサマリー等文書による情報提供を、診療報酬の情報提供療養費3と同水準(150単位)に位置づけるよう要望 |
| 2-② | 「訪問前に死亡」「転院」等の理由で算定できない退院時共同指導加算について、必要性に応じ算定できるよう要件見直しを要望 |
| 2-③ | 令和6年度介護報酬改定で新設された重度者ケア体制加算(療養通所介護)について、算定事業所が1割未満にとどまっているとして人員要件等の緩和を要望 |
| 3-① | 病院勤務看護職員との賃金差、地域間の昇給格差の是正など、すべての訪問看護師の処遇改善を要望 |
| 3-② | 中山間・人口減少地域における移動距離・収支差率等の実態を踏まえた特別地域加算等の見直しを要望 |
要望書には2団体が令和7年12月〜令和8年2月の期間で実施した独自アンケート調査(回答事業所約1,300〜1,800件規模)の結果が多数掲載されています。たとえば、緊急時訪問看護加算を算定する事業所のうち、月の初回の夜間帯(午後6〜10時)緊急訪問で加算を算定できなかった利用者がいた事業所は570事業所にのぼるとされています。また、人口2万人未満の小さな自治体群に所在する事業所は、政令市群の事業所と比べて移動距離が長く、収支差率が赤字の事業所の割合も高い傾向が示されています。

特に「緊急時訪問看護加算」と「退院時共同指導加算」まわりは、現場で「算定したいのにできなかった」という声が多く出ている要望項目ですね。次の改定議論でどう扱われるか注目です。
訪問看護ステーションへの影響
今回はあくまで要望段階であり、令和9年度介護報酬改定の内容そのものが決まったわけではありません。ただし、次のようなステーションにとっては、今後の議論の行方を追っておく価値があります。
- 緊急時訪問看護加算を算定しており、月初回の夜間・早朝・深夜帯の緊急訪問で加算を算定できないケースがあるステーション
- 退院時共同指導を行ったにもかかわらず、利用者の死亡・転院等で加算算定に至らなかった経験があるステーション
- ケアマネジャーや医療機関への入院・入所時のサマリー等提供を、評価のない業務として行っているステーション
- 中山間地域・人口減少地域に所在し、特別地域加算等の対象地域区分と実態にギャップを感じているステーション
- 認知症看護等の専門性の高い看護師(認定看護師・専門看護師等)が在籍しているステーション
今後の見通しと今のうちにできること
- 「要望段階」であることを踏まえて情報を追う令和9年度介護報酬改定に向けては、今後、社会保障審議会介護給付費分科会等での審議が本格化します。今回の要望がどこまで反映されるかは、審議の中で決まっていきます。
- 自法人の該当状況・データを整理しておく緊急時訪問看護加算の算定不可事例、退院時共同指導加算の算定不可事例、サマリー等の情報提供実績など、自法人での発生状況を記録・整理しておくと、今後の制度議論を自分ごととして理解しやすくなります。
- 関係団体からの続報をチェックする日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会、および日本看護協会等の関係団体は、今後も審議会の動向にあわせて発信を続けると見込まれます。当メディアでも続報があり次第お伝えします。
まとめ|要望段階、今後の審議の行方に注目
日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会による今回の要望書は、在宅療養支援体制・医療介護連携・地域の提供体制という3つの観点から、現場のデータに基づいて令和9年度介護報酬改定に向けた見直しを求めたものです。決定事項ではなく、今後の審議の材料の一つと位置づけて情報を追っていきましょう。
- 日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会が2026年7月13日付で厚労省老健局長に要望書を提出(7月21日公開)
- 「在宅療養支援体制の強化」「医療介護連携体制の強化」「中山間・人口減少地域の持続可能な提供体制の確立」の3本柱・9項目を要望
- 緊急時訪問看護加算・退院時共同指導加算の算定要件見直し、入院・入所時情報提供の評価、特別地域加算等の見直しなどが柱
- 先週報道の日本看護協会含む3団体(処遇改善・報酬確保中心)の要望書とは別内容
- 現時点ではあくまで要望であり、実現の可否・時期は今後の審議会の議論次第
令和9年度介護報酬改定に向けた議論は今後本格化します。関連する加算の算定状況を自法人で整理しておくと、続報を理解しやすくなります。
この要望はいつ介護報酬に反映されますか?
反映される時期・内容は現時点では未定です。令和9年度介護報酬改定に向けて、今後、社会保障審議会介護給付費分科会等での審議を経て決定されます。今回はあくまで団体からの要望段階です。
先週報道された3団体(日本看護協会含む)の要望書と同じものですか?
いいえ、別の要望書です。先週お伝えした3団体の要望書は処遇改善・報酬確保を中心とした内容でしたが、今回の日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会による要望書は、在宅療養支援体制・医療介護連携体制・中山間地域の提供体制確立という異なるテーマを扱っています。
訪問看護ステーションは今、何か対応する必要がありますか?
現時点では制度変更が決定したわけではないため、直ちに必要な対応はありません。ただし、緊急時訪問看護加算や退院時共同指導加算が算定できなかった事例、入院・入所時の情報提供の実績など、自法人の状況を整理しておくと、今後の審議の行方を理解しやすくなります。



















