「訪問看護ステーションは今どれくらい増えているのか」「収支差率は他のサービスと比べてどうなのか」——開業を検討している方も、すでに運営している方も、こうした数字を客観的なデータで把握しておきたいはずです。
この記事では、2026年6月29日に開催された第259回社会保障審議会介護給付費分科会の資料3「訪問看護」をもとに、事業所数・利用者数・収支差率・従事者数・廃止理由など、訪問看護の最新データを1記事にまとめました。
- 訪問看護ステーション数の推移と都道府県別の傾向
- 利用者数・要介護度別の内訳
- 収支差率など経営状況を示す最新データ
- 従事者数・人員体制、廃止・休止の実態と理由
- 加算の算定状況、今後の需要見通し
目次
訪問看護ステーション数の推移|増加が続く一方で内訳に差
訪問看護ステーションの数は、集計する統計によって数値が異なります。まずはどの統計を見ているのかを整理したうえで、全体の傾向をつかみましょう。
| 統計の種類 | 平成14年度 | 令和7年度 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| 医療保険(訪問看護療養費)算定ステーション数 | 4,550か所 | 18,378か所 | 一貫して増加 |
| 介護保険(訪問看護費)算定ステーション数 | 4,930か所 | 15,741か所 | 一貫して増加 |
| 介護保険(訪問看護費)算定・病院又は診療所数 | 3,874か所 | 1,104か所 | 一貫して減少 |
いずれの統計でも訪問看護ステーション数の増加という傾向は共通していますが、病院・診療所が行う訪問看護は減少が続いています。訪問看護の担い手が「病院・診療所」から「訪問看護ステーション」へシフトしていることが読み取れます。
また、全国訪問看護事業協会の調査(指定数ベース)では、令和2年度の13,459か所から令和6年度は19,314か所へ増加した一方、廃止届・休止届の件数も年々増えていることが示されています(詳細は後述)。
都道府県別の事業所数|都市部で増加が顕著
都道府県別に見ると、令和2年から令和6年にかけてすべての都道府県で事業所数が増加していますが、増加の度合いには差があります。
- 東京都は令和6年時点で2,122か所と全国で最も事業所数が多い
- 令和2年比の増加率では、沖縄県が212%と全国で最も高い伸びを示した
- 都市部を中心に事業所数の増加が著しい一方、地方でも一定の増加が見られる

開業を検討している方は、自分のエリアが「まだ事業所が少ない地域」なのか「すでに競合が多い都市部」なのかを、こうした都道府県別データで確認しておくと参入判断の材料になりますよ。
訪問看護の利用者数と要介護度別の内訳
訪問看護の利用者は、医療保険と介護保険の両方から給付を受けています。
| 区分 | 利用者数(速報値) |
|---|---|
| 医療保険(小児等40歳未満の者等) | 約57.2万人 |
| 介護保険(要介護・要支援者) | 約87.0万人 |
介護保険の利用者を要介護度別の割合で見ると、要介護1・2の利用者割合が年々増加している点が特徴です。
| 要介護度 | 令和7年度の利用者割合 |
|---|---|
| 要介護1 | 25.7% |
| 要介護2 | 27.7% |
| 要介護3 | 17.8% |
| 要介護4 | 16.2% |
| 要介護5 | 12.6% |
要介護1・2の合計で全体の半数以上(53.4%)を占めており、比較的医療依存度が低い利用者層への対応力も、今後の訪問看護ステーションに求められる要素になっています。
収支差率から見る訪問看護の経営状況
訪問看護ステーションの経営状況を示す代表的な指標が「収支差率」です。厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」によると、令和6年度決算の収支差率(税引前・物価高騰対策関連補助金を含まない)は10.3%となっています。
| 年度 | 税引前収支差率(補助金含まない) |
|---|---|
| 令和3年度決算 | 7.2% |
| 令和4年度決算 | 5.9% |
| 令和5年度決算 | 11.9% |
| 令和6年度決算 | 10.3% |
全介護サービスの収支差率の平均は4.7%であり、訪問看護の10.3%はこれを大きく上回る水準です。ただし年度によって変動幅が大きいため、単年度の数値だけで経営判断をせず、複数年の推移で見る必要があります。
従事者数・人員体制のデータ
訪問看護ステーションの職種別の従事者数(常勤換算)はいずれの職種も年々増加していますが、全従事者に占める看護職員の割合は近年横ばいで推移しています(平成22年度81%→令和6年度71%)。
1事業所あたりの従事者数(常勤換算)は8.1人、そのうち看護職員は5.8人となっています(令和6年度)。
| 看護職員規模(常勤換算) | 令和6年度の構成比 |
|---|---|
| 2.5〜3人未満 | 15.5% |
| 3〜4人未満 | 22.6% |
| 4〜5人未満 | 17.1% |
| 5〜7人未満 | 20.0% |
| 7〜10人未満 | 13.6% |
| 10人以上 | 10.4%(10〜15未満7.2%+15人以上2.2%程度) |
看護職員数が5人以上のステーションは増加傾向にあり、小規模事業所からの脱却・体制強化が進んでいることがうかがえます。
廃止・休止の実態と理由|最大の壁は「人材確保」
事業所数が増加する一方で、廃止・休止となるステーションも増加しています。
| 年度 | 翌年度4月1日時点指定数 | 年度内廃止届受理数 | 年度内休止届受理数 |
|---|---|---|---|
| 令和2年度 | 13,459か所 | 541件 | 240件 |
| 令和3年度 | 14,762か所 | 490件 | 242件 |
| 令和4年度 | 16,155か所 | 568件 | 225件 |
| 令和5年度 | 17,808か所 | 701件 | 291件 |
| 令和6年度 | 19,314か所 | 886件 | 355件 |
全国訪問看護事業協会の調査(n=437)による廃止理由の上位は次のとおりです。
| 順位 | 廃止理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 従業員確保が困難 | 22.7% |
| 2位 | 管理職が退職した | 17.6% |
| 3位 | 利用者が少なく経営維持が困難 | 14.9% |
| 4位 | 人員基準に満たなくなった | 11.0% |
| 5位 | 開設主体の経営方針のため | 4.6% |
収支差率10.3%という高水準の数字だけを見ると経営が容易に見えますが、廃止理由の上位2つ(従業員確保・管理職退職)はいずれも「人」に関するものです。収益性と組織の持続可能性は別問題として捉える必要があります。
法人種別に見る担い手の変化
訪問看護事業所を運営する法人の種別では、営利法人の増加が突出しています。平成20年度に1,211か所だった営利法人の事業所数は、令和7年度には10,467か所まで増加しました。医療法人・社会福祉法人が緩やかな増加にとどまる中、営利法人の新規参入が事業所数全体の増加を牽引している構図です。
他サービスとの連携状況
訪問看護と「連携したことがある」と回答した割合をサービス別に見ると、次のようになっています。
| 連携先サービス | 連携経験がある割合 |
|---|---|
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 83.0% |
| 訪問介護 | 68.3% |
| 小規模多機能型居宅介護 | 63.2% |
| 認知症対応型共同生活介護 | 55.3% |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | 49.4% |
連携による効果としては、多くのサービスで「急変・状態悪化時の早期対応」が最も多く挙げられていますが、訪問看護自体においては「状態改善・維持」の効果を挙げる回答の方が多い点が特徴的です。
加算の算定状況|普及している加算・していない加算
介護報酬の加算は種類が増える一方、算定率(事業所ベース)が極端に低い加算も存在します。
| 加算名 | 算定事業所割合 | 傾向 |
|---|---|---|
| 緊急時訪問看護加算(Ⅰ・Ⅱ合計) | 約88% | 広く普及 |
| 特別管理加算(Ⅰ・Ⅱ) | 67〜69% | 広く普及 |
| 退院時共同指導加算 | 12.4% | 一部で活用 |
| ターミナルケア加算 | 8.3% | 一部で活用 |
| 口腔連携強化加算 | 1.4% | 低調 |
| 専門管理加算 | 1.7% | 低調 |
| 看護・介護連携強化加算 | 0.4% | ほとんど活用されず |
令和6年度改定の審議報告でも、こうした算定率の低い加算について「報酬体系の簡素化」を検討すべきとされており、次期改定での見直しが注目されています。
今後の需要見通し|2040年に向けて拡大基調
第9期介護保険事業計画における推計では、在宅介護のうち訪問看護の利用者数は次のように見込まれています。
| 年度 | 訪問看護利用者数(推計含む) |
|---|---|
| 令和5年度(実績値) | 74万人 |
| 令和8年度(推計値) | 81万人(9%増) |
| 令和22年度=2040年度(推計値) | 94万人(27%増) |
在宅介護サービス全体の中でも訪問看護は伸び率が高く見込まれており、今後も需要拡大が続く見通しです。
データから見る、これからの訪問看護経営のポイント
ここまでのデータを踏まえると、訪問看護ステーションの経営判断において押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 収益性だけでなく組織の持続可能性を見る収支差率が高くても、人材確保・管理者の後継体制が弱ければ廃止・休止のリスクは高まる。
- 看護職員5人以上の体制を目指す規模の大きいステーションほど増加傾向にあり、24時間対応や緊急時対応の負担分散にもつながる。
- 他サービスとの連携実績を積み上げる定期巡回・随時対応型訪問介護看護など連携率の高いサービスとの関係構築が、利用者確保と加算算定の両面で有利に働く。
- 算定率の低い加算を漫然と取得しない自事業所で本当に対象者・体制があるかを確認し、次期改定での簡素化の動向も注視する。
よくある質問
訪問看護ステーションの数は全国で何か所ありますか?
統計の取り方によって数値が異なります。医療保険の訪問看護療養費を算定するステーションは令和7年度で18,378か所、介護保険の訪問看護費を算定するステーションは同年度で15,741か所です。全国訪問看護事業協会の指定数ベースの調査では、令和6年度時点で19,314か所となっています。
訪問看護の収支差率はどのくらいですか?
厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」によると、令和6年度決算の収支差率(税引前・物価高騰対策関連補助金を含まない)は10.3%で、全介護サービスの平均4.7%を上回る水準です。
訪問看護ステーションの廃止・休止が増えている理由は何ですか?
全国訪問看護事業協会の調査によると、廃止理由の最多は「従業員確保が困難」(22.7%)、次いで「管理職が退職した」(17.6%)です。収益性の高さだけでは事業継続を保証できず、人材確保が最大の課題となっています。
1事業所あたりの従事者数はどのくらいですか?
令和6年度時点で、1事業所あたりの従事者数(常勤換算)は8.1人、そのうち看護職員は5.8人となっています。
訪問看護の需要は今後も増えますか?
第9期介護保険事業計画の推計では、訪問看護の利用者数は令和5年度の74万人から令和8年度に81万人(9%増)、令和22年度(2040年度)には94万人(27%増)まで増加すると見込まれています。
まとめ|データで見る訪問看護は「拡大」と「淘汰」が同時進行
第259回介護給付費分科会の資料からは、訪問看護ステーションが増加を続ける一方で、廃止・休止も同時に増えているという二面性が見えてきました。
- 事業所数は統計により差はあるが、いずれも一貫して増加。病院・診療所による訪問看護は減少傾向
- 収支差率は令和6年度決算で10.3%と、全介護サービス平均(4.7%)を上回る水準
- 廃止・休止の最大要因は「従業員確保が困難」(22.7%)で、人材確保が経営継続のカギ
- 要介護1・2の利用者割合が増加し、営利法人の参入も急増
- 2040年度に向けて訪問看護の需要はさらに拡大する見通し
数字だけを見ると「儲かる業界」に見えがちですが、人材の確保・定着ができて初めて持続可能な経営が成り立つ点を、データは示しています。
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回(令和8年6月29日)資料3「訪問看護」(介護給付費等実態統計、介護サービス施設・事業所調査、介護事業経営概況調査、全国訪問看護事業協会調査等を引用)


















