そんな悩みをお持ちの訪問看護ステーション経営者・責任者の方は多いのではないでしょうか?
令和3年度に開業した訪問看護ステーションのうち、廃止・休止状態の訪問看護ステーションは約40%(令和4年度 訪問看護ステーション数 調査結果 都道 府県 一般社団法人全国訪問看護事業協会)にのぼり、訪問看護は廃業率が高い業種といえます。
では成功している訪問看護ステーションはどんな特徴があるのでしょうか?
今回はうまくいかない原因と成功するためのポイントについて紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
訪問看護ステーションの運営がうまくいかない原因
まず訪問看護ステーションの運営がうまくいかない原因について見ていきましょう。
原因は大きく2つで「人件費コスト」と「集客不足」により、資金繰りがうまくいかないことによる廃業です。
訪問看護は人件費が高いとされています。
参考までに神奈川県のデータになりますが、訪問看護の離職率は約18%(2021年度 神奈川県看護職員就業実態調査結果)と、病院の約11%(2020 年 病院看護実態調査 報告書)に比較して高い状況です。
職員がやめていくと、広告やインターネットなどの求人媒体へ求人を載せる必要がありますので、改めて新入職員を雇用する際のコストも大きくかかり、資金繰りが大変になります。
また、顧客である新規の利用者さんを増やしていかないと、ステーションとしての収益が上がらず、結果的に資金繰りがうまくいかず、廃業につながってしまいます。
成功している訪問看護ステーションの5つのポイント
では成功している訪問看護ステーションはどういったポイントがあるのでしょうか。
5つのポイントがあげられます。
- ステーション独自の強みがある
- 積極的な営業活動をしている
- 働きやすい環境がある
- 達成したい目的や理念がある
- 一人ひとりの支援を誠実に
ひとつずつ見ていきましょう。
ステーション独自の強みがある
まず1つ目のポイントは、ステーション独自の強みがあることです。
ステーションの強みがあることで、地域の中でも差別化ができます。
競合となるステーションがあっても他の強みを活かして、その領域で徐々に新規の利用者さんを獲得していくチャンスが生まれます。
例えば、以下のように特化する分野があります。
- 精神科
- 小児看護
- ターミナルケア
- 機能強化・リハビリ
注意点はあまりにもニーズの少ない領域へ参入してしまうと、そもそも顧客がいないため、利用者さんが増えないという問題に直面します。
そのため、事前に「どういった地域」で「どの年代が多く住んでいるか」、また「他のサービスとの関係性」などの情報収集をしていく必要があるでしょう。
特化した領域で認知度が拡大し、地域の中で認知度が上がれば、他の領域にも少しずつ挑戦していきやすくなります。
積極的な営業活動をしている
成功している訪問看護ステーションは愚直に営業に回っています。
しかし、訪問看護ステーションの営業は少し目的が異なり、地域との信頼関係を築くために行われます。
営業方法は一般的なイメージがあるような、ゴリゴリと「新規の利用者さんをください!」と営業をかけるのではなく、まずは「自分達がどういうステーション」で、「どんなことができるのか」を認知してもらうことから始めるのが良いでしょう。
また、少しずつ認知され利用者さんの依頼が来はじめたら、書類を手渡しに直接出向き、担当する利用者さんについて話題を持ちかけたり、「新入職員が入職したこと」や「最近始めた取り組み」など、最近の訪問看護ステーションの状況を伝えていくこともよいでしょう。
地域のケアマネージャーさんが、新しい利用者さんに必要なサービスを考えている時に「あそこのステーションにお願いしたいな」と思い出してもらえるのが大切です。
働きやすい環境がある
職員が働きやすいというのも大切です。
はじめにも解説しましたが、訪問看護ステーションの運営は人件費コストをいかに抑えるかが大切になります。
離職率を下げ、人件費のコストを無駄にかけないためにも、職員が働きやすい環境を整えていくとよいでしょう。
以下のような環境を意識して整えていけると良いでしょう。
- 風通しが悪く、コミュニケーションが取りにくくなっていないか?
- 悩みを相談しやすいか?
- 1日の訪問件数が7〜8件とキツすぎないか?
- 移動にかかる時間が多く、休憩が取れているか?
- 各職員ごとの事務作業が多く、専門業務に専念できているか?
- 業務改善のためのICTツールを使っているか?
また福利厚生という面でも、以下のような制度をとっている訪問看護ステーションもあるようです。
- 各種社会保険
- 出産育児制度
- 特別休暇
- 退職金制度
- 住宅・通勤手当
- スキルアップのための研修費
働きやすい環境では職員がいきいきと元気よく働けるため、ステーション全体の活気も出てきます。
達成したい目的や理念がある
訪問看護だけに限らず、成功している企業には明確な達成したい理念や目的があります。
明確な理念や目的は社員の働く上での行動規範となり、会社で求められる行動や判断に迷った時の道標になります。
「利用者さんファーストに仕事ができること」や「地域のためになろうというステーション」は地域からの信頼も獲得していけるでしょう。
地域の信頼が少しずつ広がっていき、認知度が拡大していくことで、理念に共鳴する優秀な人材も集まりやすく、より強固なステーションになっていきます。
そのため、社会や地域課題を解決したいという理念や目的を掲げ、それに基づいて日々の業務に職員全員が専念できる組織作りが大切です。
一人ひとりの支援を誠実に
もろもろのポイントについて解説しましたが、やはり一番は一人一人の利用者さん、その周囲を取り囲む家族やサービス担当者に対して「誠実な支援をする」ということに尽きます。
誠実な支援は利用者さんを介して地域内で口コミで広がっていくこともあります。
また、ケアマネージャーの間でも「あのステーションに依頼してみようかな」と思ってもらいやすくなります。
結果的に、一回一回の支援がより強固な営業になっていくと言えます。
日々の支援の中で、以下の点を心がけておくと良いでしょう。
- 快活に笑顔で挨拶をする
- 利用者さん・家族の話をよく聞く
- 隠れたニーズに気づいて行動する
- 迅速に行動する
- 小さいことでも約束を守る
- あやまちがあれば素直に謝る
- 周囲の担当者と情報を密に共有する
こういった日々の一人ひとりの利用者さんに対する支援の積み重ねにより、地域からの信頼が得られる訪問看護ステーションに成長していくことでしょう。
訪問看護ステーションの成功にはバランスが大切
成功している訪問看護ステーションの5つのポイントについて解説してきました。
改めて見てみますと、以下の5点です。
- ステーション独自の強みがある
- 積極的な営業活動をしている
- 働きやすい環境がある
- 達成したい目的や理念がある
- 一人ひとりの支援を誠実に
自分たちの強みをよく理解し、少しだけ戦略的な営業をすることや、誠実な理念の元に一人ひとりの利用者さんに丁寧に支援を提供することが大切です。
その中で社内の働き方を少しずつ改善していき、働きやすい環境を作っていくことが、成功している訪問看護ステーションのポイントと言えます。