「訪問看護Ⅰ5には減算がある」と聞いて、1日に2回を超えると減る話だと思っていませんか。実は訪問看護Ⅰ5には仕組みが全く異なる2種類の減算があり、この2つを混同したまま請求管理をしていると、思わぬ算定誤りにつながります。
この記事では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問看護Ⅰ5について、週6回(120分)の回数制限と、性質の異なる2つの減算(①1日2回を超えた場合の90%/50%減算、②令和6年度改定で新設された8単位減算)を、それぞれ整理して解説します。
- 訪問看護Ⅰ5の単位数と、週6回(120分)の回数制限
- 1日2回を超えた場合の90%/50%減算の仕組み
- 令和6年度改定で新設された「看護職員より訪問回数が多い事業所」への8単位減算
- 2つの減算を混同しないための整理の仕方
目次
訪問看護Ⅰ5とは?単位数と基本ルール
訪問看護Ⅰ5とは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、理学療法士等)による、介護保険の訪問看護の算定区分(サービスコード)です。1回20分以上の実施を基本とし、単位数は次のとおりです(令和6年度介護報酬改定で各+1単位引き上げ)。
| 区分 | 単位数(1回20分につき) |
|---|---|
| 訪問看護Ⅰ5 | 294単位 |
| 予防訪問看護Ⅰ5 | 284単位 |
サービス提供票には、20分間の訪問は「1」、40分間(連続2回相当)の訪問は「2」と記載します(記録・請求ソフトによって「1」+「1」と分割表記される場合もあります)。

訪問看護Ⅰ5の減算は「1日2回超」の話と「令和6年度に新設された事業所単位の話」の2つがごちゃまぜに語られがちです。まずは別物として頭を整理してから読み進めるのがおすすめですよ。
減算①|1日2回を超えると90%・50%減算になる仕組み
1人の利用者に対し、1日に理学療法士等の訪問看護を2回を超えて(3回以上)行う場合、超えた分の単位数は減算されます。
| 1日の訪問時間 | 訪問看護Ⅰ5 | 予防訪問看護Ⅰ5 |
|---|---|---|
| 20分間(1回) | 通常算定 | 通常算定 |
| 40分間(2回) | 通常算定 | 通常算定 |
| 60分間以上(3回以上) | 90%減算 | 50%減算 |
例えば訪問看護Ⅰ5(294単位)を1日60分(3回相当)実施した場合、294単位×90%=約265単位となり、3回分すべてがこの減算後の単位数で算定されます。この減算は理学療法士等による訪問看護そのものの回数を基準にしており、同日に看護師による訪問看護(訪問看護Ⅰ1〜Ⅰ4等)が別にあっても、この減算の対象にはなりません。

週6回(120分)の回数制限
訪問看護Ⅰ5には、1日あたりの制限とは別に、1人の利用者につき週6回(合計120分)を限度とする回数制限があります。週の起算日は暦週(日曜日)です。
- 20分間の訪問の場合:週6回まで
- 40分間の訪問の場合:週3回まで
- 60分間の訪問の場合:週2回まで
病院・診療所・介護老人保健施設からの介護保険訪問リハビリテーション(訪問リハⅠ・Ⅱ・Ⅲ)についても、同様に週6回(120分)の回数制限がありますが、こちらには訪問看護Ⅰ5のような「40分超の減算」は設けられていない点が異なります。
「週6回まで」という回数制限と、「1日2回まで(超えると減算)」という制限は別の軸のルールです。例えば週2回・1回60分ずつの利用であれば週の回数制限(週6回・120分)の範囲内ですが、1日あたりで見ると2回超の減算(90%/50%)の対象になります。両方を同時に意識して確認してください。
減算②|令和6年度改定で新設された「看護職員より訪問が多い事業所」への8単位減算
令和6年度介護報酬改定では、減算①とは別の仕組みとして新たな減算が設けられました。次の2つの条件をどちらも満たす場合、理学療法士等の訪問1回につき8単位が減算されます。
- 前年度の訪問回数の偏り事業所における前年度の理学療法士等による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること。
- 特定の加算をいずれも算定していないこと緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算のいずれも算定していないこと。
逆にいえば、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれか一つでも算定している事業所であれば、たとえ理学療法士等の訪問回数が看護職員より多くても、この8単位減算の対象にはなりません。看護職員による医療的なケア体制を評価する加算を算定しているかどうかが、実質的な判定基準になっています。

「前年度の訪問回数」の具体的な集計方法(連続2回の訪問を1回と数える取扱いなど)は事業所ごとに解釈が分かれやすいため、最終的な判断は指定権者(都道府県・市区町村)へ確認してください。
2つの減算を混同しないための整理
ここまでの内容を、判定の軸ごとに整理すると次のようになります。
| 項目 | 減算①(1日2回超) | 減算②(令和6年度新設) |
|---|---|---|
| 判定の単位 | 利用者ごと・1日単位 | 事業所ごと・年度単位 |
| 判定基準 | 同一日の訪問回数(2回超か) | 前年度の訪問回数比較+加算算定状況 |
| 減算率・単位 | 90%(予防は50%) | 1回につき8単位 |
| 回避方法 | 1日の訪問を2回以内にとどめる | 看護職員の訪問比率を高める、または3加算のいずれかを算定する |

減算①は「今日この利用者に何回訪問したか」という現場レベルの話、減算②は「事業所全体で見たときの職種バランス」という経営レベルの話です。担当者ベースで確認する項目と、管理者が年度単位で確認する項目を分けて運用すると混乱しにくいですよ。
複数の訪問看護ステーションを利用する場合の注意点
利用者が2か所以上の訪問看護ステーションから訪問看護Ⅰ5を利用している場合、1日の合計時間で減算①の判定が行われます。例えば2つのステーションからそれぞれ20分ずつ訪問を受け、合計40分を超えた場合は、合計時間に応じて減算対象になり得ます。自事業所の訪問回数だけで判断せず、他の事業所からの訪問状況もケアマネジャーを通じて確認しておくことをおすすめします。
実務上は、サービス提供票の写しや居宅サービス計画書だけでは、他事業所の訪問実施時刻まで正確に把握しきれないことがあります。特に同一利用者に複数の訪問看護ステーションが関わっているケースでは、月初の計画段階でケアマネジャーを介して訪問時間帯の調整を依頼し、後から重複が発覚して減算対象になる事態を防ぐ運用が有効です。週6回・120分の回数制限についても、他事業所分の利用実績を含めて考える必要があるかどうかは自治体により解釈が分かれる可能性があるため、複数事業所が関わるケースでは念のため指定権者に確認しておくと安心です。
まとめ|「1日あたり」と「事業所全体」の2つの視点で確認する
訪問看護Ⅰ5の減算は、利用者単位・1日単位で判定される減算①と、事業所単位・年度単位で判定される減算②の、性質の異なる2つが存在します。
- 訪問看護Ⅰ5は294単位/回(20分)、予防訪問看護Ⅰ5は284単位/回。週6回(120分)が回数の上限
- 減算①:1日に2回を超える訪問は90%減算(予防は50%減算)。複数事業所利用時は合計時間で判定される
- 減算②:前年度に理学療法士等の訪問が看護職員の訪問を上回り、かつ緊急時訪問看護加算等の3加算をいずれも算定していない場合、1回につき8単位減算(令和6年度改定で新設)
- 2つの減算は判定基準も回避方法も異なるため、現場レベル(担当者)と経営レベル(管理者)で確認項目を分けて運用する
前年度の訪問回数の集計方法や、加算算定状況の具体的な確認方法は、居宅サービス計画書等の記録をもとに、必要に応じて指定権者へ確認しながら整理してください。

よくある質問
1日に訪問看護Ⅰ5と看護師による訪問看護(Ⅰ1〜Ⅰ4)を1回ずつ利用した場合、減算対象になりますか?
減算①(1日2回超の減算)は理学療法士等による訪問看護の回数のみで判定されるため、看護師による訪問看護と合わせて2回であっても、理学療法士等の訪問が1回であれば減算①の対象にはなりません。
減算②の「前年度の訪問回数」は、どの期間の実績を指しますか?
事業所における前年度(前会計年度など)の理学療法士等による訪問回数と、看護職員による訪問回数を比較して判定するとされています。具体的な集計期間・集計方法は自治体の解釈が分かれる場合があるため、居宅サービス計画書等の記録を整理したうえで、指定権者へ確認することをおすすめします。
特別管理加算を算定していれば、減算②は絶対に適用されませんか?
緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれか一つでも算定していれば、前年度の訪問回数比較にかかわらず減算②の対象外になるとされています。ただし、これらの加算自体にも別途算定要件があるため、加算の算定要件を満たしているかを併せて確認してください。
連続して2回の訪問を行った場合、回数のカウントはどうなりますか?
連続する2回の訪問(40分間)は、訪問回数のカウント上は1回として扱われるとされています。前年度の訪問回数比較や週の回数制限を確認する際は、この数え方を踏まえて集計する必要があります。
週6回の回数制限を超えて利用したいという要望があった場合、どうすればよいですか?
訪問看護Ⅰ5の週6回(120分)という回数制限は、原則として超えて算定することはできないとされています。利用者の状態からさらなるリハビリが必要と判断される場合は、看護師による訪問看護の内容にリハビリ的な関わりを組み込む、または医療保険での対応が可能かなど、ケアマネジャー・主治医を交えて別の方法を検討する必要があります。





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