NPPV・CPAP使用者の訪問看護は医療保険?介護保険?

在宅で人工呼吸器やCPAPを使用している利用者への訪問看護は、機器の種類や主治医の算定状況によって、医療保険・介護保険のどちらが優先されるかが細かく変わります。「人工呼吸器を使っているから医療保険」と単純に判断すると、実際の算定内容と食い違い、誤りにつながることがあります。

この記事では、NPPV・SAS・ASV・CPAP・気管カニューレそれぞれのケースで、訪問看護がどちらの保険になるのかを、具体的な判断基準とともにわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 人工呼吸器装着者の保険適用の基本原則
  • NPPV使用者が医療保険優先になる条件
  • SAS・ASV・CPAPが介護保険優先になる理由
  • 気管カニューレ挿入者の扱い
  • 別表第七・第八の違い

基本原則:人工呼吸器装着状態は医療保険が対象

訪問看護における医療保険・介護保険の判定は、「厚生労働大臣が定める疾病等」(別表第七)に該当するかどうかが最も基本的な判断軸になります。人工呼吸器を装着している状態は、別表第七に含まれる場合は医療保険が優先されますが、機器の種類や実際の算定状況によっては該当しないケースもあります。訪問看護ステーション側では、この判断を一度きりで終わらせず、利用者の状態や治療方針が変わるたびに確認し直す姿勢が求められます。

NPPV使用者は医療保険になる?

NPPV(非侵襲的陽圧換気)を使用している利用者について、主治医が「在宅人工呼吸指導管理料」の「人工呼吸器加算の2」(鼻マスク・顔マスク使用)を算定している場合、別表第七に含まれ、訪問看護は医療保険が優先されます。

SAS(睡眠時無呼吸症候群)でのNPPV使用の場合

睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対してNPPVを使用しているケースは、別表第七に含まれません。この場合、要介護認定を受けている利用者は介護保険が優先され、要介護認定を受けていない場合は医療保険での訪問看護となる可能性があります。

ASV・CPAPの場合

ASV(適応補助換気)・CPAP(持続陽圧呼吸療法)についても同様に、別表第七には含まれません。要介護認定を受けている利用者は、原則として介護保険が優先される扱いになります。

機器・状態別表第七への該当要介護認定者の場合
NPPV(人工呼吸器加算2算定時)該当する医療保険が優先
NPPV(SASに対する使用)該当しない介護保険が優先
ASV該当しない介護保険が優先
CPAP該当しない介護保険が優先
看護師 上妻
看護師 上妻

同じ「人工呼吸器」でも、主治医がどの管理料・加算を算定しているかによって医療保険・介護保険の判定が変わります。利用者の主治医に、算定している管理料・加算の内容を確認しておくと安心です。訪問看護指示書だけでは加算区分まで読み取れないことも多いので、遠慮せず医療機関側に問い合わせる習慣をつけておくとよいと思います。

気管カニューレ挿入者の場合

在宅で気管カニューレを使用している利用者は、「厚生労働大臣が定める疾病等」(別表第七)には該当しません。そのため、要介護認定を受けている利用者は介護保険が優先されます。

別表第七・別表第八の違いを整理しよう

ここまでの内容を理解するには、別表第七(疾病等)と別表第八(状態)の違いを押さえておくことが重要です。

  • 別表第七:末期がん・ALS等の「疾病等」を列挙したもの。該当すれば医療保険が優先される
  • 別表第八:気管カニューレ使用・真皮を超える褥瘡等の「状態」を列挙したもの。特別管理加算の対象となる
注意

気管カニューレ挿入者は別表第七には該当しないため保険優先順位には影響しませんが、別表第八には該当するため、算定している保険(医療保険・介護保険いずれか)において特別管理加算の対象にはなります。「別表第七に該当しない=何の加算も算定できない」という誤解をしないよう注意しましょう。この2つの別表は評価する観点が異なるため、片方だけを見て結論を出さず、必ず両方を確認する習慣をつけておくことが望ましいです。

なぜこのような細かい区分がされているのか

人工呼吸器といっても、その使用目的・重症度は大きく異なります。ALSや神経難病等の重篤な疾患に伴う人工呼吸器管理は、専門的で継続的な医療的関与が不可欠であるのに対し、SASのようにCPAP等で症状をコントロールできる病態は、比較的安定した管理で対応できるケースが多いという違いがあります。こうした重症度・必要な医療的関与の差を踏まえ、一律に「人工呼吸器=医療保険」とせず、算定している管理料・加算の内容によって線引きする仕組みになっていると考えられます。制度の背景を理解しておくと、個別のケースにも応用しやすくなります。

この仕組みを理解せずに「人工呼吸器を使っているから医療保険」と判断してしまうと、実際には介護保険が優先されるべきケースで誤って医療保険の訪問看護を提供してしまう可能性があります。逆のケースも同様にリスクがあるため、機器名だけで判断せず、必ず算定内容とあわせて確認することが重要です。誤った保険区分での請求が続くと、後日の返還請求や過誤調整につながる可能性もあるため、新規利用者の受け入れ時には特に注意深く確認しておく必要があります。

実務チェックリスト

  • 利用者がどの機器(NPPV・ASV・CPAP等)を使用しているか確認したか
  • 主治医がどの管理料・加算(人工呼吸器加算2等)を算定しているか確認したか
  • 要介護認定の有無を確認したか
  • 気管カニューレ使用者について、別表第七・第八のどちらに該当するかを整理したか
  • 特別管理加算の対象になるかを、保険の優先順位とは別に確認したか
  • 直近で利用者の状態変化・治療方針の変更がなかったか、保険区分を再確認するタイミングを決めているか
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判定に迷った場合の確認手順

実際の現場では、利用者の状態や算定内容だけで判断が難しいケースもあります。次の手順で確認を進めると、誤った判定を防ぎやすくなります。

  1. 使用機器の確認NPPV・ASV・CPAPのいずれを使用しているか、また鼻マスク・顔マスクなど装着形態を確認する。
  2. 主治医への算定内容の確認在宅人工呼吸指導管理料のどの加算区分を算定しているか、主治医または医療機関の事務担当者に確認する。
  3. 要介護認定の有無の確認利用者が要介護認定を受けているか、認定を受けている場合はその区分を確認する。
  4. 別表第七・第八該当性の整理疾病等(別表第七)と状態(別表第八)のどちらに該当するかを整理し、保険優先順位と加算の可否を分けて判断する。
POINT

主治医が「人工呼吸器加算の2」を算定しているかどうかは、訪問看護ステーション側からは直接確認しづらい情報です。ケアマネジャーや医療機関の連携担当者を通じて、早めに確認しておくことをおすすめします。

よくある質問

人工呼吸器を使っていれば必ず医療保険になりますか?

必ずしもそうとは限りません。NPPVで主治医が人工呼吸器加算2を算定している場合は医療保険が優先されますが、ASV・CPAP、SASに対するNPPV使用は別表第七に含まれず、要介護認定者は介護保険が優先されます。

気管カニューレ使用者は特別管理加算を算定できませんか?

算定できます。気管カニューレ使用は別表第八に該当するため、保険の優先順位(医療保険・介護保険)にかかわらず、算定している保険側で特別管理加算の対象になります。

別表第七と別表第八はどう違いますか?

別表第七は末期がん・ALS等の「疾病等」を列挙したもので、該当すれば医療保険が優先されます。別表第八は気管カニューレ使用・褥瘡等の「状態」を列挙したもので、特別管理加算の対象になります。

状態変化で保険区分が切り替わることはありますか?

あります。CPAPからNPPVへ移行し、主治医が人工呼吸器加算2を算定するようになった場合など、算定内容が変わると保険の優先順位も変わる可能性があります。状態変化・治療方針の変更時は、その都度確認することが重要です。

出典・参考

※個別の判定は主治医・ケアマネジャー・地方厚生局にご確認ください。

保険が切り替わるタイミングでの注意点

利用者の状態変化により、算定される管理料・加算の内容が変わると、保険の優先順位そのものが変わる可能性があります。たとえば、これまでCPAPのみを使用していた利用者が状態悪化によりNPPVへ移行し、主治医が人工呼吸器加算2を算定するようになった場合、それまで介護保険だった訪問看護が医療保険へ切り替わることになります。

こうした切り替えのタイミングを見落とすと、誤った保険区分での請求が続いてしまうリスクがあります。利用者の状態変化・治療方針の変更があった際は、その都度、主治医への確認と保険区分の見直しを行う運用を徹底しておくことが重要です。特に呼吸器疾患は状態の悪化・改善が比較的短期間で起こることもあるため、定期的な情報更新を怠らないようにしましょう。

ケアマネジャーとの情報共有の重要性

要介護認定を受けている利用者の場合、保険区分の切り替えはケアプランにも影響します。訪問看護ステーション側で保険区分の変更に気づいた際は、速やかにケアマネジャーへ情報共有し、ケアプランの見直しが必要かどうかを確認することが望ましいとされています。連絡が遅れると、介護保険側の給付管理が実態とずれてしまうおそれもあるため、迅速な対応を心がけましょう。訪問看護記録には、保険区分の変更日と、その根拠となった主治医からの情報を明記しておくと、後日の請求内容の確認や、監査・実地指導の際の説明もスムーズになります。

まとめ|機器の種類と算定状況で保険区分が変わる

人工呼吸器・CPAP使用者の保険区分は、機器の種類だけでなく、主治医がどの管理料・加算を算定しているかによって変わります。別表第七・第八の違いを理解しておくことで、保険の優先順位と加算の可否を正しく整理できます。判断に迷う場合は、機器名だけで結論を急がず、主治医・ケアマネジャーと連携しながら丁寧に確認する姿勢を持つことが何より大切です。事業所内でも判断に迷ったケースを共有し、同じような相談があった際にすぐ振り返れるようにしておくと、担当者ごとの判断のばらつきを防ぐことにつながります。

この記事のまとめ
  • NPPVは主治医が人工呼吸器加算2を算定していれば医療保険が優先
  • SASに対するNPPV・ASV・CPAPは別表第七に含まれず、要介護認定者は介護保険が優先
  • 気管カニューレ使用者は別表第七に該当しないため介護保険が優先されるが、別表第八に該当し特別管理加算の対象にはなる
  • 別表第七は「疾病等」、別表第八は「状態」を列挙したもので役割が異なる
  • 保険の優先順位と加算の可否は別々に確認する必要がある

特別管理加算の詳しい算定要件についても、関連記事をあわせてご確認ください。

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ABOUT US
上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。