訪問看護を利用している方が入院すると、「退院後の訪問看護指示書は前のものをそのまま使えるのか」「新しく発行してもらう必要があるのか」と迷う場面が出てきます。入院先が主治医と同じ病院かどうか、退院後にどこへ通院するかによって、対応は変わってきます。判断を誤ると、退院直後に指示書のない空白期間が生じてしまうこともあるため、あらかじめ流れを理解しておくことが大切です。
この記事では、入院時の訪問看護指示書の扱いを、入院先や退院後の通院先ごとの場面別に整理して解説します。
- 主治医と同じ病院に入院した場合の指示書の扱い
- 主治医と別の病院に入院した場合の3つのケース
- 入院時に必要な訪問看護サマリーの作成・提出
- 入院中の外泊時に訪問看護を利用する方法
目次
結論|有効期間内かつ病状に変化がなければ、指示書はそのまま使える
訪問看護利用者が入院しても、退院後に指示書の有効期間内であり、かつ病状や治療内容に大きな変化がなければ、入院前の訪問看護指示書のままサービスを再開できます。一方で、入院を機に病名や治療方針、投薬内容が変わった場合は、改めて指示書を発行してもらう必要があります。「特に変化はなかったはず」という思い込みで再開してしまうと、後から実態と指示書の内容にズレが見つかるおそれがあるため、退院前に必ず確認のステップを挟むようにしましょう。
主治医と同じ病院に入院した場合
退院が決まった段階で、主治医に「入院前の指示書のまま訪問看護を再開してよいか」を確認することが望ましい対応です。レスパイト入院のように病状に特段の変化がない場合は、その確認内容を記録に残しておきましょう。確認の記録は、後日行政の実地指導等で経緯を説明する際にも役立ちます。
入院により処方薬や治療方針が変わっていた場合は、新たな指示書の発行が必要になります。その際は発行料が発生することと、その必要性を利用者・ご家族にしっかり説明することが大切です。

「入院前と何も変わっていないから大丈夫だろう」と自己判断せず、必ず主治医に確認を取ることが大切です。確認したという事実自体を記録に残しておくと、後から振り返りやすくなりますよ。

主治医と別の病院に入院した場合の3つのケース
入院先が普段の主治医とは異なる病院だった場合、退院後にどこへ通院するかによって対応が分かれます。
| 退院後のケース | 指示書の対応 |
|---|---|
| 退院後も入院先の病院に通院を継続する | 入院先の医師から新たに1〜6か月の訪問看護指示書を発行してもらう(主治医変更として扱う) |
| 退院後、元の主治医のもとに戻る | 入院先から1か月分の指示書を発行してもらい、その後元の主治医から改めて新規発行してもらう |
| ターミナル期等で退院日に往診が入る | 往診先の医師から指示書が発行されることもある。退院前に病院と往診先で調整する |
元の主治医に戻るケースでは「指示期間が重なっても、指示料の算定月が別々であれば算定できる」という整理がされています。入院先での指示書発行と、元の主治医への引き継ぎのタイミングを、事前に調整しておくとスムーズです。

退院先が老健など施設の場合の考え方
入院後、自宅ではなく介護老人保健施設(老健)等の施設に退所する場合は、また別の考え方が必要になります。老健からさらに在宅療養へ移る際には、老健の医師が例外的に訪問看護指示書を交付できる「訪問看護指示加算」という仕組みが用意されています。入院・施設入所・在宅復帰と複数のステップを踏むケースでは、それぞれの段階で指示書の交付元が変わる可能性がある点を押さえておきましょう。訪問看護ステーションとしては、利用者の移動先が変わるたびに、次にどこへ確認を取ればよいかをあらかじめ整理しておくと混乱を防げます。
精神科訪問看護指示書を利用している場合の注意点
精神科訪問看護指示書に基づいて訪問看護を利用している方が入院した場合も、基本的な考え方は同じです。ただし精神科訪問看護指示書は精神科を標榜する医療機関の精神科担当医師のみが交付できるという固有の要件があるため、入院先が精神科病棟か一般病棟か、退院後に誰が主治医となるかによって、指示書の扱いがより複雑になりやすい点に注意が必要です。判断に迷う場合は、退院前カンファレンスの場で精神科の主治医を交えて確認しておくと安心です。
入院時に必須の「訪問看護サマリー」
利用者が入院したら、訪問看護ステーションは速やかに訪問看護サマリーを作成し、入院先へ提出することが重要です。訪問看護サマリーには、次のような情報を盛り込みます。
- 在宅での疾患経過
- 利用者・家族の治療に関する意向
- ADL(日常生活動作)や社会的役割の状況
- 退院後の継続ケアに必要な情報
- 利用中の介護サービスの状況
- 介護状況と家族の役割
このサマリーが入院先の医療スタッフに正しく引き継がれることで、入院中の治療方針の検討や、退院支援の質にも良い影響を与えます。逆にサマリーの提出が遅れると、入院先の医療スタッフが在宅での生活状況を把握できないまま治療方針を決めることになり、退院後の生活とのミスマッチが生じるリスクも高まります。
入院中の外泊時も訪問看護は利用できる
入院中に在宅療養へ向けた外泊をする場合でも、訪問看護を利用することができます。この場合は医療保険の訪問看護基本療養費(Ⅲ)として提供され、通常の訪問看護指示書に基づいて対応することが可能です。
算定回数は入院中1回が原則ですが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合は、入院中2回まで算定できるとされています。指示料自体は、入院中の指示も含めて退院時に1回のみの算定という整理です。外泊は在宅復帰の準備段階として重要な機会でもあるため、実際の生活環境で必要な支援量を見極める意味でも積極的に活用したい仕組みといえます。
入院中の外泊時に利用できる訪問看護は医療保険での提供に限られ、介護保険でのサービスは利用できません。ご本人・ご家族が「介護保険で普段通りに使えるはず」と誤解しているケースもあるため、事前にしっかり説明しておく必要があります。
退院日そのものの指示書の日付の扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
入院したら訪問看護指示書は必ず取り直す必要がありますか?
いいえ。有効期間内で、かつ病状や治療内容に大きな変化がなければ、入院前の指示書のままサービスを再開できます。変化があった場合は改めて発行してもらう必要があります。
入院先の病院に退院後も通院する場合、指示書はどうなりますか?
入院先の医師から新たに訪問看護指示書を発行してもらいます。この場合は主治医変更として扱われます。
入院中の外泊時に訪問看護は使えますか?
はい。医療保険の訪問看護基本療養費(Ⅲ)として、通常の訪問看護指示書に基づいて利用できます。ただし介護保険でのサービスは利用できないため、事前にご家族へ説明しておく必要があります。
入院後、老健などの施設に退所する場合も同じ考え方ですか?
老健等の施設からさらに在宅療養へ移る場合は、老健の医師が例外的に訪問看護指示書を交付できる「訪問看護指示加算」という別の仕組みが用意されています。入院・施設入所・在宅復帰と段階を踏むケースでは、それぞれの段階での交付元を確認しましょう。
訪問看護サマリーは誰が作成し、どこに提出しますか?
訪問看護ステーションの担当看護師が作成し、入院先の医療機関へ速やかに提出します。在宅での疾患経過やADL、利用中の介護サービスの状況などを盛り込み、入院中の治療や退院支援に役立ててもらいます。

入院・退院時に確認しておきたいチェックリスト
利用者が入院した際、訪問看護ステーションとして次の点を確認しておくと、退院後の指示書対応がスムーズになります。
- 入院先が普段の主治医と同じ病院か、別の病院か
- 退院後、どの医療機関に通院を継続する予定か
- 入院中に病状・治療方針・投薬内容に変化があったか
- 訪問看護サマリーを速やかに入院先へ提出できたか
- 退院前カンファレンスの場で、指示書の交付元について確認できたか

入院はご本人・ご家族にとって大きな出来事です。指示書の手続きだけに気を取られず、退院後の生活全体を見据えて情報を整理していくことが、訪問看護師の腕の見せどころですね。
まとめ|入院先と退院後の通院先で対応が変わることを押さえておこう
入院時の訪問看護指示書の扱いは、入院先が主治医と同じ病院かどうか、退院後にどこへ通院するかによって変わります。老健等の施設を経由する場合や、精神科訪問看護指示書を利用している場合は、さらに別の考慮点が加わるため、それぞれのケースに応じた確認を怠らないようにしましょう。
- 有効期間内で病状に変化がなければ、入院前の指示書のまま再開できる
- 病状・治療内容に変化があれば、改めて指示書の発行が必要
- 入院先が別の病院の場合、退院後の通院先によって対応が3パターンに分かれる
- 入院時は速やかに訪問看護サマリーを作成・提出する
- 入院中の外泊時も医療保険で訪問看護を利用できるが、介護保険は使えない
退院日の指示書の日付の扱い、主治医変更時の対応、老健からの退所時の指示書については、関連記事もあわせてご確認ください。























