退院日当日に訪問看護に入ったのに、基本療養費が算定できない……そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。医療保険の訪問看護では、退院日は基本療養費を算定できない代わりに、要件を満たす利用者さんに対して「退院支援指導加算」を算定できる制度があります。
退院支援指導加算は、退院直後の在宅療養を円滑にスタートさせるための重要な加算です。算定タイミングや対象者の要件を正確に把握しておかないと、算定漏れが発生しやすい加算でもあります。また、令和8年度診療報酬改定では、別表第8の対象が拡大されており、新たに算定できるケースが増えています。この記事では、退院支援指導加算の要件・料金・算定ポイントを実務に使えるレベルで丁寧に解説します。
- 退院支援指導加算の定義・対象者(基準告示第2の7の内容)
- 算定タイミングと「退院翌日以降の初回訪問日」に算定する理由
- 通常6,000円・長時間8,400円の違いと要件
- 令和8年度診療報酬改定による別表第8の対象拡大(難治性皮膚疾患の追加)
- 算定漏れを防ぐための実務上のポイント・留意事項
目次
退院支援指導加算とは?【医療保険・訪問看護】
退院支援指導加算とは、保険医療機関を退院する利用者に対して、退院日当日に在宅での療養上必要な指導を行った場合に支給される加算です。医療保険での訪問看護において算定されます(介護保険にはありません)。
退院日は、通常の訪問看護基本療養費を算定することができません。そのため「退院日に指導に行ったのに何も算定できない」という状況を補う形で、要件を満たした場合に退院支援指導加算として評価されます。ただし注意が必要なのは、この加算は退院日当日ではなく、退院の翌日以降、初日の指定訪問看護を実施した際に訪問看護管理療養費に加算して算定するという点です。

退院日に指導を行っても、算定するのは「次に訪問した日」なんですね。退院日と算定日がずれるので、請求時に見落としが起きやすい加算です。しっかり記録に残しておくことが大切ですよ。
算定の主体は訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)です。准看護師は算定対象外になりますので注意しましょう。
退院支援指導加算の対象者とは?基準告示第2の7を解説
退院支援指導加算を算定できるのは、基準告示第2の7に該当する利用者に限られます。基準告示第2の7には次の3つが定められています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ① 別表第七 | 医療保険が優先適用される疾病等の患者(末期悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患など指定難病・重症疾患) |
| ② 別表第八 | 特別管理加算の対象となる状態(気管カニューレ使用、留置カテーテル使用、在宅酸素療法・中心静脈栄養・人工呼吸管理中など) |
| ③ 退院日の訪問看護が必要と認められた者 | 主治医が退院日当日の訪問看護の必要性を認め、訪問看護指示書が交付されている利用者 |
①②はいわゆる「重症・難病系」の利用者が中心ですが、③については主治医が必要と認めた利用者であれば幅広く対象になります。ステーションによっては③の存在を見落として算定漏れが起きるケースがありますので注意が必要です。

「別表第七・八に該当しない利用者さんでも、主治医が退院日の訪問看護を必要と認めれば対象になる」というのがポイントです。退院調整の段階で主治医と確認しておくとスムーズですよ。
別表第七・別表第八の対象疾病・状態の詳細については、下記の記事をご確認ください。
退院支援指導加算はいつ算定する?算定タイミングを正確に理解しよう
退院支援指導加算の算定タイミングは、退院の翌日以降の初日に指定訪問看護を実施した際です。退院日当日ではないことに注意してください。退院日に指導を行っても、算定は次の訪問日まで持ち越しになります。
退院日に療養上の指導を実施 → 退院翌日以降の初回訪問日に、訪問看護管理療養費に加算して算定
指導を行ったのが前月の場合でも算定できます(月をまたいでいても問題ありません)。
死亡・再入院があった場合の特例
退院後の初回訪問が行われる前に、利用者さんが死亡または再入院してしまったケースでも、算定が認められています。この場合は、死亡日または再入院日に退院支援指導加算のみを単独で算定することが可能です(訪問看護基本療養費等は算定できません)。退院時に指導を行ったことの記録が明確であれば、こうした緊急時でも適切に算定できます。
退院日に指導したこと自体を記録に残さないと、後の訪問日に算定する際の根拠がなくなります。退院日の訪問看護記録書に必ず「退院支援指導を実施した旨・指導内容・時刻」を記録しておきましょう。
退院支援指導加算の料金|6,000円と8,400円の違いは?
退院支援指導加算の料金は以下の2種類です。
| 区分 | 料金 | 算定要件 |
|---|---|---|
| 通常 | 6,000円 | 退院日当日に在宅療養上の指導を実施した場合 |
| 長時間加算(90分超) | 8,400円 | 長時間訪問看護加算の算定が認められている利用者に対し、退院支援指導の時間が合計90分を超えた場合 |
「長時間区分(8,400円)」には重要な条件が2つあります。
- その利用者が長時間訪問看護加算の算定対象者であること(別表第七・別表第八等の要件を満たす利用者)
- 退院支援指導の実施時間が、1回で90分超、または複数回の合計が90分超であること
複数回実施した合算でも90分超であれば長時間区分が算定できる点は、令和6年度の診療報酬改定で追加・明確化されたポイントです。1回の訪問で90分に達しなくても、退院日に複数回入った合計時間が90分を超えればよいということです。

長時間区分は取りこぼしが起きやすいです。退院日に2回訪問して合計90分超になったケースは確実に8,400円で算定できますが、「気づかず6,000円で出してしまう」というミスをよく見かけます。訪問記録の時間をしっかり確認しましょう。
いずれの区分も、1人の利用者の退院1回につき1回限り算定できます。同じ入院に対して複数回算定することはできません。
令和8年度診療報酬改定|別表第8の対象範囲が拡大
令和8年度(2026年)診療報酬改定では、別表第八の対象に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている者」が新たに追加されました。これにより、難治性皮膚疾患(先天性魚鱗癬、表皮水疱症など)の患者さんに対して在宅処置指導管理を行っている場合も、別表第八の対象者として退院支援指導加算を算定できるようになっています。
「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者」が別表第八に追加(令和8年6月施行)。これにより、週4日以上の訪問看護基本療養費の算定や、退院支援指導加算・特別管理加算などの算定対象が広がりました。
難治性皮膚疾患の患者さんは医療的ケアの必要性が高く、退院時の在宅指導が特に重要なケースです。この改定によって算定の幅が広がりましたので、該当する利用者さんを担当している場合は漏れなく確認しておきましょう。
退院支援指導加算の算定要件と留意点一覧
退院支援指導加算を正確に算定するために押さえておくべき要件・留意点をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 算定者 | 訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く) |
| 対象利用者 | 基準告示第2の7に該当する者(別表第七・別表第八・退院日の訪問看護が必要と認められた者) |
| 指示書 | 退院時に訪問看護指示書の交付を受けていること |
| 算定日 | 退院翌日以降の初回訪問看護実施日(訪問看護管理療養費に加算) |
| 前月分の取扱い | 指導が前月に行われた場合でも算定可 |
| 死亡・再入院時 | 初回訪問前に死亡・再入院した場合は、その日に加算のみ単独算定可 |
| 複数STとの調整 | 1人の利用者に対し1つの訪問看護ステーションのみ算定可 |
| 特別の関係 | 特別の関係にある保険医療機関からの退院でも算定可 |
| 病院の訪問指導との関係 | 入院していた保険医療機関の看護師等が行う退院日の訪問指導とは併算定可 |
| 記録 | 退院支援指導の内容を訪問看護記録書に記録すること(必須) |

「入院先の看護師が退院指導を行っても、訪問看護ステーション側の退院支援指導加算は別に算定できる」という点は意外と知られていないんですよ。入院先が介入しているからといって遠慮する必要はありませんね。
算定漏れを防ぐ!退院支援指導加算の実務運用ポイント
退院支援指導加算は「退院日に指導」→「初回訪問日に算定」というタイムラグがあるため、請求忘れが発生しやすい加算です。現場でよく起きる算定漏れの原因と対策を整理します。
よくある算定漏れのパターン
- 退院日の記録不備:退院日に訪問・指導した記録がないと、後の初回訪問日に算定する根拠がなくなります
- 長時間区分の見落とし:2回訪問して合計90分超になったケースで、通常区分(6,000円)で請求してしまうミス
- 前月算定の失念:退院日が前月末で初回訪問が翌月初旬のケースで、「前月の指導分が翌月に算定できる」ことを知らずに未請求になるパターン
- 複数ステーション時の調整不足:複数のステーションが関わっている場合、事前に「どのステーションが算定するか」を決めておかないとトラブルになる
- 死亡・再入院時の算定忘れ:初回訪問前に死亡・再入院した場合でも算定できるのに、「算定できない」と思い込んで請求しないケース
算定漏れを防ぐ仕組みづくり
算定漏れを防ぐには、「退院日情報の仕組み的な共有」と「初回訪問日のダブルチェック体制」が欠かせません。具体的な対策として、以下が有効です。
- 病院のMSW・病棟看護師との退院日情報の早期共有(退院日が決まった段階でスケジュールを確保)
- 退院日訪問の記録書に「退院支援指導実施・開始時刻・終了時刻・指導内容」を必ず記載するルールを徹底
- 初回訪問日のレセプト作成時に「退院支援指導加算の算定可否チェック」を組み込む(チェックリスト運用)
- 長時間訪問(2回以上の場合)は時間を合算して90分超になっていないか確認
退院支援指導加算は1人の利用者につき1つのステーションのみ算定できます。複数のステーションが退院日に関わっている場合は、病院の退院調整担当者や関係ステーションと事前に「どのステーションが算定するか」を決めておくことが必須です。後から算定の重複が判明するとレセプト返戻につながります。
退院支援指導加算と退院時共同指導加算の違い
混同しやすい加算として「退院時共同指導加算」があります。両者の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 退院支援指導加算 | 退院時共同指導加算 |
|---|---|---|
| 実施タイミング | 退院日当日(在宅で) | 退院前(入院中に病院で) |
| 指導場所 | 利用者の自宅(在宅) | 入院先の医療機関 |
| 指導相手 | 退院してきた利用者・家族 | 医療機関の職種と共同で利用者・家族 |
| 料金 | 6,000円 または 8,400円 | 8,000円(特別管理指導加算2,000円を加算可) |
| 算定できる回数 | 退院1回につき1回 | 入院中2回まで(算定できる場合あり) |
| 准看護師 | 算定不可 | 算定可 |
| 併算定 | 退院時共同指導加算との併算定可 | 退院支援指導加算との併算定可 |
重要なのは、退院支援指導加算と退院時共同指導加算は要件を満たせば両方算定できるという点です。退院前に病院で共同指導(退院時共同指導加算)→退院当日に在宅で指導(退院支援指導加算)という流れで、双方を組み合わせることで算定漏れなく収益を確保できます。
よくある質問(FAQ)|退院支援指導加算
退院支援指導加算はどのタイミングで算定(請求)しますか?
退院日当日ではなく、退院の翌日以降に初回の指定訪問看護を実施した日に、訪問看護管理療養費に加算して算定します。退院日に指導を行っても、算定は初回訪問日になる点に注意してください。なお、指導を行ったのが前月であっても算定できます(月をまたいでいても問題ありません)。
退院支援指導加算の対象になる利用者はどのような人ですか?
基準告示第2の7に該当する利用者が対象です。具体的には①別表第七(末期悪性腫瘍や指定難病などの重症疾患)、②別表第八(気管カニューレ・在宅酸素・人工呼吸など特別な管理を要する状態)、③退院日の訪問看護が必要であると主治医に認められた者、の3つです。③の要件があるため、①②に該当しなくても主治医の判断で対象になることがある点が重要です。
長時間区分(8,400円)はどのような場合に算定できますか?
長時間訪問看護加算の算定対象となる利用者(別表第七・別表第八等の要件を満たす方)に対して、退院支援指導の時間が1回で90分超、または退院日に複数回実施した合計時間が90分超になった場合に算定できます。令和6年度診療報酬改定により、複数回の合算でも90分超であれば長時間区分が認められています。
複数の訪問看護ステーションが関わっている場合、どのステーションが算定しますか?
退院支援指導加算は、1人の利用者に対して1つの訪問看護ステーションのみ算定できます。複数のステーションが退院日に関わっている場合は、事前に病院の退院調整担当者や関係ステーション間で「どのステーションが算定するか」を確認・調整しておく必要があります。二重算定はレセプト返戻の原因となりますので、必ず事前調整を行ってください。
退院後の初回訪問前に利用者が亡くなった場合でも算定できますか?
はい、算定できます。退院後の初回訪問が行われる前に利用者が死亡した場合、または再入院した場合は、死亡日または再入院日に退院支援指導加算のみを単独で算定することが認められています(訪問看護基本療養費等は算定できません)。退院日の指導記録が明確に残っていることが前提ですので、必ず記録書を整備しておきましょう。
退院支援指導加算と合わせて算定できる「退院時共同指導加算・特別管理指導加算」の算定要件も確認しておきましょう。退院前後の加算をフル活用することで、病院連携と収益の両立が実現します。
退院時共同指導加算・特別管理指導加算を確認する
まとめ|退院支援指導加算は退院日の指導+記録で確実に算定しよう
退院支援指導加算は、退院当日の在宅療養指導に対して算定できる医療保険の加算です。「退院日に指導・初回訪問日に算定」というタイムラグを理解した上で、記録の整備と算定タイミングの管理が重要です。
- 退院支援指導加算は基準告示第2の7(別表第七・別表第八・主治医が必要と認めた者)に該当する利用者が対象
- 算定日は退院日ではなく「退院翌日以降の初回訪問看護実施日」(月をまたいでも算定可)
- 料金は通常6,000円、長時間(90分超)は8,400円(複数回合算も可)
- 令和8年度改定で別表第8に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が追加され、算定対象が拡大
- 退院時共同指導加算との併算定が可能。退院前後の加算を組み合わせて漏れなく算定する
- 退院日の訪問看護記録書に指導内容・時刻を必ず記録すること(算定の根拠となる)
- 複数ステーションが関わる場合は、事前に算定するステーションを調整・決定すること
算定漏れを防ぐには「退院日情報の早期共有」「退院日の記録徹底」「初回訪問日のチェック体制」の3点を仕組みとして整備することが重要です。
退院日・入院日の訪問看護の取り扱いについてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。入退院日の算定ルールを正確に理解することで、算定ミスを減らせます。
入院・退院日の訪問看護算定ルールを確認する


















