遠隔死亡診断補助加算とは?対象地域・要件を解説

「離島や過疎地域で、利用者さんが息を引き取られても、医師がすぐに駆けつけられない」——訪問看護の現場では、こうした地理的な事情から、医師による速やかな死亡診断が難しいケースがあります。

この課題に対応するために設けられているのが遠隔死亡診断補助加算です。ICT(情報通信機器)を活用して医師が遠隔で死亡診断を行う際、現場にいる看護師がその補助を行うことを評価する仕組みで、対象地域や看護師の要件が細かく定められています。この記事では、算定の考え方・施設基準・対象地域・看護師に求められる要件を整理して解説します。

この記事でわかること
  • 遠隔死亡診断補助加算の位置づけと施設基準
  • 加算の対象となる地域の考え方
  • 「情報通信機器を利用した在宅での看取りに係る研修」を受けた看護師の要件
  • 医師がICTを利用して死亡診断を行う際に求められる要件

遠隔死亡診断補助加算とは?

遠隔死亡診断補助加算は、在宅で最期を迎える利用者について、医師が現場に赴くことが困難な状況で、情報通信機器(ICT)を用いて遠隔から死亡診断を行う際に、その場に立ち会う看護師が診断の補助を行った場合に評価される加算です。令和4年度診療報酬改定で新設された、比較的新しい加算のひとつです。

訪問看護の現場では、看取りの場面において医師の死亡診断が速やかに行われないと、利用者さんのご家族に大きな負担がかかることがあります。特に医師の訪問に時間がかかる地域では、この加算の仕組みを理解しておくことが実務上重要です。医師が現場に到着するまでの間、ご遺体の状態を保つための対応やご家族への説明を看護師が担うことも多く、ICTの活用は医師・看護師双方の負担軽減にもつながる仕組みだといえます。

看護師 上妻
看護師 上妻

この加算はどの訪問看護ステーションでも算定できるわけではなく、対象となる地域や、看護師の研修修了状況など、いくつかの条件を満たす必要がある点に注意が必要です。

遠隔死亡診断補助加算の施設基準・算定要件

遠隔死亡診断補助加算の施設基準は、厚生労働大臣が定める施設基準(特掲診療料の施設基準等)において、「情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が配置されていること」と定められています。つまり、加算を算定するためには、事業所に該当研修を修了した看護師が在籍していることが前提条件になります。

算定にあたっては、連携する保険医療機関において死亡診断加算等を算定する利用者(後述する対象地域に居住する利用者に限られます)について、主治医の指示のもとで、研修を修了した看護師が厚生労働省の定めるガイドラインに沿って死亡診断の補助を行うことが求められます。

対象となる地域

遠隔死亡診断補助加算は、全国どこでも算定できるわけではなく、医師による速やかな訪問診療の提供が難しい、特定の地域に居住する利用者が対象とされています。具体的には、次のような地域が該当するとされています。

  • 離島振興法に基づく離島振興対策実施地域
  • 奄美群島振興開発特別措置法に規定する奄美群島
  • 山村振興法に基づく振興山村
  • 小笠原諸島振興開発特別措置法に規定する小笠原諸島
  • 沖縄振興特別措置法に規定する離島
  • 過疎地域自立促進特別措置法に規定する過疎地域
注意

対象地域に該当するかどうかは、利用者の居住地の市区町村単位で細かく定められています。自事業所の利用者が対象地域に該当するかどうかは、都道府県や地方厚生局の案内、または算定担当者を通じて個別に確認することをおすすめします。

「情報通信機器を利用した在宅での看取りに係る研修」を受けた看護師とは

この加算を算定するためには、看護師が「情報通信機器(ICT)を利用した在宅での看取りに係る研修」を修了している必要があります。研修の実施主体(医師会等)が定める受講要件としては、看護師としての実務経験、訪問看護や介護保険施設等における一定期間の実務経験、看取りへの立ち会い経験などが求められるとされています。

看護師 上妻
看護師 上妻

受講要件の詳細(実務経験の年数や看取り経験の件数など)は、研修を実施する団体によって案内される内容が異なる場合があります。対象地域で働く予定がある看護師さんは、早めに研修の申込み情報を確認しておくと安心ですね。

医師がICTを利用して死亡診断を行う際の要件

この加算は看護師側の要件だけでなく、医師の側にも一定の要件が課されています。厚生労働省が作成した「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」に沿って、医師がICTを用いた死亡診断を行うことが前提です。具体的には、医師が生前に対面診療を行っていたこと、速やかに死亡診断を行うことが困難な状況にあること、研修を修了した看護師が現場で医師と情報通信機器を通じて連携し、必要な情報を伝達することなどが求められます。

POINT

遠隔死亡診断補助加算は、「対象地域」「医師の要件」「看護師の研修修了」という3つの条件がすべて揃って初めて算定できる加算です。いずれか1つでも満たしていない場合は算定できません。

訪問看護ターミナルケア療養費との関係

遠隔死亡診断補助加算を理解するうえで欠かせないのが、訪問看護ターミナルケア療養費との関係です。訪問看護ターミナルケア療養費は、在宅で亡くなった利用者について、死亡日および死亡日前14日以内の計15日間のうちに、訪問看護基本療養費や精神科訪問看護基本療養費、退院支援指導加算のいずれかを合わせて2回以上算定した場合に算定できる療養費です。遠隔死亡診断補助加算は、この一連の看取りに関わる評価の中に位置づけられており、単独で算定されるものではなく、ターミナルケアに関する一連の評価の枠組みのなかで扱われる点を押さえておく必要があります。

項目内容
新設時期令和4年度診療報酬改定
対象特定地域に居住する利用者の看取り
看護師の要件情報通信機器を利用した在宅での看取りに係る研修の修了
医師の要件厚生労働省ガイドラインに沿ったICT利用の死亡診断
位置づけ訪問看護ターミナルケア療養費に関連する評価の一部
看護師 上妻
看護師 上妻

ターミナルケア療養費の算定要件(15日間で合わせて2回以上の訪問等)を満たしていることが前提になるので、看取りが近づいた利用者さんについては、日々の訪問記録もあわせて丁寧に整理しておくことが大切です。

訪問看護の現場で押さえておきたいポイント

遠隔死亡診断補助加算は、対象地域が限られる特殊な加算であるため、日頃から算定機会が多いものではありません。しかし、看取りが近い利用者を担当している場合、いざという場面で慌てないために、以下の点をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

  • 担当する利用者の居住地が対象地域に該当するかどうか
  • 事業所内に研修修了看護師が在籍しているか、いない場合は今後の受講予定
  • 連携する医療機関がICTを利用した死亡診断の体制を整えているか
  • ICT機器(タブレット端末等)の通信環境が確保できているか

また、対象地域に該当する事業所であっても、必ずしも遠隔死亡診断補助加算の算定機会が頻繁にあるとは限りません。むしろ発生頻度が低いからこそ、いざ看取りの場面を迎えたときに現場が混乱しないよう、事前の準備や関係者間の連携ルールを整えておくことが重要です。具体的には、連携医療機関との間で、ICTを用いた死亡診断を実施する際の連絡フロー(誰がいつ医師に連絡し、どのタイミングで通信機器を準備するか)を、看取りが差し迫る前の段階であらかじめ取り決めておくとよいでしょう。加えて、研修を修了した看護師が急な休みや異動で不在になった場合の代替対応についても、事業所内で検討しておくと安心です。

看護師 上妻
看護師 上妻

対象地域で働く訪問看護ステーションでは、看取りが近づいた段階で、連携医療機関とあらかじめICT利用の可否を確認しておくと、いざというときにスムーズに対応できますよ。

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遠隔死亡診断補助加算は、訪問看護ターミナルケア療養費と関連の深い加算です。あわせて確認しておきましょう。

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よくある質問

遠隔死亡診断補助加算はどの訪問看護ステーションでも算定できますか?

いいえ、算定できるのは、対象地域に居住する利用者を担当し、情報通信機器を利用した在宅での看取りに係る研修を修了した看護師が配置されている事業所に限られます。対象地域は離島振興法の対象地域や過疎地域など、特定の地域に限定されています。

看護師が研修を受けずに、医師のICTによる死亡診断を補助することはできますか?

この加算を算定する場合は、情報通信機器を利用した在宅での看取りに係る研修を修了した看護師が補助を行うことが施設基準として定められています。研修を修了していない看護師が補助した場合は、加算の算定要件を満たさない可能性があります。

遠隔死亡診断補助加算はいつから始まった制度ですか?

令和4年度診療報酬改定で新設された加算です。医師による速やかな死亡診断が難しい地域において、ICTを活用した看取りの体制を評価する目的で設けられました。

対象地域かどうかはどこで確認できますか?

離島振興法・山村振興法・過疎地域自立促進特別措置法など、複数の法律に基づく指定地域が対象とされています。個別の利用者が対象地域に該当するかどうかは、都道府県や地方厚生局の案内、レセプトの算定担当者を通じて確認することをおすすめします。

出典・参考

対象地域・単価・研修の受講要件の詳細は、診療報酬改定により変更されることがあります。実際の算定にあたっては、最新の告示・通知および研修実施団体の案内をご確認ください。

まとめ|遠隔死亡診断補助加算は「地域・医師・看護師」の3条件がそろって成立する

遠隔死亡診断補助加算は、離島や過疎地域など医師の速やかな訪問が難しい地域で、ICTを活用した看取りを支える重要な仕組みです。対象地域・医師の要件・看護師の研修修了という3つの条件を正しく理解しておくことが、いざというときの適切な対応につながります。

この記事のまとめ
  • 遠隔死亡診断補助加算は令和4年度診療報酬改定で新設された、ICTを活用した看取りを支える加算
  • 算定できるのは離島振興法対象地域・過疎地域など特定の地域に限られる
  • 施設基準として「情報通信機器を利用した在宅での看取りに係る研修」を修了した看護師の配置が必須
  • 医師側にもガイドラインに基づくICT利用の要件がある

対象地域で活動する訪問看護ステーションは、研修修了看護師の確保と連携医療機関との事前確認を進めておきましょう。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。