大雨災害で発動!訪問看護の特例措置とは|指示書・減算・保険証の柔軟取扱いを解説

令和8年6月24日からの大雨により、各地で甚大な被害が発生しました。このような大規模災害が起きると、厚生労働省は速やかに介護・医療保険の特例措置を発動します。今回も6月24〜25日にかけて、訪問看護ステーションの運営に直接関わる4本の通知が一括発出されました。

「災害のたびにこうした特例が出るとは知らなかった」という管理者も少なくありません。この記事では、令和8年6月の大雨災害での具体的な事例を通じて、今後の大規模災害時にどのような特例措置が発動されるのかを経営者・管理者目線で整理します。いざというときに慌てないよう、ぜひ一度確認しておいてください。

この記事でわかること
  • 令和8年6月大雨災害で実際に発動された特例措置の内容
  • 訪問看護ステーション固有の特例(指示書・計画書・報告書の取扱い)
  • 人員・設備・運営基準の減算免除・柔軟取扱いの範囲
  • 今後の災害に備えて経営者・管理者が知っておくべきポイント

何が起きたのか|令和8年6月24日からの大雨災害と4本の通知

令和8年(2026年)6月24日から発生した大雨は広範な地域に及び、訪問看護ステーションを含む多くの介護・医療機関が被災しました。これを受けて厚生労働省老健局・保険局は6月24〜25日付で、下記の通知を一括発出しています。

通知番号 発出元 内容
通知① 老健局 介護報酬等の柔軟な取扱い(基準緩和等)について
通知② 老健局 被災者に係る被保険者証(介護保険証)の提示等について
通知③ 老健局 被災した要介護高齢者等への対応について
通知④ 保険局 マイナ保険証又は資格確認書等の提示等について(医療保険)

全国訪問看護事業協会・日本訪問看護財団のいずれもこの通知を即日周知しており、被災地の訪問看護ステーションはすぐに活用できる状況です。

看護師 上妻
看護師
上妻

こうした通知は毎回「事務連絡」として都道府県・市町村経由でも届きますが、現場への伝達が遅れることがあります。管理者は全国訪問看護事業協会や日本訪問看護財団のウェブサイトを日頃からウォッチしておくと情報を早く掴めますよ。

訪問看護ステーション固有の特例|指示書・計画書・報告書の取扱い

通知①(介護報酬等の柔軟な取扱い)のうち、訪問看護ステーションに直接関わる最重要ポイントは「指示書の有効期間に関する特例」です。

①訪問看護指示書の有効期間を超えても算定可能

通常、訪問看護(介護保険)は主治医の指示書の有効期間内でなければ算定できません。しかし、今回の通知では以下の3条件をすべて満たす場合、有効期間を超えた場合でも(介護予防)訪問看護費の算定が認められています。

条件 要件の内容
条件① 災害発生以前に主治医の指示書の交付を受けている利用者であること
条件② 保険医療機関等が被災地域に所在し、被災のため主治医と連絡がとれず指示書の交付を受けることが困難であること
条件③ 訪問看護ステーションの看護師等が利用者の状態から訪問看護が必要と判断し実施したこと
注意点

利用者が主治医と連絡が取れる目途がない場合には、速やかに新たな主治医のもとで適切な治療を続けられるよう環境整備を行う配慮が求められています。あくまで緊急の暫定措置です。

②訪問看護計画書・報告書を主治医に提出できない場合も算定可

保険医療機関が被災しているために、訪問看護計画書や訪問看護報告書を主治医に提出できない場合であっても、(介護予防)訪問看護費の算定が可能とされています。

③記録の義務は継続する

忘れないで!記録への記載

上記の特例措置を活用して訪問看護を実施した場合は、訪問看護記録書にその旨を記録することが通知に明記されています。特例を使ったことを記録に残すのは必須です。

看護師 上妻
看護師
上妻

「指示書が切れていても訪問を続けた」という事実は、適切に記録しておかないと後の指導監査で問題になりかねません。「災害特例を適用・〇月〇日から主治医と連絡不能のため」など理由を明確に書いておきましょう。

全事業所共通の特例|人員・設備・運営基準の柔軟取扱い

通知①には訪問看護固有の措置のほか、すべての介護サービス事業所に共通する特例も多数含まれています。訪問看護ステーションも対象となる主な項目を確認しておきましょう。

特例の種類 内容(要約)
人員基準欠如の減算 職員確保が困難な場合、人員基準欠如に係る減算を適用しない
定員超過利用の減算 避難者受入等により定員超過となった場合、減算を適用しない
各種加算の算定要件 一定の人員配置等を要件とする加算も、柔軟な取扱いが可能
設備基準 被災・避難者受入等により設備基準を満たせない場合、柔軟な取扱いが可能
運営基準(会議・指示・報告等) 定期会議の開催困難・指示報告の遅延等も、柔軟な取扱いが可能
変更届出 10日以内の変更届出ができなかった場合も、柔軟な取扱いが可能
処遇改善加算の実績報告 提出期限を都道府県等の判断により延長可能
避難先での居宅サービス提供 避難所や避難先家庭でのサービス提供でも介護報酬の算定が可能

保険証に関する特例|介護保険証・マイナ保険証の提示

通知②・④では、保険証を持参できない被災者への対応についても定められています。

介護保険証(通知②)

被災者が介護保険被保険者証を持参できない場合、氏名・生年月日・住所の確認等により本人確認を行い、サービス提供・請求が可能とされています。

マイナ保険証・資格確認書(通知④・医療保険)

医療保険側でも同様に、マイナ保険証や資格確認書を持参できない場合の特例対応が認められています。医療保険での訪問看護(訪問看護療養費)を提供するステーションも確認が必要です。

看護師 上妻
看護師
上妻

避難所を訪問するときは「保険証がない方への対応手順」をスタッフ全員が知っておく必要があります。事前にフローをマニュアル化しておくと安心です。

訪問看護ステーションが今から備えておくべきこと

今回の令和8年6月大雨災害での事例からわかるように、大規模災害時には必ずと言っていいほどこうした特例措置が発動されます。過去の大雨・台風・地震でも同様の通知が繰り返し発出されてきました。「災害が起きてから調べる」では対応が遅れます。今のうちに基本的な知識と体制を整えておきましょう。

  • 特例通知の情報源を把握する:全国訪問看護事業協会・日本訪問看護財団のウェブサイトは災害時の最速発信源。担当者が定期確認する習慣を
  • 指示書・連絡体制を日頃から整理する:利用者ごとの主治医連絡先リストを最新化しておくと、指示書の有効期間切れリスクを最小化できる
  • 記録の体制を確認する:特例使用時は「理由と日時」を訪問看護記録書に必ず記載。スタッフへの周知を徹底する
  • 避難所対応フローを準備する:保険証未持参者への対応、避難所でのサービス提供手順を事前にマニュアル化する
  • BCP(事業継続計画)に組み込む:今回の特例内容をBCPの「行政通知対応」セクションに反映し、スタッフ全員が読める形にしておく
特例はあくまで「緊急・暫定」措置

通知に明記されているとおり、基準外の場所でのサービス提供や指示書なしの継続は長期間認められるものではありません。特例を活用しつつも、速やかに通常の運営体制に戻る努力が求められます。また、特例の適用範囲や期間は都道府県・保険者によって異なる場合があるため、必ず管轄の都道府県や市町村に確認してください。

よくある質問

大雨以外の災害(地震・台風など)でも同じ特例が発動されますか?

はい。過去の事例を見ると、大規模な地震・台風・大雪・林野火災などでも同様の「介護報酬等の柔軟な取扱い」通知が発出されています。被災地域の広さや緊急性に応じて発動されるため、大規模な自然災害が発生した際は速やかに厚生労働省や全国訪問看護事業協会のウェブサイトを確認することをお勧めします。

特例を使って算定した場合、後で返還を求められることはありますか?

通知に基づいた適切な範囲での算定であれば、返還を求められることは基本的にありません。ただし、特例適用の事実と理由を訪問看護記録書に記録しておくことが条件として明記されています。記録が不十分な場合は指導監査で問題になる可能性があるため、必ず記録を残してください。

被災地以外のステーションが避難者を受け入れた場合も特例は適用されますか?

はい。通知には「被災地域以外の事業所が被災地域からの避難者の受け入れを行った場合についても、同様の取扱いとする」と明記されています。定員超過の減算免除や人員基準の柔軟取扱いは、避難者を受け入れた非被災地の事業所にも適用されます。

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訪問看護ステーションのBCP(事業継続計画)策定については、以下の記事も参考にしてください。

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まとめ|災害特例を「知っていた」ステーションが利用者を守れる

令和8年6月24日からの大雨では、訪問看護ステーションに直接関わる特例措置が迅速に発動されました。今回の事例を教訓に、大規模災害時にどのような特例が出るかを事前に把握し、現場スタッフと共有しておくことが重要です。

この記事のまとめ
  • 令和8年6月大雨災害で、介護・医療保険の特例措置4本が一括発出された
  • 訪問看護固有の特例として「指示書有効期間超えでも算定可」「計画書・報告書未提出でも算定可」が認められた(3条件あり)
  • 特例使用時は必ず訪問看護記録書に理由と日時を記録することが必要
  • 人員基準欠如の減算免除・定員超過減算免除など、事業所共通の柔軟取扱いも多数
  • こうした特例は地震・台風などでも繰り返し発動される。今のうちに情報源の確認とBCPへの組み込みを

「災害が来てから調べる」では遅い場合があります。経営者・管理者として特例の存在を知っておくことが、利用者への継続的なサービス提供につながります。

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