厚生労働省は2026年6月15日、介護保険最新情報Vol.1511を発出し、地域包括ケアの深化・推進に関する3件のハンドブック・事例集を一括で周知しました。地域づくり支援ハンドブック Vol.3、災害等に備えた平時からの体制整備ハンドブック、そして家族介護者支援の取組事例集の3点です。訪問看護ステーションの経営者・管理者にとって、いずれも実務に直結する内容です。本記事ではその概要と訪問看護への活用ポイントをわかりやすく解説します。
- 介護保険最新情報Vol.1511(2026年6月15日)の3件の周知通知の概要
- 地域づくり支援ハンドブック Vol.3 の改訂内容と訪問看護への活用ポイント
- 災害体制整備ハンドブックとBCP(事業継続計画)の関係
- 家族介護者(ケアラー)支援事例集と訪問看護師の実践への応用
目次
介護保険最新情報Vol.1511とは——3件まとめて周知の背景
介護保険最新情報は、厚生労働省老健局から都道府県・市区町村・関係団体へ向けて随時発出される事務連絡・通知のシリーズです。今回のVol.1511は令和8年(2026年)6月15日付で、厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課(地域づくり推進室)から発出されました。
内容は以下の3件で、いずれも「地域づくり推進室」が所管する地域包括ケアシステムの深化・推進に関するものです。
| 件名 | 概要 | 作成主体 |
|---|---|---|
| ① 地域づくり支援ハンドブック Vol.3 | 介護予防・日常生活支援総合事業等に課題を抱える市町村向け支援パッケージの最新版(Vol.3) | 厚労省(地域づくり加速化事業) |
| ② 災害体制整備ハンドブック | 市町村と地域包括支援センターが連携し、平時からBCP作成・対話を進めるためのハンドブック | 野村総合研究所(老健事業) |
| ③ 家族介護者支援取組事例集 | 複雑・複合的な課題を抱える高齢者と家族を支えるケアラー支援の事例集 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(老健事業) |

3件同時の周知は珍しいですね。地域包括ケアの推進に向けて、地域づくり・災害対策・家族支援という三本柱を一体で強化していく国の姿勢が見えます。
① 地域づくり支援ハンドブック Vol.3 の改訂ポイントと訪問看護への活用
地域づくり支援ハンドブックは、介護予防・日常生活支援総合事業等の実施に課題を抱える市町村を支援するための「支援パッケージ」として位置づけられています。Vol.1(令和5年5月)、Vol.2(令和6年5月)に続き、今回はVol.3として改訂・発出されました。
今回の主な改訂内容
- アドバイザーによる実践知を踏まえた「避けたい表現・対応例」を作成・追加(支援者向けのみ)
- 令和6年地域支援事業実施要綱等の改正を踏まえた内容・文言の修正
- 参考文献リストの更新
ハンドブックには「市町村向け」と「市町村の支援者向け」の2種類があります。地域包括支援センターや訪問看護ステーションなど地域の支援者が活用できる版も整備されているのが特徴です。
訪問看護ステーションは、地域包括ケアシステムにおいて医療と介護をつなぐ中核機関です。ハンドブックに示された地域づくりの考え方や多職種連携のアプローチは、地域の医療介護ネットワーク構築に携わる管理者・スタッフが参照することで、ケアマネジャーや行政との連携強化に活かせます。
② 災害体制整備ハンドブック——BCP更新のヒントがここに
2件目は、「市町村と地域包括支援センターが始める!BCP作成を行動に変える、平時の体制整備ハンドブック〜災害への備えと『対話』〜」の周知です。
近年、地震・豪雨などの自然災害が各地で頻発しており、介護保険制度においても事業所における業務継続計画(BCP)の策定が義務化されています。ただし、BCP対策は個々の事業所の継続性の確保にとどまらず、地域全体のネットワークとして高齢者等の生活を支える体制構築が不可欠です。
本ハンドブックは、野村総合研究所が実施した令和7年度老人保健健康増進等事業の成果として作成されました。市町村と地域包括支援センターが連携して実効性のある災害対応体制を構築するための基本的考え方や、平時からの認識合わせ・対話において必要な検討の視点が整理されています。
本ハンドブックは6月15日という梅雨・台風期直前の時期に発出されました。同じく6月2日発出の介護保険最新情報Vol.1507「梅雨期及び台風期における防災態勢の強化について」と合わせ、国として今夏の災害対策強化を強く促しています。訪問看護ステーションのBCP未策定・未更新のケースは、梅雨明け前に必ず対応しましょう。
訪問看護ステーションがBCP見直しに活かすポイント
- 地域包括支援センターや市町村との平時からの情報共有・対話の仕組みを確認する
- 災害時の訪問先利用者の安否確認・優先順位付けのルールをBCPに明記する
- スタッフの参集基準・代替訪問体制を文書化し、年1回以上の訓練を実施する
- 近隣の訪問看護ステーション・医療機関との相互支援協定の締結を検討する
③ 家族介護者支援(ケアラー支援)事例集——訪問看護師が使える実践知
3件目は、「地域の高齢者とその家族を支える市町村・地域包括支援センター等におけるケアラー支援事例集〜家族の生活・人生の質も大切に 社会で家族全体を支える視点をもって〜」の周知です。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した令和7年度老健事業において、複雑化・複合化した課題を抱える高齢者とその家族を支えるための地域支援事業における家族介護者支援の在り方に関する調査研究の成果として作成されました。
本事例集は市町村・地域包括支援センター向けに発信されていますが、在宅の現場で高齢者と家族に直接関わる訪問看護師にとっても活用価値の高い内容です。
訪問看護師は利用者本人だけでなく、在宅介護を担う家族(ケアラー)の状態にも日常的に目を向ける立場にあります。家族のバーンアウト(燃え尽き症候群)やメンタルヘルス悪化は、在宅療養の継続を脅かす大きなリスクです。本事例集に示された地域全体で家族を支える視点は、訪問看護師が介護相談や支援調整を行う際の参考になります。
家族支援で訪問看護師が実践できること
- 定期訪問時に家族の介護負担・精神的ストレスをアセスメントする
- レスパイトケア(短期入所・訪問介護の活用等)を積極的に提案する
- 家族向けの介護技術指導や相談窓口情報(地域包括支援センター等)の提供
- 家族の変化をケアマネジャー・医師と共有し、支援体制を多職種で検討する
3件の周知通知を訪問看護ステーションの運営に活かす
今回のVol.1511は、宛先が「各都道府県・市区町村介護保険担当主管部(局)」となっており、訪問看護ステーションへの直接の義務付けではありません。しかし、地域包括支援センターや市町村を通じて訪問看護ステーションに情報や連携の機会が届く形となります。
経営者・管理者として、以下のアクションを検討してください。
- 地域包括支援センターへの確認担当圏域の地域包括支援センターに、今回の3件のハンドブック・事例集の活用に関する取り組みを確認する。共同勉強会や情報共有の機会があれば積極的に参加する。
- BCPの点検・更新梅雨・台風シーズン到来前に、自ステーションのBCPを今回の災害体制整備ハンドブックの視点で点検・更新する。特に地域連携の部分(市町村・地域包括との役割分担)を明確にする。
- ケアラー支援の意識化スタッフ間で家族介護者(ケアラー)支援の視点を共有する勉強会を実施する。訪問時のアセスメント項目に家族の負担感を組み込む。
- 原本資料のダウンロード・保存WAM NET(福祉医療機構)の介護保険最新情報一覧ページから各ハンドブック・事例集のPDFを取得し、スタッフが参照できる場所に保存する。
よくある質問(FAQ)
地域づくり支援ハンドブックVol.3は訪問看護ステーションが直接入手できますか?
はい、入手可能です。WAM NET(福祉医療機構)の介護保険最新情報一覧ページ(https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou/detail-list?bun=020060090)にアクセスし、Vol.1511のPDFリンクから各ハンドブックの本体ファイルをダウンロードできます。宛先は市区町村・都道府県ですが、資料は公開されているため、訪問看護ステーションのスタッフが自由に参照できます。
BCP(事業継続計画)はすでに作成済みです。今回のハンドブックを活かすにはどうすれば?
既存のBCPに「地域連携」の視点を追記・強化することをお勧めします。今回の災害体制整備ハンドブックは、個々の事業所のBCPにとどまらず、市町村・地域包括支援センターとの役割分担と平時からの対話を重視しています。自ステーションのBCPに「災害時の地域包括・市町村との連絡体制」「利用者の安否確認の手順と連携先」などを明記し、年1回以上の確認・更新を行うと、より実効性が高まります。
家族介護者支援の事例集は、どのような在宅介護の場面で役立ちますか?
特に独居でない利用者への訪問時に役立ちます。同居家族が主介護者として日常的に介護を担っているケースでは、訪問看護師が家族のストレス・疲弊に早期に気づき、適切な支援につなぐことが重要です。事例集には、家族が複雑な課題(精神疾患・ダブルケア・就労と介護の両立など)を抱えるケースの支援事例も含まれており、困難事例の検討材料として活用できます。ケアマネジャーや地域包括支援センターとの情報共有の参考資料としても有用です。
- 介護保険最新情報Vol.1511(2026年6月15日)は、地域包括ケア推進に関する3件のハンドブック・事例集を一括周知した通知
- ① 地域づくり支援ハンドブック Vol.3 は、令和6年度改正を反映した最新版。訪問看護ステーションも地域づくりの支援者として参照できる
- ② 災害体制整備ハンドブックは、BCPを「行動に変える」ための市町村・地域包括との連携・対話に焦点。梅雨・台風期前の今こそBCP点検のタイミング
- ③ 家族介護者(ケアラー)支援事例集は、複雑・複合的な課題を抱える在宅介護家族への支援事例を収録。訪問看護師の家族アセスメント・支援調整に活用できる
- 訪問看護ステーションは宛先外だが、地域包括支援センター・市町村との連携や自ステーションのBCP・家族支援体制の強化に直接役立つ内容
訪問看護ステーションが地域包括ケアの中でどのような役割を担うのか、制度的な位置づけと実践のポイントを解説しています。
地域包括ケアシステムと訪問看護の役割を見る- 厚生労働省老健局「介護保険最新情報Vol.1511(令和8年6月15日)」(WAM NET公開)
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0616090724170/ksvol.1511.pdf - WAM NET 介護保険最新情報一覧
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou/detail-list?bun=020060090 - 厚生労働省老健局「介護保険最新情報Vol.1507「梅雨期及び台風期における防災態勢の強化について」(令和8年6月2日)




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