このような疑問にお答えする記事です。
嚥下障害は、食べ物や飲み物を安全に飲み込むことが難しくなる状態で、特に高齢者や脳卒中後の方、神経疾患のある方に多く見られます。
嚥下障害は誤嚥性肺炎や栄養不良、生活の質(QOL)の低下を引き起こす可能性があります。
嚥下障害があっても利用者さんが安全かつ快適に食事を楽しむことができるよう、訪問看護師ができる支援を考えていきましょう。
- 嚥下障害とは
- 訪問看護師が嚥下障害のある方にできる具体的な関わり
目次
嚥下障害とは
嚥下障害は、嚥下という一連の流れがスムーズに行われないことを指します。
嚥下とは、口の中の食べ物を飲み込み、胃に送る一連の動作です。
口から入った食べ物は咀嚼されて、飲み込みやすい形に代わります。
そして咽頭を通り抜けて、食道へ流れます。
その後、食道の蠕動運動により胃まで送られます。
口から食道までの様々な機能、神経の働きが関連して安全に嚥下をすることができます。
この一連の動作がスムーズに行われないことが嚥下障害です。
嚥下障害により、食べ物が食道ではなく気管に入ることを誤嚥といいます。
嚥下障害は誤嚥性肺炎や栄養不良、生活の質(QOL)の低下を引き起こす可能性があります。
訪問看護師が嚥下障害がある方にできるケア7選
訪問看護師が嚥下障害がある方にできるケアは以下の7つです。
- 摂食・嚥下の状況の観察
- 食事環境の整備・提案
- 飲み込みやすい食事形態の提案
- 食べやすい食器の提案
- 嚥下機能訓練
- 家族や介護者への指導
- 多職種連携
1つずつ解説していきます。
摂食・嚥下の状況の観察
利用者さんの食事状況や嚥下に関する情報を集め、問題の有無や程度を確認します。
嚥下障害の可能性があるのは以下のような症状です。
- むせの頻度
- 飲み込み時の違和感
- 声のかすれ
- 体重の変化
- 食事の時間
むせがあると、うまく嚥下をすることができない、食事の合間に咳き込むことが増えるなどで食事に時間がかかり食事時間が長くなることがあります。
また、食事量が減少することで体重が減少する可能性などもあります。
嚥下障害の可能性が確認できたら、食事の際の様子も確認してみましょう。
訪問看護師が食事状況を確認することが難しい場合は、ヘルパーさんや、デイサービスのスタッフなど食事の時間に関わっている他職種から状況を確認することも検討します。
食事環境の整備・提案
嚥下障害がある方にとって、適切な食事環境の整備は重要です。
食事の際の姿勢や環境で工夫できることをアドバイスします。
- 姿勢の調整
- 静かな環境の確保
食事中の姿勢を工夫することで、誤嚥のリスクを軽減します。
椅子に座る場合は背筋を伸ばし、軽く前かがみになる姿勢が安全に嚥下ができる姿勢です。
ベッド上では枕やクッションを使って首や腕を支えるよう調整します。
食事に集中できるよう、周囲の音や刺激を最小限に抑える配慮も必要です。
テレビを消す、咀嚼や嚥下の妨げにならないように、食事の最中の会話は最小限にすることも有効です。
飲み込みやすい食事形態の提案
嚥下障害の程度に応じて、食事形態の提案をすることも訪問看護師が提供できる看護の1つです。
- とろみ剤の使用
- 食品の加工、調理のアドバイス
とろみ剤とは、食べ物や飲み物に混ぜることで適度なとろみをつける粉状の食品のことです。
液体にとろみを加えることで飲み込みのタイミングを調整しやすくします。
食事は噛みやすく、飲み込みやすい食品を提案します。
例えば、食材の大きさや固さを工夫したり、あんかけのようなとろみを掛けることで飲み込みやすくするなどの工夫をすることができます。
食べやすい食器の提案
安全に食事をするために、食器の形態を工夫することもできます。
扱いやすい食器を使用することで、安全に確実に食事を口に運ぶことができます。
利用者さんが自分で食事をする際には、お皿は持ちやすいもの、お箸やスプーンは扱いやすいものを選びます。
お箸は先に滑り止めが付いているものや、スプーンは柄が太く持ちやすいものを選びます。
コップは、飲み口が垂直のものより、外に広がっているものの方が口に当たりやすく、誤嚥しにくい姿勢で飲むことができます。
嚥下機能訓練
嚥下機能を維持、改善するための口腔体操なども、訪問看護師が提供できる看護の1つです。
- 口腔体操
- 呼吸リハビリ
口腔体操は「パタカラ体操」など、口唇、舌、喉を鍛える運動です。
食事の前に体操をすることで唾液の分泌を促す、口の動きをスムーズにする効果もあります。
呼吸リハビリは、腹式呼吸や呼吸筋を鍛える練習です。
誤嚥を防ぐ力や痰を出す力を高めるための練習にもなります。
家族や介護者への指導
訪問看護師は、利用者さんだけでなく、家族や介護者をサポートする役割も担っています。
利用者さんの食事を誰が準備しているのか、食事や内服は自立しているのか介助なのかによって、工夫できる内容や、指導をする対象も変わります。
家族や他職種が介助をしている場合は、家族や介助者と相談しながら、実施できるような方法を考える必要があります。
利用者さんと利用者さんを取り巻く環境の介護力を把握し、負担になりすぎないような工夫の提案や指導ができるように心がけましょう。
多職種連携
利用者さんの嚥下の支援に関わるのは訪問看護師だけではありません。
医師、言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、管理栄養士、薬剤師、介護士など様々な職種が嚥下や食事の支援に関わります。
今までに解説した支援も、看護師だけでアセスメントをして提供するのではなく多職種と連携することで、より良いケアにすることができます。
情報共有を密に行い、利用者さんの状態に応じた柔軟な対応を図ります。
定期的に訪問し、体調だけでなく生活の様子を把握することができる訪問看護師は、連携の橋渡しになる役割を担っています。
まとめ
訪問看護師が嚥下障害のある方にできるケアを紹介しました。
- 摂食・嚥下の状況の観察
- 食事環境の整備・提案
- 飲み込みやすい食事形態の提案
- 食べやすい食器の提案
- 嚥下機能訓練
- 家族や介護者への指導
- 多職種連携
訪問看護師が提供できる支援の内容は多岐にわたります。
解説したケアの他にも考えられることはたくさんあるでしょう。
摂食・嚥下機能の評価から環境整備、家族の指導まで、利用者さんそれぞれの状態やニーズに合わせたサポートを提供することで、生活の質を向上させることができます。
適切なケアと家族の協力、他職種との連携を通じて、利用者さんが安全かつ楽しい食事を続けることができるように取り組んでいきましょう。
利用者さんやご家族から「食事の時にむせることがある」「食事が食べにくい」と相談されることがあります。
飲み込みがしにくくなっているようなのです。
嚥下に注意が必要な方に、訪問看護師ができることってどんなことがあるでしょうか。