令和6年4月から完全義務化された訪問看護ステーションが行うべき取り組みとして、以下のものがあります。
- 業務継続計画(BCP)の策定等
- 感染症およびまん延の防止
- 高齢者および障害者の虐待防止
「高齢者および障害者の虐待防止」には『高齢者虐待防止未実施減算』が新設され、「業務継続計画(BCP)」は、『業務継続計画未実施減算』が(令和7年3月31日までの間は減算適用しない)新設されました。
この記事では、運営指導で確認される感染症委員会とBCP(感染症)策定、研修について解説していきたいと思います。
目次
感染症の発生およびまん延防止の3つの規定
「感染症の発生およびまん延防止」については、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、介護・障害福祉分野の2021年度の運営基準の改定で、以下の3つが義務化されました。
- 感染対策を検討するための委員会の開催
- 感染症対策のための指針の整備
- 指針にもとづいた研修・訓練の実施
これらは、BCP策定等と同様に、他の事業所との連携で行ってもよいとされています。
それでは、感染症委員会について説明していきます。
感染症委員会の役割
感染症委員会は、居宅基準令31条の3(衛生管理等)にて位置づけられています。
第三十一条 指定訪問介護事業者は、訪問介護員等の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行わなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所の設備及び備品等について、衛生的な管理に努めなければならない。
3 指定訪問介護事業者は、当該指定訪問介護事業所において感染症が発生し、又はまん延しないように、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定訪問介護事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置その他の情報通信機器(以下「テレビ電話装置等」という。)を活用して行うことができるものとする。)をおおむね六月に一回以上開催するとともに、その結果について、訪問介護員等に周知徹底を図ること。
二 当該指定訪問介護事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定訪問介護事業所において、訪問介護員等に対し、感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること。
(令三厚労令九・一部改正)居宅基準令31条の3
- 感染症対策を検討するための委員会の開催(6ヶ月に1回以上)
- 感染症対策のための指針の整備
- 指針にもとづいた研修・訓練の実施
感染症委員会担当者が担うべき体制づくりとは
運営指導で確認される項目だけでは、委員会の役割とは言えません。
本来の目的は、事業所の取り組みとして職員が感染症対策についての知識を身につけ、自身が感染をせずに広げないこと、現場での対応力を身につけていくことだと言えます。
- 指針の整備
- マニュアルの見直し
- 不足したマニュアルの作成
- マニュアルが実践できるような研修・訓練
- マニュアルの実施状況や感染対策実施状況の定期的な確認
- 事業所全体の健康管理に向けた定期的な発信など
感染症基本指針の整備について
- 第1条感染症対策に関する基本的な考え方
事業所としての体制に対する姿勢や取り組みについての記載 - 第2条感染対策委員会の基本方針
感染対策委員会がどのように動いていくかを説明 - 第3条職員研修に関する基本指針
職員研修の開催回数等のやり方についての説明 - 第4条感染症マニュアルに関する基本方針
何をマニュアルとして活用し、ルールとして統一するか説明
これらを踏まえて指針を整備しましょう。
感染症マニュアルの作成と見直しについて
私が実際に活用している感染症マニュアルや動画を紹介します。
障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(厚生労働省)
公益社団法人徳島県看護協会 徳島県訪問看護支援センター
訪問看護ステーションのための感染予防対策マニュアル
フルPPEの現場動画 兵庫県訪問看護ステーション協議会 監修:医療法人協和会共立病院 感染管理認定看護師 小川順子
訪問看護ステーションのための感染予防対策マニュアルは、感染症に関するほとんどの知識や対応方法が記載してあります。
また、利用者向けの説明書記載例もあるので、活用することができます。
これらを利用して事業所のマニュアルを作成したり、マニュアルに沿って研修や資料を作成することもできます。
研修・訓練とは
- 感染症対策について知識を習得すること
- 感染症対策を正しく実践できる
- 感染症事例検討から現場での対応力を身につけるなど
- 指針書の読み合わせ
- 感染症の基礎知識研修
- 実技(スタンダードプリコーション・フルPPE・吐物処理方法)
- 利用者の事例検討
運営指導で確認される書類
- 事業所の感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討した委員会の開催状況や結果がわかるもの(委員会議事録の作成)
- 事業所の感染症の予防及びまん延の防止のための研修および訓練の実施状況や結果がわかるもの(研修レポート)
- 上記に加え感染症基本指針書を確認されます。
これらは忘れずに書類として保管しておきましょう。
感染症BCPと感染症委員会について
高齢者虐待防止委員会とは違い、感染症対策には事業所として感染症BCP策定があります。
実際には、担当者も兼務されていることも多いとは思います。
BCP担当者と感染症委員会担当者が行うことについては以下のとおりです。
- 感染症を理由とした業務継続に向けた計画等(BCP)の策定
- BCPを観点とした研修・訓練(シュミレーション)の実施等
- 感染対策を検討するための委員会(6ヶ月に1回以上)
- 感染症対策のための指針の整備
- 指針にもとづいた研修・訓練の実施
- 委員会議事録の作成
- 研修レポートの管理
これらを理解し、合同で研修等を行うことが効率的です。
まとめ
- 感染症対策には、感染症BCPと感染症委員会のそれぞれの役割を理解する
- 運営指導で確認される指針の整備、委員会議事録の作成、研修レポートの管理を行い業務継続計画未実施減算にならないようにする
- 感染症対策マニュアルを活用し事業所のマニュアルを見直す
- 自分たちの事業所内に必要な研修を行い、知識を習得し、感染対策を実践できるようにする
- 運営指導対策だけではなく、事例検討を通して対応力を身につけ、事業所のスキルアップを行う
令和6年度報酬改定で「業務継続計画(BCP)の策定等」「感染症およびまん延の防止」が義務化になり、実際の運営をどのようにすればよいのか調べていくうちに、感染症対策には感染症委員会と事業所の感染症BCPを行う必要があり、合同して研修と訓練を行うことが効率的だと理解しました。
訪問看護を行う中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。
この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。