病気を抱えながらも住み慣れた自宅で過ごす方に対して行う看護を在宅看護と言います。訪問看護はその在宅看護をサポートする仕事です。
在宅は利用者さんが日々の暮らしを営んでいる生活の場なので、病院に比べると専門的なケア用品が充実していません。そのため、ケアの際には自宅にあるさまざまなものを工夫し利用しています。
当記事では、実際に在宅看護の現場で行われている物品の工夫を大公開します。
当記事を読めば、利用者さんの笑顔や心地よさのために創造力を働かせ奮闘するご家族や訪問看護師の姿を垣間見ることができます。
ではさっそく解説します。
目次
在宅看護の現場での物品の工夫の実際
在宅看護の現場での物品の工夫について、下記の3つにわけて順番に解説します。
・排泄ケアでの工夫
・環境整備での工夫
清潔ケアでの工夫
まずは清潔ケアでの工夫です。
清拭
・簡便に温タオルを作りたい時は電子レンジを使います。タオルを濡らして電子レンジで温めるとあっという間に温タオルが出来上がります。(電子レンジは本来食品を温めるものなので必ず了解を得てから使用しています)
・熱湯で清拭をする場合は自宅にある洗面器をお借りします。給湯器から熱々のお湯が出ない自宅では、やかんでお湯を沸かしたり、電子ケトルで沸かしたり、あるもので工夫し対応します。
洗髪
・洗髪ではオムツが使えます。オムツを頭の下に敷いて流す水をキャッチします。オムツの吸収量は予想以上に多く、500mlペットボトル3本分はしっかり吸収してくれます。
・万が一水がはみ出してもシーツが濡れないように一役買うのが45Lゴミ袋です。防水と言えば45Lゴミ袋というくらいかなりいろいろな場面で使えます。
・シャワーは500mlペットボトルで代用します。キャップにきりで複数穴を開ければ即席シャワーとなります。ペットボトルの他にも食器用洗剤の空きボトルや、100円ショップで購入できるマヨネーズボトルも使えます。
陰部洗浄
・洗髪で使ったペットボトルなどの簡易シャワーは陰部洗浄でも使えます。
・45Lゴミ袋はここでも活躍します。オムツの下に敷けば万が一のときもシーツを濡らしません。
・使い捨てのおしり拭きとして、使わなくなったタオルやTシャツをカットし利用することもあります。
足浴
・自宅にある洗面器やバケツを使わせていただくことが多いです。各ご家庭で個性があり味わい深いです。
・もし自宅に入浴剤があれば少々入れさせていただくと、いい香りに包まれ温泉気分が味わえます。
排泄ケアでの工夫
次に排泄ケアでの工夫です。
摘便
・摘便の時、新聞紙はなくてはならない存在です。オムツやトイレットペーパーの使用を最小限におさえるため、読み終わった新聞紙を敷いて摘便を行います。
・実施後の汚れたオムツは、新聞紙で包むと臭いが漏れにくくなります。
・オムツは全面をフル活用します。摘便後の臀部はしっかり洗いたい、でもオムツやパットの使用量は最小限にとどめたい。オムツの面は広いので汚れた面をうまく折り隠しながらしっかり洗う工夫をします。
排泄チェック
・トイレに小さなカレンダーを設置している自宅も多いです。排泄回数をなるべく把握したいけど忘れてしまう場合は、排泄後すぐカレンダーに印をつけていただく工夫をしています。
シャワーキャリーも使える
・シャワー浴でシャワーキャリーを使用している場合、排便に応用することができます。トイレで排便したいけどトイレに座ることが難しい方は、U字座面のシャワーキャリーに座り、洗面器や新聞紙等を下において排泄することも可能です。
環境整備での工夫
環境整備では100円ショップで買えるものが大活躍します。また、自宅にあって使える物はすべてフル活用します。
S字フック
・在宅酸素のホースをまとめたり、壁やカーテンレールにひっかけて点滴を吊るしたり、いろいろな場面で使えます。
かごと紙コップ
・紙コップが7個入るくらいのかごを用意し、1週間分のお薬を管理する工夫もします。薬局で購入できるお薬カレンダーを使用するお宅も多いですが、ない場合は100円ショップで買えるもので工夫もできます。
ベッドサイドをカスタマイズ
・寝たきりの利用者さんが過ごすベッド周囲のカスタマイズも工夫が凝らされています。ベッド柵に引っ掛けられるような取っ手付きのかごも100円ショップに売っています。手の届くところに置いておきたいものをうまく整理し療養環境を整えています。
足台
・足が浮腫みやすい方、座位のとき足台があったほうが安定する方、高めの段差を階段状にする場合などは、読み終えた雑誌を重ねてガムテープでとめ、足台が作れます。
体位変換
・体位変換時、ポジショニング専用クッションがなくても、枕やバスタオルなどで代用できます。ちょうどいい形にして紐で結ぶことで立派な体位変換クッションになります。
キャスター付き椅子
・キャスター付きの椅子はいざというとき車椅子の代わりになり得ます。使用の際は安全面への十分な配慮が必要ですが、車椅子がないけど代用したい場合は使うことが可能です。
在宅看護で大切なことは利用者さんご家族に寄り添うこと
在宅看護をサポートする訪問看護師は、利用者さん、ご家族の気持ちや状況に心から寄り添うことが何より大切です。
物品の工夫もそのひとつです。
大きな金銭的負担をかけないよう考えつつ、快適に過ごせ、快適にケアを受けてもらえる工夫をすることそのものが寄り添いのひとつの形です。
在宅看護では訪問看護師ひとりの力も大切ですが、ステーションのスタッフ・多職種・利用者さん・ご家族皆が知恵を出し合い団結する「チーム力」がさらに大切です。
実際の現場では、今回ご紹介した工夫以外にも、個別性を踏まえたオーダーメイドな工夫がたくさんなされています。
ビジケアには訪問看護に関するお役立ち記事がたくさんありますので、訪問看護についてもっと知りたい方はぜひのぞいてみてくださいね。
・あるものでどんな工夫をしているの?
・実際の現場での工夫を教えてほしい!