訪問看護では、開設するために必要な看護師等の人数が定められており、それを人員基準といいます。
訪問看護における人員基準は、常勤換算で2.5人以上と定められています。
今回は、訪問看護における常勤換算の算出方法について詳しく解説します。
令和3年度介護報酬改定での人員配置基準が緩和されており、その詳細についても記載しています。
目次
訪問看護の人員基準とは?
前述した通り、訪問看護における人員基準は、介護保険法および健康保険法により常勤換算で2.5人以上と定められています。
常勤換算に数えられる職種は、保健師、看護師、准看護師です。
助産師については、健康保険法でのみ訪問看護の従事者として含まれますが、常勤換算としての職種には数えられません。
常勤換算を含む施設基準については以下の記事を参考にしてください。
リハビリ職員は常勤換算に含まれる?
訪問看護に従事するリハビリ職員は年々増加傾向にあります。
しかし、訪問看護の人員基準に、リハビリ職員は含むことができません。
リハビリ職員を含まずに、保健師、看護師、准看護師の人数を常勤換算として数えます。
常勤の定義とは?
厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」によると、常勤とは以下のように定めています。
このように、訪問看護における常勤とは、事業所が定める所定労働時間分を勤務する職員のことを言います。
事業所が定める所定労働時間に達する労働契約を結んでいる場合には、正社員でないアルバイトやパートタイマーでも「常勤」として取り扱うことになります。
週に32時間以下の所定労働時間が定められている場合には、32時間を基準として常勤換算を行います。
訪問看護の常勤換算の算出方法とは?
では、訪問看護の常勤換算の算出は、どのように行うでしょうか。
常勤換算とは、その事業所に従事する保健師、看護師、准看護師が常勤として数えた場合に何人分であるかを算出したものです。
そのため、訪問看護以外に訪問介護や居宅支援事業を兼務する看護師等の場合には、訪問看護に従事する勤務時間のみを算入します。
常勤換算は、事業所の週の所定労働時間を基にして行います。
常勤換算を算出する式は、以下の通りです。
「勤務延べ時間数」÷「当該事業所の常勤職員の所定労働時間」
では、常勤勤務が週の所定労働時間が40時間(1日8時間、週5日間で勤務)することが就業規則に定められている事業所Aと事業所Bを例に見てみます。
看護師 常勤 40時間
看護師 常勤 40時間
看護師 非常勤 20時間
看護師 非常勤 15時間
以上4名の看護師が従事しているA事業所では、常勤換算は何人になるでしょうか。
上記の式に当てはめて算出してみます。
勤務延時間数 115時間 ÷ 所定労働時間 40時間 = 2.8人
※小数点第二位以下切り捨てとします。
常勤換算2.8人であり、人員基準を満たしています。
看護師 常勤 40時間
保健師 非常勤 20時間
看護師 非常勤 20時間
准看護師 非常勤 15時間
理学療法士 常勤 40時間
理学療法士 常勤 40時間
作業療法士 常勤 40時間
言語聴覚士 非常勤 20時間
以上4名の看護師等、リハビリ職員が従事しているB事業所では、常勤換算は何人になるでしょうか。
上記の式に当てはめて算出してみます。
勤務延時間数 95時間 ÷ 所定労働時間 40時間 = 2.3人
※小数点第二位以下切り捨てとします。
常勤換算2.3人であり、人員基準を満たしていません。
これでは人員基準違反になってしまいます。
早急に人員を確保するなど対応が必要です。
令和3年度介護報酬改定での人員配置基準の緩和とは?
令和3年度介護報酬改定では、常勤換算の方法について以下のように示しています。
育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加え、同法による介護の短時間勤務制度や、男女雇用機会均等法による母性健康管理措置としての勤務時間の 短縮等を利用する場合についても、30 時間以上の勤務で、常勤扱いとする。
厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
上記の通り、以前から定められていた育児だけでなく介護による短時間勤務制度を利用して勤務する場合には、週30時間勤務することで常勤1人分として換算できるようになりました。
ただし、育児や介護による時短勤務を常勤として認めるためには、以下の条件を満たした場合になりますので注意が必要です。
1.)就業規則などに育児短時間勤務職員の勤務時間を明確に定めている。
2.)1)に定められた育児短時間勤務職員の勤務時間が週30時間以上。
3.)事業所として、利用者の処遇に支障がない体制を整えている。
訪問看護の常勤換算の平均は?
では、全国の訪問看護ステーションでは、常勤換算の平均がどのように推移しているでしょうか。
令和2年の厚生労働省の資料によると、訪問看護の看護師等の常勤換算平均は5.0人(平成29年)となっており、1つの事業所に勤務する看護師等の人数は徐々に増加傾向であることがわかります。
また、職種別の従事者数からは、リハビリ職員が年々割合を増やしていることが読み取れます。
前項でもありましたが、訪問看護の常勤換算は看護師、保健師、准看護師の人数に限ります。
看護師等の常勤換算が基準以下にならないよう、人員配置には十分注意して事業運営をしていきましょう。
まとめ
今回は、訪問看護の常勤換算の算出方法について解説しました。
人員基準とは、訪問看護事業所が適切な訪問看護サービスを提供するために、最低限配置しなくてはいけない看護師等の人数になります。
訪問看護では急な退職があることも考えられるため、人員基準を守って事業所を運営できるよう常勤換算の算出方法はしっかりと覚えておきましょう。
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当該事業所における勤務時間が、当該事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(三二時間を下回る場合は三二時間を基本とする。)に達していることをいうものをいう。