訪問看護の仕事は好きだけど、妊娠がわかった今、このまま今まで通り働き続けられるのか不安…という声をよく聞きます。訪問先での力仕事や移動、感染症へのリスクなど、病院勤務とは違う心配事があるのは自然なことです。
この記事では、妊娠がわかったときの報告の仕方から、体調面・業務面・移動で気をつけたいこと、そして妊娠中に使える制度まで、現場の実情に沿って整理しました。一つずつ準備しておけば、体調と相談しながら無理なく働き続けることができます。
- 妊娠がわかったときに報告すべきタイミングと伝え方
- つわり・むくみ・冷えなど体調面で気をつけたいこと
- 感染症予防や力仕事など業務面で気をつけたいこと
- 車・自転車・徒歩、それぞれの移動で注意したいこと
- 妊娠中に使える法律上の制度(均等法・労働基準法)
目次
妊娠がわかったら、まず早めに報告を
妊娠が判明したら、できるだけ早めに上司やステーションに報告することが第一歩です。目安として、体調が少し落ち着き始める妊娠8週前後での報告が望ましいとされています。ただし、つわりが早い時期から強く出る場合や、担当している利用者さんの状況によっては、もっと早く相談したほうがよいケースもあります。
妊娠初期は、つわり・腹痛・頭痛・倦怠感といった身体症状に加えて、ホルモンバランスの変化から気持ちが不安定になりやすい時期でもあります。一人で抱え込まず、早めに周囲へ共有することで、担当の調整や体調に合わせた働き方への切り替えがスムーズになります。
報告のタイミングに正解はありません。「もう少し様子を見てから」と先延ばしにするより、体調に不安を感じた時点で早めに相談したほうが、結果的に自分自身も職場も対応しやすくなります。
体調面で気をつけたいこと|つわり・むくみ・冷え
妊娠中は、つわり・むくみ・冷えといった体調変化が、そのまま訪問業務のつらさに直結しやすいという特徴があります。それぞれの症状と、現場での工夫を整理しました。
つわり
においに敏感になる、食べていないと気持ち悪くなる「食べづわり」などが主な症状です。訪問先で利用者さんの生活のにおいに影響を受けることもあるため、二重マスクを着用したり、飴やビスケットなど携帯できる食べ物を持ち歩いたりする工夫が役立ちます。つわりは妊娠初期に強く出ることが多いですが、後期まで続く方もいるため、「初期だけの症状」と決めつけず、その都度職場に体調を共有することが大切です。
むくみ
妊娠中は血流が滞りやすくなるため、特に同じ姿勢を長く続けたときに下腿(ふくらはぎ)のむくみが出やすくなります。訪問看護は移動と記録業務で座りっぱなしの時間が生じやすい仕事でもあるため、移動中や休憩時間に軽くふくらはぎを動かす、座ったままできるストレッチを取り入れるなどの対策が効果的です。
冷え
ホルモンの変化や筋肉量の低下により、夏場でも手足の先が冷えやすくなることがあります。妊娠中の冷えは、つわりの悪化やお腹の張りにつながることもあるとされているため、カーディガンやレッグウォーマー、使い捨てカイロを携帯するなど、季節を問わず防寒を意識しておくと安心です。

業務面で気をつけたいこと|感染症予防と力仕事
体調管理と同じくらい大切なのが、業務そのものの見直しです。訪問看護ならではの「感染リスク」と「身体への負担」の2つを意識しておきましょう。
感染症などの病気の予防
妊娠中は免疫の働きが変化し、感染症にかかった場合の影響も普段より大きくなることがあります。特に風疹は、妊娠初期に感染すると赤ちゃんに影響が出る可能性が指摘されている感染症のひとつです。訪問時は標準予防策(スタンダードプリコーション)の徹底を基本に、手指衛生とマスク・手袋などの個人防護具の使用を普段以上に意識しましょう。感染症の疑いがある利用者さんの担当については、状況に応じて他のスタッフへの交代を相談できる体制があると安心です。
力仕事・移乗介助
体位変換や移乗介助、前かがみでの処置、長時間の立ち仕事などは、お腹の張りにつながることがあります。実際に、無理をして体調を崩し、入院に至ってしまう先輩看護師の声も少なくありません。「これくらい大丈夫」と自己判断で無理をしないことが何より大切です。医療依存度が高く介助量の多い利用者さんは担当を変更してもらう、複数名訪問に切り替える、ベッドの高さ調整や福祉用具を積極的に活用して体への負担を減らすなど、ステーション全体で協力体制を組めないか相談してみましょう。

「みんな忙しいから言い出しにくい」と感じる方も多いですが、体調不良で急に休むよりも、早めに相談して担当を調整してもらうほうが、結果的にステーション全体の負担は小さくなります。遠慮せず、まずは一言伝えてみましょう。
移動時に気をつけたいこと|車・自転車・徒歩
訪問看護は利用者さん宅への移動が欠かせない仕事です。移動手段ごとに、妊娠中ならではの注意点があります。
| 移動手段 | 気をつけたいこと |
|---|---|
| 車 | つわりやめまいによる集中力低下に注意。お腹が大きくなると乗り降りもしづらくなるため、座席位置やシートベルトの調整を。 |
| 自転車 | バランスを崩しやすく転倒のリスクが高まる。悪天候時は特に注意し、無理な時は他の移動手段への変更を相談する。 |
| 徒歩 | 体が重くなり、短い距離でも疲れやすくなる。訪問バッグを軽量化し、こまめな休憩をはさむ。 |
可能であれば、ステーションから近い利用者さん宅を優先的に担当してもらうよう調整することで、移動そのものの負担を減らすことができます。スケジュールにゆとりを持たせ、訪問と訪問の間隔にも余裕を確保しておきましょう。

妊娠中に使える制度を知っておこう
妊娠中は、体調管理と合わせて「使える制度」を知っておくことも大切です。個人の頑張りだけに頼らず、法律で定められた仕組みを活用しましょう。
妊婦健診を受けるための時間の確保
男女雇用機会均等法第12条では、事業主に対し、女性労働者が母子保健法に基づく保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保することが義務付けられています。妊婦健診の受診間隔は、厚生労働省が示す望ましい基準として、妊娠初期〜23週はおおむね4週間に1回、24〜35週はおおむね2週間に1回、36週以降はおおむね1週間に1回が目安とされ、出産までに合計14回程度の受診が想定されています。訪問スケジュールを組む際は、この頻度を踏まえて事前に通院日を共有しておくとスムーズです。
通勤緩和・勤務時間の変更などの措置
同法第13条では、事業主は妊婦健診等での指導事項を守れるよう、勤務時間の変更や勤務の軽減といった必要な措置を講じることが求められています。時差出勤による通勤ラッシュの回避や、訪問件数・移動距離の調整などが、この措置にあたります。訪問看護は事業所ごとにスケジュールの組み方や人員体制が異なるため、「どこまで調整できそうか」を早い段階で管理者と一緒に確認しておくと、その後の見通しが立てやすくなります。
労働基準法に基づく保護
労働基準法では、妊産婦について次のような保護規定が設けられています。
- 危険有害業務への就業制限
- 本人の請求による、より軽易な業務への転換(軽易業務転換)
- 本人の請求による、時間外労働・休日労働・深夜業の制限
これらはいずれも「本人が請求すること」が前提となっている措置が多いため、制度を知っているだけでなく、実際に「使いたい」と職場に伝えることが必要です。一人で判断せず、まずは上司やステーションの管理者に相談してみましょう。
制度の具体的な運用は事業所や個々の状況によって異なります。この記事の内容は一般的な制度の枠組みであり、実際の適用にあたっては、勤務先の就業規則や、必要に応じて労働局・労働基準監督署の窓口でご確認ください。

よくある質問
訪問看護師は妊娠中でも働き続けられますか?
体調や妊娠週数に合わせて業務内容を調整すれば、働き続けることは可能です。ただし無理は禁物です。つわりや体調の変化に応じて、担当する利用者さんの見直しや訪問件数の調整を、早めに職場に相談することが大切です。
妊娠が分かったらいつ職場に報告すればよいですか?
体調が落ち着き始める妊娠8週前後を目安に、早めに相談することが望ましいとされています。ただし体調不良が早くから出る場合は、時期にこだわらず早めに伝えて構いません。
妊娠中の訪問で感染症対策として気をつけることは?
標準予防策(手指衛生、マスク・手袋などの個人防護具の適切な使用)を徹底することが基本です。風疹など胎児への影響が指摘される感染症のリスクがある利用者さんへの訪問については、担当の交代を含めて職場に相談しましょう。
妊娠中の移動で特に注意することは何ですか?
車移動はめまいやつわりによる集中力低下、自転車は転倒リスク、徒歩は体力の消耗に注意が必要です。可能であれば近隣の利用者さんを優先的に担当してもらい、スケジュールにゆとりを持たせることをおすすめします。
妊娠中に使える制度にはどのようなものがありますか?
男女雇用機会均等法に基づく妊婦健診等の時間確保や通勤緩和などの措置、労働基準法に基づく危険有害業務の就業制限・軽易業務転換・時間外や深夜業の制限請求権などがあります。多くは本人からの請求が前提となるため、自分から職場に伝えることが必要です。
まとめ|無理をしないための準備が、働き続けるコツ
妊娠中の訪問看護は、体調面・業務面・移動それぞれに気をつけたいポイントがあります。ですが、どれも「知っていれば事前に対策できること」ばかりです。一人で抱え込まず、早めに周囲に相談しながら、使える制度も上手に活用していきましょう。
- 妊娠がわかったら、体調が落ち着き始める8週前後を目安に早めに報告する
- つわり・むくみ・冷えなど体調変化には、その都度の工夫と職場への共有で対応する
- 感染症予防の徹底と、力仕事・移乗介助は無理をしないことを意識する
- 移動手段ごとの注意点を踏まえ、近隣の利用者さんを優先するなど調整を相談する
- 均等法・労働基準法に基づく制度は、自分から請求することで初めて使える
体と相談しながら、自分らしいペースで働き続けられる環境を、職場と一緒に作っていきましょう。























