訪問看護のリハビリでは、事業所の据え置き機器を持ち込むことが難しく、限られた持ち物の中で評価・記録・説明を行う必要があります。そんなときに役立つのが、スマートフォンの無料アプリです。
訪問先ごとに移動する訪問看護のセラピストは、リュックやバッグに入れられる物品の量にも限りがあります。パルスオキシメーターや血圧計、関節可動域を測るゴニオメーターなど、必要最低限の器具を持ち歩く中で、記録や説明を助けてくれる存在としてスマートフォンのアプリはとても心強い味方になります。
この記事では、訪問看護のリハビリで使える無料アプリ4つを、現場での具体的な活用場面とともにわかりやすく紹介します。
訪問看護の現場は、病院やクリニックのように専用の医療機器や記録システムがすべて手元にあるわけではありません。持参できる物品には限りがあるため、スマートフォン1台でできることが増えるほど、現場での対応の幅が広がります。ここで紹介するアプリは、いずれも特別な契約や有料登録をしなくても、無料の範囲で実用的に使えるものを中心に選んでいます。
- 訪問看護のリハビリで使える無料アプリ4つ
- それぞれのアプリの機能と使い方・使う場面のポイント
- 現場での具体的な活用シーンと導入時の注意点
- アプリを使う際に気をつけたい注意点
目次
①PicPlayPost(動作の変化を可視化する)
PicPlayPostは、複数の画像・動画を組み合わせて1つの画面に並べられる画像・動画編集アプリです。訪問看護のリハビリでは、リハビリ前後の姿勢や動作の変化を並べて見せることで、利用者や家族に変化を実感してもらいやすくなります。
- 歩行動作の「導入前」と「数か月後」を並べて表示できる
- 姿勢の変化をビフォーアフター形式で見せられる
- 無料版はロゴが入り、画質も有料版より劣るが、実用上は十分使える
言葉だけで「良くなってきましたね」と伝えるよりも、実際の映像を並べて見せる方が、利用者・家族にとって説得力があります。モチベーションの維持にもつながりやすいため、リハビリの節目(月1回など)のタイミングで定期的に活用している事業所もあります。
利用にあたっては、撮影・共有について事前に利用者本人・家族の同意を得ておくことが前提になります。個人情報・プライバシーへの配慮を忘れずに運用しましょう。
具体的な使い方としては、歩行練習の様子を横から一定の距離・角度で撮影し、数か月後に同じ条件で撮影した映像と並べる、という方法がよく使われます。撮影条件(距離・角度・時間帯など)をできるだけ揃えておくと、比較したときの説得力が増します。動画だけでなく、静止画を並べて姿勢の変化を見せる使い方も可能です。

②HOKUTO(薬剤情報・評価ツールをその場で確認)
HOKUTOは、医師をはじめとした医療従事者向けの臨床支援アプリです。ガイドライン・薬剤情報・診断・治療に関する情報のほか、様々な評価スケールの計算ツールが搭載されています。
| 場面 | HOKUTOの使い方 |
|---|---|
| 服薬内容の確認 | 利用者が服用している薬剤の情報を訪問先でその場で調べる |
| 認知機能の評価 | HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)などの評価ツールで採点 |
| 疾患・治療情報の確認 | 利用者の既往歴に関するガイドライン情報を確認する |
訪問看護の現場では、医師がその場にいないため、薬の作用・相互作用について不明点が出てきたときに、すぐに調べられる手段があると心強いです。医療従事者であれば誰でも利用できるアプリのため、事業所単位で導入している例もあります。
例えば、新しく処方された薬剤の名前を聞いた際、その場で作用や注意すべき副作用を確認できれば、利用者・家族への説明もその場で行いやすくなります。また、HDS-Rのような認知機能評価をアプリ内の計算ツールで採点できるため、手元に紙の採点表がない場合でも評価を進められる点も実務上の利点です。
③ボディマス指数計算機(BMI計算アプリ)
身長と体重を入力するだけでBMI(体格指数)を算出できるアプリです。算出したBMI値は、標準値との比較がすぐに表示されるため、栄養状態の評価に役立ちます。
- 身長・体重を入力するだけで即座にBMI値を算出
- 標準値・肥満度の目安が同時に表示される
- 算出した数値を訪問看護記録に残し、主治医・看護師と共有できる
- 専用の計算機や計算式を覚える必要がなく、誰でもすぐに使える
訪問看護のリハビリにおいて、体重の変化は身体機能や栄養状態の変化を示す重要なサインです。低栄養状態が続くと筋力低下や転倒リスクの増加につながるため、定期的にBMIを算出し、変化の傾向を追っておくことが大切です。
特に高齢の利用者は、食欲の低下や活動量の変化から、短期間で体重が減ってしまうことがあります。毎回の訪問で体重を測定し、BMIとして記録しておけば、緩やかな減少傾向にも気づきやすくなります。数値の変化が見られた場合は、看護師や主治医と早めに共有し、食事内容の見直しなどにつなげることができます。

上妻
体重の増減は、本人も気づきにくいことがあります。訪問のたびに体重を測り、BMIとして数値化しておくと、緩やかな変化にも気づきやすくなり、看護師への情報共有もスムーズになります。

④万歩計アプリ(歩行練習の記録に)
スマートフォンの万歩計アプリ(Walkerなど)を使うと、屋外での歩行練習中の歩数・歩行時間を記録できます。感覚的な「今日はよく歩けましたね」ではなく、具体的な歩数として示すことで、利用者自身の達成感やモチベーション向上につながります。
- 歩行練習中の歩数・歩行時間をその場で計測
- 「前回は500歩、今回は700歩」といった具体的な数値目標を設定できる
- 利用者本人がスマートフォンを持ちながら歩くだけで記録できる
万歩計アプリの多くは、利用者ごとに記録を保存・分けて管理する機能を持っていません。複数の利用者を訪問するセラピストが使う場合は、訪問ごとにアプリ内の記録をリセットし、数値を訪問看護記録など別の場所に手動で書き写しておく必要があります。
歩数の目標設定は、利用者の身体機能や意欲に合わせて段階的に行うことが大切です。最初から高い目標を設定してしまうと、達成できないことが続き、逆に意欲を下げてしまう可能性があります。「前回より少しでも増えていれば十分」というスタンスで、小さな成功体験を積み重ねていく使い方が、屋外歩行練習の継続につながりやすくなります。
また、歩数だけでなく、歩行にかかった時間もあわせて記録しておくと、歩行速度の変化も把握できます。同じ距離を歩くのにかかる時間が短くなっていれば、歩行の効率が上がっているサインとして捉えることができます。
アプリを使う際に気をつけたいこと
無料アプリは手軽に導入できる一方で、訪問看護の現場で使う際にはいくつか注意しておきたい点があります。
- 個人情報・プライバシーへの配慮写真や動画を撮影・保存する場合は、利用者・家族の同意を必ず得ること。
- 記録の保存先を統一するアプリ内に記録が残らないものは、訪問看護記録など事業所の正式な記録に書き写すこと。
- 事業所内でルールを共有する個人のスマートフォンを業務で使う場合、事業所のセキュリティ方針に従って運用すること。
- 無料版の制約を理解するロゴ表示・画質・機能制限など、無料版特有の制約を把握したうえで使うこと。
特に写真・動画を扱うPicPlayPostのようなアプリは、個人情報の取り扱いに関わるため、事業所としての運用ルールを事前に定めておくことが望ましいです。
また、個人のスマートフォンを業務で使う場合、機種変更や紛失時に、撮影した写真・動画・記録データがどうなるかについても事前に考えておく必要があります。事業所によっては、業務用のタブレットや、クラウド上の共有フォルダを別途用意し、撮影したデータをその日のうちに移して個人のスマートフォンからは削除する、というルールを設けているところもあります。
アプリはあくまで「記録・説明を助ける道具」です。アプリを使うこと自体が目的化しないよう、利用者にとって本当に役立つ場面でのみ活用する意識を持つとよいでしょう。操作に時間がかかってしまい、本来のリハビリの時間を圧迫してしまう場合は、使う場面を絞ることも検討しましょう。
よくある質問
これらのアプリは無料で使い続けられますか?
基本機能は無料で使えるものが多いですが、アプリの仕様は更新されることがあります。実際に導入する際は、最新のアプリストアの情報で無料版の範囲や機能制限を必ず確認するようにしてください。
利用者の写真や動画を撮影してもよいのでしょうか?
撮影・保存・共有のいずれについても、利用者本人・家族の同意を事前に得ることが前提です。口頭での同意だけでなく、同意書などの形で記録に残しておく事業所も多く、事業所内で同意の取得方法や保存ルールを統一しておくと安心です。
HOKUTOは看護師や理学療法士も使えますか?
医療従事者であれば利用できるアプリです。医師向けの機能が中心ですが、薬剤情報や評価ツールは看護師・理学療法士等が現場で確認する際にも役立ちます。事業所によっては、複数のスタッフで共有して活用しているケースもあります。

まとめ|アプリはリハビリの説明・記録を助ける道具
訪問看護のリハビリでは、特別な機器を持ち込みにくい環境の中で、限られた持ち物を工夫して評価・説明・記録を行う必要があります。PicPlayPost・HOKUTO・BMI計算アプリ・万歩計アプリは、いずれも無料で使い始められ、日々の訪問の中で手軽に取り入れられるツールです。利用者への説明や多職種との共有をより分かりやすくするための道具として、活用してみてください。
すべてのアプリを一度に導入する必要はありません。まずは自分の業務の中で「説明がうまく伝わらない」「記録に手間がかかっている」と感じる場面を振り返り、その課題に合ったアプリから一つずつ試してみるとよいでしょう。使いながら事業所内でのルールを整えていくことで、無理のない形で日々の業務に取り入れていくことができます。
- PicPlayPostは動作の変化を並べて分かりやすく可視化できる
- HOKUTOは薬剤情報・評価ツールをその場ですぐに確認できる
- BMI計算アプリは栄養状態の変化を数値で追いやすくする
- 万歩計アプリは歩行練習の歩数を具体的な数値目標にしやすい
- 個人情報の取り扱いと記録の保存先には十分注意が必要
- すべて一度に導入せず、課題に合ったアプリから試していくとよい












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