
目次
双極性障害の治療
双極性障害の治療は、薬物療法と心理社会的治療の2本立てになります。
代表的な治療の内容については、下図を参照ください。
双極性障害に対する治療を行う上で看護師の役割は、3つに分けられます。
- 精神状態を知る。
- 薬物療法の支援。
- 自力を高める。
上記の役割について、詳しく解説していきます。
精神状態を知る
双極性障害の看護では、利用者さんの気分や訴えについて共感しながら理解し、「精神状態を知る」ことでうつ状態、躁状態に合わせた看護計画を立案することができます。
そこで、「精神状態を知る」ために役立つ評価ツールを2つ紹介します。
オレム・アンダーウッドのセルフケア理論
双極性障害などの精神障害者の多くは、精神状態の変化に伴い家庭や社会で適応することが難しくなり、セルフケアができなくなることで日常生活が破綻しやすいと考えられています。
つまり、精神状態は、個人のセルフケア行動に影響を与えています。
そのため、看護師は、精神障害者が「どのように日常のセルフケアを行っているのか」を観察しながら、精神状態を理解していく必要があります。
オレム・アンダーウッドのセルフケア理論には、普遍的なセルフケア要件が8つあり、それぞれについて情報収集とアセスメントを行っていきます。
- 十分な空気摂取
- 十分な水分摂取
- 十分な食事摂取の維持
- 排泄過程と排泄に関するケア
- 活動と休息のバランス
- 孤独と社会的相互作用のバランスを維持
- 生命維持安寧に対する危険の予防
- 人間の機能と発達の促進
オレム・アンダーウッドのセルフケア理論を用いた評価の記載例については、下図を参照ください。
Mental Status Examination
一般的な疾患の症状は、バイタルサイン、心臓、脳のように解剖生理学の観点から枠組みを分けて状態把握を行っていきますが、精神症状も同様で、精神機能学の観点から枠組みを分けて精神状態の把握を行います。
その精神症状を診るための評価ツールとして、Mental Status Ewamination(以下MSE)があります。
MSEでは、精神症状を9つの枠組みに分け「精神機能に症状や障害があるのか?」について明らかにすることで、セルフケア不足を引き起こす原因について考察していきます。
精神症状の9つの枠組みは、外観、意識、記憶、認知、感情、意欲、思考、知覚、自我であり、それぞれについて体験の聴取、行動観察を行い、記録していきます。
薬物療法の支援
双極性障害の利用者さんは、気分調整(安定)薬と抗精神病薬を内服し続け、不眠などの他の症状に合わせて内服薬の調整を行っていきます。
そこで、気分調整(安定)薬と抗精神病薬の影響について、看護師が評価していくことが大事になります。
それぞれの薬の特徴と評価する上でのポイントについて紹介します。
双極性障害の利用者さんの基軸となる薬であり、内服を継続していかなければいけません。
薬には、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンがあります。
ポイントは、薬の効果閾と中毒閾が近いため、中毒症状に対して早期介入できるようにしておきましょう!
中毒症状には、ふらつきやけいれん、意識障害、嘔吐、下痢などが挙げられます。
双極性障害に使用される抗精神病薬は非定型が中心で、日本で保険適応になっているのは、アリピプラゾール(躁状態の改善)、オランザピン(躁症状、鬱症状の改善)の2種類しかありません。
ポイントとしては、双極性障害の利用者さんの中には、うつの期間が長いためにうつ病と考えられていたり、うつ症状が強い時には、抗うつ薬を内服している方もいます。
そのため、抗うつ薬を使用している利用者さんに対しては、躁転に注意しましょう!
躁状態と普通状態の判別をするためには、利用者さん自身や家族から以前の様子について聴取しておくと良いと思います。
薬物療法の支援を行う上で、双極性障害などの精神障害がある利用者さんのストレスと精神障害、薬との関係を理解しておくべきだと思います。
双極性障害などの精神障害は、薬物療法で治る訳ではありません。
薬物療法の役割について、ダムモデルを用いて説明します。
雨がストレス、ダムの水が溜まっているストレス、堤防がストレスに対する抵抗力を表しています。
ダムに溜まった水が堤防から溢れてきてしまった状態が、精神症状により生活に影響が出てしまった状態となります。
薬物療法の役割とは、ストレスに対する抵抗力を向上させる対症療法になります。
自力を高める
双極性障害の利用者さんの自力を高めることは、看護師の重要な役割であり、心理社会的療法になります。
その中でも代表的な「心理教育」について紹介します。
精神障害やエイズなど受容しにくい問題を持つ人たちに、正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝えます。
そして、病気や障害からもたらされる諸問題 ・諸困難に対する対処法を習得してもらう事によって、主体的に療養生活を営めるように援助する方法と定義されています。
双極性障害の利用者さんは、病気や障害、そのほかの問題を抱えて、知識もなく、相談もできず、途方にくれていることが想定されます。
そこで、利用者さん自身とその家族に必要な知識や情報を知ってもらい、どう問題に対処するかを協働して考えることで、生活での問題に取り組みやすくなり、何とかやっていけるという気持ちを回復する、そういうことを目指している支援方法になります。
双極性障害に対する心理教育の一例を紹介します。
精神状態を信号の色と関連付けることで、生活での問題を利用者さんと看護師で考えやすくします。
- 赤信号は、入院を考える時
- 黄信号は、内服薬の調整など対処をしながら過ごせている時
- 青信号は、ちょうど良い自分で過ごせている時
双極性障害の利用者さんは、躁状態=自分自身では調子が良い状態となってしまうと、その後にうつ状態となり、その期間が長引く傾向があります。
そのため、躁状態を早期発見し、その症状を軽くすることが大事になります。
躁状態を早期に発見するためには、問題が生じた時に精神症状、生活の状況、家族の関わりなどについて円環的に捉え、ストレスの悪循環を発見していくことが良いと考えます。
利用者さんにとって家族は重要他者であり、精神科訪問看護における支援者となります。
利用者さんの精神症状、生活の過ごし方、家族の関わりのうち、どれか1つでも小さな変化が起きると、それが起点となり、ストレスの悪循環が始まるかもしれません。

双極性障害対する看護では、精神状態を知り、薬物療法の支援をしたり、ストレスや問題解決などの自力を高められるように関わっていきます。
そして、利用者さん自身の希望や幸せについて、一緒に考えていければと思います!
動画で学ぶ
























今回の精神科訪問看護講座では、双極性障害に対する看護師の役割について紹介していきます。
双極性障害は、躁うつ病と呼ばれていた当時のような気分障害ではなく、気分、意欲・行動、思考に問題が生じ、社会生活を送ることが難しくなる統合失調症に似ている精神障害です。
安心して社会生活を送ることを支援するために、看護師ができることについて一緒に学んでいきましょう!