看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は「医療依存度が高い方でも自宅で暮らし続けやすくなる」サービスだとよく言われますが、実際に利用した方やご家族の生活は具体的にどう変わるのでしょうか。
この記事では、利用者さん・ご家族の視点で見た看多機の5つのメリットを、厚生労働省の調査データも交えながら解説します。看護師として看多機の管理者を経験した立場から、現場で実際に感じたメリットもあわせて紹介します。
- 看多機を利用すると生活がどう変わるか(利用者視点の5つのメリット)
- 厚生労働省の調査でわかった「実際に多い変化」のデータ
- 自治体・事業者が感じている看多機のニーズ
- 利用前に知っておきたい注意点
目次
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは
看多機は、訪問看護と、通い・訪問・宿泊を組み合わせた小規模多機能型居宅介護の機能を、1つの事業所が一体的に提供する地域密着型サービスです。制度の枠組みや対象者、定員基準といった基本的な仕組みについては、別記事「看護小規模多機能型居宅介護とは?サービス内容と定員基準を解説」で詳しく解説しているので、まだ読んでいない方はあわせてご覧ください。この記事では、制度の説明よりも「利用するとどう変わるのか」という利用者視点のメリットに絞って掘り下げます。

看多機の管理者をしていた頃、ご家族から「もっと早く知りたかった」と言われることがよくありました。制度としての名前は聞いたことがあっても、生活がどう変わるかまでは意外と知られていないんです。
看多機を利用すると生活はどう変わる?利用者視点の5つのメリット
看多機の管理者として多くの利用者さん・ご家族と関わってきた経験から、特に「利用してよかった」と感じていただけることが多いポイントを5つに整理しました。
①要介護度が低くても、必要なだけサービスを使える
看多機は定額の包括報酬のため、介護度に関係なく、利用回数や時間に一律の制限がありません。通常のデイサービスであれば要介護度に応じて週の利用回数がある程度決まってきますが、看多機では認知症で要介護度自体は低くても、頻回な見守りや支援が必要な方が、状態に合わせて毎日サービスを利用するといった対応も可能です。
②顔なじみのスタッフが、訪問も通いも対応してくれる
複数の事業所を組み合わせて利用する場合、事業所ごとにスタッフが異なるため、慣れるまでに時間がかかったり、情報共有がスムーズにいかなかったりすることが起こりがちです。看多機では同じ事業所の職員が訪問看護・訪問介護・通い・宿泊のすべてに関わるため、利用者さんにとって「知っている顔」が対応してくれる安心感があり、職員間の情報共有も一体的に行われます。

③状況に応じて、臨機応変にサービス内容を変えられる
一般的な介護サービスは曜日や時間があらかじめ固定されていることが多いですが、看多機では週ごとに予定を柔軟に変更したり、急な体調変化に合わせて訪問や宿泊に切り替えたりすることが可能です。主介護者の急な仕事の都合で通いの時間を調整したい、当日体調が優れないため通いを訪問に振り替えたい、といった相談にも対応しやすいのが特徴です。
④手続き・書類の負担が少ない
通常、利用するサービスの種類が増えるたびに、ケアプランの見直しやサービス担当者会議の開催、事業所ごとの契約書への署名・捺印が必要になります。看多機では4つのサービスを同一事業所がまとめて提供するため、契約は基本的に1度で済み、サービスが変わるたびの手続きの負担が軽減されます。高齢のご本人やご家族にとって、この事務的な負担の少なさは見過ごせないメリットです。
⑤看取りの選択肢が広がる
訪問看護単体で在宅療養を続ける場合、体調が急激に悪化したときの選択肢は「自宅」か「入院」に限られがちです。看多機では看護職員が多く在籍し、医療依存度が高い方にも対応できる体制が整っているため、「最期まで自宅で過ごしたいが、介護負担や急変時の不安が大きい」というケースでも、事業所の宿泊サービスを使いながら看取りに対応できるという選択肢が加わります。自宅と入院の間の「在宅以上、入院未満」の受け皿になり得る点は、看多機ならではの強みです。
5つのメリットに共通しているのは、「サービスの切れ目」が少なくなることです。事業所・担当者・契約が一体化することで、利用者さん・ご家族が感じる負担や不安の多くが軽減されます。
実際にあったケース
管理者として関わった例では、認知機能の低下が進み、要介護2ながら夜間の不安が強く頻回な見守りが必要になった方がいました。従来のデイサービスと訪問介護を別々に契約する形では、事業所間の情報共有に時間がかかり、家族から「その都度同じ説明をするのが負担」という声が上がっていました。看多機に切り替えたことで、同じ職員が訪問・通い・宿泊を横断して対応できるようになり、夜間の不安が強い日は宿泊サービスに切り替える、日中は短時間の訪問で様子を見るといった柔軟な調整が可能になり、ご家族の「毎回説明し直す負担」がなくなったと話してくださったことが印象に残っています。
厚生労働省の調査でわかった「実際に多い変化」
ここからは、私の実感だけでなく、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会に提出された調査データも見てみましょう。看多機を利用した事業者が経験した利用者さんの状態変化について、次のような結果が報告されています。
| 利用者さんに見られた変化 | 回答割合 |
|---|---|
| 家族の介護負担が軽減し、在宅療養が継続できた | 59.7% |
| 運動機能の改善が図れた | 25.6% |
| 入院を回避できた | 22.1% |
| 在宅療養生活へのスムーズな移行ができた | 20.5% |
| 認知症の行動・心理症状が改善した | 19.1% |
最も回答が多かったのは「家族の介護負担が軽減し、在宅療養が継続できた」で、約6割の事業者が経験していると回答しています。次いで「運動機能の改善」「入院の回避」が続いており、利用者さん本人の状態改善だけでなく、介護をするご家族の負担軽減にも大きく寄与していることがデータからも読み取れます。

自治体・事業者が感じている看多機のニーズ
同じ調査資料では、自治体担当者や事業者が「看多機にはどのようなニーズがあると感じているか」も調べています。自治体担当者の回答で最も多かったのは「医療ニーズを持った退院直後の利用者の在宅療養を支える」(41.9%)、次いで「在宅で(事業所内を含む)看取りを含めた療養生活を支える」(37.6%)でした。事業者側でも「中重度の医療ニーズを有する利用者への対応」(83.2%)が最も多く挙げられており、次いで「医療提供施設から退院・退所し、在宅療養へ向けた調整や安定するまでの一時的な利用」(80.2%)、「他の介護サービスでの受入や対応が難しい利用者の課題解決のための利用」(65.3%)と続きます。退院直後の医療ニーズが高い時期や、看取りに近い時期こそ、看多機の力が発揮されやすいことがうかがえます。裏を返せば、比較的状態が安定していて医療ニーズが高くない方にとっては、通常のデイサービスや訪問介護の組み合わせのほうが選択肢が広く、使い勝手が良い場合もあるということです。
看多機はメリットが大きい一方、地域密着型サービスのため原則として事業所と同じ市区町村に住民票がある方が対象であること、利用開始時に担当ケアマネジャーが事業所専従の担当者に変更になることなど、事前に知っておきたい注意点もあります。詳しくは基本解説記事でご確認ください。
よくある質問
看多機を利用すると、要介護度が低くてもたくさんサービスを使えますか?
はい。看多機は定額の包括報酬のため、要介護度に応じた利用回数の一律の制限はありません。認知症などで頻回な見守りが必要な場合、要介護度自体が低くても状態に合わせて利用頻度を調整できます。
看多機を利用すると、担当のケアマネジャーはどうなりますか?
それまで担当していたケアマネジャーから、事業所に専従する介護支援専門員へ担当が変更になります。長く付き合ってきた担当者が変わることに不安を感じる方もいるため、事前の説明を受けておくと安心です。
実際に看多機を利用した人には、どんな変化が多いですか?
厚生労働省の調査では「家族の介護負担が軽減し、在宅療養が継続できた」が59.7%と最も多く、次いで「運動機能の改善」25.6%、「入院の回避」22.1%となっています(事業者への複数回答調査)。
看多機は看取りにも対応してもらえますか?
対応できる事業所が多くあります。看護職員が多く在籍し医療依存度が高い方にも対応できる体制のため、宿泊サービスを活用しながら自宅に近い環境で看取りに臨める選択肢が加わります。実際の対応可否は事業所ごとに確認が必要です。
看多機はどんな人に向いていますか?
医療ニーズを持った退院直後の方、病状が不安定で柔軟な対応が必要な方、家族の介護負担が大きくレスパイト(介護休息)が必要な方などに向いています。詳しい対象者の条件は基本解説記事もあわせてご確認ください。
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第179回)資料5「看護小規模多機能型居宅介護、療養通所介護」(18ページ「看護小規模多機能型居宅介護の利用者の変化」、19ページ「看護小規模多機能型居宅介護のニーズ」を確認)
上記データは平成30年度老人保健健康増進等事業の調査(事業者への複数回答調査、n=167)等に基づくものです。個々の利用者さんの状態変化を保証するものではありません。
まとめ|看多機は利用者さん・ご家族双方の負担を軽減するサービス
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、要介護度によらず必要なだけサービスを使え、顔なじみのスタッフが一体的に対応してくれる、利用者さん・ご家族にとってメリットの大きいサービスです。
- 要介護度に関わらず必要なだけサービスを使える、顔なじみのスタッフが一体対応する等、5つのメリットがある
- 厚労省調査では「家族の介護負担軽減」59.7%が最多、次いで「運動機能改善」「入院回避」
- 退院直後の医療ニーズが高い時期・看取りに近い時期にニーズが高い
- 利用開始時はケアマネジャーが変更になる等、事前に知っておきたい注意点もある
制度の基本的な仕組みや対象者の条件をまだ確認していない方は、基本解説記事もあわせてチェックしてみてください。
























